今後(10年後ぐらい)の薬局業界について

製薬企業・原料企業・保険薬局を売却した薬剤師とお話する機会があったので、今後の国の方針について考察したいと思います

その前に
「小林化工」が製造する爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入した問題
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG097I20Z00C21A2000000/


業務停止命令中の「日医工」に国が異例の立ち入り調査 | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210324/k10012932631000.html

ここ一年の間にこの二つのニュースが出ています


2017年ですが
【和歌山県】山本化学に業務停止命令‐未登録原薬混入で https://www.yakuji.co.jp/entry58984.html

と、後発品(ジェネリック)企業や原料企業での不祥事が出ています


これの何が問題か、原料企業の人に聞いてみたのですが
・国の締め付け(薬価含む)が厳しくて利益が出ない

設備投資出来なかったり、人材を当てれなかったりする
原料の生産を辞めざるを得ない


・同じ原料を使っている企業が軒並み共倒れをする

一社だけの問題ではなく、十社ぐらいの問題になり、その間出荷が出来なくなり、違う原料企業の医薬品に流れる

急に注文が増えるので生産が間に合わない

患者に必要な数行き届かなくなる

今回の薬局方改定でもかなり大変みたいです(詳細は知らない)




また薬局を売却した人(50代)の話を聞いてみると

・今後、診療報酬が上がる見込みがない

・在宅や地域連携で仕事量が圧倒的に増える

・今回のジェネリック医薬品の騒動

で売れるときに薬局を売った。これからは一般販売のみで生活する。
との話でした。

売却された薬局って一般の人には違いが分からないと思いますが、スタッフ含めそのまま売却されていることが多いようで、保険調剤に関しては見た目は今までと全然変わりません。
そもそも保険調剤が国のルールに従ってやらないといけませんので、素っ頓狂なことは出来ないシステムです。


言われたのが今後の調剤ビジョンで、診療報酬が上がる見込みがないという点にも直結しますが、

・国はスイッチOTC(一般販売薬化)を進めて、スイッチOTCになった商品は自費で買わせて保険が通らないようにしたい

という話を聞きました。
ホンマかウソかは分かりませんが、花粉症薬やヒアレインのスイッチOTC化を見ていると嘘とは言い切れない内容です。
田舎なので詳細は分かりませんが、都心部ではスイッチOTC化をしてそれなりに売れているとの話も聞きますし、
医療用医薬品の販売をメインにして生計が成り立っている薬局もあります。地域差が大きいと思いますが、医療用医薬品を自費でも良いから買いたいという価値観の人がそれなりに居ることを証明しています。

では薬局経営に関してスイッチOTC化の何が問題なのか?
消費者から見れば今まで病院に行って待たされて処方されていた薬がドラッグストアでも気軽に買えるんだから、利便性が上がってメリットしかないように感じる人も多いでしょう。

経営面から見てみると
・患者数が減る

利益が減る

という至極単純な理由で嫌がります。病院も診察料が取れなくなるので利益は減ることになりますね。

では何故国はスイッチOTCを進めているのか? という話になりますが、単純に医療費が高騰しまくっているからです。

2020年はコロナの影響で単純比較できないので排除しますが、医療費は

2019年 43.6兆円
2018年 43.4兆円
2017年 42.2兆円

と40兆円を超えています。ちなみに税収は

2019年 58.4兆円
2018年 60.4兆円
2017年 58.8兆円

いずれも税収に対して70%以上を占めています。
(いっぱい国債出してるので円は安定してますが、2021年1月(?)国の借金と言われる金額は1212兆円を超えてるそうです)


国としては医療費を下げたいので、スイッチOTCを進めて医療費を下げている と解釈出来ます。
ただ、このスイッチOTC、色々言われていまして、まだ確定では無いのですが
・スイッチOTCで売られている薬剤は保険から外れる
・診察に関しては保険が適応されるが、治療薬は自費で買うようになる
・保険適応時、ジェネリック薬との差額を払わないといけないようになる

と色々議論されています。ただ間違いなく言えるのは「今まで通り全部が保険適応で行けるとは思えない」ということ。

所得の低い人は先発品を選べずにジェネリック薬しか選べず、そのジェネリック薬も今回のように安定供給が見込めない可能性が出てきた。ということです。



次に市販薬がどうなるか ですが、「売れてる市販薬でも残るとは思わないこと」

これは先に書いた原料企業の影響を受けます。
医薬品の場合、使っている原料が仕入れ先変えただけでも申請が必要だと聞いており、申請費がアホほど高額だそうです。
具体的な金額は分からないのですが、採算が合わない商品が多いとのことで、
・そこそこ売れていても原料が手に入らなくなったから生産中止
は今後増えるかも知れません。(古い市販薬ほど濃厚)



また、同じ処方内容でも申請する度に効能効果が変わりますし、昔はOKでも今はNGな商品も多く、処方をいじれない商品の多くあります。
こういった商品が商品として販売を継続するには、
医薬品を諦めて健康食品として継続させる
しか方法がないとの話。
また、成分表記も法律によって規制があり、医薬品のときに書いていた名前が使えなくなり、別の名前に変わるそうです。

ただ、今まで安定供給していた原料の仕入れ先を変えるということは商品にとってもデメリットしかないので、今までと同じ原料が使われるでしょう。

つまり、名前は変わっても品質は変わらない。

ということです。
健康食品は今でも石玉混交の状態ですが、さらに差が開くということになります。

また、液体で測って飲む医薬品は4日分までしか認められず、一瓶で5日分以上になる医薬品は申請し直すときに健康食品になるでしょう。
薬用養命酒が20mlを測って飲むと16日分になるので、次に申請が必要であれば、医薬品から外れる。ということですね。
(´-`).。oO(現状、薬用でない養命酒もあるから、商品そのものが無くなる可能性も高いです)

健康食品扱いになったり、代理店の減少で今まで代理店を通して販売していた商品がメーカー直販するようになると考えられます。
そうなると、代理店が頑張って商品を売ろうとしなくなるので、結果的に商品の売上が下がり、商品そのものが無くなるでしょう。


以上の事象を踏まえて、今後薬局業界はどうなるか?という予測をしていくと、

患者から見た場合、保険薬局は現状維持。ただし内部は統合が進んでいく。

一般販売は大手企業の商品とスイッチOTC薬しか残らない。

保健薬扱いで売られていた商品の多くは生産中止になるか、大手企業の商品以外は健康食品扱いになる。
医薬品として残るのは治療薬のみになるかも知れません。


保健薬が健康食品扱いになるため、登録販売者を雇っていたドラッグストアが雇用を辞める可能性が出てきます。
直ちにこういった動きがあるとは思えませんが、10年後にはそうなっていてもおかしくないということです。

登録販売者の資格は形骸化するでしょうね。


商品を残したいのなら、「代理店」で「商品を買って」ください
オンラインや他の商品に浮気してたら、本当に良い商品は残らなくなるでしょう。

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