シャルねる 2024/01/02 08:05

18話:それは血を飲んでいいかの話でしょ

「せ、セナ? 大丈夫?」
「ますたぁ……大丈夫、です……ますたぁ、が、我慢しなくていいって、言ってくれましたから……」

 そう言って、セナは私の唇を舐めた。

「ッ!?」

 私はびっくりして、反射的にセナから離れようとしたけど、セナに抱きしめられていて、離れることは出来なかった。
 わ、私今……え? な、舐められた!? く、首とかじゃなくて、く、唇を。
 こ、これも吸血鬼の文化的なの、なのかな。……そ、そうだよね。そうに決まってる。そうじゃなかったら、セナがいきなり私の唇を舐めてくるなんて、意味わからないし。
 
「ますたぁ、ますたぁ……ますたぁ……もうちょっと、もうちょっとだけ……」
「う、うん。い、いいよ」

 ほんとは、これ以上は断った方がいいのかもしれないけど、昨日、約束を覚えてなかった罪悪感から、私には断ることなんて出来ない。
 
 そして、私がそう言うと、セナは私の後ろから抱きついてきて、後ろから私の胸を揉みながら、私の首元を舐めてきた。

「せ、セナ!? そ、そこは……んっ、まっ」
「ますたぁ……美味しいです……好きです……大好きです」
「あっ、んっ、セっ、ナ……」

 上手く返事が出来ない。
 それどころか、どんどん力が抜けてきて、私は後ろから抱きついてきているセナにもたれかかった。
 すると、セナは首元を舐めるのをやめて、恥ずかしさで真っ赤に染まっている私の耳を舐めてきた。




 いつの間にか、全然進むことなく辺りが暗くなってきていた。
 そして暗くなってきた頃に、やっとセナは冷静になってきたようだ。

「ま、マスター、ご、ごめんなさい」
「せなぁ……」

 私はセナのせいで、力が入らなくて、まだセナにもたれかかりながら、なんとかセナのことを呼んだ。

「は、はい……マスター」

 これが仮に吸血鬼の文化だったんだとしても、これだけは言わせて欲しい。

「……変態」
「ち、違いますから! ま、マスターが我慢しなくていいって言うから……」
 
 セナは慌ててそう言ってくる。……我慢しなくていいって言うのは、血を飲む話でしょ!

「ま、マスター……私の事、嫌いになりましたか?」

 セナは少し俯きながら悲しそうな顔で、泣きそうになりながら私に恐る恐るそう聞いてきた。
 
「………………嫌だったとは言ってないけど」
「え?」
「も、もういいから! この話はいいから! 私の事運んで! セナのせいでもう歩けないから!」

 私は恥ずかしさを誤魔化すために、早口でそう言った。
 もう暗くなってきてるけど、セナのせいで進めなかったんだから、少しでも進んでもらわないと。
 ……元はと言えば、私が約束を忘れてたのが悪いんだけどさ。……これくらいの八つ当たりは許されるはず。

「は、はい! 任せてください!」

 私の言葉にセナは嬉しそうに返事をすると、もはや安定のお姫様抱っこで私を抱えて、セナは幸せそうに歩き出した。

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