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ネタバレ有り作品解説の記事 (12)

Hollow_Perception 2021/01/24 12:00

『ReIn∽Alter』完全解説記事・第一回(プロローグ~Ep.1前半)

 お疲れ様です、anubisです。
 今週からは、何回かに分けてノベルゲーム作品『ReIn∽Alter』のストーリーや設定などに関する解説を行っていきたいと思います。
 解説はゲーム中の進行に沿って(EP.1,2,3,4,-の順番で)行っていきます。
 内容を詳細に掘り下げるため、当然ながらネタバレ注意ですが、いわゆる「副読本」のような形でこちらを読みつつプレイするというのも良いかも知れません。
(間接的に、関連作品である『Acassia∞Reload』のネタバレも含みます。)





作品概要

 まず本作は、過去作『Acassia∞Reload』の前日譚に当たります。
『Acassia∞Reload』では静寂に包まれた幻想的な終末世界が描かれている一方、本作は「”現代”異能バトルもの」です。
 はじめ、両作品の接点は明確には見えてきませんが、やがて、現代的世界がその形を変えていく様子が描かれていきます。
 ですが、「『Acassia∞Reload』の前日譚であること」を示唆するような描写自体は導入から展開されているので、それを踏まえた上で、最初のエピソードを見ていきます。

Ep.1「Actualize」(顕現)

プロローグ――櫻岡駅火災事故、或いは全ての始まり


・『ReIn∽Alter』統合版では見られない、Ep.1専用タイトル画面。

 本作の物語は、本編の三年前に起きた「櫻岡駅火災事故」の描写から始まります。
 本作の主な舞台となる街「櫻岡(さくらおか)市」の中央駅を中心にして起きた、原因不明の大火災です。


 そんな危険な状態にある駅に、自ら向かっていく「私」。
 この人物は、本編のメインヒロインとして後に登場する「東岸唯理(とうぎし・ゆいり)」です。
 本作で真に「主人公」の役割を持っている登場人物は唯理であり、故に、彼女の視点から物語が始まる訳です。
 彼女は、どこかから流れてくる、とある人物の「孤独感」を感じ取ります。
 本作は「孤独」をテーマとした作品ですが、まさにそのような想いが導入の時点で描かれ、物語の軸として存在しています。
 その人物とは唯理の友人である「高嶺星生(たかみね・せな)」であり、(詳細は後述しますが)彼女は「他者に想いを伝えて共感させ、異能に覚醒させると共に、自身が同じ力を使用出来る」異能――《共振》に覚醒しています。
 この力により、唯理は星生が感じている強い孤独感を受け取ると共に、「星生を孤独から救い出したい」という想いを核にして「視点を分離させて他者を見守る」異能――《観測》を覚醒させました。
 またこの時、彼女以外にも周辺に居た多くの「素質ある者」=「孤独感への同調が可能な者」が異能を覚醒させました。
 これは裏設定ですが、この時、櫻岡駅には後々登場する「神了光騎(じんりょう・こうき)」という青年が居ました。彼は星生の力によって《発火》の異能を覚醒させると共に、彼の持つ《発火》を星生が「借用」することで、櫻岡駅の火災は発生しました。

 異能によって星生の居場所を突き止め、そこへ向かう唯理。
 自殺を図ろうとする星生を唯理は説得しようとしますが、世界に絶望し切っている様子の彼女は、それを聞き入れようとはしません。

「人は生まれた瞬間に、孤独になる。そうして、死ぬ時にもう一度、全てを喪って独りになるの」

 星生がどのような境遇であったかはこの時点では述べられていませんが、彼女の抱えている絶望感は、この台詞に集約されています。
「救いのない世界に生まれる」辛さ、「救いのない世界で生きる」辛さ、「たとえ少しばかりの幸福を得たとて、結局、死の前では全てを剥奪される」辛さ――始まりから終わりまでの全てに失望した彼女は、友人の言葉を無視して、高所から飛び降り自殺してしまいます。
 唯理は、このとき友人を救えなかった後悔を、一生忘れることが出来ませんでした――。

