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2020年 09月の記事 (16)

宮波笹 2020/09/06 19:24

【小説】冷たいバイオリン

見た人がうらやむほどの豪華な……でも、冷たい豪邸に引き取られたのは2年前だった。
私を引き取った老夫婦の夫は政治家で、子供がいなかった。
そのためか、おじい様は慈善活動に積極的で私以外にも多くの養子を引き取っていた。

出会った日におじい様にハッキリ告げられた。

「お前を引き取ったのバイオリンが弾けるからだ」

と。

養護施設にいたカワイソウな養子を引き取って、彼女が独り立ちするまで立派に支援する。バイオリンは、その実績を披露するのにぴったりだった。

私は……それでも良かった。
理由はなんであれ、私を迎え入れてくれた。戸籍には入れてもらえなかったけど、家に入れ、食事を与え、いいところの学校に転入させ、生活費を工面してくれた。さらに投資と言って高価なバイオリンを買い与えてくれた。
別の理由があるとはいえ、それは並大抵のことではない。

必要とされているのなら……その恩は返したいとおもった。
だから、バイオリンの練習は欠かさなかった。先生の言いつけは守ったし、努力もした……つもりだった。

「君はバイオリンが好きじゃないんだね」

ある日、バイオリンの先生にそう言われた。
やる気があるのか? と聞かれたら私は当然あると答えただろう。それが、私に求められていることだから。それが出来なければ、私はまた……。
でも、好きかどうかは分からない。昔は好きだったのかもしれない。でも、今は……。

その年の冬、おばあ様が亡くなった。私は葬儀に同行するよう言われた。
不謹慎だけど、私は内心嬉しかった。他人を葬儀に呼んだりはしない。少なくとも葬儀に同行を許されるぐらいには私は認められたのだと。

そこで…

「誰かこの子を引き取ってくれないか」

おじい様は、親族に向かってそう言いはなった。

そうか、私はまた要らなくなったんだ。

宮波笹 2020/09/05 19:07

【小説】一夜限りのホテルスタッフ

「じゃーねー、おやすみー」
ホテルスタッフから服を拝借し、中身をトイレの用具室に押し込む。これで俺も立派なスタッフの一員だ。

早速仕事をスタートさせる。
スタッフルームはワタワタしていた。
理由は2つ。4Fのレストランが水道管トラブルで使えなくなったこと。
そして、本日来るVIPが、そこで会食をするはずだったからだ。
俺は早速天からの声とでも言わんばかりに、伝言を伝える。

「支配人から、VIPを12Fのレストランにご案内するようにと」

当の支配人は、今頃雲の上……じゃない、夢の中だ。

ホテルスタッフは大変だ。
今度は夜景が人気の、12Fのレストランにやってきた。
そこでもまた、同じことを伝える。急な変更だが、そこはVIPを相手にしてきた高級ホテルだ。すぐさま準備に取り掛かる。

今度はロビーに出向き、例のVIPが来るのを待つ。
お出迎えじゃない、俺の役目はあくまでも伝言だ。
スタッフに配布されているものとは別の無線機をONにする。

「来たよ、ご到着だ」

後はもう簡単なもんだった。
やってきたVIPは、トロッコのレールにでも乗ってるかのように指定の席まで誘導される。当レストラン自慢の、夜景が見える絶好のポジション。

元々予定されていた窓のない2Fの宴会場ではなく、姿がハッキリと見える狙撃のベストポジション。

そして――

VIP……ターゲットは頭を打ち抜かれ、動かなくなった。
それを確認した俺は、混乱に乗じてその場を去る。

「確認したよ、さすが兄貴」

俺は状況を外にいる相手に伝える。

「いいからさっさと降りてこいケヴィン」
「はいはい」

制服も脱ぎ捨て、ホテルスタッフは引退だ。
あと、水道管の整備業者もね。

宮波笹 2020/09/03 20:58

【小説】隠された世界

スコープの先では、血まみれの男が雪の中をさ迷っていた。

狙いを定め、サイレンサーを付けた引き金を引く。
男の足から血が噴き出し、白い地面を染める。が、倒れるのを何とか堪え、また見えぬ敵から逃れようとさ迷い歩く。

次は腕。あえて動かなくなった腕の方がいいだろう。
俺の趣味ではない。なるべく時間をかけて苦しませろという、依頼主からのご要望だ。
自分に積もった雪を軽く振り払う。長期戦で体力を削られるのは良くない。

何度目かの一方的な攻防の末、ターゲットの男が倒れた。
しばらく観察を続けるも動く様子がない。まさか、これで諦めて帰ってくれると思ってるわけでもないだろう。クマでもあるまいし。

間を空けてさらに2~3発打ち込む。が、望んだ反応は返ってこない。
流れた時間を示すように、雪が男の上に積もっていく。
下へ降りて確認したいところだが、この雪だ。足跡が残ってしまう。

