舞城王太郎『ビッチマグネット』を読んで

舞城王太郎の本は初めて読みました。
名前は前から知っていました。覆面作家として有名ですよね。

冒頭数ページから衝撃を受けました。
スゲーなこれ。なんじゃこりゃ。一体どーやって書いてんの。

文体が最大の武器になってます。あさのあつことか、あと綿矢りさも少し近いか? 最近こういうの久しぶりだったのであまりそれっぽい名前が出てきませんが。

そのくだけた口語体の一人称による語り口は印象的。直前に読んでいたのが山崎豊子の『白い巨塔』だったので、その文体の落差には驚きました。

ですが、だからこそ逆に気づいた類似点もあります。それは、シーンを継ぐテンポのよさ。
文章の密度はさておき、軽やかな文体でありながら次々と場面が切り替えられ、サクサク話が進んでいきます。

冗長そうでありながら、実は極限まで無駄が削ぎ落された文章。それってなかなか普通にはできないことだと思います。まさにプロの所業。

この手の文章だと情報の密度は低く、物語の進行は低速度になりがちだと思っていましたが、その先入観を覆されました。一体どんなマジックが使われているのやら。
手品のタネはシーンとシーンの"継ぎ目"にあると思いますが、いやはや素晴らしい職人芸です。

狂人めいたキャラクター描写の主人公による、そのあまりにぶっ飛んだ文体を語り口として話は進んでいきますが、内容は至極真っ当な青春小説。
もっと早く出会っておきたかった作家です。二作目も是非読んでみたいと思います。

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