 そして、プロローグはこんな一文で締め括られます。


 物語のラストにて明かされることですが、実は『ReIn∽Alter』本編の物語は、「本編から七十年後の年老いた唯理が、異能者の少女『アカシア』に昔話をする」という体で語られているものです。
 人間(=非・異能者)を憎む最強の異能者であるアカシアは、人々を殺して回っていました。
 そんな彼女に対して「人間を許す」という選択肢を与えるべく、唯理は昔話をしたのでした。
 ここで言う「もう一つの選択肢」とは、本作や『Acassia∞Reload』のラストに出現する選択肢――「アカシアが最後に残った人間の少女を殺すか、殺さないか」のことを示しています。
 即ち、本作の物語は全て、人間に強い恨みを持つアカシアが「それでも”人間を許す”という選択肢を思い浮かべられたのは何故か」という謎の解明に繋がっていると言っても過言ではありません。

とある少年の、退屈な学園生活

 プロローグ終了後はテキストウィンドウの表示が切り替わります。そして、表向きの主人公の少年――「高嶺零(たかみね・れい)」の視点で物語が描かれていきます。


 これ以降、主人公の視点で描写がなされている場合は下段テキストウィンドウ、主人公以外の視点の場合は全画面テキストウィンドウによる描写がなされます。
 より正確な表現をするならば、「(零ではなく)東岸唯理の視点の場合は下段テキストウィンドウが使用」されています。
 これは終盤にて判明することですが、実のところ唯理は、零に対して《観測》の異能を使用し、彼の視点を盗み見していたのです。

 ともかく、朝、自室で目覚める零。
 彼は櫻岡駅火災事故の悪夢(=プロローグ)に悩まされていました。
 無論、単なる悪夢ではなく、実際に起こった出来事です。
 零は「自分はその場に居なかった、飛び降りた少女のことも知らない」と独白していますが、これは自らの記憶を封印した末の「無自覚の嘘」であり、防衛機制による自己暗示です。
 後(=Ep.3)にて詳しく掘り下げられますが、彼は、その場に居たのでした。
 零が唯理の視点で描かれている夢(=過去)を見たのは、先に零が《観測》の異能と同じ効果を持つ力を覚醒させており、離れた場所から彼女の視点を追っていた為です。

 記憶を封印してこれらの真実から自身の心を守り続けている零は、悪夢を忘れ、目の前の現実を生きようと気を取り直します。
 そこにやって来たのは、彼の”義理の”姉「高嶺優利(たかみね・すぐり)」


 才色兼備で学園の人気者、そして、超絶世話焼きな彼女。
 口癖は「お姉ちゃんだから良いでしょ!」で、面倒臭がる零に対して世話を焼きつつも色々と押し付けがましくしている、ブラコンで束縛気質な姉です。
 三年前から現在にいたるまで零と優利は二人暮らしをしており(優利が養子になったのも三年前)、両親は仕事で別居している……ということになっています。真実はEp.3にて明かされますが、もっと深刻な理由により両親は息子から距離を置いていました。

 優利は嫌がる零を無理やり付き合わせ、一緒に登校します。
 零は内気な性格で、学園――或いは社会そのものに居場所を感じられていません。その為、ひと目のつくところで人気者である優利と共に居るのが(嫉妬を買うため)嫌なのです。しかし、あまり人の気持ちが分からない優利は、零が嫌がるのを気に留めません。

 学校に到着した零は、上級生である優利と別れ、教室に行きます。
 そして授業の開始まで、インターネット上でニュースの閲覧を行うことにしました。
 彼は、世界中の不幸なニュースを見ることを趣味としています。
 それは「他人の不幸を他人事として楽しむ為」ではなく、むしろ真逆で、「”この世の救いの無さ”を理解して実感を得ることで他者の不幸に共感し、自分や他者に降り掛かる絶望に精神的な備えをしておく」という動機のもとで行っています。
 一言で説明しようとするとかなり難解になってしまう心理ですが、要するに彼は、「この世に確かに存在する不幸」から目をそらしたくなかったのです。
 彼は「櫻岡市火災事故」という不幸な記憶は封印してしまっているので、一見矛盾した心理ですが実はそうではなく、むしろ今の性格は「直視すれば壊れてしまうような、不幸な記憶を取り戻して本来の自分に戻りたい」という「自殺衝動」が由来となっています。
 これもEp.3にて明かされる真相ですが、記憶を失う前の彼はわざわざ不幸なニュースなど見たがらない、繊細な性格の持ち主でした。(この趣味はとある人物から影響を受け、引き継がれたものです。)