そろそろか。
確実に任務をこなすため、頭を打ち抜く。

街の通りではイルミネーションが点火し、それを目当てに通行人が集まっていた。そんな姿を横目に、ボスに殺し完了の報告をする。

「ええ、無事終わりました。それで、処理は……」
「いい、ほっとけ」

イルミネーションが新たに点灯し、歓声があがる。
現場はすぐ近くだ。人目にふれる危険もある。
ボスは、そんな俺の考えを察したようだ。

「どうせ、雪が全部隠しちまう。ヤツらは昔からそうだ」

雪がより一層強く降りだした。
皆一様にイルミネーションと雪を写真に収めている。その幻想的な風景の裏で、殺しが行われたことなど思いもしないだろう。
……少し、時間をかけすぎたようだ。マフラーを締め直す。

「汚ねぇモノは不要とばかりに隠そうとする、とんだ殺人鬼だ。おキレイな世界に俺らは要らねぇんだと」

頭に積もった雪を振り払う。
血の痕跡はほぼ隠れてしまっただろう。夜明けには、そこに人がいることも気づかないかもしれない。

「さて、終わったばかりでワリィが次の仕事を頼もうか、イアン」

宮波笹 2020/09/03 17:58

最近小説書いてます

最近趣味兼、練習兼、作品認知度をUPしようと小説書いてます。
定期的に何かする、というのが苦手で(別の支援サイトで月1小説すらしんどかった)今回もどこまで続くんだろうね~とは思ってます。ははっ。

でも結果として作品が増えること自体はありがたいし、そして楽しい。

どうせやるならアピールしないと

最初は作品問わずネタがあれば書こう的な考えでした。
でも作品によって書きやすさってあるみたいで、知ってる人と知らない人がいる作品はどっちに向けて書いたらいいか分からない…。
決めろって話ですが。悩むわ~…、どっちがいいの?

その点、製作中のシアワセの引き金は誰も知らないから迷わずに済むし、キャラが多いからしばらくはネタに困らないという利点がある。

そしてちまちま出していけば、ゲームとして出したときに
「ああ、書いてた小説コレのことね」
or
「ゲームで知ったけど小説もあるやったー!」
ってなるかなぁと。

とりあえずツイッターの方で「同じ世界観の作品です」っていうアピールのために作品名タグつけることにしました。

まだ世界を伝えてない

裏社会での、冬の時期のお話……なんですけど、裏社会はともかく(すでにちらほら殺し屋とか出てるし)冬の話って伝わってないなぁ。
添えてる写真の意図伝わってないなぁ。

ノリで書きだしたので、まだ「最初に伝えるべき情報」が選別出来てないです。
とりあえず今日、物語の始まりとなる殺し屋が養子を引き取るシーンを書きました。

本当は最初から読んだらちゃんと世界とか伝わるようにしなきゃなんですけどねー。
サイトに乗せるときはそうしよう。
まずサイトどうにかしないと……(新しくしたいけど時間取れてない)

形式どうしよ

かなり自由~に書いてるので、例えば段落を下げるとか一切やってないです。あの量でやったら全行下がる勢いだからやらないっていうのもありますが。
あとは「」の前後を開けるのが癖なんですけどそれもどうかな~とか、2段の方が読みやすいのかな~とか色々考えちゃいますね。

宮波笹 2020/09/02 16:56

【小説】ハジマリの引き金

「誰か、この子を引き取ってくれる者はいないのか?」

それは、タチの悪いオークションのようだった。
大伯母の葬儀で、その夫……大伯父にあたるゴードンは親族を集めこういい言い放った。

「妻も死んだ。ワシ一人では到底育てられない。そこで誰かにこの子を任せたい」

自分たちが引き取った、14歳の養子・ミューシャを。

始まったのは競りではなく押し付け合いだ。
聞かれてもいないのに、口々にお断りの理由を語りだす。
それは俺も同じ。俺は元々、お呼びでない身だ。
一人帰ろうと席を立つ。

「おお、この娘を引き取ってくれるかイアン」
「え……?」

立ちあがった俺に一同が視線を向ける。例の娘もだ。

「いや、俺は帰らせてもらいます。俺には関係のない話だ」
「ほう、どうしてそう思う?」
「俺は独り身です。子供を育てた経験なんてない」
「独り身? 余計なしがらみがなくていいじゃないか。なに、成人するまでたったの6年だ。6歳児を引き取るよりマシだろう?」

ゴードンは愚かな獲物を逃がす気はないらしい。

「その子の意志はどうなる?」
「! わ、私は……おじい様がいいとおっしゃるのなら、それで……」

そう、うつむき加減に答えた。
つまり、この子の意志も関係ないということか。

「申し訳ないが、他を当たって欲しい」

そう言って扉に向かう。
部屋から出てこの話は終わり。そうなるはずだった……。

「お前たちがどれだけ我々に迷惑をかけたか忘れたか?」

ぴたりと足が止まる。否、動かなくなる。

「それは……」
「兄弟そろって家族に迷惑をかけたのだから、たまには役にたて」

どうやら、俺に拒否権というものは存在しないらしい。

「……ついてこい」
「あ、はい……」

娘は大祖父の前で立ち止まり頭を下げる。

「おじい様、お世話に……なりました」
「いいから早く行け」
「……」

一人来たはずの道を二人で帰る。

この決断が、何かの引き金になるだろう。
その銃口がどこに向けられたのか、俺にはまだ分からない。

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