わたわた 2020/09/05 22:59

脚本『願いの果実』第1章「読み合わせ」その1

脚本『願いの果実』第1章 読み合わせ

邦洋:村人A、長者、若者
良平:願いの木、老いた牛、赤ん坊
浩太:村人B、従者、ナレーター

 読み合わせを始める3人。

浩太「(ナレ)むかしむかし、ある山の頂に果実を実らせる木がありました。その木は、願いの木とよばれ、その木の前で願い事をすると、必ず願いが叶うことで有名でした」

良平「(木)何でも言うてな。ちゃんと叶えたるさかい。(良平)……なぜに関西弁」

浩太「(ナレ)ところが、この木には、ある掟がありました」

良平「(木)ただし、願いは1日1個までや。守らんかったら、災いがおこるで~」

浩太「(ナレ)どんな災いが起こるんですか」

良平「(木)聞いて驚くな……(良平)って、ナレーターと会話できる感じ?」

邦洋「まあ、演出的にはアリかな。そうでもないと、勝手に独り言しゃべる変な木だ」

良平「成程、至極、理解した。(木)聞いて驚くな、1日に2個以上の願いを叶えようとしたら、わしは枯れてしまうんや」

浩太「(ナレ)要するに、容量オーバーということですね」

良平「(木)低スペックのパソコンみたいに言うな。まあ、そうならんようにわしが、1個目の願いを聞いた後は、眠りに入るようにしてる。そうすれば、2個目の願いは聞かんでもすむからな」

浩太「(ナレ)要するに、ネットワークを遮断するんですね」

良平「(願いの木)圏外設定したスマホみたいに言うな。(良平)……これ、昔話だよな。ICT機器が話題にのぼるのどうだ?」

邦洋「ナレーターが現代人ということを考えると、昔と現代とをつなぐ、時間を超越した会話だ。願いの木が普段から現代の情報を仕入れることができても、何ら問題はない」

良平「成程、至極、理解した。というか、配役的に一番セリフの無さそうなおれが、一番セリフがあるな」

邦洋「この調子だと、老いた牛も赤ん坊も、結構話せる輩だぞ」

浩太「それは進んだ先のお楽しみということで」

良平「オーライ」

浩太「(ナレ)願いは1日に1個だけしか聞いてもらえません。なので、願いの木には、行列ができました。自分の番がくるまで、何日も何週間も、下手をすれば何か月も並ばないといけないので、家族が食糧を届けに来たり、交代で厠に行ったりしました」

良平「史上最強人気のアトラクション待ちだな」

浩太「(ナレ)夜が明けようとしているころ、ある夫婦が願いの木の前に立ちました」

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