いらにか 2022/01/22 08:42

開発者はコードだけでなく、法や判例も読んでいる話

いらにかです。


今日は知ってもらいたい事があるので、少し真面目な話になります。


2022年1月20日(木)にCoinhive事件の最高裁判決が出ました。無罪です。
以下で判決の全文が読めます。


https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90869
※余裕があればぜひ一読してほしいです


第一審では無罪、二審の高裁で逆転有罪、そして今回の最高裁の三審では第一審の判決を支持する内容で無罪となりました。
判決の内容次第では、デモに近い意味も込めてみちくさびゅあーを数日閉鎖することも検討していたのでホッとしています。


今回の裁判では「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」という条文の違法性の境界線が司法によってどう判断されるのか注目でした。
最高裁の判決では「反意図性」と「プログラムの不正性」について明快に書かれていて非常にわかり易かったです。


<判決の全文から引用>
すなわち,反意図性は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
また,不正性は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。
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今回の判決で仮想通貨のマイニングプログラムが「社会的に許容し得ないプログラムではない」ことに触れられているのもとても良い結果でした。
WEBサイト(サービス)運営の収益は広告系のアフィリエイトに偏っていてコインハイブはそれを打開できる可能性を持ったサービスでした。
コインハイブ自体は既にサービスを終了してしまっていますが、模倣サービスが現れてより利用者と提供者がWin-Winなサイト運営の手段が増えたらと思います。


ちなみに僕の作るアプリは反意図性の部分でグレーゾーンになることが稀にあります。
ただそれはサプライズのように利用者を驚かせる目的で作られるので、事前に許諾を得たりは難しいなと思っています。
不正性についてはほぼ皆無です。
社会的に許容し得ないプログラムの解釈が今後変わらなければ……。
Analytics系のツールが今年は動きがありそうなので、ちゃんと動向を追って安心できるサイト運営を心がけたいと思います。


私の周りの人にCoinhive事件を認知してもらいたくて書きましたが、もし興味があれば「Winny事件」や「岡崎市立中央図書館事件」「Wizard Bible事件」「アラートループ事件」もぜひ調べてみてください。
あと事件ではないですが、キュレーションサイト(直リンク)問題の記事も面白いのでおすすめです。
https://www.derive-ip.com/2018/01/inline-link-and-copyright/


そして、最後になりますが個人開発者は稀に「違法か合法か分からない危険な夜道を歩かされている」ことを理解してほしいです。
臆病な開発者はソースコードだけでなく、法も読んでいるものなのです。

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