シャルねる 2023/12/27 08:08

12話:夕食

 宿も取れたということで、私たちは夕食を食べに、お店に来ていた。

「セナは何を食べる?」
「私は大丈夫なので、マスターが食べてください」

 ……いやいやいや、いくら私でも、それは無理だよ。
 だって、私何もしてないんだよ? セナが働いて稼いでくれたお金で、私だけ夕食を食べて、セナが食べないなんてありえないでしょ。

「大丈夫ってことないでしょ。食べないと」
「マスター……その、私の種族を思い出してください」

 セナは小声で、他の人に聞こえないように、耳元でそう言ってきた。
 耳元で話されて、変な感じになっちゃったけど、それを無視して、私はセナの種族を思い出す。
 そっか、吸血鬼だもんね。……食べられないのか。

「そういうこと」
「はい。そうです。……それで、なんですけど……もし、マスターがよろしければ、後でマスターの血を飲ませてくれませんか? ……あっ、だ、だめなら大丈夫ですから!」

 セナは遠慮がちに、また耳元でお願いしてきた。
 
「もちろんだめなんかじゃないよ。部屋に行ったら、飲んでいいからね」
「は、はい!」

 だめなんて言うわけが無い。
 セナのおかげで私は今、夕食を食べられるんだから。

「じゃあ、私だけ頼むね」

 そうセナに言ってから、私は適当な料理を頼んだ。
 その際、私の分だけを頼むのを、怪訝そうな目で見られてしまった。
 あの人の目で気がついたけど、事情を知らない人から見たら今の私ってかなり性格が悪いよね。セナの前で私だけが夕食を食べるんだから。
 い、いや、他人の目なんて気にせずに、食べよう。

 そう思った私は、怪訝な目で見られながら、夕食を食べ終えた。
 そして、その間セナは、私の食べている所を幸せそうに見ていた。
 ……正直それが一番恥ずかしかったかもしれない。





「美味しかった」

 私はそう言いながら、宿の借りた部屋に入った。
 そして、部屋に入った私は、宿屋の人に貰ったお湯が入った入れ物にタオルを入れ、タオルをよく絞ってから取り出す。

「セナ、私が体を拭いたら血を吸っていいからね」
「あっ、ま、待ってください!」

 服と下着を脱いでから、そう言って私が体を拭こうとしたところで、セナが妙に顔を赤らめながらそう言った。
 
「どうしたの?」

 私は手を止めて、そう聞いた。

「あ、えっと……拭く前に、飲みたい、です」

 セナは耳の先まで真っ赤にしながらそう言った。
 いや、まぁ私としてはいいけど、そこまで恥ずかしがることかな? ……吸血鬼的には恥ずかしいのかな。

「いいよ」

 能天気にそう考えた私は、指をセナに向けながら、そう言った。
 あの牢屋で飲まれた時と同じ感じだよね。
 あの時はまさかセナが吸血鬼なんて思わなかったなぁ……そもそも、セナがこんなに強いことすら知らなかったし。

「あ、あの、マスター……」
「ん? 飲まないの?」
「あ、あの時は緊急だと思ったので、指から飲みましたけど、ほ、ほんとは……く、首元から飲みたいです……」

 セナは更に顔を真っ赤にさせながら、言いにくそうにそう言ってきた。
 まぁ、私的には、そうなんだって思うだけだ。

「うん。いいよ」

 私は、首元の髪を退けながら、そう言った。

「あ、後ろ向いてた方がいい?」
「い、いえ、そのままで大丈夫です」

 セナはそう言いながら、私に近づいてくる。
 私は少し痛いのを覚悟して、目を閉じた。

「ひゃっ」

 すると、首元をセナに舐められた。
 噛まれて痛いのを覚悟していた私は、びっくりしてそんな声が漏れてしまった。

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