わたわた 2020/09/06 18:00

脚本『願いの果実』第1章「読み合わせ」その2

脚本『願いの果実』第1章 読み合わせ その2

邦洋:村人A、長者、若者
良平:願いの木、老いた牛、赤ん坊
浩太:村人B、従者、ナレーター
香南:突然部室に迷い込む謎の女子

浩太「(ナレ)しばらくして、長者が従者を連れて現れました」

邦洋「(長者)先ほどの男はおらぬようでありんすな」

浩太「(従者)人っ子一人いませんね。その男がどうかしたのですか」

邦洋「(長者)もし出くわした場合はわれに話を合わせるでありんす」

浩太「(従者)またまた先鋭部隊がいるだの、大きな虎を飼っているだの大ホラ吹いてないでしょうね」

邦洋「(長者)あー、この辺りが、願いの木が崩れたところでありんす」

浩太「(従者)はぁ。小さな木が生えているだけで、何もありませんが」

邦洋「(長者)見るでありんす。木の根元が、黒い灰で埋め尽くされているでありんすよ」

浩太「(従者)確かに、不自然な灰ですね。まるで、この木があとから、生えたような」

邦洋「(長者)すると、これが新しい願いの木ということでありんすか」

浩太「(従者)そうかもしれませんね」

邦洋「(長者)掘るでありんす」

浩太「(従者)え、掘ると申しますと」

邦洋「(長者)この木は先ほどよりも小さい。掘って、わが屋敷に持ち帰るでありんす」

浩太「(従者)なるほど、屋敷の庭に植えておけば」

邦洋「(長者)毎日、願いが叶い放題でありんす」

浩太「(従者)早速、掘って持ち帰る準備をしましょう」

邦洋「(長者)願いの思いつかない日は、他人の願いを1回10両でかなえてやることにするでありんす。いや、50両、100両でも安いでありんすね」

浩太「(従者)さすが欲深……いえ、聡明な長者様。あれ、こんなところに、小さな実ができています」

邦洋「(長者)実?どれどれ。まことでありんすね」

浩太「(従者)実がついたまま運びますか」

邦洋「(長者)実が熟れれば種ができるでありんす。種を植えれば、木は2倍。願いも2倍、富も2倍。これはなかなか楽しみでありんすね。ほっほっほ!」

浩太「(ナレ)木の根は浅く、すぐに掘り起こすことができました。長者と従者は、木を運び、牛がひいてきた荷車に乗せました」

浩太「(従者)長者様、この実、大きくなっていませんか」

邦洋「(長者)み、見間違いでありんす」

浩太「(ナレ)実だけに?(従者)長者様。重さもずっしりと重くなっています」

邦洋「(長者)き、気のせいでありんす」

浩太「(ナレ)木だけに?(従者)長者様、もしや災いでは……」

邦洋「(長者)後ろ髪をひかれている場合ではないでありんすよ」

浩太「(ナレ)牛だけに?」

良平「(牛)ンモ~!!」

邦洋「(長者)ささ、屋敷に帰るでありんすよ」

良平「(牛)ンモ~!!」

浩太「(ナレ)牛は、ゆっくりと屋敷に向かって歩き始めました。ところが、初めはこぶし大だった実は、みるみる大きくなっていき、橋にさしかかるころには、西瓜よりも大きくなっていたのです」

良平「(牛)ンモ~!!」

浩太「(従者)長者様、この実は、やはり成長しています」

邦洋「(長者)まいったでありんす。実が大きくなりすぎる前に、早く屋敷に着くでありんす」

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