シャルねる 2023/12/23 08:05

9話:種族なんてどうでもいい

「私は吸血鬼ですよ?」
「え?」

 セナは当たり前の事のように、自然とそう言った。

「冗談じゃなくて?」
「はい」

 ……セナが吸血鬼? ……あの物語とかで出てくる、あの吸血鬼? ……本人の口から言われても、全然信じられないんだけど。
 そもそも、日光の下を普通に歩いてるし。

「それがほんとだとしたら、なんで日光の下を歩けてるの?」
「私はマスターに作られた存在ですから、始祖のようなものだからですよ」

 ……全然意味がわからない。
 なんで私が作った存在だと始祖になるの?

「……もしかして、マスターは私が吸血鬼だと、嫌……ですか?」

 私が微妙な反応をしたからか、セナが悲しそうに、そう聞いてきた。
 そんなセナの様子を見て、私は慌てて答える。

「ううん。嫌じゃないよ」
「ほんとですか?」
「うん。ほんとだよ」

 だって、セナの種族がなんだろうと、セナはセナだもんね。
 それに、人間なんかより、よっぽど吸血鬼の方がいいよ。……まぁ、セナが人間であっても、セナであるならなんでもいいんだけどね。
 だからほんとに種族なんてどうでもいい。
 セナに向かってそう言うと、セナは恥ずかしがりながらも、嬉しそうにしていた。

 そして、セナに案内してもらい、私たちは冒険者ギルドにやってきた。

「マスター、ここで合ってますか?」

 セナは冒険者ギルドの見た目を知らないからか、そう聞いてきた。

「うん。ありがと、セナ」
「はい! 役に立てたなら良かったです」

 セナにお礼を言うと、私はギルドの中に入った。
 中に入ると、一気に中にいた人たちの視線が集まった。
 思わず私の足がすくみそうになった所で、セナが手を繋いでいる手に少し力を入れて、ギュッとしてくれた。
 うん。……大丈夫。私にはセナがいるんだから。……何も怯える必要なんてない。
 私はお礼の意味を込めて、セナの手を握り返すと、受付の人の所に向かって、堂々と歩き出した。

「この子と冒険者になりに来ました」

 受付の人の前に立ち、私はそう言った。
 すると、受付の人は驚いた様子を見せてから「かしこまりました」と言って、作業をしだす。
 
「おいおい、こんなガ――」

 後ろから何か声が聞こえたと思ったら、突然何かが倒れたような音が聞こえた。
 私はびっくりして、後ろを振り返ると、大きな男の人が倒れていた。

「マスター、ただの酔っ払いです。気にしなくても大丈夫ですよ」
「そうなの?」
「はい」

 まぁ、それならいいか。
 普通に体が大きくて、怖いし。関わらない方がいいよね。

「は、発行が終わりました」

 何故か受付の人が怯えながら、冒険者用の身分証を二枚渡してくれた。
 そして、そこにはEランクと書かれていた。
 確か、EランクからSランクまであるんだよね。……まぁ、私たちは身分証代わりに使えて、二人で不自由なく暮らせるくらいお金を稼げればいいから、Cランク位を目指せばいいかな。

「はい、こっちはセナの分ね」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、適当な依頼を受けよっか」
「はい、任せてください!」

 私は、セナが喋る度に周りの人達が怯えるのを不思議に思いながら、セナと一緒に依頼を受けた。


あとがき

こちらの作品もよろしければどうぞ
『お姉ちゃんで遊んでたらいつの間にか取り返しのつかないことになっていた』
https://kakuyomu.jp/works/16817330656141389969

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