Huyumi 2021/09/02 19:21

考えるゲームについて考える

・はじめ

Q.考えるゲームって楽しい?
A.楽しい!
Q.考え過ぎるゲームは?
A.苦しい!

 「最果てを目指す」や「ブレイカーハーツ」はかなり考えるゲームだった。
 最果てを作り始めた時は、確かに考えるゲームが好きだった。
 けれど、ブレハを作り終える頃合いには「考えるゲーム」は好きだったはずなのに、気づいたら胸を張ってそう言える物では無くなっていた。
 作る側に立って、見えない物が見えるようになった。
 たぶん、昔のわたしは死んでしまったのだ。

 というのを、うっすらとは感じていたが、しっかりと向き合う必要が出たタイミングは「紙境英雄 Papercraft」をプレイしていた時だった。
 デッキ構築型ゲームの一つで、SRPGチックなキャラクター管理が特徴。


・作品と向き合う

紙境英雄 Papercraft

 デッキ構築型。
 敵味方の複数キャラクターを管理する必要があり、マスによる間合い、位置関係も重要で、とにかく管理するオブジェクトが多い。
 マップ移動も最低限する必要があり、システム上1戦闘が長くなりがちでプレイ、リプレイコストが重い。

 皮こそSRPGっぽいが、直感的に敵味方の状態を把握するシステムとしては独特かつ、優秀で、ペーパーマリオのようなペラペラしたイラストを、カジュアルな(萌え)イラストに仕上げているのは確かな魅力。

 イージーの1ステージ目ボスをそこまでリトライせずにクリアするまでは楽しめるが、それ以上は徒労感の方が強い。
 というのが個人的の総評。



 作品の特徴と長所、自身が短所に感じる箇所を出せている気がする。
 「考えるゲーム」という命題において、デッキ構築型のゲームにジャンルを絞るのは良さそうだ。
 別のタイトルも考えてみよう。



Chrono Ark

 デッキ構築型で、複数キャラ、そして「紙境英雄 Papercraft」のマップ操作から思い出すのはこの作品。

 通常のRPGをカード化し、簡易的にしながらバトルに集中出来るよう加工されたデッキ構築型というジャンルで、敢えてプレイヤー側を複数名に戻し、カードから消費型スキル辺りに山札と手札を逆行させ、独特のプレイ感覚に仕上げている秀作。

 プレイしていて苦しいかと問われれば苦しい。
 敵が複数名居るだけで頭を悩ませるのに、操作キャラが多くてより大変だ。
 じゃあプレイ出来ないかと問われれば、プレイできる。
 長時間は無理だが、半日程度なら十分動ける。
 「苦しい」は多いが「楽しい」も十分満ちている。

 まずイラストがいい。日本のサブカル系、見ていて楽しい。
 戦闘エフェクトも凝っている。プレイヤーの行動は動と静により、とても気持ちいい。カメラも上手く動かしている。
 他の演出もお洒落だったり、ニヤリとする物が多く、また見たいと思える。
 (何度も絶賛するが)回復ゲージ保護も素晴らしい。
 一度受けた攻撃は緑ゲージが残り、他のダメージを受けない限りこのゲージはデメリット無しで回復出来るし、 なんなら緑ゲージがある限りHPが0を下回っても生きている。
 マビノギのデッドリー、格ゲーの赤ゲージ、MOTHER2のドラムロール。類似するシステムこそ、そこそこあるがこれらを調和させ、ストレスや喪失感を少なく、ターン制のRPGで緊張感を保ち、上手く管理した時の大きなアドバンテージの発生は脳汁がドバドバ出る。
 各作品からそのまま受け継いだらダメなところはしっかり回避し、この作品に相応しい独自性を見つけているのは本当に素晴らしい。
 ツモ運に喜び、ダメだった時でも細かなタイミングでの実績の解放により、ゲームオーバーがそこまで悲観するものでは無いことも、開始時の導入として優秀。

 簡単なマップ移動は個人的にはだるい。やはり戦闘に集中させて欲しい、特にデッキ構築型ならば尚更。
 ただゲームでのマップ移動が大嫌いと言っても過言ではないわたしが、プレイできる範疇に収まっているということは大部分のプレイヤーにとってはデメリットは無いに等しいか、メリットが生まれるシステムに思える。

 総評としては、見えている先がはっきりとしており、まとめ方が綺麗。
 本作に必要な物を選べている辺り、先駆者の解体もしっかり行われているのだろう。



 グラフィックの影響はモチベーション維持や、情報の整理に役立ちそうだ。
 また、デッキ構築型はこうあるべきという先入観がちらつく。その原形となった物と向き合おう。



Slay the Spire

 デッキ構築型の始祖……いや、別に始祖では無いのだが、大体このゲームが流行ったからデッキ構築型が流行ってる。実質始祖。

 改めて振り返るとデッキ構築型の基本が揃っている……ように見えて、割と独自要素が多い。
 PCは一人だが、敵は複数だし、管理するオブジェクトは結構多い。
 ただそれでも考えることはあまり大変ではないと感じた。

