脚本『願いの果実』第3章「アドリブ オン パレード」その2
脚本『願いの果実』第3章「アドリプ オン パレード」その2
邦洋(くにひろ 20男):演出・衣装 【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):大小道具・舞台監督【配役】願いの木・老いた牛
浩太(こうた 20男):脚本・演出助手・情報宣伝【配役】従者
香南(かな 19女):演劇部を退部したが・・・。
香南の小学生時代の学芸会。
クラゲに扮した香南が現れて踊る。
後ろで舞台が組まれていく。
香南「ぷるん、ぷるん、ぷるぷるん。ぷりん、ぷりん、ぷりぷりん。わたしはクラゲ、にじいろの、ゼリーのようなクラゲちゃん。あなたのハートにズッキュンぷるん。南国パイナツぷるぷるん。ミスコンじゃグランぷりぷりん。ぷりぷりプリティ、ポリポリポリズン、しりびれまでもしびれちゃえ!く~らくらくら、クラゲちゃん。ら~くらくらく道楽娘、あなたの頭はク~ラクラ、クラッシュ!」
香南、去る。
文化祭当日。
木に扮した良平が舞台に立っている。長者姿の邦洋がケータイで電話しながら現れる。
邦洋「クラッシュかぁ。壊れたものは仕方がない、密坂のパソコンを使わしてくれ。ああ、助かる」
良平「音響パソコン、やっぱりダメか」
邦洋「(良平にうなずきながら)BGMと効果音は音源のCDがあるから、ソフトだけインストールしてほしい。1回目の公演まであと20分だが間に合いそうか」
従者姿の浩太が大道具を運んでくる。
邦洋「いい、とにかく音響ブースは接続したらすぐに使えるようにしておく。そっちは、パソコンだけ頼む!」
通話を終える。
浩太「どうなった?」
邦洋「電脳研究部に音響パソコンを見てもらったが、完全に基盤がやられてるらしい」
良平「公演前に壊れるとか、運が悪いわ、パナマ運河」
浩太「冗談言ってる場合じゃない。公演中じゃなくてよかった」
良平「音響はどうやって流すんだ?」
邦洋「密坂が自分のノーパを持ってくるって、今、自宅に向かってる」
浩太「間に合いそうか」
邦洋「往復10分。ただ、ソフトのインストールに時間がかかると見て…あっ!」
浩太「どうした」
邦洋「アナウンス部の音声だけやばい」
浩太「ボイスレコーダーに残してないのか」
邦洋「そのボイスレコーダーが、知り合いからの借り物だ」
浩太「まさか返却したとか?」
邦洋「したとかだ。データが消されてないか確認する」
邦洋、ケータイでダイヤルしながら去る。
浩太「おれは音響席を整理して、受付に伝達に行く」
良平「悪いな。おれが動けなくて」
浩太「その格好だからな、あ、ちょうどいい。照明の仲安が来た。仲安、良平と照明のチェック頼む」
良平「おい仲安!フランクフルト食ってきただろ!分かるよ、口の周りにケチャップがついてるぜ!外で洗ってこい」
浩太「いや、待て。出るな、仲安。そろそろ客が来るころだ。血のりと間違われたら、誤解を生むから」
良平「たしかに、ゾンビが出てきたと思われかねん」
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