R-ion/要餅 Apr/09/2024 19:19

イドコロあれこれ(シナリオ解説編)

ごあいさつ

こんにちは。見てくれてありがとうございます。この記事は拙作【ナツノイドコロ】のネタバレを多分に含みますのでご注意ください。シークレットバッジまで取ってくれた方向けです。

▼作品ページ
https://novelgame.jp/games/show/8617

▼いままでの記事
キャラ紹介編
https://ci-en.net/creator/24466/article/1114632

はじめに

今回はそのまんまシナリオ解説です。だいぶ作者の私情が入ってますがあしからず。ゲーム内だとめっちゃ読みづらいバックログ追加文章も収録しています。相変わらず長いです。ゆるくお付き合いいただけたら幸いです。

ストーリー解説

優しさを知らない少年が公園で出会ったお兄さんと短い間お話をする。それだけです。たったそれだけのことが、真白の人生を大きく変えることになります。二人が過ごした時間はせいぜい10〜20分ほどだと思います。お兄さんにとってはなんの変哲もないひとときですが、真白にとってのこの時間はかけがえのない宝物…と言えば聞こえはいいですが実際のところこのひとときの幻想だけに縋って10年間を生きたというだけです。真白のお兄さんに対する思いは憧れや好意というよりは信仰。おまけシナリオなどで見られるハッカ飴を食べる行為もお兄さんに近づくための儀式のひとつ。真白にとって信じられる優しさはお兄さんから与えられるものだけなのです。

黒江・灰などの登場人物は彼らの姿をより鮮明に描くために出しました。正直なところ最初は出す気はなかったです。他の角度からの物語があった方が面白いかなと思いおまけシナリオでは彼らの視点で話を書きました。他人の視点からしか分からない彼らの一面があるかもしれません。

エンディング解説

黒エンド:「ただいま。」

真白の家のことが分かるエンディングです。通称帰宅エンド。お姉ちゃんの存在感がすごい。いろんなところで言っていますが黒江は思考回路がおかしいだけで真白を痛めつけたいわけではありません。本当です。言動がアレなだけなんです…まあ無意識下に憂さ晴らしをしているところはあると思いますが…忘れがちですが真白を取り巻く環境が悪いのは黒江にも当てはまることで、彼女も被害者のひとりなんですよね、一応。黒江自身も父親から暴力を受けていますし…まあ気にしていないんですけど。でも多分そう思い込んでいるだけで彼女も傷ついていると思います。

この世界線での真白はどうなるのでしょうか。まあ生きているとは思いますが…あそこまでたくましくはならないかもしれない。あとお兄さんに対する依存度も低めになりそうですね。この世界線ではハッカ飴もらってないので思い出の中のお兄さんに近づく術がありませんし…それはそれで健全。…なんかこう話しているともしかして真白はお兄さんと会わないほうがよかったのでは…?なんて思ってしまいます。本当にそうなのかは誰にもわかりません。

灰エンド:「ばいばい。」

唯一の真白が死ぬエンディングです。作者的には本編より前に死んでいた想定で書きましたが、後から考えてみて本編後に死んだことにしても辻褄合うな…と思いました、ここらへんの解釈は各プレイヤーさんに任せます。真白は幽霊だったのか、それとも優しさを知り世界に絶望して死んでしまったのか。それは誰にもわかりません。作者にもわかりません。どちらにしろあの子が死んでしまったことには変わりありませんが…最期に優しさを知れてよかったのかな…

ここからはわりとどうでもいいこぼれ話です。後述しますが作者は灰と緋色の組み合わせが大好きです。(推しカプそこなんかいとか言わないでください…作者が一番そう思ってます…)3年近く擦ったからね。なのでこのエンディングの認識が「二人が出てくるエンディング」でした。ありがたいことに実況して頂く機会があり、その動画を拝見して初めてこのエンディングの後味の悪さに気づきました。ごめん真白。緋色と灰のやり取りは実は最後の方に少し書き足しました(「君にはもらってばっかりだね」辺り)ここで二人の関係に気付く人も多かったと思います。書き足してよかった。ここらへん書きながら「気づいてくれ…このクソデカ感情に…」と念を込めていたので…最後に全部持ってかれた感がありますが…その分おまけで掘り下げました。本当にこの二人大好きなのでぜひ覚えて帰って欲しいです。(図々しい)

