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わたわた 2020/09/15 18:00

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その5

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その5

邦洋(20♂):演出・衣装   【配役】保留
良平(20♂):小道具・舞台監督【配役】保留
浩太(20♂):脚本・演出助手 【配役】保留
香南(19♀):小道具・情報宣伝【配役】保留

 香南が謎の冊子のページをめくる。

香南「謎3。桃太郎が歩いていくと、犬に出会いました。桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきび団子を1つわたしにくださいな。桃太郎は、犬にきびだんごを1つわたし、自分も1つ食べました」

良平「自分も食うんだ」

香南「犬をお供にした桃太郎が歩いていくと、兎に出会いました……あれ、猿じゃないの」

邦洋「猿でなく、兎か」

良平「時計を持ってないことを祈る」

邦洋「さすがにワンダーランドには行かないだろう」

香南「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきび団子を1つわたしにくださいな。桃太郎は、兎にきびだんごを1つわたし、犬にも1つわたし、自分も1つ食べました」

邦洋「この辺から謎の匂いがプンプンするな」

良平「匂いと言えば、ふくろの中身を匂いだけできびだんごとあてる動物たちの嗅覚に畏れ入るぜ」

香南「……」

浩太「どうか、しました?」

香南「桃太郎と犬は、晩御飯にうさぎを食べて眠りました」

浩太「え」

良平「仲間を食うとは、おそるべし桃太郎!」

香南「桃太郎、めっちゃブラックじゃん」

邦洋「むしろ、ちゃんとしてる。きびだんごだけでは栄養価が偏るからね」

良平「それはそうだが。子どもには聞かせられんな」

香南「次の日、桃太郎は猿と猪を仲間にし、猪を晩御飯にして眠りました」

邦洋「一日のうち最後に出会った動物が犠牲になる法則か」

香南「きびだんごって、食糧となる動物を引き寄せるためのアイテムだったの」

良平「だとしたら、猪に出会うまで、猿が晩御飯候補だったわけか」

邦洋「まあ、そうなるな」

良平「もはや鬼退治など、どうでもよくなってきた。これは食うか食われるかのサバイバルだぜ」

香南「次の日、雉が仲間になり、海辺に出ました。桃太郎は、海にきびだんごをちぎって投げ、寄ってきた魚を雉がとらえました」

良平「見ろよ、雉は必死じゃないか。食われてたまるかって」

邦洋「そんな雉を、犬と猿は高見の見物ってとこだな」

良平「世界観が怖すぎる。早く鬼退治して解散しよう」

香南「その日の晩御飯。魚を食べながら、桃太郎がこんなことを言いました。動物に出会うたびに1つずつきびだんごを食べたね。今、それぞれ何個ずつ食べたのだろう。拙者、犬、猿、雉の順にカウントしてみよう……終わり」

浩太「何だ、食べたきびだんごの数をカウントするだけか。だったら、桃太郎は犬・兎・猿・猪・雉・魚に会ったから6、犬は兎・猿・猪・雉・魚に会ったから5、猿は猪・雉・魚に会ったから3、雉は魚にしか会ってないから1だ。6531、これが答えだ」

邦洋「浩太は間違っている」

良平「だよな、桃太郎はいいとして、犬・猿・雉は、自分が仲間に加わったときの分をプラス1しないといけない」

邦洋「そこをカナが指摘してくれればいいが」

香南「ねえ、浩太」

浩太「はい」

香南「何かを得るためには、何かを失わないといけないのかな」

浩太「え」

良平「今、謎が増えた」

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わたわた 2020/09/14 18:00

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その4

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その4

邦洋(20♂):演出・衣装   【配役】保留
良平(20♂):小道具・舞台監督【配役】保留
浩太(20♂):脚本・演出助手 【配役】保留
香南(19♀):小道具・情報宣伝【配役】保留

 香南が謎の冊子のページをめくる。

香南「謎2。桃から生まれた赤子は、桃太郎と名付けられ、すくすくと育ちました。やがて、立派な青年になった桃太郎は、おじいさんとおばあさんに鬼ヶ島へ行くと告げました。おじいさんは日本一と書いた旗と日本刀を、おばあさんはきびだんごをこしらえて、桃太郎に持たせました。桃太郎は、盾がほしいと言いましたが、おじいさんは、旗を指さして、盾を持たない日本一であれと答えました。……これで終わり」

