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乗車券区間内で途中下車する方法

最近ペーパーレスの時代だからか、トイレに入っても紙がないんですよね。
いくらペーパーレスといっても、トイレットペーパーくらいは置いといてほしいですよね。
それでも脱炭素、SDGsの潮流には抗えず、私もウォシュレットを使わなければならないのでしょうか。
嫌ですね。
そう思いながら手を洗おうと思ったら、水が出ません。
センサーの当たり判定が狭すぎるんです。
赤外線センサーの当たり判定って、この世で信用できないものランキングのトップ3には入りますよね。
もちろんトップは「先生怒らないから正直に言ってごらん」というセリフです。
2位は「優しい人が好き」という女の子の台詞。

さて、今日は出張の予定があってJR某所の駅に来ました。
特急の時間まで優雅なモーニングを過ごそうと思って、駅構内に喫茶店があるのを事前に調べておいたのです。
しかし実際に駅についてみたら、喫茶店は改札の外にあるではありませんか。
すでに私は乗車券を改札に通したあと。
乗車券の区間がA駅→B駅→C駅(目的地)となっており、私はこのときB駅にいたわけです。

私は改札横の窓口で駅員さんに尋ねました。
わたし「(乗車券を見せながら)A駅から来たんですけど~、特急が出るまでの一時間、あそこ(改札のすぐ先に見えている喫茶店)で過ごしたくて~」
駅員さん「特急券見せてください」
わたし「つ[特急券]」
駅員さん「本来は途中下車できないんですけど、特別にスタンプで対応いたしますので、また乗るときここの窓口で特急券を見せてください」

神対応です。
改札内のトイレに行きたいときも言えば中に入れてくれると知ったとき以来の衝撃です。やはりJRは神でした。
(※2022年6月時点の話です)

しかもこの喫茶店、原材料高でインフレの激しい昨今においてもコーヒー一杯250円と、なかなかリーズナブルではありませんか。
おまけに仕事しやすくブース状になったコンセントつきの座席。至れり尽くせりのホスピタリティ。
さらにはweb会議用の電話ボックスみたいな有料座席まである。
この駅、時代の最先端にありますね。

しかし15分275円は高すぎでしょう。280円や290円と書いてくれたほうがかえって安く感じるくらいです。
1時間1,100円と換算すればまぁそんなもんかと思いますが。
仕事用だから経費で落とせると思ってこの価格設定なのかな。
(※2022年6月時点の話です)

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ミニバスの思い出

小学校3年生の頃、バスケ部にいました。

タイトルにミニバスって書きましたけどバックパス違反だったはずなのでミニバスじゃなかったかもしれません。
はい、タイトル詐欺です。すみません。

それはさておき、当時バスケ部のコーチは特別支援学級の若い女の先生で、とても怖かったのを覚えています。

ある日、コーチのお姉さんが言いました。
「最近お前ら、たるんでる!
 明日までに自分が今後何を第一に頑張るか、努力目標を紙に書いて持ってこい!
 忘れてきた奴はバスケ部の部員として認めん!」

明日、必ず忘れずに、絶対に持ってくる。
これは当時小3の私にとってはとても厳しい宿題でした。
何せ一歩間違えば特別支援学級入りしてもおかしくないレベルの忘れん坊将軍だったのです。
クラスの忘れん坊ランキングでは常にブービー賞。音楽会の本番当日に演奏で使う鍵盤ハーモニカを家に忘れてきて泣きそうな顔してたレベルです。ワースト一位の理解のある彼君が同級生じゃなかったら今の私はいませんでした。

ところがです。人間やればできるもんですね。私は次の日の朝になったら前の日に部活で言われたことを思い出したのです。
しかし思い出したのは当日の朝。私はとてもあわてていました。
そこらへんの紙の切れ端をひっつかみ、内容を検討する暇もなくただ思いついた台詞「ドリブルをうまくなる」を下手な字で書き、ポケットに突っ込んで登校したのです。

なんとか、バスケ部をクビにならずに済みそうだぞ。
そう思っていたのも束の間、部活の時間になりました。

「沢口、雨宮、ちょっと来い」
なんと、同じクラスで忘れん坊ランキング第一位の彼君と一緒にコーチに呼び出されてしまいました。
「人類には『はさみ』という文明の利器がある!
 手で千切った紙に書いてくるとは何事か!
 こんなことをするのはお前ら二人だけだ!」

