流れ雪月花 2022/08/03 20:00

ライブアライブリメイク感想回

そんな訳で、今回はライブアライブの感想を語ります。大きなネタバレはありませんが、多少ゲーム内のイベントに触れる事もあるので、嫌な方は回避して貰えると嬉しいです!


制作と関係の薄い話題なので、絵をちょっと多めに入れます。
誤魔化しである。

ライブアライブの話

始めます。
結論から言うと、原典のファンからすると大満足のリメイクでした!おれのかんがえたさいきょうのリメイクに近いモノがあります。そんな訳で、今作の感動ポイントをゲーム制作目線でブツクサ呟いていきたいと思います。スーファミの頃のあやふやな記憶で語るので、正確さは保証しません。


実はHD2Dと言う概念、LALをプレイするまでそこまで評価していませんでした。HD2Dはオクトパストラベラーで生まれた言葉なんですが、自分的にはそこまで刺さりきらなかった作品だったのです。理由も書こうかと思ったけど、なんかダラダラしたうっすら悪口みたいな文章になったので消す。要約すると中身は全く今風で、コストが抑えられたこじんまりとした作りの佳作でした。なので、「今時ドットゲームってどうなの?」と感じていたんですが、その偏見はLALリメイクで打ち崩される事になります。

自分が今回語る評価軸はこの4つです。

  • 骨組みは完成されたスーファミ末期の傑作
  • LALは当時(1994年)よりむしろ現代(2022年)の価値観とマッチしている
  • ドットの技術が凄い
  • 声優の選択がパーフェクト

理由を順に説明していきたいと思います。

骨組みは完成されたスーファミ末期の傑作

まず、基本的にレトロゲームは新しい物に劣っています。これは某ゲームセンターCXの有野課長がインタビューで語っていた事です。ファミコンではなくスーファミであっても、今遊んで心から面白いゲームと言うのはほとんどありません。楽しむには思い出と言う名の緩衝材がいる、それがレトロゲームです。


ただ、一切合切新しい物がいいか、と言われるとそうでもなく、要所要所では現代のゲームが(大抵はコスト削減やライトプレイヤーの為に) 削ぎ落してしまった光る部分があったりします。このゲームは当時覇権を取っていたスクウェアのRPGの文脈を色濃く引き継いでおり、同じ時期のゲームと比べてもかなり遊べる方の部類です。そして、今回のリメイクは当時のプレイ感をほぼほぼそのまま引き継いだ形のリメイクとなっています。良くも悪くも。次の項目で、LALの何が優れているのかを解説したいと思います。

LALは当時(1994年)よりむしろ現代(2022年)の価値観とマッチしている

スーファミ時代のRPGは、基本的には街、イベント、ダンジョン、イベント、街……と繰り返す仕組みになっています。船だ飛空艇だ新世界だと色々フレーバーは挟まりますが、余分な物を削ぎ落すとこういう形です。そしてプレイ体験を水増しする為、主にワールドマップとダンジョン……つまり探索と戦闘に時間を割きます。レトロRPGが遊びにくい大きな要因の一つです


高いエンカウント率、手ごわい雑魚敵、きちんとレベリングをしないと詰むボス……これらははっきり欠点です。これに入り組んだダンジョンとか、シナリオの導線があやふやでどこに行っていいか分からない……とかが付くと、ストレス値も跳ね上がっていきます。これは自分の考えですが、戦闘には必要以上に時間を割いてはいけないのです。自分で作ってるゲームで一番ままならぬ所もここです。戦闘パートをもう少し縮めたいけど、なんか一切手ごたえの無いカスカスの歯ごたえになっちゃって調整出来ない……

名作と言われる作品ほど戦闘由来のストレス値が低めです。マザー2が凄いのはここなのだ。糸井さんの文章がそこかしこにあって飽きないのもあるけど、意外とバトル回りの調整が良くできています。後半壊れてるのも含めて。問題なのはストレスを感じさせる事で、バランス崩壊はストレスとイコールではありません。持ち物枠が少ないと言う見過ごせない欠点もあったりしますが、同時代の物と比べるとマザー2の遊びやすさは別格です。


LALの話に戻しますと、この作品は短編のオムニバスの集合体と言う事でスーファミにしてはバトルのストレスが抑えられています。成長の要素が薄く、ステータスのカンストも早い。戦闘が終われば全回復し、MPの類が存在しない為、覚えた技も打ち放題。金の概念が無いので稼ぎの必要性も無く、上手くやると5分でその章の最強武器が手に入ったりします。数回戦って終わりの章や、ボス戦のみの章もあります。その分、そこにはイベントがみっしりと詰め込まれており、ダンジョンも短い物が多く、ほとんどの章であって一つくらい。

