「クリスマスプレゼント」~12月の短編ファンタジー

 




           


 今日はクリスマスイブ。
 予約しておいたケーキを取りに、亜由美は会社帰りの電車から途中下車した。

 街はクリスマスの飾りであふれ、クリスマスソングがあちこちから聞こえてくる。
 歩いている人たちも、華やかな服装で笑顔が多い。

 近くのケーキ屋で買ってもいいのだけれど、予約したケーキ屋のケーキを子ども達が気に入っていた。
 小3と小6だから、クリスマスイブをまだ家族で過ごす。


 個人店のケーキ屋は、白と水色の雪のイルミネーションで品よく飾られていた。
 カランカラン
 中に入ると、何人かがケーキを受け取りにきていた。

 この店は、亜由美が大学生の頃から愛用している。
 マーガリンを一切使わず、ひかえめな甘さとふわふわの生地とふわふわのクリーム。

 このケーキを一度食べたら、他のケーキの生地もクリームも硬く感じられてしまう。
 物心ついた時からこのケーキを食べている亜由美の子どもたちも、このケーキのとりこだ。


 順番が来てケーキを受け取っていると、
「瀬崎です、予約のケーキをお願いします」
 なつかしい声がした。

 え? 瀬崎?
 思わず横を見ると、そこには瀬崎裕樹がいた。
 大学以来会っていないけれど、その横顔は裕樹のものだった。
 はっきりした目、鼻、口もと、まちがいない。

 みつめていると、裕樹がこちらを見た。
 驚いた顔になる。
「え? 亜由美?」
 時間が止まったような気がした。

 店内には、大学生時代に流行ったクリスマスソングが流れていた。



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