 そんな彼ですが、最近気になっているトピックは、「魔族」なるネットミーム。


「人食いの化け物」であり、近年発生している未解決の猟奇殺人事件に関連付けられて語られています。
 完全にオカルトですが、零は「魔族は本当に存在するのではないか」という「最悪の想定」をしていました。(これも「絶望への備え」の一種。)
 そして「どうせ絶望させるなら、当たり前のように日常を生きている大多数の者達ではなく、社会に居場所を感じられない自分にしてくれ」とも。

天真爛漫なアイドル

 ネットニュースを読みながらそんなことを思っていると、彼に、とある少女が声を掛けます。


 なんとなく皆が避けている零と、同級生の中では唯一関わりがあるその少女は、「佐咲煌華(ささき・きらか)」
 学生アイドルでもある彼女は非常に陽気な性格で、優利とはまた別の方向性で、学園一の人気者です。
 誰とでも馴れ馴れしく絡み、時には下品な冗談なども言って他者を呆れさせつつも親しみを感じさせる――そんなキュートな少女です。
 一方で零は彼女のことを、「自分に絡む理由が分からない」「他の生徒達の憎しみを買う」などといった理由で苦手に思っていますが。

 煌華は騒がしくウザ絡みをしつつも、ふと、こんなことを言います。

「『魔族』が気になるの? 興味あるの?」

 一瞬、違和感を覚える零ですが、意図は煌華の口からすぐに語られます。
 彼女は世間の様々な話題について言及する雑談動画を投稿している配信者でもあり、「ちょうど魔族を取り上げた動画を投稿したから観てくれ」とのことでした。
「どうせ情報源としては役立たずだろう」と悲観しつつも、零は渋々視聴することにしました。
 なお、煌華が零を「魔族」という存在へ誘導したのは「再生数稼ぎ」以上の意図があってのことですが、それはまた後述。
 登場人物全員が何かしらの秘密と真意を抱えつつ行動している本作ですが、彼女もまた例外ではありません。

 さて。場面は変わり、昼休み。
 零は優利の作ったハイクオリティな弁当を、「姉にここまでされるのは恥ずかしい」と思いつつも感謝して頬張ります。
 その後、煌華の動画を観ることにしたのでした。


 動画の中で煌華は、魔族に関する基礎知識を話していきます。
 3年前から多発している猟奇殺人事件のこと。
 それの犯人こそ「魔族」なのだと疑われていること。
 報道上に確からしい情報が全く出回らないこと。
「魔族が人を殺してるところを動画撮影出来たら再生数が取れる」などという、ブラックな冗談も言ったりしています。
 そんな動画に、零は見入ってしまいました。
 情報そのものに新規性は無かったのですが、煌華の持つ「視聴者を魅了する類稀なる話術」に惹かれてしまったのです。
 隣で動画を観ていた優利は、何か思うところがあるような態度を見せますが、特に話しません。
 温厚な性格の為、物騒なニュースや噂を避ける優利。しかし実のところ、魔族については「それが単なる噂ではなく、確かに実在すること」も含めて知っていたため、そのような態度を取ってしまったのです。

拒絶する少女

 その後、学園でのシーンが終わり、零は帰宅します。
 彼は優利に連れられ、不登校の少女「天上静音(てんじょう・しずね)」 の家に訪問します。
 優利はその世話焼きぶりを発揮し、静音の通学を再開させたがっていました。一方で、零は「そっとしておいてあげた方がいい。逃げたって良いじゃないか」と考えており、あまり乗り気ではありませんが。
 ともかく、静音の家の前に着く二人。
 そこには、誹謗中傷の落書きがなされていました。


 落書きによれば「静音は魔族(=猟奇殺人者)だ」とのこと。
 彼女は単なる学生の少女であり、そんな筈がありません。完全に、いわれのない攻撃です――少なくとも、この時点ではそう描かれています。
 実のところ、これは煌華が人々をそう煽動した結果なのですが、彼女の真意はまた後述。
 落書きを片付けたのち、静音に部屋に招かれる高嶺姉弟。
 