クラスでは忘れん坊将軍として一二を争う我々としては、まずは忘れずに持ってきたことを認めていただきたいところでしたが、バスケ部ではクラスの序列など無関係。なんとか退部させられる事態は免れたものの、私たちは揃ってお説教を受ける羽目になってしまったのです。

それにしても、「文明の利器」とは、ちょっと小3には難しいワードですよね。
私はこのとき初めて「利器」という言葉を知ったのを覚えています。当時スマホとかはありませんでしたから、たぶんそこらへんの大人に「『りき』ってなあに?」って聞いたんでしょうね。そう思うと草生えますね。

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あのときやまやにいた女

それはある日、私が出先でやまやに入った日のことでした。

不慣れな土地で迷い込み、仕方なくイオンのフードコートに入った私は最初つけ麺を食べようと思っていたのですが、他の人がおいしそうな明太子を盆に載せて歩いているのを見かけ、なんとやまやがあることに気づいたのです。
ランチにつけ麺はリスキーです。汁を襟にこぼしたら、午後からの営業活動に差し支えます。
そう思って私は急遽つけ麺案をボツにして、やまや案を採用することにしたのです。やまやおいしいよやまや。

そのフードコートのやまやは、カウンターで最初にメニューを注文し、ご飯とおかずを順に受け取っていき、最後に箸や調味料を取って会計となるスタイルです。
私の後ろに三十歳くらいの女の人が並んできました。
メニューを注文したあと、二十歳くらいの若いお姉さん店員が応対します。
「ごはんは大盛り(無料)になさいますか?」
わたし「はい」
後ろの女「大盛りより少なめで」
お姉さん「少なめですか?」
後ろの女「大盛りで」
お姉さん「かしこまりました」
後ろの女「待って、ストップ。そのくらいでいい」
わたし(最初から「少し多め」って言えばよかったのでは……)

お姉さん「豚汁にネギは入れますか?」
わたし「はい」
後ろの女「別皿で出してくれる?」
わたし(スープにこだわりのあるラーメン屋かな?)

お姉さん「豚汁お気をつけてお持ちください」
わたし「ありがとう」
後ろの女「なんか前より量減ってない?」
お姉さん「申し訳ありません。価格改定で値下がりしたため前より量が少なくなっています」
後ろの女「あらそうなの。じゃあご飯もそれに合わせて少し減らしてくれる?」
お姉さん「承知いたしました。申し訳ございません」
わたし(わざやざやり直しさせるのかよこえーな。バリバリのキャリアウーマンとして会社でもブイブイいわせてるのかな?)チラッ
わたし(ヒエッ……指輪してる)

後ろの女「あと子供用に取り皿出してくれる?」
お姉さん「かしこまりました」
わたし(しかも子持ち!)

こういう人が購買担当者だったらやりづらいだろうなと思いました。
午後からの訪問先へ行ったらいつもと違う人が一緒に出てきて「実は担当変更になりまして……今度からは彼女が」と言われて「うわー! あのときやまやにいた怖いママさん!!」とならないことを祈ります。

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舞城王太郎『ビッチマグネット』を読んで

舞城王太郎の本は初めて読みました。
名前は前から知っていました。覆面作家として有名ですよね。

冒頭数ページから衝撃を受けました。
スゲーなこれ。なんじゃこりゃ。一体どーやって書いてんの。

文体が最大の武器になってます。あさのあつことか、あと綿矢りさも少し近いか? 最近こういうの久しぶりだったのであまりそれっぽい名前が出てきませんが。

そのくだけた口語体の一人称による語り口は印象的。直前に読んでいたのが山崎豊子の『白い巨塔』だったので、その文体の落差には驚きました。

ですが、だからこそ逆に気づいた類似点もあります。それは、シーンを継ぐテンポのよさ。
文章の密度はさておき、軽やかな文体でありながら次々と場面が切り替えられ、サクサク話が進んでいきます。

冗長そうでありながら、実は極限まで無駄が削ぎ落された文章。それってなかなか普通にはできないことだと思います。まさにプロの所業。

この手の文章だと情報の密度は低く、物語の進行は低速度になりがちだと思っていましたが、その先入観を覆されました。一体どんなマジックが使われているのやら。
手品のタネはシーンとシーンの"継ぎ目"にあると思いますが、いやはや素晴らしい職人芸です。