 まずはイラストで簡略化されていることが多い。テキストによる説明は最小限で、割となんとなくで処理し切れる範疇に収めている。
 1ターン毎に手札を捨てることもメリットだと感じた。残るタイプだと、残る手札を意識しなければならない。
 次のターンは次のターンに考えることがベストだろう。デッキの中身まで意識してターン終了を押せば、少しだけ強くなれる。
 考えなくてもなんとかなる、でも考えるともうちょっと楽しく、強くなれる。そんな典型だ、この形はあらゆるゲームにおいてとても理想的に感じる。

 マップ移動もとてもシンプルだ。戦闘に集中でき、マス目の効果もわかりやすい物ばかり。
 カードの取得など、求められる意思決定も最小限で、三つの内どれがいいか、リスクを取るか取らないか、何種類か存在する内の一つだけ選べる――など、選択肢の数は少ない方がプレイ感は楽になる。実際は、現状だと論外な選択肢も多く、考える必要の無いことも多い。
 ただそれでも、全てがお膳立てされたレールプレイングではない。運によって毎度プレイ感は異なり、少しでもよく進行出来るように戦闘やイベントでロスを減らすように自分で選んでいる。意思決定が確かにここにある。

 増えてくるレリックにはデメリットはまるで無く、自ら選び取った時ぐらいにしか向き合う必要は無い。大概忘れてもメリットしか産まない。覚えていて、コントロールし切れるとそれだけアドバンテージに繋がる。
 デッキも概ね肥大化するが、コストやドローソースも増やし切れる。
 効果もシンプルにまとめられているので、なんとなく覚えていたら、なんとなく使ったり使わなかったりで毎ターンを凌げる。
 振り返ってみるとわかる。ユーザビリティがあまりにも優秀だ。操作性や導線どころか、普段意識しない箇所まで。そりゃ売れる。



 何故名誉始祖が始祖足り得るかがわかった。
 デッキ構築型の特徴、用意すべき導線はどこにあるかがわかった。
 ただデッキ構築型は万能では無いだろう(この世に万能は存在しないが)
 逆にデッキ構築型で、明確に取るべきではない指針などはあるのか。
 (個人的)反面教師となる作品の分析も行おう。



Library Of Ruina

 何度か大幅なリメイクが来ているようだが、新しい物を触った物だけ。
 「Lobotomy Corporation」の次回作なのだが、前作が運営型シミュレーションで頭を使ったり、アクションとして運動神経を使ったりしながら、仄暗い世界観やストーリーに浸っていた所を、ノベルパートを強くし、戦闘部分をデッキ構築型に頼った本作。

 まず期待とは違った物だったという理不尽な所感を前提に置く。
 シミュレーションや、未知に対する対応を試行錯誤するプレイ感覚が楽しかったのだが、今回は別ベクトルに仕上がっている。
 それでいてシナリオや世界観は次回作なのだから、比較するなと言われても体が強い拒絶反応を示す。

 戦闘に関しては細かな数値や、乱数を交えた計算。
 あとは属性相関図も存在し、書いている追加効果自体は少ないのだが、そもそも一つに対して把握し扱う要素が多過ぎる。
 ロストや初めからは無くリプレイコスト自体は安いのだが、戦闘が楽しいかと問われれば作業感が強く、それでいてシナリオを求めるには戦闘と反復横跳びする必要がありコレジャナイ感。
 「Lobotomy Corporation」を意識すればいいのか、デッキ構築型を意識すればいいのかわたしの感情は迷子。
 シナリオ進行に応じてデッキに入れて抜けるカードが自由なので、たぶん厳密なデッキ構築型ではないので、わたしの認識が間違っている。

 方向性と着地点、そしてそこに至るまでの道を確かな物にしたら面白く――というかわたし好みになるのだろう。



 私情を抜いた問題点は以下の通り。
 重要な情報を数値や文字で取り扱いがち。結果画面内にオブジェクトが多くなり、把握にコストが掛かる。
 HPにゲージがあるように、直感的にわかる作りが好ましいと感じた。

 リプレイ性が存在しないため、敵を確認してからデッキと手札を構築する必要がある(ブレハと同じデザイン)
 これは今回のプレイでブレイクスルーが行えるか否か、プレイングや戦闘中のツモで今までのツモ運を挽回出来るのか――という命題とはそもそもコンセプトが異なる。
 またこのコンセプトの場合、デッキ構築型という皮、付け外し可能なスキル群を入れ替えるというのは操作コストが掛かり、ある程度育成したキャラにいい感じの装備をセットし、取得しているスキルから答えを見つけ出す……というオーソドックスなRPGと比較すると操作が大変になる。

 この問題にはデッキ構築型でリプレイ性を求めることが主流、という現状が向かい風になっている(新しいことを出来るようになるコスト)
 のだが、そもそもデッキ構築型でこのようなデザインが少ないのは、操作コストが肥大化し易い点と、突破出来るユーザー層を狭めがち、という点から先駆者が避けて来た可能性を感じる。