・余談ですが、彼女の部屋にあるペットボトルには、彼女の○○○○が入っています。可愛いね。
 静音は完全に精神的に参っており、”離婚した両親の片割れである母から「早く死んでくれ」と思われているだろう”と語ります。
 ”頼んでもいないのに自分を産むな”とも。
 彼女のこの主張は本作のテーマの一つでもあり、プロローグでも少女が「生まれる絶望」について語っていました。
 本人は不登校、親はパートで働く母しか居ない、猟奇殺人犯扱いされる――そんな状況である静音は、最もこの苦しみを重く感じています。
 しかし、日々を穏やかに生きている優利には、彼女の気持ちが分かりません。
 自分の親に対して否定的なことを言う静音に怒りかける彼女を、零が止めます。
 弱者の気持ちに寄り添える彼は、ただ静音が本音を話してくれたことに感謝し、肯定するのでした。
 零の静音に対する優しさは、彼が「世界の不幸に寄り添い、共感していく在り方」を選んだことによって得た、最も価値あるものかも知れません。
 ともかく一旦落ち着き、飽くまでも「学校には行かない」と主張する静音を肯定する優利。

・零のこの「存在理由」に関する独白もまた、本作全体に通じる話です。
 今日は帰宅することにした高嶺姉弟。
 しかし、静音はそんな二人を引き止め、「アニメを観よう」と言い出します。
 この時観たアニメは『Probability Sky』。こちらもこちらで物語の紹介記事があるので、よろしければご覧下さい。

 アニメを観たあと、帰宅した二人。
 零は母親みたいに口うるさく「風呂に入れ、早く寝ろ」などと言う優利を見て、「母親」に対して思いを馳せます。
 三年前から別居している両親ですが、彼らに関する記憶が曖昧になっていたのです。
 この時は、その違和感について深く考えないようにする零。
 実は、両親に関する記憶もまた、零が自ら封印したものです。
 彼は静音と違い、両親に嫌悪感や不信感を抱いている訳ではありませんが、両親の存在が「彼が最も無かったことにしたい、とある事実」に繋がっているため、連鎖的にその記憶を封印してしまっているのです。(詳細はEp.3にて)
 違和感を無理やり払拭した彼は、今度は「魔族」について考えます。
 煌華の動画の影響で、より強く興味を惹かれた零は、「魔族に会ってみたい」と考えます。

「僕<にちじょう>を、壊してくれ」

 そんなことを、願いながら。
 これもまた、「自殺衝動」によって生まれた感情です。
 零の独白を追うと「世界が変わること」を望んでいるように見えるのですが、その実、彼はむしろ基本的に「自分が変わること」つまり「主観的な世界の変革」を望んでいます。
 彼は穏やかな人間であり、負の連鎖によって人が傷つけ合うことを嫌います。
 その為、物語を通して、少なくとも本人の意思の上では「自身の思うままに世界を書き換えること」は全く望んでいないのです。
 これを理解した上で読み進めると、彼の究極的な願望、そして彼が物語の最後で「あの選択」をした理由が分かるかも知れません。

 ある意味、この作品は「セカイ系を否定する物語」なんですよね。



――といったところで、今週は終わりです。
 序盤はキャラクターの紹介と現状の描写がメインですね。
 次はいよいよメインヒロイン……或いは主人公の登場シーン。
(本作、作者は唯理ちゃんが主人公で、零くんがヒロインだと思っています。)
 

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Hollow_Perception 2020/08/12 18:24

剣閃神姫誅伐伝 楽曲語り(ネタバレ注意)

剣閃神姫誅伐伝 楽曲語之章

 本コーナーでは、当サークル制作の和風ファンタジーRPG『剣閃神姫誅伐伝』にて使用させて頂いたBGM素材の一部を、個々のキャラクターにまつわるイベントにて使用したものを中心に抜粋して、使用場面や、本作中におけるイメージと併せて紹介していきたいと思います。
(”イメージ”とは飽くまで本作にてお借りする上での印象に限定したものであり、BGMそのものについて勝手になにかを定める意図はございません。)

