シャルねる 2023/12/29 09:02

14話:悲しい顔をして欲しくない

「ま、マスター、お、おはようございます……」

 私が目を覚ますと、私の腕の中でセナが顔を赤らめながらそう言ってきた。

「うん。おはよう」

 まぁ、何となく理由は分かるし、私は触れないでおこう。
 触れられたくないかもだし。

 そう思った私は、セナに挨拶を返してから、ベッドから降りる為に抱きしめてるセナから離れた。

「あっ……」

 すると、セナは悲しそうな声を上げた。

「どうしたの?」
「な、なんでもないです」

 セナの言葉を聞いた私は、セナの顔を覗き込んだ。
 
「なんでもないなら、そんな悲しそうな顔しないでしょ」
「ほ、ほんとになんでもないんです」
「正直に言わないと、怒るからね?」

 セナに悲しい顔をしてほしくない私は、話してくれるようにそう言った。

「う……ま、マスターにもう少しだけ抱きしめてて欲しかったんです。……ごめんなさい」

 セナは更に顔を赤くしながら、申し訳なさそうにそう言った。

「なんで謝るの?」
「……だ、だって、そんな事で、マスターを心配させてしまったので」

 私は意味のわからないことを言うセナを抱きしめた。

「ま、マスター!?」
「これでいい?」
「は、はい」

 セナも私の腰に手を回して、抱きついてきた。
 私はそんなセナが可愛くて、思わず頭を撫でた。

「ま、マスター……」

 すると、セナはそう呟きながら、私を抱きしめる力を少しだけ強くした。
 もちろん私が痛くない程度に。
 痛くはないんだけど、その影響で私の胸が更にセナの体に押しつぶされる。
 セナは嫌じゃないかと思って、私はセナの顔を見たけど、幸せそうな顔をしていた。
 その顔を見たら、無意識のうちに私もセナを抱きしめる力を強くしていた。





 そうしている内に、しばらく時間が経った。
 そろそろお腹も空いてきたし、私はセナの頭を撫でるのをやめて、抱きしめるのもやめた。
 今度はセナも満足したのか、悲しそうな声を上げることも、悲しそうな顔をすることもなかった。

「お腹空いてきたから、どこかに朝食を食べに行こう。……朝食を食べたら、この街を出よっか」
「はい!」

 セナが嬉しそうな顔で返事をするのを見た私は、部屋を出ようとしたところで、セナはお腹すいてないのかが気になって、聞いた。

「はい! 私は一度血を飲めば5日は大丈夫ですよ!」
「……そうなんだ。……じゃあ、なんで昨日は私の血を飲んだの?」
「あ、そ、それは……」
「あ、別に嫌なわけじゃないから、セナが飲みたい時に飲んでくれたらいいよ!」

 セナの様子を見て、私は慌ててそう言った。
 ほんとに嫌なわけじゃないしね。……ただ、血を飲む度に昨日みたいになるんだとしたら、なるべく夜に飲んで欲しい気持ちはある。

「は、はい! だ、だったら、今日の夜も飲んでいいですか?」
「うん。もちろんいいよ」

 私がそう言うと、セナは嬉しそうに微笑んだ。
 それを見た私は、セナを連れて部屋を出た。

「昨日のお店でいいよね」
「はい! 私はどこでも大丈夫です!」

 まぁ、そうだよね。セナは食べないわけだし。
 ……また怪訝そうな目で見られるんだろうなぁ。……まぁ、仕方ないか。それを嫌がってセナと別れて食べるなんてありえないし。

 朝だし、あんまり人がいないといいなぁ……
 そう思いながら、セナと一緒に昨日のお店に向かった。

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