マニアックハーバーは、かつて存在した日本の飲食店


マニアックハーバーは、かつて秋葉原と末広町のあいだの路地にありました。
業態としてはただの普通の飲食店。女性従業員の接客を伴ういかがわしいお店ではありません。
ただウェイトレスのお姉さんがエッチなコスチュームに身を包み、「待ち伏せ行為はご遠慮ください」などと闇の深そうな張り紙がされているだけのお店です。

エッチなコスチュームというのは、制服を思わせる襟つきのブラウスに紺のプリーツスカート、そしてまぶしい絶対領域の黒ニーソ。
店内は三階建てで、メインのフロアは二階なのですが、階段は急で、際どいミニスカからパンチラしてしまうくらいです。
でもご安心ください。ちゃんと見せパンをはいています。

二階のフロアには大きなスクリーンがあり、歴代アニメのOPやEDなどが延々と映し出されます。客席に座ってみんなでその映像を見たり音楽を聴いたりしながらそれらの作品に関する思い出話に花を咲かせるというのがこのお店の楽しみ方です。ウェイトレスのお姉さんをナンパしてはいけません。

そんなマニアックハーバーが、ある日突然ネット上から姿を消しました。
現場へ急行すると、そこにはかつてと違う看板が。

店内は前と同じ装い。スクリーンにアニメの映像が流されているのも同じです。
ウェイトレスのお姉さんも相変わらずエッチなコスチュームから絶対領域を輝かせています。





一体なぜ、マニアックハーバーはミナトグリルへと変わったのでしょうか?
「ここ、店名とメニューが変わっただけでリニューアルオープンみたいな感じなんですか?」
「そうなんですよ~。オーナーは前と同じなんですけど」
新米風の女の子が優しく答えてくれました。
「違うよ」
しかし、カウンター越しに突き刺さる冷たい声。
「違うよ、違う」
先輩風のお姉さんが、こちらを見て首を振っています。
空気を凍りつかせながら、彼女はカウンターの向こうからこちらへきます。
「お客様、前の店のことについては私どもには知らされておりませんので、お答えすることはできません」

彼女たちが去ったあと、私たちは顔を見合わせました。
「私たちには知らされておりません」と言いながら、リニューアル説は「違う」とはっきり否定しました。
新米ウェイトレスさんが口を滑らせようとした瞬間直ちに釘を差した様子も、ただ事ではないことを窺わせます。
一体、何があったのでしょうか……釈然としない気持ちを抱えたまま、私たちは店をあとにしたのでした。

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