「月の監視人」〜4月の短編ファンタジー
1
私たちはこの日常が普通だと思っているけれど、それがいきなり覆されることがある。
まるで突然、不思議の国のアリスの世界に迷いこんでしまったかのように。
秋野唯は独身だということをのぞけば、38歳までまあまあ普通に生きてきた。
4年大学を卒業してそこそこの会社に就職。東京のマンションに1人暮らし。お金には困っていない。
20代後半で1年間恋人と同棲して、あまり結婚が向かないなと実感した。
そのせいもあり、結婚に焦りはない。このまま1人で生きていくのも悪くないと、気ままな独身生活を楽しんでいた。
そんな4月の下旬、もうすぐゴールデンウイークという時。
夜ネットビデオを観てくつろいでいると、いきなりスマホで警報が鳴った。
何だろうと見ると、
【緊急放送】とあり、動画が始まった。
そこには、月が大きく映っていた。
そして、男性とも女性ともとれるような機械的な音声が流れた。
「緊急放送です。
地球の皆さん、私たちは月の監視人です。
私たちはこれまで2000年以上、月から地球を監視してあなたたち地球人を密かに保護してきました。
今あなたたちは、コロナが蔓延し困っています。
そこで私たちは、表に出てあなたたちを保護することに決めました。
あなたたち地球人は、私たち月の監視人に従ってください。
明日の朝までに、頭部マスクがあなたたちの郵便受けに入っています。
明日の朝から、外出する時には必ずこの頭部マスクをつけるようにしてください。
私たち月の監視人の指示に従わないものは、月の監視人によって収監されます。例外はありません。
各国の政府は、これを了承しています。
以上、緊急放送を終わります。」
は?!
何のじょうだんだろうと唯は思った。
誰かのいたずら?
スマホを乗っ取られた?
ツイッターを見ると、とまどった人たちのツイートであふれていた。
政治評論家も政治家も同じだった。
官邸、大臣、総理大臣のアカウントでは、緊急放送が流れていた。
え? 何? どういうこと?
あわててテレビをつけると、テレビでも緊急放送をやっていた。
どのチャンネルも同じで、短い緊急放送を繰り返している。
試しに警察の生活課に電話してみてもつながらなかった。
友達にラインしてみても、やはり同じようにとまどっていた。
まったく何が何だかわからない。
ただ「わからない」を言い合うしかできなかった。
朝早く郵便受けに行くと、12、3人が同じように郵便受けを確かめていた。
普段はお互いに挨拶しかしないが、まるで友達のようにこの事態についてみんなで話し合っていた。
「頭部マスクってこれ?
これをかぶれって?」
みんなで広げていたそれは、首までのゴムマスクだった。
目だけが開いていて、髪の毛もついている。
中年女性の1人がそれを被った。
マスクの顔は、男性とも女性ともとれる中性的な整った顔立ちだった。
髪は長めのショート。
「これでどうやってご飯食べるのかしら」
ゴムマスク越しなのに、どういう仕組みなのか声は普通に聞こえた。
息も苦しくなさそうだ。
隣にいた30代男性が、説明書を見ながら言う。
「昼の外食は、流動食をマスクの下からストローを入れて飲めって書いてありますね。
昼食は、会社などで配られるようです。
朝、夜は自宅で食べるようにとあります」
他の人たちが口々に言う。
「従わないものは収監ってどういうことかしら?」
「逮捕されて刑務所に入れられるって言うこと?」
「急にこんなのありえない」
皆、ただとまどうしかなかった。
こんなことが突然始まるなんて、誰も想像したことがなかった。
それでも収監されると言われれば、言うことを聞くしかない。
唯は朝食を食べて支度をすると、頭部マスクと言われるゴムマスクをかぶって家を出た。
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