この引き伸ばしの無い濃縮された密度感がLALの最大の美点であり、テンポを重視する現代の価値観と合っている部分です
主人公ごとにやる事が全く違うのも素晴らしい点です。それぞれの時代のテーマに沿った小ネタが、そこかしこにギッチリ詰め込まれています。ダンジョンが短いと言いましたが、徹底的にダンジョンとギミックに特化した章(幕末編)もあり、プレイヤーを飽きさせない作りになっています。前述したオクトパストラベラーは、入口は違うけど中身の順路は全員一緒なのです。

また、レトロゲームにはシナリオの良いゲームもほとんど無い(と思っている)のですが、このゲームは例外的にシナリオが滅茶苦茶いいです。一つのシチュエーションを決めて、サッと決着を付けていく短編のお手本の様なシナリオが並びます。レトロゲームならぬ最近のゲームでもありがちな、「今オレ何やってんだっけ?」と迷う部分が比較的少ない。

この明解さはリメイクで加速しています。右下にレーダーがありまして、「入ってない出入り口」「一度入った出入り口」「ゲームを進める為の行先への道」がそれぞれ表示されており、さらに遊びやすさが増しています。また、マップ上の拾えるアイテムはキラキラと輝いていて取り残す心配が無くなり、戦闘中にそれぞれの技の属性や敵の弱点などが可視化された事で、弱点を突いて戦いやすくもなりました。

この辺を聞くと「簡単になりすぎだろ!」みたいな感想も出るかと思うんですが、「苦労させるのはそこじゃない」と言うのが昨今のゲームの答えかな、と思います。良く分からなくて迷う状態のタチの悪さ、現代のゲームとレトロゲームの大きなギャップの一つです。

"分からない"を避ける。これはゲームだけではなく漫画も、さらにはイラストですら強く言われている事です。「何がなんだか分からない絵」って実は多少上手くてもウケないんですよ。今の自分の最大の課題点だったりします。


例えばこれが最近描いたよくわからない絵です。この絵を文章にすると「半裸の女の子が本の積んであるベッドの上で赤面しながらこちらを見てる」って感じです。何で半裸なの?この本って何なの?って部分が繋がってないから分からない、つまりシチュエーションが伝わらない。これはダメなんですよ。これが「女の子がベッドの上で恥じらいながらも誘う様に服をはだけてる絵」とかそういう言葉で説明できる絵だと、もっとずっといい絵になります。絵の技術が同じくらいの場合、評価に天地の差が付きます。

なんでこんな絵になったのかと言われたら結局何にも考えてなかったのだ!ストレス解消でとりあえず剥いた絵に意味を後から付けたそうとして迷走したのである。良くやる

ドットの技術が凄い

大分脱線しましたが、続きを。まず、元々のLALはグラフィックの悪いゲームです。こちらが原作のスクリーンショット
いや、当時の平均からすると全然悪くないんですよ。でもスクウェアの同じ時期のゲームと比べると格段に落ちます。このゲーム、FF6より後発の作品なんですが、グラフィックのレベルは2年前の作品であるFF5相当です。このグラフィックの格差はFF6は24メガビットでLALが16メガビットである為……つまり容量の差だと思われます。

その欠点が今回のリメイクで解消されました。

オクトパストラベラーの時は気づかなかったんですが、上手い。デカいドットを実に自然に動かしています。原始編はセリフが無く、主にキャラクターのしぐさで話が進んでいきますが、まるで粗が見えません。特にヒロインのべる、元はギャグっぽい絵柄なのであまり気にならなかったんですが、ドット詐欺が働いてムチムチで色っぽくて声も可愛くて物凄い破壊力です。色気で後頭部をブン殴られた様な気分である。


何故か色気のない絵を挟む。

FFのピクセルリマスター、あれはあれで好きなんですが、このドットと比べてしまうと苦しい。30年の時を経て、完全に力関係が逆転してしまった感がある。最近多発していたリメイク群、どうしてこうできなかったのか。これくらい打てる人はやっぱり取り合いになるのかな……このリメイクを見て、ドラクエ3のリメイクが一気に期待大になりました。勿論プロデューサーが違うので同じ水準の物ができるとは思ってはいないんですが、そのくらい夢を見せてくれる画面作りでした。

声優の選択がパーフェクト

ライブアライブと言うゲームは、パロディのゲームです。あらゆる分野から色んなネタを拾い集めてあって、制作者の造詣の深さを感じます。声優のチョイスにもそれは色濃く出ておりまして、端的に言えば物凄く趣味的です。功夫編にはジャッキーとサモ・ハッカの吹き替えを、ハチマキ巻いた格闘家にはGガンダムの主人公の人を、西部のガンマンには二代目次元大介を、ブリキ大王のパイロットには真マジンガーのパイロットを……脇役に至るまで、一事が万事こんな感じです。近未来編に至っては端役の声をキャラデザの漫画家さんがやっとる始末。


そうだろ、松ッ!

