「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ」
村田沙耶香の第155回芥川賞受賞作『コンビニ人間』に登場する台詞です。
「何で一回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。『ああ、風俗は数に入れないでくださいね』なんてことまで、笑いながら言うんだ、あいつらは! 誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強○する」
他にも、地の文で。
私は妹が黙ってしまったので暇になり、冷蔵庫からプリンを取り出して泣いている妹を見ながら食べたが、妹はなかなか泣き止まなかった。
ここらへんがこの小説を象徴するセンテンスだと思います。
普通になれない人たちと、普通を強いる世間の人々を強烈に風刺した作品です。
的確で無駄のない語り口に運ばれて物語は動き出し、その展開には目が離せません。
登場人物たちに好感を抱かせようなどと1ミリも思っていない風の人物描写は純文学然としていますが、私たちを取り巻く"いま"を克明に描いた作品には、引き込まれる魅力があります。
それにしても目を見張るのは、面白さとリアルさを両立したこの人物描写の匙加減。
高度に抽象化されたキャラクターたちの言動には「こんな奴いねーよ」という感じすらあります。にも関わらずすんなりと読めてしまう筆致にはどんな秘密が隠されているのでしょうか。
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決め手は、組み合わせ。
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