白エンド:「またね。」

真白の成長した姿を見ることができるエンディングです。サブキャラが出ないエンディングでもある。堂々と授業サボってますがまあ仕方ないと思います。あの環境ですから…けっこうたくましく成長しています。言動の節々に諦観が見えるのはお兄さんに似ているかも。本編最後で『先生』と会うことになりますがあの表情は一体…『先生』に関するところの解釈はプレイヤーさんに任せたかったのでかなりぼかしました。一応作者の中で答えはあります。いろんな解釈が聞きたいので言いませんが。

このエンディング、実装するかかなり悩みました。なんというか、原案(3年擦った方)に繋がるエンディングなので、いちおうif世界線のこのゲームで軽率にやっていいのか…?という感じで。でもいろんなところで「いいエンディング」と言ってもらえたのでよかったです。初期段階では全部後味の悪い終わり方にしてやろうと思っていましたが一個ぐらい希望が見えるエンドがあってもいいですよね。

おまけシナリオについて

せっかくなのでこれにもちょっとした解説を。いちおうタイトルがあったりします。

「黒い噂と白猫と」

お姉ちゃんを取り巻く噂とクラスメイトのお話。黒江は学校では主に家庭環境のことがあって避けられ気味です。うまく隠していますが、ところどころで異常性が見え隠れしています。あと持っている刃物が全部血で錆びついていたり…こんな同級生嫌だ。白猫であることに特に意味はありません。強いて言えば真白を連想させるものだから。白ければなんでもいいのでは…?

クラスメイトの視点を入れたのは、他人の視点から見た彼女の姿を描きたかったからです。あと名前のないキャラを動かすのをやってみたかった。黒江自身自らの異常性を隠すつもりは無いし、クラスメイトとは平和にやっていけたらいいな〜くらいの気持ちです。なので話しかけられたら普通に接するし授業もおとなしく受けます。真白関連のことになるとおかしくなるだけでわりと普通の中二女子です。そこらへんあんまり書けなかったな…

「灰色の憧憬」

灰と緋色の学校でのひと幕。灰の掘り下げをしたかったのと緋色の本編とはちょっと違う一面を見せたくて書きました。キャラ紹介でも書きましたが灰は自分の立場にかなり疲弊しています。人前ではがんばって取り繕っていますが時折危うい一面が出てきます。言うてまだ高校生ですから…。緋色にも嫌われたくないので取り繕おうとしますがお見通しです。灰の機嫌が悪いのを見透かして「うわっ」て思ってます。でも頼りたいし機嫌の悪い先輩といたくないしで拗ねてます。けっこう可愛いところあるんですよ…本当は緋色の視点も入れたかったのですが、長くなりそうだったので全カットしました。書きたかったな…先輩の機嫌が直ってなぜか得意げにしているところとか…

ちなみに最初の灰の独白の部分は半分くらい作者の体験談です。(どうでもいい情報)なので無駄に生々しいです。すみません。全部諦めてるように見えて嫌な教師を殴ってやろうかと思うくらいの反骨心はあります。さすがにやらないけど。言うてまだ子供なんですよね。こういうキャラのメンタル等身大なところが見えるのが好きで…彼は優秀なのでよっぽどのことがないとあんなことにはならないと思いますが病んでるところが見たかったのでそういうことにしました。すまん。

見ての通り灰は緋色にかなり入れ込んでいます。というか好きだと思う。本当はかっこつけたいけど結局甘えちゃってる。緋色の前では素が出せるのでつきまとっているという感じです。緋色は灰の素の部分しか知りません。よくこれで優等生やってるなと思ってます。でもそんな先輩のことは嫌いじゃないしなんやかんやで絆されています。これからもうまくやっていってほしいですね。できると思うなよ。

「呼びかける白」

家での真白の様子とお兄さんへの思いの話。エンディング「またね。」より少し前の話です。真白が見る夢は基本的に悪夢か存在しないお兄さんとの記憶のどっちかです。地獄かな?いつも暇を持て余して寝ているので夢をコントロールするのが得意。でも悪夢は見るしお兄さんのことはかなりおぼろげです。なかなか思うようにはいかない。薄れていくお兄さんの思い出にかなり焦っています。縋るものがなくなってしまうので必死です。好きでもないのにやたらとハッカ飴を食べてるのはそのせい。味で記憶を思い出すとか言いますからね。

