SukeraSparo/Sono 2022/10/14 19:00

PLAY BACK THE MEMORY -雛桜ひより-

PLAY BACK THE MEMORY -雛桜ひより-

❇︎

ーーいつになったら、
この恋は終わってくれるのだろう?

そう思い続けた三年間だった。いや六年間だった。
いや、それよりもっと前、だったかもしれない。

なにせあたしたちは、
幼なじみだったから。

物心つく前から一緒にいた。
一緒にいない時なんてないくらい一緒にて。

感情に説明がつかない時から、
気持ちに名前がない時から、
ずっと、大切だった。

永遠と思えるような時間。
あなたのことを何度も考えて。
考え続けて、朝方に眠ることもあった。

卒業の日を迎えた今日。
高校生が終わって、
大人の階段を登り始めようとしているのに。

相も変わらず、あなたに恋をしている。

あたし。

❇︎ 

この「好き」が自分の存在を
揺るがすものだと気づいたのは、
あなたに嘘をついた時からだった。

「ずっと、友達でいようねーー」

いつかなんとなく言った言葉。
特に考えもせず流れで出た言葉。

自分の発した言葉に自分で傷ついた。
傷ついて、はじめて恋だとわかった。

恋の始まりって
もっとポップで可愛いものだと思い描いていたけど、
落ちるって言うくらいだもんね。
ふつうに痛かった。

あたしが自分に嘘を付く癖は、
自分より他の誰かの気持ちを優先してたら
自然と身についた。

目の前の人に喜んで欲しかった。
自分のことより誰かが大事だった。
多分、寂しがり屋だったから。

嫌われない生き方を探していたら、
心が置き去りになっちゃったみたい。

嘘は、
魔法のように生きやすくしてもくれたけど、
呪いのように代償を支払うことも知った。

結局この三年間で
あたしは生き方を帰ることはできなかった。

あなたへの気持ちを閉じ込めて、
この恋を早く終わらせて欲しいと
日々祈っては、途方に暮れていた。

取り返しがつかない。

さよなら憧れていた青春。

一生に一度の瞬間に
あなたの前で素直になれなかった事を
あたしは背負って生きていくのでしょう。

❇︎

式が終わって。
人混みの中であなたの姿を追ってしまわないように
あたしは一人、学校の外へ出た。

まっすぐ家に帰る気分にはとてもなれない。

ふらふらと目的もなく歩いていたら
足は学校の裏にある時音神社へと向いていた。

普段なら高くて辛いだけの階段が
今日は道を示してくれているように見えて
優しく感じられた。

無心で登り続けて、
あっという間に鳥居の前までやってきた。

時音神社は縁結びのスポットとして有名で、
恋心を自覚してからは
正直あまり近づきたくない場所だった。

恋を終わらせたいあたしが、
この場所に導かれるなんてちょっと皮肉だなと思う。

神様にはぜんぶ見透かされているのかも。
あたしの気持ち。

……なんてね。

もう、繕う必要もないかな。

ここで全部吐き出して、
本当の終わりにしなくちゃね。

手を合わせて、
心の中で叫んでみる。
叶うはずのない願い。

ここまで何度も間違えてきたのに。
やり直したいなんて都合が良すぎる。
そんなこと、わかっている。

それでも、もし、叶うのならーーー。

あたしは あなたと

もう
一度





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