800字小説書いてみた(宝石ドール~柘榴石~)
800字前後を目安に小説書いてみました。
宝石ドール~柘榴石~より、アメジストとガーネットのバレンタインでのお話
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机の上に並べられたチョコを見て、幼馴染みたいな同居人、ガーネットは言った。
「これがアメジストの今年の戦利品か。年々凝ってるな」
「変な言い方やめてください。彼女たちに失礼ですよ」
僕……アメジストが貰ってきたの大量のチョコを2人で食べる。
いつからかこれがバレンタインの恒例行事になっていた。
もちろん、そんなことはチョコをくれた彼女たちには内緒。
心配しなくても大半は義理チョコ。もしくは友チョコかもしれない。
ガーネットの名誉のために言っておくと、別に彼がチョコを1つも貰えないほどモテないわけではない。学校に行かない不良生徒だから、機会がないだけだ。
「ガーネット、次どっち開けます?」
「まだデカイのが3箱も残ってるのか……」
「イヤなら無理に付き合ってくれなくてもいいんですよ」
「イヤとは言ってないだろ、赤い方」
ガーネットが丁寧に付けられたリボンをひっぺがえし、箱を開ける。
そのまま中のチョコを掴むと思ったが、その手が止まった。
「これは……お前宛だな」
「全部僕宛ですよ」
「そうじゃねぇよ」
ガーネットが先ほどの赤い箱をこちらに差し出す。
箱の中にあったのは、手作りのハート型のチョコ。
メッセージカードが本気度を物語っていた。
「僕は……その気持ちを受け取れません。ガーネットが食べてください」
うまくかわしているつもりだが、数年に1度混ざってくる本命チョコ。
「受け取れないのに、食べることなんて出来ません。それは不誠実です」
僕たちは見た目こそ人間とそっくりだが、実は人形。
人形には味覚がない、そして……人間と同じ時は歩めない。
「……こっちの方が不誠実だと思うけどな」
それでも捨ててしまうよりはマシと思ったのだろう。
ガーネットが僕に恨むなよとでも言いたげに、本命チョコをバリバリと平らげた。
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「心配しなくても、ちゃんと全員にホワイトデー返しますよ」
「そうやって何人の女を泣かせてきたんだろうな」
「人聞きの悪い事言わないでください。それで……どれが一番美味しかったですか?」
「分からねぇよ」
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