夢の内容ですが、真白がお兄さんに対する思いをだいぶ拗らせていることが伝われば作者的には満足です。まあ初めて優しくしてくれた人だしあの環境にいれば思いを拗らせるのは必然というか…本当はもっと一緒にいたかっただろうし絆創膏も貼って欲しかったんでしょうね…全てを諦めているようで全然諦められていないのがわかります。真白は黒江がいる限り幸せにはなれませんし彼自身もそのことは分かっていますが彼女のことを未だに「お姉ちゃん」として認識しているんですよね…父親のことは「あいつ」と呼んでいるのに。歪だけど彼女なりに愛されてるのは分かっているんでしょうね。認めたくないけど。でも痛いのは嫌だからやっぱり黒江のことは怖い。こればっかりは本当にどうしようもないです。

藍色のひととき

成長したあの子の隣の席の子との穏やかなひととき。白エンドの世界線…10年後のお話です。なんてことのない日常の一幕。でもちょっと不穏なものが見え隠れしているような…ところどころの発言がなんか不穏ですね。
彼は水代藍といいます。(実はバックログ見れば名前が分かる)保健室の常連生徒です。詳しくはキャラ紹介編をチェックしてみてください。(宣伝)構ってくれる『先生』に懐いており、彼が何気に真白のことを気にかけていることにちょっとやきもきしています。ただ構ってほしいだけなのか、それ以上の何かがあるのか…まあここではわかりませんが。

藍くん、たぶん先生とどうでもいい話をできるのが嬉しいんでしょうね。ちょっと事情が複雑で家ではあまり話さないので…昔のこと聞いたり、恋バナしようとしたり…彼も本当は普通の高校生らしいことがしたいようです。

バックログの隠し要素

エンディング「またね。」を回収すると見ることができるちょっとしたお話です。見逃した方も多いと思いますので、ここに収録します。(バックログだと読みづらいですしね…)

再録シナリオ

「目」

 あの日の思い出に浸るとき、まず思い出すのは、赤。それは鮮烈に幼いボクの目を刺した。
 遠い記憶、とうにぼやけてしまったあの夏の日の中でたったひとつ、鮮明に憶えていることがある。ー目だ。その人は暗い目をしていた。暗い、暗い…水の底のような。ここではないどこかを見ているような。それでいて不思議なほど穏やかだった。ー怖い。そのはずなのに、落ち着く…ずっと見ていたくなる。幼心にそう感じていた。

 ーまた、まただ。ボクはあの目に見られている。瞼の裏に貼りついて離れない赤色。名前のわからない花と同じ色。遠い遠い記憶の底から、今もボクを見つめている。揺れる木陰と、蝉の声。揺れる意識に身を任せて目を開ける。何度も繰り返した景色が薄汚れた天井に反響する。ここはボクだけの世界。今日も壁越しの怒鳴り声に耳を塞ぐ。ふいに見えた空は人の気も知らないで晴れ渡っていた。こんな日はよく眠れそうだ。
 今日はどこから思い出そうか。保健室で貰ってきたハッカ飴を握りしめて、ボクはまた目を閉じた。

「死」

死ぬことは怖いこと…お姉ちゃんが言っていた。ボクに会えなくなるからだそうだ。でも、ボクにとってはそれは希望のようなものだった。あそこから解放されるなら、もう誰にも傷つけられなくなるのなら。むしろ喜んでそれを受け入れる。でも、周りは違った。テレビでは連日何かの事件で誰かの死を悼んでいる。「死ぬことは、こわいこと。」ボクはそう思い込むことにした。でも、どうして、こんなにも心がざわつくのだろう。

 誰もいない屋上の入り口の踊り場。辺りには埃が舞っていて座る気にはなれない。かすかに白っぽくなった手すりに体重を預けながら物思いにふける。人間は意外と脆い。この一階の半分の高さの階段からだって、落ちたら充分に死ぬ確率がある。…なのに、ボクはどうして死なないんだろう。
 きっとボクはおかしいんだと思う。…いや、ボクの周りがおかしい、と言ったほうがいいだろうか。受け入れるしかない…あの人はそう言った。きっと軽い気持ちで言ったんだろうけど、その言葉は今でもボクの中に澱のように残っている。誰が見ても異常な、ボクを囲っている地獄。それを知っても、あの人は同じことを言うのだろうか。
 ボクが死んだらあの人は、どう思うのかな。悲しんでくれるだろうか。…少なくとも、クラスの人たちよりは悲しんでくれるような気がする。

だって、あの人はー

「傷」

 常に肌に赤色の線が引かれていること、青紫の染みがあること、体中が軋むこと…それが当たり前だと思っていた。だって、それしか知らなかったから。生まれた時からボクの周りには、ボクを傷つけるものしかなかったから。ーだからだろうか。生まれて初めて心配してくれたあの人が、数分言葉を交わしただけの赤の他人が。何よりも特別なものとしてボクの脳裏に焼き付いている。