元々暑苦しくて格好のいいセリフに定評のあるLAL。これに色んな媒体でよく聞くコテコテのベテラン声優たちが声を当てると、嫌でも興奮させられてしまう……いつもはボイスパートって結構飛ばしがちなのに、今回はじっくりみっちり聞いてしまいました。飛ばすと損した気にさせられてしまうのだ……特にストレイボウ、彼は凄いぞ。FF4のセシルの声優さんだそうですが、魂こもってます

ちなみに、元々のLALもちょっとだけ掛け声みたいなのが入っていましたが、声優さんがそれをマネをして似た様なボイスにしてくれているのも好きなポイントです。高原の「ヤオ!」って声とレイ・クウゴの「ハイ!」って高く抜ける様な声なんかが特にお気に入り。

賛否両論な点

ここまでは褒めちぎっていましたが、多少ひっかかる点もあるにはあります。まず戦闘バランスの調整。強力な要素は結構詰めてあります、中でも史上最強のデバフ技の通打はレベルダウンが削除され弱体化、バランスブレイカーハリケンショットはチャージ時間が向上し、さらに命中率が低下しダメージが不安定に。多段技は全般命中率が低下しています。


逆にダメだった技は強化され、大激怒岩盤割は気軽に使える範囲技に、ド産廃の最大技ホーリーゴーストは広範囲ダメージ&デバフ&状態異常の魔改造奥義になりました。これらの調整で全体的に技の性能が丸まった結果、ちょっと最終編の雑魚戦が固めに感じます。LALの無駄な戦闘時間が少ない利点が最後だけ薄れてる感じ。戦闘のテンポ自体も悪めなので、慣れるまでちょっと重く感じるかもしれない。戦闘とレベリングがある近未来編、原始編、中世編あたりは古さを実感しやすいです。

また、背景が3Dになったので自然物のマップだと迷いやすくなっています。自分の位置が把握できるマップがあってもよかったかな。

改悪点

明確にあります。セクハラ描写、暴力表現、飲酒、喫煙描写、宗教的、ジェンダー的な要素がカットされています。近未来編は昔の少年漫画のノリなんですが、孤児院の少年を脅して女性の下着をくすねさせる、と言う結構ヤバいイベントがあります。少年側も自分の下着を渡してきたり婆さんパンツを渡してきたりするんですが、これがへそくり等に差し替わりました。どっちにしろヤバいんじゃが!!!!意味も通じにくくなっており、辛い部分です。また、テレポートに失敗して風呂に飛び込むイベントも無くなり、タイヤキ屋の手伝いに失敗しても殴られなくなりました。アクセの変態パールもおしゃれパールに変わっています。よく考えるとへんたいパールってヤバすぎるな……近未来編はかなりの問題児です。


西部編でも下着泥棒要素があり、そちらも日記に変更されています。また回復アイテムの葉巻とバーボン、テキーラが薬草と干し肉等に変更されました。他の編でも老酒が鉄観音茶になったりと、酒は徹底的に消去されています。原作はステータスに酔いってあったんだけどな。

宗教要素はマリアのベールが聖者のベールになっただけで、ジェンダーはオカマのオッサンが単なるオッサンになったくらいの感じです。

こんな変更させられる社会のムードに息苦しくてイヤだなあ~と言う気持ちと、こりゃしょうがねえな……、って気持ちが半々くらいあります。近未来編ちょっとやりすぎなんだよな!!!改悪点として挙げましたが、そこまで問題視はしていません。惜しいな、ってくらい。

総評


ここまで語ってきましたが、これを新規の人に勧められるか、と言われると素直にハイとは言い切れない部分があります。タレントの伊集院光さんがリメイク版で初めてLALに触れて「オレ、当時このゲームをプレイしてたらワクワクしたと思う。でも今となってはゲームのテンポやギャグがどうしようもなく古く感じる」と残念がっている記事を読みました。恐らく作品の評価としてはこちらが正確です。レトロゲームはやはりレトロゲームなのです。それでも興味が湧いた方は是非遊んでみて下さい。今とはズレた文化で作られた意欲作、あなたの琴線に触れる部分があるかもしれません。

温故知新、私の好きな言葉です。


最後に

また、これはちょっとしたネタバレになるのでちょっとスペースを空けるのですが……








最終編に追加要素あります!
詳しくは語らないけど、まったく同じではない!この続きは君の目で確かめてみてくれ!

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