良平「大人ってずるいよな。盾が足りて無いことを認めず屁理屈を言う」

邦洋「違う、違う。物語が歪められている辺りが、4ケタの数字を解くヒントになっているはずだ」

良平「すると、ヒントはおじいさんの屁理屈」

浩太「盾を持たない日本一、か」

香南「無防備よね。あ、防御力0だから、0000とか」

浩太「それは謎解きになってないと思う」

香南「放置していい?」

浩太「待って待って。ダイヤルの初期値は全部0じゃないですか」

香南「確かに、そう言われれば。じゃ、違うね」

浩太「盾を持たない日本一。つまり、一般的な日本一は、盾を持っているということだ」

良平「日本一ってだけで一般的じゃないけどな」

邦洋「あ、分かったぞ。答えは31811……いや、これだと5ケタだから、3182だ」

良平「何だ、その数字」

邦洋「日本一に含まれる数字だよ。3182」

良平「はぁ?日本一には、1しかないぜ」

邦洋「盾を持たなければ、3182になる。なかなかの良問だ」

良平「1人解けて浮かれてるところ恐縮だが、あっちは、厳しい顔してるぞ。縛られ役は邦洋が良かったんじゃないか」

香南「分かった」

浩太「ほんとに?」

香南「ケータイどこ?」

浩太「え、カバンの中ですが」

香南「邦洋に電話して呼べばいいんじゃない」

浩太「分かったって、そっちですか」

香南「文句言うなら、野垂れ死ね」

浩太「すみません。電話してください」

 香南、浩太のカバンからケータイを取り出し、アドレス帳を開く。

邦洋「この展開は予測済み。むしろ遅かった方かもしれない」

良平「おい、カナ。そのテレフォンは使えねえぜ」

 部室で音が鳴る。

香南「へ?」

 香南、本棚で鳴っているケータイを取る。

香南「邦洋、ほんと使えないやつ」

浩太「タイミング悪いあるあるだな」

香南「馬鹿言ってないで、早く解きなよ。助けを借りるあては断たれたんだから」

邦洋「やはり、良平は数に入ってないな」

良平「ああ。すでに使えないやつ認定されてるんだろうよ」

香南「そだ。今から謎部の部室に言ってさ、富士山の胸倉つかんで答え聞き出せばいいんじゃない?」

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わたわた 2020/09/13 07:00

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その3

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その3

邦洋(20♂):演出・衣装   【配役】保留
良平(20♂):小道具・舞台監督【配役】保留
浩太(20♂):脚本・演出助手 【配役】保留
香南(19♀):小道具・情報宣伝【配役】保留

 照明がつく。
 浩太が自転車用のダイヤル付ワイヤーロックで右うで、左うで、右足、左足をパイプ椅子に縛られて座っており、布でさるぐつわをかまされている。
 部室に香南が入ってくる。

香南「おつか……お疲れ」

浩太「うぅぅぅうぅぅ!」

香南「何、この状況」

 サブステージに邦洋と良平が出てくる。

良平「カナ到着!ほぼ時間通り」

邦洋「あとはシナリオ通りに行くかどうか」

良平「がんばれ、浩太。画面の向こうで応援してるからな」

 香南、浩太の周りを訝しげに見て回る。
 もがく浩太。

良平「これで浩太を助けなかったら、退部モノだぞ」

浩太「うぅうぅ!うぅうぅ!」

香南「はいはい、分かった分かった」

 香南、部室の衣装棚のケースから、裁断ばさみを出す。

良平「はさみ?」

浩太「う?ううぅ!ううぅ!」

 近づく香南、浩太は必死で首を横にふる。

良平「おい、どうする。浩太が刺されたら」

邦洋「まさか。さるぐつわを切るつもりだろ」

香南「動くな!耳、切っちゃうぞ」

 浩太、静止し、目を固く閉じる。
 香南、刃の先を布の隙間に差し入れようとする。

良平「結び目をほどくだろ、普通」

邦洋「普通は出会わないぞ、さるぐつわされた人物には」

良平「至極、理解。経験値から考慮して、むしろ梱包のひもを切る感覚か」

香南「もう!きつすぎて刃が入らないんだけど。てか、役者の顔に傷つけるわけにもいかないしな」

良平「そう!そこに早く気づけ!」

香南「あ!」

 香南、結び目を切る。
 さるぐつわがほどける。

浩太「だ~。どうなるかと思ったぁああ」

良平「おれじゃなくて良かったぁああ」

邦洋「とりあえず、ファーストステップクリア。ここからは、シナリオ通りに行けるはずだ」

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わたわた 2020/09/11 06:50

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その2

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その2

邦洋(20♂):演出・衣装   【配役】長者・若者
良平(20♂):小道具・舞台監督【配役】願いの木・老いた牛・赤ん坊
浩太(20♂):脚本・演出助手 【配役】従者・村人B
香南(19♀):小道具・情報宣伝【配役】村人A