 多分にネタバレが含まれますので、プレイ後の閲覧を推奨します。





 それでは、神話と剣の世界へご招待致します。

『神楽謡』

(まんぼう二等兵 様/https://dova-s.jp/bgm/play4210.html

 タイトル画面、零亞の初登場シーン、「天剣姫神」戦のBGMです。
 最初に流れるBGMですので、「惹き」になるような「聴いた瞬間に分かる圧倒的カッコよさと和風感」があるものが良いと思い、お借りしました。
 本作にてお借りしたBGM素材はどれも素晴らしいものですが、特に象徴的なものを挙げるとするのであれば、本曲と、後述する『日本開花』になるでしょう。(実際、PVにもこの2曲が使われています。)
 本曲は、(このゲームをアニメにたとえるなら)オープニングに当たる位置付けのものですが、物語的には、零亞が神を断ち切り「人としての始まり」を迎える、「神話の終わり(エンディング)」を象徴するものとなっています。
 最終回でオープニング曲が流れる演出って良いよね。

 イメージはまさに曲名通り「神楽」―― 零亞という女神に捧げる、可憐さと強さが合わさった歌舞であり、(本作の中における)彼女の持ち曲といったような形になります。
 彼女を祀る石碑の周辺にはたくさんの花が咲いていますが、そんな花吹雪の中で舞うように戦う姿がイメージ出来ます。
 ちなみに、マップ「卑圏の森林」に再訪した際に戦えるボスが落とす蘇生アイテム「天の花」は、眠っていた零亞の力の影響を受けて咲いた、天国にしか咲かない筈の花です。

『日本開花』

(H/MIX GALLERY 様/http://www.hmix.net/ 「和風の曲」参照)

 冒頭の「天剣伝説」の導入および「堕ちた天神 ユイ」戦のBGMです。
 ゲームをはじめからスタートすると最初に流れるBGMであり、実質的なラスボス戦でも使用されているため、特に印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
 非常にドラマチックな構成となっていて、まさに神話の始まりを予感させるようなイントロから段々と盛り上がり、激しい展開となっていきます。特に中盤以降の勇ましくも切なさのあるメロディは(ここまで聴けるのは基本的にはラスボス戦の方であるのも相まって)気持ちが非常に高まります。
 イメージは「神話」。キャラクターとしては、「レイア」の対になるもう一人の女神、ユイ――禍津結姫神のイメージです。
 本曲は、前述の『神楽謡』の対となるような位置付けとして選曲させて頂いており、ラスボス戦のBGMですが、物語的には「神話の始まり(オープニング)」を象徴するものとなっています。実際、導入部分でも使われていますしね。
 この「剣閃神姫誅伐伝」という物語は、禍津結姫神の手によって始められたと言っても過言ではありません。そして、彼女を討つことによって伝説は完成し、「伝説の先」へ向かう為の最終決戦が始まるわけです。
「剣閃神姫誅伐伝」とは、いわば「つけ損ねた決着をつけ直す」物語であり、本編で描かれているものは「神話におけるエンディング部分」であるため、このような逆転した構造になっているのです。
 
 彼女の、たった一人を救うために世界を巻き込んだ壮大な計画と愛、そして「単純な悪」とは言い切れないその生き様に思いを馳せてくれれば幸いです。
 まあそれはそれとして、かなりひどい女神様ですが。(作者特権でお仕置きしておきました。)
 なお、本BGMのアレンジ元である『華志の舞』も、禍津結姫神とのイベント戦闘にて使用させて頂いております。

『宵祭りの風』

(H/MIX GALLERY 様/http://www.hmix.net/ 「和風の曲」参照 公式Youtube試聴動画(2曲目)

