恵民薬局
『宋史』と『明史』は食貨志が全て訳されているのに『元史』の食貨志は一部しか訳が無いのが残念なところです。なかなか面白い記事が散見されるわけですが。
前回、クビライの民衆のための政策を見ましたが、他にも貧民のために恵民薬局を設置しています。「食貨志四」の「恵民薬局」の項に以下のように記されています。
周官に「医師」あり、医学分野の行政を管掌した。国に病人や負傷者が居た場合、医者を派遣して治療させたため、民は早死にしなくなった。
元は恵民薬局を設立し、官より鈔を給して元本とし、毎月その利子で薬を準備した。良医を選んで管理させ、貧民を治療させた。これは周官が「医師」を設けた美事を更に深めたものである。
太宗九年に初めて燕京など十路に局を置き、奉御の田闊闊、太医の王璧、斉楫らを局官とし、銀五百錠を元本として利子を運営費に充てた。
世祖の中統二年に再び王祐に命じて開局した。四年に上都にも局を置き、中統鈔百両ごとに一両五銭の利息を得た。至元二十五年、元本が失われたため全廃した。成宗の大徳三年になってから、旧例に準拠して、各路に設置した。
局は全て各路の正官が管理した。良医を配して、上路に二名、下路・府・州には各一名。支給する鈔は民戸の多寡により差を付けた。
腹裏、三千七百八十錠。
河南行省、二百七十錠。
湖広行省、千百五十錠。
遼陽行省、二百四十錠。
四川行省、二百四十錠。
陝西行省、二百四十錠。
江西行省、三百錠。
江浙行省、二千六百十五錠。
雲南行省、真𧴩一万千五百索。
甘粛行省、百錠。