狂人めいたキャラクター描写の主人公による、そのあまりにぶっ飛んだ文体を語り口として話は進んでいきますが、内容は至極真っ当な青春小説。
もっと早く出会っておきたかった作家です。二作目も是非読んでみたいと思います。

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山崎豊子『白い巨塔』を読んで

ご存知ない方のために説明すると、医療ドラマです。
「メス!」とかいいながら手術を始める、あれです。

私は2003年に放映されていたドラマ版でその存在を知りましたが、読後に誌食べたら国内では5回ドラマ化されたらしいです。
原作は1963-1965年と1967-1968年に連載。単行本が1965年と1969年に発刊。

手元の新潮文庫版1-5巻は全て2002年刊行のものだったため、単行本と紙面での連載は随分古いことに驚きました。
ちなみに連載と単行本が2回に分かれているのは、正編と続編があるからです。前者が単行本『白い巨塔』(文庫版『白い巨塔』1-3巻)、後者が単行本『続・白い巨頭』(文庫版『白い巨塔』4-5巻)です。

山崎豊子の先品は『沈まぬ太陽』を読んで以来2作目だったのですが、本作は衝撃でした。その情報の密度とスピード感に圧倒されます。
高度経済成長期の日本とペルシャ、アフリカ、パキスタンなどの異邦の地を舞台に航空会社の内幕を描く『沈まぬ太陽』も相当な臨場感とスケールの大きさでしたが、『白い巨塔』は、これほどまでのものなのかと、その完成度の高さに震撼しました。

とにかく、まず話が早いんです。徹底的に贅肉が削ぎ落とされてる。元新聞記者なだけあって『沈まぬ太陽』でも文章における情報量の密度は高かったのですが、それだけじゃありません。
より早く、短い時間でコンテンツを消化しようとする昨今の消費者の需要にこたえてテンポのよさを突き詰めた映画『パラサイト』を髣髴とさせるようなシーンの繋ぎ方なのですが、これが1960年代の作品とは思えません。ベストセラーってこういうのをいうんですね。不朽の名作そのものです。

あと、背景の描き方がすごい。
私は正直これを読むまで医療ドラマや医療漫画で外科医が主役とされがちなのはなぜなのかよく分かっていませんでした。
でも読み始めたらすぐに分かりました。オペにはドラマがあるからです。その手術の緊迫感というものが、本作ではとても生々しく伝わってきます。その所作には何の意味があるのか、そこで失敗するとどうなってしまうのか、話を運びながら的確に描かれるため、外科医ってすごいんだなと実感します。
医療に関して元々は素人だったなんて信じられないほど、緻密な取材の上に成り立っています。小説を書くのと同じくらいの時間と労力を取材に費やしたというのも納得です。

また情景描写も、大阪が舞台なので、関西にお住まいの方はよく分かると思うのですが、水の都・大阪の美しさがありありと描かれています。心斎橋や淀屋橋、長堀橋など、大阪都心のポピュラーなスポットが鮮やかに映し出されます。
これは作者が元々大阪ご出身の方なので、取材云々の話ではありませんが。というか大阪人じゃないと無理です。情景描写はともかくとして、登場人物の多くは大阪弁を話すのですが、その大阪弁が一人ひとり違うんです。これは地元の人じゃないと無理です。不可能です。書き分けできるわけありません。

『沈まぬ太陽』もそうでしたが、本作もタイトルが示唆的です。
『白い巨塔』。大学病院では、患者の命よりも優先されることがある。それは、教授の権威。
それが本作の主題だと感じます。

ところで本作はアンチヒーローものなのですが、これも『コードギアス』や『デスノート』が流行った'00年代に対して、40年も前に書かれた作品なのだからすごいです。
しかし正編が書かれたのちに読者から抗議の手紙が殺到したために、すでに完結した小説に話を継ぎ足して元の結末を引っくり返すというのは、なんだか不条理だなぁと思います。
実際、完成度の高さは正編でした。それと比べて続編は若干の冗長さが拭えません。もちろん続編も面白いのですが。なので続編はあとから事情があって書き足したというのを読後にしって、そういうことだったのかと得心しました。
詳細はネタバレになるので、本編をご覧ください。

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