映画『スタンド・バイ・ミー』を見て

初代ポケモン、マサラタウンの主人公の家のテレビに映っていた映画『スタンド・バイ・ミー』(原題『死体』)。
それを見ながら「男の子はいつか旅に出るものなのよね……」とこぼす母親。
1986年に上映されたこの作品は、青春映画の金字塔。SF映画でいうところの『ブレードランナー』(原作『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』)にあたるものだと思います。

友達というものはレストランの皿洗いのように、一生の内に出たり入ったりするものだと思いながら、「複雑な家庭環境のなかで仲間との友情を感じた12歳のころのような友達は二度とできることはない」とゴーディは静かに思い返す。

まさにこれがテーマの本作。本邦でも後世の様々な作品に影響を与えました。

出典の『ほぼ日刊イトイ新聞』、読んでみてください。
https://www.1101.com/MOTHER_diary/2003-08-27.html

『スタンド・バイ・ミー』、実は原作は未読なのですがスティーブン・キングは「登場人物の描写」という点において実にずば抜けた異才の持ち主なので、やはり読まねば……! と映画を見て改めて実感しました。
映画も映画でロードムービー感が素晴らしく、35年経た今見ても色あせない魅力がありました。

私、『スタンド・バイ・ミー』は中学の頃の英語の教科書にも載っていたにも関わらず未読であり(なお鴎外の『舞姫』は高校の頃の現代文の教科書に載っていたにも関わらず未読)、いずれ読まねば……! と思っていたところ金曜ロードショーで放映されていたので録画しておいたものを先日ついに視聴したのです。

いやほんと素晴らしい映画でした。
それにしても内容はまさに「死体探しの旅」としか言えないもので、なぜわざわざ『THE BODY(死体)』というド直球真ん中高めのタイトルを『スタンド・バイ・ミー』などという分かりにくいタイトルに変えてしまったのか、理解に苦しむばかりです。

本作は小説家の卵みたいな少年が主人公で、大人になったら実際に小説家になっているという物語なのですが、原作者キング自身による思い入れを感じずにはいられません。
キングは『暗黒の塔(ダーク・タワー)』シリーズ1巻の前書きでも何やら意味深なことを書いていて、実に印象深い作家です。

小説家はいかにして小説家になるのか、そこにも物語性があるのかもしれません。

12歳でも14歳でもはたまた10歳でもよいですが、やはり10代前半の少年少女というのはその後の人生では得られることのないかけがえのない思い出を手にするものなのでしょう。
このテーマから連想される作品は数多くありますが、ここではこの2作品についてお話したいと思います。

まずは左の『青木学院物語』。1982年の横浜が舞台です。
小学校5年生の転校生の少女を視点に語られる実話ベースの物語。

作者プロフィールがまた物語性を孕んでいます。
初版2007年。たぶん私が大学生の頃に買って読んだものだと思いますが、結構面白かったのを覚えています(こなみかん)。

次いで、右の『夏の庭』。
これは小学校の頃の教材に載っていた覚えがあります。まじ名作。

冒頭1ページ目のこの書き出し。
日本の名著って大抵自己紹介から始まると思いますが、まさにそのスタイルで見事に「つかみ」を書いています。
「六年生たちが、すばらしく強く、大きく、おそろしくさえ思えたものだ」というのは誰もが共感する一文ではないでしょうか。

ほんとすごいのでマジで全国の小学生に読んでほしい。
ちなみに私は中学生の頃の現代文の授業では毎週「週末読書」と呼ばれる宿題が出されて『フランダースの犬』とかが課題になったこともありましたが全く読んでいませんでした。子供の頃にもっと本を読んでおくべきだったと思います。
あ、でもケストナーの『飛ぶ教室』は読みました。本編より前書きのほうが面白いんだよなあれ。

『飛ぶ教室』も、冒険というと違うかもしれませんけど、少年たちの物語ですよね。

子供の頃に図書館で読み漁っていた誰かの小説の書き方指南書みたいな本(もはや作者もタイトルも覚えていない)でこのケストナーの『飛ぶ教室』の前書きが紹介されていて、とても魅力的に感じたのを覚えています。
前書きが二つもある上にあとがきも解説も載ってる文庫です。贅沢なつくりだと思いませんか。
それにしてもこれを紹介していたもう思い出せないあの本、もう一度読んでみたいな。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

記事のタグから探す

月別アーカイブ

記事を検索