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脚本『願いの果実』第3章「アドリブ オン パレード」その3

脚本『願いの果実』第3章「アドリプ オン パレード」その3

邦洋(くにひろ 20男):【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):【配役】願いの木・老いた牛
浩太(こうた 20男):【配役】従者
香南(かな 19女):客として観ている。
斎藤(さいとうまじめ 20男):声のみ。アナウンス部員。
迷子(サトウアキラ 5男):声のみ。文化祭の途中、迷子になった。

 暗転中、ゆったりとした音楽が流れる。

 邦洋(若者)が現れる。

邦洋(若者)「物事には始まりがあります。功績をたたえられた科学者にも初心(うぶ)な幼少期があるように。救いようのない劣悪な犯罪者にも、笑顔を覚えた日があるように。これは始まりの物語。いったい何が始まるのか、しかと、その目で確かめてください」

 良平の顔照明がつく。

斎藤(ナレ)「むかしむかし、ある山の頂に果実を実らせる木がありました。その木は、願いの木とよばれ、その木の前で願い事をすると、必ず願いが叶うことで有名でした」

良平(木)「いやいや、何言うてまんの。冗談きついで。そういうのは、人間が作ったでまかせ。わしは、木。ただの木や」

斎藤(ナレ)「そう、木には何の力もありません」

良平(木)「ほれ、見い」

斎藤(ナレ)「しかし、なぜか、木の前で願いをすると、不思議と願い事が叶うのでした」

良平(木)「偶然、偶然やがな」

斎藤(ナレ)「はじめはそんな風に言っていた木も、だんだん調子に乗ってきました」

良平(木)「願いは1日1個までにしといてや。ま、願いがかなわんかったら、面倒くさいだけやけど。守らんかったら、災いがおこるで~」

斎藤(ナレ)「またまた。どんな災いが起こるんですか」

良平(木)「聞いて驚くな、1日に2個以上の願いを叶えようとしたら、わしは枯れてしまうんや。そういうことやし、よろしく」

斎藤(ナレ)「要するに、容量オーバーということですね」

良平(木)「いやいや、パソコンかいな」

斎藤(ナレ)「え。パソコン、知ってるんですか」

良平(木)「そら、知ってるがな。パソコンは有名やで」

斎藤(ナレ)「でも、この時代は、電気とか発明されてないですよね」

良平(木)「何、デンキって。その木、何の木、デンキってか」

斎藤(ナレ)「電気知らないのに、パソコン?」

良平(木)「ああ、パソコンって、略称やねん。パッと見、ソコソコ、ン~なやつ」

斎藤(ナレ)「それでパソコン?」

良平(木)「せやで。パッと見、ソコソコ、ン~なやつや」

斎藤(ナレ)「この時代では、略称にするほど、流行ってたんですね」

良平(木)「まあ、わしが、よう言われるだけやけど。それよか、今日もぎょうさん人が集まってんな」

斎藤(ナレ)「1日たった1つの願いをかなえるには、木に選ばれないといけないのです」

良平(木)「ま~わしが話したい人間を選んでるだけやけどな。せや。そこの、客席のあんた。そう、端っこの、あんたやあんた。ちょっとこっち来てや」

斎藤(ナレ)「選ばれしお客様、どうぞ舞台にお上がりください」

 香南が舞台に上がる。

良平(木)「よう見たら、えらいべっぴんさんやがな。お名前を教えてんか」

香南「はい、わたしは・・・」

迷子(声)「うわあああああああああああん」

 舞台に響く音声。香南、周りを見る。

斎藤(ナレ)「ちょっと迷子が」

迷子(声)「うわあああああ、うわあああああん」

香南「もしかして、アナウンス部のブースに迷子が入ってきたんじゃ」

良平(木)「どこかで虫が鳴いてるみたいやな」

香南「いや、迷子ですって、絶対」

良平(木)「今日は虫が、やかましいな!秋やからかなあ。で、お客さん、お名前は」

香南「あ、はい。わたし・・・」

迷子(声)「名前はアキラ!エグチアキラ、5才です!お母さ~~~~~~ん!」

斎藤(声)「泣かないで。お母さんは今、呼ぶから、ちょっと待ってね」

香南「あの、わたし、スイッチ切ってきましょうか」

良平(木)「あかんて!」

香南「でも、スイッチさえ切ったら」

良平(木)「スイッ・・・チョンは松虫や。待つ、無視やで」

香南「スイッチョンはウマオイですよ。これじゃ劇が成り立たないし、わたしが・・・」

良平(木)「あかん!ここは、むかしむかしや。いらん声が聞こえても、全部、虫・・・無視すんのや。ええか、願いを言え!」

香南「でも・・・あ、邦洋がケータイ持って出ていきました」

良平(木)「そっちはええから、願いを言うんや!」

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