他で見かけないけど効果は絶大。幕間演出について
あんまり他で見かけない?幕間演出
今日は幕間演出について語ろうと思います。
うちのノベルゲームではよく幕間演出を入れます。
思えば、第一作である「発掘少女」の頃から、何の疑問もなく入れていました。
珍しいですよね。思えば、他作者様の作品で幕間演出をあまり見たことがない気がします。
もともと小説畑だったので、小説の章転換・場面転換のノリをそのままゲームに持ってきたのかもしれません。
ちなみに、こういうのです。
↑シーンとシーンの間に、こういうカットインが入る
幕間演出の効能
この幕間演出は、もともと単なるシーンの切れ間を繋ぐために入れていたのですが、
今は、それ以上の意味があると思っています。
ゲームのボリューム感を向上させる効果
実際より、規模の大きいゲームをしている感覚
まず、幕間には、そのゲームのプレイ時間を長く感じさせる効果があります。
これは、退屈さを助長させるという意味ではなく、たとえば正味30分の作品なのに、1時間級の作品を読んだ時のような満足感を与えることができるという意味です。
実際に、プレイ時間30分前後の「等速運動の君へ」では、そのような意見を多数いただきましたし、後続の作品群でもこの傾向は一緒です。
全体的に、うちの作品は、他の同規模の作品に比べて、そういう傾向があるようです。
実際のプレイ時間以上に、ボリューミーさ・満足度を感じていただけているみたい。
単なる暗転より、明確な「仕切り直し」効果
これを自己分析したところ、その満足度の一助になっているのが幕間だとわかりました。
ためしに、幕間シーンを全て単なる暗転に置き換えてみると、流れでずるずるっと読んでしまい、シーンの切れ間がなんとなくぐたぐたします。
また、時間経過や場面移動の説得力が弱くなり、全体的に駆け足感が増します。
言い換えると、これらの時間経過・場面移動・シーンごとの雰囲気の変化など、そういう「仕切り直し」を強調する意味で、幕間演出は大いに役立っているわけです。
全体の尺感を伝える
また、最近の作品で筆者が幕間演出に求めている効果は、それだけではありません。
それは、幕間演出を通して、全体の尺感を伝えるという効果です。
実例
たとえば、「等速運動の君へ」では、幕間演出でロケットマップが表示され、スタートからゴールまでの間で、自分がどの位置にいるかがわかります。
各1マスは1シーンに対応しているので、つまりあと何シーンくらいでクライマックスに入るか、プレイヤーは把握しながらゲームをプレイできるということです。
↑全体のマス目から、ストーリーの規模感や現在位置を把握できる
この方式は、形を変えてその後の作品でも踏襲され、「触れたくないけど、そばにいて。」では、冷蔵庫に貼ってあるスタンプカードが、「俺と彼女と誰かと誰か」ではバベルの塔がそれぞれその役目を果たしています。
↑シーンが進むと、冷蔵庫右下のスタンプカードのスタンプが、バベルの塔の次の階がどんどん埋まる
ストラクチャー(構成)が伝わりやすくなる
この尺感を伝えることによるメリットは結構すごいです。
まず、物語のストラクチャー(構成)がよりプレイヤーに伝わりやすくなります。
「等速運動の君へ」以降、作品全体の構成力をお褒めいただく機会が増えたのですが、それは筆者自身の執筆能力の向上というよりは、幕間演出によるところが多いと思っています。
どういうことかというと、幕間演出でプレイヤーは尺感を把握しているので、「そろそろ事態が動くのかな」「ここからどう巻くんだろう」「これからクライマックスだな」といった具合に、物語の尺も考慮したうえで、お話の展開を掴みやすくなるんです。
これは、いわば、物理本で小説を読んでいる時に、残りページ数の厚みを把握しながら、読み進める感覚に近いです。(まだ半分くらいだから、ここからもう一波乱あるな、みたいな)
ストラクチャーを理解していただけるというのは、創り手にとってはとてもありがたいことです。
プレイヤーのかたがた自体に序盤感・中盤感・終盤感をそれぞれ持ってくださるので、ストーリーの把握をしてもらいやすくなります。
作品のテーマやメタファー、途中途中に張り巡らせた伏線に気付いてもらう確率も上がります。いいことづくめです。
実況する時、時間把握しやすい
また、もうひとつ、ゲーム実況してくださるかたへの配慮という面もあります。
幕間を通して、自分が今どの位置まで読み進めているかわかれば、進捗具合に応じて、巻くか、もう少し実況の尺をとるか、実況者さんご自身が調節しやすくなります。
これは動画をつくる時にも、配信する際にも役立ち、動画なら全体で動画何個分になるか、配信ならあと何分くらいで最後までいけるかの予想が立てやすくなります。
視聴者さんにとっても同じことがいえて、いわば幕間による尺感は、動画や配信におけるもうひとつのシークバーとして、機能するわけです。
ゲームっぽさの向上
上記は、幕間演出による効果の代表例ですが、他にも様々な効果を付帯することができます。
たとえば、上述のように「等速運動の君へ」では、幕間でロケットマップを操作します。
↑シーンが進むと、自分で明示的にロケットを動かすアクションが発生
これは、変則的なルート解放に近いものです。
任天堂のゲームとかでもよくありますよね。1面をクリアしたら、地図上の道が2面に伸びて、先に進めるみたいな演出が。あれに近いです。
「等速」は、選択肢のない一本道なのですが、「自分で駒を動かす」というアクションは、一本道ノベルにほのかなゲームっぽさを付与します。
ノベルゲーム、ましてや一本道ノベルは、ただでさえゲームっぽさの少ないゲームジャンルです。なので、このわずかな「ぽさ」の有無は、ゲーム的没入度、ゲーム的満足度を向上する意味で、めちゃめちゃ重要だと思っています。
テキスト以外での描写
「触れたくないけど、そばにいて。」では、冷蔵庫のホワイトボードを通して、登場人物同士の交流を描きました。
↑左下。メインキャラの旭と工藤の交流がここでおこなわれる
こういう演出は、時として文章として「仲良くなった」の一文を添えるよりずっと強い効果を与えます。
実際に生活している感。時間が経っている感。互いの交流がある感。距離が縮まっている感。これらが、一切地の文を使わず表現できるメリットは計り知れないです。
さりげないヒント
「俺と彼女と誰かと誰か」では、「触れたくないけど、そばにいて。」ほど劇的な効果はありませんが、幕間演出ごとにそれっぽいフレーバーテキストを表示しています。
↑テキストで次シーンの暗示や、攻略のヒントをさりげなく
このフレーバーテキストは、「等速運動の君へ」でも出しており、それとなく次シーンの展開を暗示するものになっています。
「俺と彼女と誰かと誰か」では、更に踏み込んで、ゲーム内の攻略のヒントも、ここで出しています。
なんとなく答えを連想する言い回し、答えの方向性をここで示唆しています。
実際、どのくらい役立っているかは、まだリリースしたばかりなので、拾いきれていません。ただ、煮詰まってしまった時の考え方のきっかけになったり、配信をしていれば、視聴者の誰かが気付いて、コメ欄が捗ってくれたりしたらうれしいなと思っています。
以上、かんたんですが、うちの作品でよく使う幕間演出についてと、その効能でした。
↓おまけは、幕間についての、より細かいこぼれ話です。(おまけのラクガキもあるよ)
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