 ガタガタと引き戸を開ける音。ここは秘密の場所。誰にも侵されてはいけない、ボクだけの聖域…というほど大層なものではないけど。子供がよく作る『秘密基地』のようなものだ。お姉ちゃんが”あいつ”に呼び出されたときだけ、ボクはここに来ることができる。ここにあるのはぼろぼろのタオルと飴の入った瓶だけ…それで充分だ。ボクを傷つけるものはここにはない。
 ハッカ飴をひとつ、口に入れる。そのままタオルの上に寝転がって飴を転がしながら、ぼんやりとあの人のことを考えていた。ぼやけてなくなってしまいそうな思い出をなんとか掴もうと集中しているうちに外が明るくなってくる。そろそろ帰らなきゃいけない。

 何度でも、あの夏の日を繰り返す。お兄さんに助けられたところからひとつひとつ、記憶を解いていく。ひとつもこぼさないように、大切に抱えている。あの日のハッカ飴のような、この地獄の中の一粒の清涼剤。今日も口の中で転がして、ひとときの幸福を得る。

ーあなたがボクの中からいなくなってしまう、その日まで。

解説

「目」

成長した真白のモノローグ。ある夏の日のひと幕。この話だけでなく、バックログに追加した話は基本的に幼い真白→成長した真白の視点の二段構造です。と言っても幼い方はその頃の気持ちを今の真白の言葉で書き出している…という感じですが。お兄さんのことがずっと忘れられない真白。その中でも特に目が印象に残ったようです。今日も緋色の瞳に見つめられながら、あの日の夢を見る…もはや信仰では?いろんなところで言っているような気がしますが、真白はとにかくお兄さんへの思いを拗らせまくっています。たぶんお兄さんも人間だということを忘れてる。だいぶ妄信的というかなんというか。…これ再会してしまったら大変なことになるのでは?

「死」

真白の死生観のお話。昼休みのひと幕。真白は環境のせいで死に対する抵抗が薄いです。むしろ救いだと思っていたところがある。お兄さんに出会ってそう感じることはそんなになくなりましたが、未だに抵抗は薄いままです。自分が死ぬときに誰かが悲しんでくれたらいいなぐらいに思っています。まあ一瞬救われたところで真白を囲う地獄は変わらないので…たぶん真白は包丁とか高いところとかの『自分を殺せるもの』を見るたびにざわざわするタイプです。魔が差してしまいそうなのをなんとか抑えて今まで生きています。まあそういう人けっこう居そうですが。今までさんざん痛い目にあってきているので人間の脆さも強さもよく知っています。
そういえば、真白の言う「あの人」は誰なんでしょうね。ちなみにこの話はエンディング「またね。」から少し後の話です。

「傷」

真白と秘密の場所の話。ある夜のひと幕。真白はお兄さんに会うまであの環境しか知らなかったので、自分が傷だらけなのを「当たり前」と思っていました。でもお兄さんに出会ってしまったことでそうじゃないことを知ってしまいます。残酷。真白もいちおう頭ではお兄さんがただの他人だということは分かっているんですよね。でもやっぱり「あの人となら幸せになれるかもしれない」という希望を捨てられないようです。というかそれしか希望と言えるものがないのでそれに縋るしかない感じ。もう開き直ってお兄さんのことを完全に忘れてしまうまで縋り続けてやるといった思想になっています。その様子が飴を舐めることとちょっと似ているなと思って重ねたような表現をしてみました。「この地獄の中の一粒の清涼剤」というフレーズはお気に入りです。
真白関連の話によく出てくる『秘密の場所』ですが、特に大きな意味はありません。町のはずれにある誰もいない廃倉庫を真白が勝手に居場所にしてる…みたいな認識で大丈夫です。お姉ちゃんがいるときに逃げるともっとひどい目に遭うので基本的に黒江がいないときにこっそり逃げ込んでいる…という感じです。いつか捕まりそう。やっぱりお姉ちゃんがいなくてもあの家には居たくないようですね。

記事の感想について

ここだけ見る人もいると思いますので一応。
全体公開なので好きにつぶやいてくださって大丈夫です。本編のネタバレを含む内容の場合はワンクッション挟むなどの配慮をお願いします。

さいごに

ここまで読んでくださりありがとうございます。ちょっとでも理解を深めていただけたのなら幸いです。次の記事はほぼ一から書くのでゆっくり更新になると思います。よろしくお願いします。

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