 エンディングにて使用させて頂いたBGMです。
 明るく穏やかで優しい曲調の楽曲ですが、本作では零亞との別れを描いた、どちらかといえば悲しいシーンの中で用いられています。
 ただ、本曲は明るい中にも切なげなピアノで彩られたパートがあり、それが、ただ悲しいだけじゃない、前向きな別れを描いた結末に非常にマッチした選曲になっているのかなと思います。
 むしろ作者的には「本曲以外のBGMはない」というくらいに綺麗に「ハマった」選曲であると感じていて、それゆえ、これを聴くと泣くようになりました……。
 エンディングや山場となるイベント用にお借りした楽曲あるあるだと思うんですが、最高にハマった選曲が出来たものだと、制作後は拝聴するだけで泣くようになりませんか……?
 それはともかく。
 イメージは「安らかな眠り」といったところ。
 本作の結末は、いわゆる大団円とは言い難いものです。これは、それこそゲーム序盤から零亞の先が長くないことが提示されているように、約束されたものとなっています。
 それでも彼女は、自身の運命を、終わりを悲劇だとは思っていません。彼女は自らの望むままに最後まで生き抜きました。だからこそ、悲劇的なものではなく、優しい曲調の楽曲にて彼女を送るのです――「おつかれさま」という言葉と共に。
(プレイした方しか読んでいないと思いますが)スタッフロール後の最後の結末は、是非プレイして見届けてみて下さい。きっと満たされた気持ちになって頂けるかと思います。
 なお、エンディングは(勿論テキストを読むペースにもよりますが)ちょうど1ループ聴き切れるくらいの長さに調整していたり。

『聖戦の英雄』

(H/MIX GALLERY 様/http://www.hmix.net/ 「和風の曲」参照)

「阿令為」戦BGMです。
 重苦しいイントロから徐々に盛り上がっていく展開、そして最高潮を迎えるパートの熱くヒロイックなメロディは、本作の「悪役」であり、そして「英雄」でもある「羅刹王」阿令為という男に、非常にマッチしていました。
 また、女神に仕えた「剣の英雄」である劔(影時)にマッチしたBGMであるとも言えます。

 阿令為は、本作の影の主人公と言える存在です。
 かつて一人の少女を愛した者の残滓として、また、弱者を虐げる腐敗した人間達を憎む報復者として、羅刹の軍勢《永羅軍》を率いて王権に戦いを挑みます。
 この宣戦布告により、本作の物語は「表の始まり」を迎えます。(実際には、もっと前から全ては始まっていたわけですが。)
 羅刹の下っ端の多くはならず者ですが、彼自身は積み重なった怒りと共に善良な心も併せ持ち、それでも身も心も鬼にして戦う、「必ずしも悪とは言い切れない悪役」です。
 それどころか、彼に救われた羅刹たちにとっては、まさしく「英雄」と言える人物だったでしょう。

 彼の戦いの軌跡、そして行く末は――
――――鋭意制作中の続編『破天鬼姫永羅伝』をお楽しみに! 今度は主人公だそうです。

『志は死なない』

(H/MIX GALLERY 様/http://www.hmix.net/ 「和風の曲」参照 公式Youtube試聴動画(1曲目)

「紅月院暮乃」戦BGMです。
「天剣姫神」戦直前のイベントでも使われていますが、どちらかといえば、(暮乃さんがまともに挑むと本作屈指の強さなのも相まって)紅月院親子対決の印象が強いのではないかと思われます。
 これまでのバトルBGMから一転、曲調の激しさや軽快さは比較的控えめですが、満ち溢れる悲壮感は強く心を奮い立たせてくれます。
 暮乃は、序盤で描かれている通り、羅刹を差別し、後先考えずに強権を振りかざす高雅王権の為政に対して懐疑的でした。
 その思い(そして死への恐怖や娘への愛情)をかの女神に利用されて唆される形で、王権の乗っ取りを行おうとしてしまいます。
 結果的には彼女の強引なやり方は否定され、失敗してしまいましたが、母の抱いていた願いを知って、朱音は決意を抱くに至りました。
 暮乃の志が死んでしまうことは無かったわけです。
 実のところ、暮乃があそこまで無茶をした背景には、もっと根本的なきっかけとなる悲劇がありました。

 暮乃の想いの真相、そして、朱音が作り上げる「新しい世界」の未来は――
――――鋭意制作中の続編『破天鬼姫永羅伝』をお楽しみに!(2度目)

『流桜』

(modus 様/https://dova-s.jp/bgm/play12635.html

「魔炎を紡ぐ者」戦BGMです。
 イメージとしては言うまでもなく、烈華ちゃん(と彼女を支える光司郎)でしょう。
 華やかで軽快な音と曲調、そしてその中に輝く決意を感じさせるようなメロディはまさに、烈華と、彼女に関連する一連のイベントにピッタリでした。
 プレイアブルキャラクターの中では誰よりも常識的で人好きのする性格、(一応は)お姫様ゆえ芸事にも秀でている烈華ちゃん。
 しかしその本性は、とても臆病な少女でした。
 そんな彼女がかつて捨てた国のことを想い、決意を抱くこのイベントは、本作中盤の山場と言えるでしょう。

