27話:セナが言ってたことでしょ?
「ます、たぁ、ごめ、んなさい……こ、殺し、ちゃい、ました。偉い、人を……ご、ごめっん、なさい……ますたぁに迷惑を、かけちゃい、ます。……み、身分、証使えなくなるかも、知れません……」
「…………取り敢えず、出てきてくれない? 私が中に行けたら一番いいんだけど、そういうのを見るのは、私にはきつそうだからさ」
私が扉の方を見ないようにしてからそう言うと、扉が開く音がして、直ぐに扉を閉じる音がした。
私が振り向くと、セナが目を腫らして、涙を零していた。
「ま、すたぁ、ご、めん、なさい……わ、たしの、せいで……身分、証、使えっ、なくなるかも、しれませ、ん……」
そしてそのまま、さらに涙を流しながら顔をぐちゃぐちゃにして、そう言ってきた。
セナの言葉を聞く限り、多分だけどギルドマスターを殺しちゃったんだよね……
と言うことは、ギルドにも追われるようになって、身分証を使えなくされる……と。だから、セナはこんなに必死に謝ってきてるって事だよね。
「セナ、私さ、今安心してるんだよ?」
私は安心してくれるようにセナを抱きしめながら、優しくそう言った。
「あ、安、心……です、か?」
「うん。だって、大っきい音がして、セナに何かあったんじゃないかと、心配だったんだよ」
いくら強いとはいえ、万が一の事が無いとは言いきれないから。
私がそう言うと、セナはさらに顔をぐちゃぐちゃにして、泣き出してしまった。
「ご、ご、ごめ、んな、さい。せ、せっかく、ま、ます、たぁが心、配してくれたのに、そ、その、気持ちを、だ、台無しに、してしまい、ました……」
嗚咽で上手く喋れてないセナの頭を撫でながら、私は言う。
「まぁ、ギルドに追われるかもしれないし、身分証が使えなくなっちゃうのは不便だし、嫌だよ?」
そこまで言うと、セナがまた泣き出しそうになってしまったから、私は慌てて言葉を続けた。
「でもさ、セナが居てくれるでしょ? 私はセナが居てくれればそれでいいからさ。最初に会った時、セナ言ってたじゃん。私が居れば充分、みたいなこと。その時は正直不安だったけど、今はセナ以外には何かが欲しいなんて思わないよ」
「ま、ます、たぁ……」
私の言葉を聞いたセナは、今度は嬉しそうにしながら泣いている。
こんなセナを見て思う。
どうせギルドマスターが余計なことを言ったから、こうなったんだろうな、と。
「セナ、大丈夫だから。もう泣かないで」
セナの頭を撫でながら、私はそう言った。
正直、今の状態のセナの顔も全然可愛いけど、やっぱり泣いてない方が可愛いし、セナには笑顔でいて欲しいから。