 照明がつく。

 誰もいない部室。ドアが開き、リュックを背負い、左頬に大きな絆創膏をした邦洋が入ってくる。リュックを置いて脚本を取り出し、独り練習を始める。

 やがて、右腕をギブス固定した浩太が入ってくる。バッグを置き、邦洋を見るが、邦洋が集中しているので仕方なく脚本を出して独り練習を始める。

 さらに、頭に包帯を巻いた良平が松葉杖で入ってくる。鞄と松葉杖を置いて、椅子に座る。邦洋と浩太は無視して練習に勤しむ。仕方なく大道具の製作に取りかかる良平。

 そこに、香南が入ってくる。

香南「お疲れ~」

良平「お嬢、お疲れさまです」

邦洋「お疲れ……さまです」

浩太「お疲れさまです」

香南「あ、浩太」

浩太「はい」

香南「レモンスカッシュ、あと購買でミルクチョコ買ってきて」

浩太「うぃっす」

 浩太、財布を持って出ていく。

香南「そうそう、台詞を変更したいんだけど、いい?」

邦洋「え、また・・・」

良平「いい、いい、全然いいんですよ。お嬢が言いやすい方が。脚本なんて、料理されてなんぼですから」

香南「やっぱり?私もそう思ってた。そもそも演劇なんて堅っ苦しいじゃん。文化祭ってお祭りよ?桃太郎やるならさ、普通の筋でパロディやった方がもっとウケると思うの。お客さん、ドッカンドッカンさせたいでしょ」

良平「はい、ドッカンドッカンさせたいです」

香南「それと、方言使えば昔の人間、みたいな安直な思考も却下」

良平「却下、ですよね、はい」

香南「却下といえばさぁ、長者っていうのをやめて町人に変えるべし」

邦洋「いや、それは……」

良平「いいんじゃないですか、町人で。ね。ただ、お嬢が長者にしたくない理由だけお聞かせいただければ、これ幸いというものなんですが……」

香南「長者と名乗れるのは、イケメン限定」

邦洋「誰の基準で……」

香南「イケメン限定!」

邦洋「……はい」

香南「よって、私が脚本、書いてきた」

邦洋「……はい?」

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わたわた 2020/09/08 18:00

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その1

脚本『願いの果実』第2章「ハニートラップ!?」その1

邦洋(くにひろ 20男):演出・衣装   【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):大道具・舞台監督【配役】願いの木・老いた牛・赤ん坊
浩太(こうた 20男):脚本・演出助手 【配役】従者・村人B
香南(かな 19女):小道具・情報宣伝【配役】村人A


 照明がつく。


邦洋「集中、用意!(手をたたく)」

香南「(村人A)あんたー。いよいよ、あたいらの番ね♪」

良平「(村人B)んだ。ここまで必死で耐えて耐えて、ようやく辿り着いたべ」」

香南「(村人A)長かったべ♪虫の湧く夏も、すさまじい吹雪の冬も、あんたと二人、乗り越えてきたー♪」

邦洋「ストップ!カナ、そのキラキラオーラは、何とかならないかな。」

香南「え、何か問題ありますか」

良平「ありよりの、あり。まず舞台を飛び跳ねすぎ」

香南「だめですか、ちょっとステップ踏んだぐらいなのに」

良平「アイドルじゃないんだからさ」

香南「舞台女優ってアイドルじゃないんですか?」

良平「認識のずれが天下一品だわ」

香南「分かりました。ステップ踏まなければいいんでしょ」

邦洋「あと、明後日の方角へのカメラ目線もやめよう。ウインクしてたときもあったよね」

香南「はい!長かったべ(^_-)-☆」

邦洋「村人Aの感情、分かってる?」

香南「はい。やっと順番回ってきて嬉しい!って感じですよね」

良平「商店街の抽選会場かよ」

香南「あんまり変わらなくないですか」

邦洋「感情が浅いんだ。子どもを授かりたい一心で、暑さ寒さを耐え忍んできた感がほしい」

香南「分かりますよ。わたしだって友達と遊びに行くの我慢して、試験勉強を耐え忍んできましたから。あっそうだ!試験が終わったときの解放感を乗せてみたらいいですか?」

良平「いいはずない」

邦洋「ここは、貧乏な夫婦の願いがようやく叶おうとする場面なんだよ。時代劇とかでさ、夫婦の愛情でしんみりする場面あるだろ」

香南「なんか古臭いですね」

良平「昔話だから」

邦洋「さあ、もう一回、初めから行くよ。集中……」

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