7話:気を遣ってるわけじゃないの?
私はセナの体温が暖かくて心地よく、いつの間にか眠っていたみたいで、今目を覚ました。
目を覚ました私は、直ぐにセナと目が合った。……一瞬だけセナの存在にびっくりしたけど、直ぐに昨日のことを思い出して、セナの存在に安心した。
「おはようございます、マスター」
「おはよう、セナ。……セナはちゃんと寝た?」
私は街の方を見て、まだ門が開いてないのを確認してから、セナにそう聞いた。
門が開いてないってことは、まだ朝になったばかりってこと。……そして、セナは今さっき起きた感じじゃない。……寝てないなんてことは無いよね? セナ。
「ね、寝ましたよ?」
「ほんとに? 嘘だったら怒るよ」
「う……ご、ごめんなさい、マスター。……本当は寝てません。……で、でも休みはしましたよ!」
寝てないのに休んだって意味無いでしょ。
でも、セナはもしもの時の為に私の護衛として起きててくれたんだよね……
「私の為に起きててくれたんでしょ? だったら今回は許すよ。……と言うか、ちゃんと交代で起きる時間を決めておくべきだったよ。私がちゃんと決めておけば、セナも寝る時間を取れたのに……ごめんね」
私の危機感が足りてなかった。……昨日は自然と二人で寝るのかと思ってたけど、そんなわけないもんね。
もし次の機会があったら、今度はしっかりしないと。
「ま、マスター、謝らないでください! むしろ起きてられて幸せでしたから!」
「セナ、気を遣わなくて大丈夫だよ」
悪いのは私なんだから。……そんなバレバレの嘘をつかなくてもいいよ。
起きてられて幸せなわけないでしょ。……私だったら絶対寝たいもん。
「気なんて遣ってません! ほんとに幸せだったんです! だ、だって……その、ね、寝てしまったら、マスターの体温を感じられないじゃないですか……」
セナは少し顔を赤らめながらそう言った。
「い、いや……え? ほ、ほんとに幸せだったの?」
「はい!」
私はセナの顔をじっくり見るけど、嘘を言ってるようには感じられない。
「だ、だから……もし、次野宿することがあっても、こんな感じに……その、マスターの体温を感じさせてください! ……そ、そうしたら私が見張りをしておきますから」
「それは……助かるけど、ほんとに寝なくて大丈夫なの?」
「大丈夫です! 眠ることより、私はマスターを感じたいです!」
セナが恥ずかしそうにそう言う所を見ると、本気で言ってるんだと分かる。
……私も昨日はセナの体温が心地よくて寝ちゃったし、セナもそんな感じなのかな? ま、まぁ、セナが本気でそう思ってるなら、いいか。
「分かった。だったら、もし次こんな機会があったらよろしくね」
「はい! 任せてください!」
……次野宿するような時は、テントでも買うつもりだったけど、テントの中からじゃ見張りとか出来ないだろうし、テントは買わなくてもいいかな。
……私もセナとくっついてたら寒くないし。
そして、そんなことをセナと話してる間に、街の門が開いてきた。
「セナ、門が開いたから、行こう」
「はい!」
セナは私をお姫様抱っこしたまま、木から飛び降りる。
私は衝撃が来ると身構えたけど、衝撃が来ることは無かった。
私がそれを不思議に思ってる間にセナは街に向かって歩き出した。
「待って、セナ」
「どうかしましたか? マスター」
「下ろして」
「私なら大丈夫ですよ?」
「そうじゃなくて、私が恥ずかしいから」
流石に街に入って、お姫様抱っこをされたままだと、色んな人に注目されてしまう。
それは流石に恥ずかしい。
だから、私はセナにそう言った。
「……分かりました」
セナは私の命令だからと、渋々私を下ろしてくれた。
……そんなに私をお姫様抱っこしてたかったのかな。……まぁ、ここは私たちが逃げてきた街から近いし、すぐに出ていく予定だから。……その時にまたお願い。とセナに言ったところ、セナは笑顔で頷いてくれた。