10話:どれだけ過保護なの!?
ゴブリン討伐の依頼を受けた私たちは、森の中に来たんだけど……魔物どころか、動物すら現れない。
「……セナ、魔物が出てくるように、セナのオーラ? って言えばいいのか分からないけど、抑えられない?」
「……ごめんなさい。これでも抑えてる方なんです」
セナは申し訳なさそうにそう言う。
まぁ、それなら仕方ないよね。……でも、どうしようかな。……セナが居なかったら当然魔物は寄ってくると思うけど、セナが居ないと勝てないんだよね。
「セナ、ゴブリンの位置とか分からないの?」
「それは分かります。でも、近づくと直ぐに逃げちゃって……」
逃げるって言っても、ゴブリンよりセナの方が早いはず。……と言うことは、私が居るからセナがゴブリンを倒せないのか……
「セナ、私のことは一旦はいいから、ゴブリンを狩ってきてよ」
「だ、だめです。マスターから離れて、その間にマスターに何かあったらどうするんですか!」
セナは私に抱きついてきて、絶対に離れないとアピールしてくる。
「ちょっとくらい大丈夫だから」
セナなら直ぐに戻ってきてくれるだろうしね。
そもそも、セナのおかげで近くに魔物は居ないんだから、ここから動かなかったら、少しくらいはほんとに大丈夫だと思う。
「で、でも……」
「どうせお金が無くちゃ生きていけないからさ。……私が戦えれば一番良かったんだけど、戦えないから……」
「そんなことないです! ……分かりました。すぐに戻ってきますから、マスターはここから動かないでください」
セナは私に抱きつくのをやめて、そう言う。
「うん。お願いね。……あ、それと討伐部位証明は左耳だからね」
私はセナにそう言いながら、耳を入れる用の袋を渡した。
「分かりました。直ぐに戻ってきます!」
セナはそう言って袋を受け取ると、一瞬で私の前から姿を消した。
……さっきは大丈夫って言ったけど、セナがいなくなると一気に不安になってきた。
「大丈夫。セナなら直ぐに戻ってきてく――」
「マスター! ただいま戻りました!」
そう言いかけたところで、セナが戻ってきた。
「いや……え? えっと、セナ?」
「はい、どうかしましたか?」
「ゴブリン、ちゃんと狩ってきた?」
「もちろんです!」
そう言ってセナは自信満々に袋の中を見せてくれた。
そこには気持ち悪いくらいゴブリンの耳が入っていた。
「……すごい、ね」
「はい!」
私はそんな言葉しか出てこなかった。
だって、セナがゴブリンを狩りに行く前に、あれだけ私を心配するくらいだから、何かがある可能性があるくらいの時間がかかるんだと思ってた。……なのに、一瞬で戻ってきた。……いや、こんな短時間で戻れるのに、あれだけ心配するってどれだけ過保護なの!?
私はそんなセナの気持ちが嬉しくも、恥ずかしくなり、血飛沫ひとつ浴びてないセナの頭を撫でて誤魔化した。