 余談ですが、佐咲烈華というキャラクターは、前作『ReIn∽Alter』の登場人物、佐咲煌華のセルフオマージュ的存在です。
 両作ともにプレイした方は、二人のキャラ性の共通点、そして相違点を考えてみると面白いかも知れません。
 常に烈華様の陰に立ち、(彼女が愚弄された時以外)あまり積極的に自己主張はしない光司郎ですが、彼の存在は彼女にとって非常に大きいものだったのかなと。

『アンゴラたちの踊り』

(まんぼう二等兵 様/https://dova-s.jp/bgm/play12170.html

 愛叉の初登場、初戦闘シーンにて使用させて頂きました。
 高揚感のある軽快なメロディがカッコ良くて心地良い、民族調楽曲です。
 概ねどんな状況でもブレない、屈託のない明るさと強さを持つ彼女の登場BGMとして非常に適合していたように思います。
 本BGMはいわゆる和風的な方向性の雰囲気ではありませんが、しかし、愛叉(と鬼人たち)は高雅王権の文化圏に属さない、異文化の存在です。その為、本作の多くの場面を彩る和風サウンドとの方向性の差異が、キャラクター性を際立てるのではないかと思いました。

 互いに鬼の矜持を貫き、アイナとの妥協なき死闘を行ったアイシャですが、”いつかまた”親友同士、平和に過ごせると良いですね。

『Mauve Rhopalocera -紫胡蝶-』

(ISAo 様/https://dova-s.jp/bgm/play12403.html

「イェル・アイナ」戦BGMです。本作においては彼女をイメージした選曲という形になります。
 本作のライバルキャラの一人でもあるアイナとは戦う機会が多く、特に一戦目は育成をしていないと苦戦しやすいので、こちらのBGMも印象に残ったのではないでしょうか。
 全編通してバチバチに盛り上がるハイテンポな曲でありながらも、激しいだけでなく華麗なピアノが際立つ様子は、丁寧な口調と少女的な可愛らしさに満ちた容姿でありながら、非常に好戦的な性格でもあるアイナにピッタリでした。
 矛を振り回し、鬼人特有の膂力で苛烈に立ち回る彼女の姿が浮かびます。
 ところで、そんなアイナがヒロインとなる続編が制作されているそうですよ!(発売日未定)

『アルカムイネ』

(もぜ園 様/https://mozeen.com/ こちらで試聴・購入可能なDL販売曲)

 通常戦闘BGMです。楽曲素材探しをしていたところ、本曲に一発で惹かれたので購入させて頂きました。
 ノリの良いアップテンポな民族調BGMで、全体を通してとても気分が高まるのと、明るい曲調なのが、本作の通常戦闘曲としてハマっているなと思いました。
 本作の世界観は「戦乱の世」であり、プレイアブルキャラクター達はみな荒事慣れしています。その為、凶暴な動物や平凡な羅刹(亜人族)が相手であれば、切迫感を出さずとも華麗に剣術や神言(魔法のようなもの)などで撃退出来てしまう訳です。
 そんなイメージが、軽快で爽快感のある本曲にマッチしていました。

『Prairie5』

(PeriTune 様/https://peritune.com/ ダウンロード・試聴

「黄泉島」の通常戦闘曲として使わせて頂きました。
 勇壮感のあるファンタジックなBGMで、特にサビに当たる部分は非常にアツく、ラストダンジョンらしい「負けられない・負けない戦い」という印象を持っています。
 決意を抱いて二人きりで黄泉島に向かった影時と零亞ですが、その後の「気持ちが高まる展開」を、本曲は更に熱く盛り上げてくれます。
 ああいうの王道だけどやっぱり良いよね。



 本コーナーは以上です。
 プレイされた皆様は劇中のどのBGM、どのシーンが印象に残りましたか?
 コメントなど頂けると幸いです。

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