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投稿記事

お菓子で小説シリーズの記事(8)

お菓子で小説シリーズ「ホワイトロリータ」

お菓子で小説シリーズは、一応これでラストになります。

お題「ホワイトロリータ」

小さな頃、母がスーパーで発見するたびに買っていたお菓子がある。懐かしい。買い物に同行していた幼いころの私は、そんなものには目もくれず、子供が喜びそうな玩具付きのお菓子などをよくねだったものだった。

「美味しいのそれ?」

家に帰ってからお茶と共にほおばる母の姿に、ふと尋ねたことがある。

「食べてみたらわかるわよ」

そう言って促された袋に手を突っ込み、取り出した小さな包みを広げ、小さな私はその中身をおそるおそる口に含んだ。

「あんたはやっぱり母さんの子ね」

ふふっと笑う母の顔。大人に成長した今、実家を離れた私はあの頃と変わらない味を口に含みながら午後の休憩を楽しんでいる。

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お菓子で小説シリーズ「ザッハトルテ」

お菓子で小説シリーズも残りわずか。

お題「ザッハトルテ」

真っ黒なドレスを着込んだ悪魔のお菓子。とろける濃厚なチョコレートで全身を包み、歯さえ溶かす勢いで濃密な甘さを口いっぱいに広げてくる魅惑のお菓子。

「お嬢様、顔が崩壊しております」

呆れたような視線が痛い。毒舌がウリのこの執事は、香りのいい豆を手に入れたからとホットコーヒーを用意してくれている。

「ねぇ、もう食べてもいい?」

そのキラキラした瞳を向けられて誰が断ることなど出来るだろうか。

「まだ、でございます」

親よりも躾けに厳しい執事に、散々甘やかされて育ったお嬢さまの顔はひきつる。けれど、さすが躾けの賜物。彼女は両手を膝の上にジッと乗せて待っていた。ただ少しばかり、体が前のめりな気がするのは気のせいではないだろう。
それに執事はふふっと上越な笑いを飲み込みながら「お待たせしました」と彼女の横に濃厚な黒い液体を差し出した。

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お菓子で小説シリーズ「フロランタン」

こんにちは、皐月うしこです。
久しぶりにお菓子で小説シリーズ

お題「フロランタン」

一瞬で惹かれた綺麗なお菓子。クッキー生地にキャラメルでコーティングしたアーモンドが、店内の照明にあてられ、まるで宝石のようにキラキラと輝いて見えた。

「お客様、お決まりでしょうか?」

店員さんが、少し遠慮気味に声をかけてくる。本当はまだまだ眺めていたかったけれど、待ち合わせ時間も迫っていたので早口で「フロランタン」をお土産用で指名した。

「味見も出来ますので、どうぞ」

お土産にする以上、先に味を知っておくのも悪くない。そう思って差し出された欠片をありがたく口にする。口いっぱいに広がる糖度とその固さに思わず笑みがこぼれた。これなら病室の彼女も満足してくれるに違いない。

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お菓子で小説シリーズ「チョコパイ」

お題「チョコパイ」

小さな小さな世界の話。人間の中で暮らしている小人の存在は有名で、誰もが耳にしたことのある現実だろう。もちろんどこにでもいるわけではない。自分たちが暮らしやすい環境を提供してくれる人間の家に、小さな住処を作り、彼らはそこで存在している。

「おにいちゃん。あれはなあに?」

後ろからついてきた妹に、それはとてもいいものだという風に、兄は笑顔で前方を指さした。

「人間が好んで食べるとても甘くておいしいものだよ」

ひとつでなんと30人前。持って帰ればたくさんの子供たちが笑顔になれる魅惑のおやつ。

「一袋だけ内緒でこっそりもらうんだ」

見つからないようにこっそりと、彼らは人間が留守の間に包みをひとつ運んでいく。そうして彼らの住処にチョコパイが運ばれる頃、人間たちは帰宅した。だけど彼らは気づかない。日常の中に確かにあったものが忽然となくなってしまっても、気のせいだったかしらと特に気づきはしないのだ。

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お菓子で小説シリーズ「ポテトチップス」

三日も続けば定番化。
「お菓子で小説」シリーズ
(1話300文字ほど)

お題「ポテトチップス」

薄い電子版から色とりどりの光と共に無数の音楽や声が重なり合って、現実とは程遠い魔法の世界を提供している。俗にいう映画かもしれないが、彼女にとってこれは彼と穏やかに過ごせるほんのささやかな日常でもあった。

「ふつう、ポップコーンじゃないの?」

いくら家で観賞会をするからといって、コンビニで買い占めたお菓子の系統は納得がいかない。

「いいのいいの、こっちのが美味しいし。ポップコーン飽きるじゃん」

そう言いながらバサバサと適当に購入されたお菓子類たちは、現在進行形で彼の口に運ばれては消えていく。映画の内容とはたぶん関係ない。それに、うるさい。

「え、なに?」

集中できないついでに、袋から取り出した薄いお菓子を二枚逆に重ね合わせて彼の方を向いてみた。食べれるものなら食べてみろ。そう目で訴えながら、彼女はアヒルの真似でニヤリと笑う。

「じゃ、遠慮なく」

ニヤリと笑ったのは彼も同じ。映画の中の魔法使いが小さな悲鳴を上げた頃だった。

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