シャルねる 2024/01/03 08:07

19話:元はと言えば

 セナが私を運んで歩いてくれたおかげで、街が見えてきた。……夜だから、門が開かなくて入れないけど。
 そして、それと同時に私のお腹がなった。

「い、今のは、ち、違うよ?」

 その瞬間、私は恥ずかしくなって、セナに言い訳をした。
 
「マスター? お腹すいたんですか?」
「ち、違うから。い、今のは私じゃないから」

 セナと私以外に誰もいないのに、私はそんな言い訳をした。
 セナはそんなバレバレの言い訳をした私を、可愛い顔で見つめてきた。……私は更に恥ずかしくなって、顔が熱くなってきた。だから私は、セナの首の後ろに腕を回して、セナにくっついて、セナから私の顔を見られないようにした。
 ……胸が邪魔で、だいぶセナに押し付けちゃってるけど、セナなら痛くないと思うから、大丈夫。

「ま、マスター、お、お腹がすいたのなら、わ、私が適当に動物を狩って来ますよ」

 セナは何故か恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうな声でそう言ってくる。
 ……私が恥ずかしいはずなのに、なんでセナが恥ずかしそうなの。

「……捌いたり、出来るの?」
「そ、それは……出来ない、です……」

 さっきまでの嬉しそうな声とはうってかわり、セナは悲しそうな声でそう言った。
 その声を聞いた私は、セナにまだ熱い顔を見られないようにしながら、セナの頭を撫でながら言う。

「セナ、大丈夫だから」

 昨日も我慢できたんだし、今日くらいは大丈夫だと思う。
 そう思って、私はセナに安心させるように言った。
 まぁ、元はと言えば、私が食料を持ってこずに、街を出たのが悪いんだし。

「で、でも……マスターが何も食べてなくてお腹がすいてるのに、私だけ、マスターの血を飲んじゃいましたし……」
「そういう約束だったし、私から飲んでって言ったんだから、気にしなくていいよ」
「で、でも……もう、無理やり街に――」

 気にしなくていいって言ってるのに、何かを言おうとしてくるセナをちょっと強めにギュッとして、何も言わせないようにした。

「セナ、今日はもう寝るね。明日、門が開いたらすぐに起こしてくれたらいいから」
「で、でも……」
「どうせ今日は入れないし、さっさと寝て、明日になったらすぐに朝食を食べるからさ」

 そう言うと、セナは不満そうにしつつも、受け入れてくれた。
 私はセナにお礼を言いながら、目を閉じた。

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