・ファントムローズ

 ゴシックな萌えイラスト主人公が特徴的なデッキ構築型。
 こっちも反面教師枠、何度が大幅なリメイク来てるが最新の物を。

 一対一のシンプルな物だが、行動の仕方がシンプルではない。
 一ターンに五回動く攻防に関して、初めにバーッと全部決める必要がある。
 ステータス自体も割と複雑で、頭がぐちゃぐちゃになってしまう。

 またカードの扱いも特殊で、一度使ったら無くなってしまう。
 これは厳しい。基本となる戦略を組むことが出来ない。出し惜しんでも進めないので、進行状況に応じて不要なツモを排除し、生まれたリソースで必要な手札を生成して前に進むしかないのだが、直接ツモるよりロスでしかなく、如何にアドを埋めるかではなく、如何にロスを(運で)減らせるかがプレイングの要となってしまう。

 幸福を増やすのではなく、不幸を削ると言うのは人生においてベストな解答の一つかもしれないが、ゲームのプレイ感としてはいまいちな所。
 良いツモ運を生かしてゴールを目指すはずのローグライトにもかかわらず、良いツモを摩耗させながらスキップしながら進む道程は虚しい。



 こちらは情報処理やプレイ感による負荷が高過ぎると感じたのが、反面教師に感じる主な原因だろうか。
 「Slay the Spire」がリソースが増えるにつれてデッキが厚くなる程度のデメリットしか無いのに対して、真逆の方向性を向いている。
 考えるコストを減らすために、そもそも考える材料を増やそうとしないというのは、一見良いアイデアに思えるが、一度考え覚えたことを捨てることはそれ以上に苦しい、のだろうか。
 オーソドックスなRPGにおいて、アイテムは回数制限のPT共有スキルという役割になる。
 ただここから通常スキルにPTメンバーを排除し、失敗したら最初から、と先の見えない仕様で、リトライコストだけ常にちらつくプレイ感が個人的にはダメだっただけだろうか。

 また他にもsteamやフリゲなどで第二波、第三波とデッキ構築型ゲームが出てきているが、その辺りにはノータッチで。必要な物は既に出切っている。




・まとめ

 さて、デッキ構築型を一通り挙げたが、別に本記事は「デッキ構築型を作る」などを題材にはしていない。
 あくまで考えるゲームについて考えるという禅問答じみた思考をまとめるための物だ。

「考えるゲームって楽しい? 楽しい!」「考え過ぎるゲームは? 苦しい!」

 この軸はブレていない気がする。
 そしてデッキ構築型と見つめ合い、幾つかキーワードを手に入れた。





・思考コストを軽く
 なるべく情報量を減らしたり、考える要点を絞る必要はあるが、他はHPにゲージ。これがわかりやすい。
 数値を計算するより、大体の減り方を調整するビジュアル面での感覚的な思考が楽。


・考えることに報酬を
 考えないと負ける、最低限考えると勝てる、より考えると気持ち良く勝てる――そんな塩梅。
 実際ローグライトだとどれだけ考えても運が悪ければ負けてしまうが、ボス戦までの数戦をしっかり考えて前に進むと、余るリソースでボス戦はより楽に、勝率を高く挑めるように設計されている。
 より掘り下げると、考えなくても運が良ければ勝てるので、考えないプレイスタイルや人間性の尊重、ターゲット層を広く持つ許容力も重要……なんだけど閑話休題。


・意思決定しているつもり
 実質他に選択肢の無い択を選ばせると、自分で最適解を選んだつもりになって楽しい!
 ……ここで重要なのは、この論外の選択を今までのプレイで学ばせる導線なのですが。
 頭で意識的に処理せずに、無意識化で処理できるほどに仕様を馴染ませる、というのは新しいゲームデザインにおいて結構大変。


・出来る事を増やす
 プレイヤーのリソースを増やそう!
 相対的に考える必要の無い要素が生まれると、どれだけ増やしても思考コストが増えにくく、かつ新しく出来ることが増えた時には快感を与えられる。
 メラミを覚えたらメラは基本使わないし、ケアルラを覚えたらケアルはスキル欄から消せると楽。



・おわり

 また、これとは別で「考えなさ過ぎるゲームは面白いのか」という問題も常に頭のどこかにある。
 ガチャって出て来た強キャラを並べるRPG、推理も考察も不要で、ただクリックするだけのノベルゲーム。
 わたしにとって「考えないコンテンツ」はやはり面白くない。
 ただ日常物やテンプレチート物の安心感や、コンテンツで疲れたくない層や、わたし自身の中の割合は確かに存在していることは事実で「自分が思っているより考えずともなんとかなる」ゲームはターゲット層を広げると言えるはず。

 という感じで思考がまとまったところで、ビジュアル面で立ち位置を理解出来たり、ステータス異常は基本アイコンで表示するかーと次回作の開発を進めました(このテキストの基本は結構昔に書いて放置してた)
 目指せ考えると面白い、考えなくてもなんとかなるゲーム!

 たぶん結構面白いシステムになると思うのだけれど、その自信はどれほど合っているのか。
 好みの範疇外に当たる自覚していない作品の苦言は今までほぼ貰ったことないので、そんなに客観視がズレているわけではないと思っているのですがさてはて。


Q.ふゆみ普段からこんなこと考えてゲームしてるの?
A.うん!

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