よしかずちゃん 2021/07/31 15:33

リディの物語 -Ⅲ.人間界編-

LINK: 目次>「Ⅰ.卵~幼獣編」>「Ⅱ.成獣編」>「Ⅲ.人間界編」




学園到着


レヴィモワール学園は四方を幻獣の森に囲まれた大きな魔法学校だ。厳しい森を抜け、ついに学園に着いたリディだったが――……、

「り、りでぃ〜〜!!?」

学園の敷地内に入った瞬間、魔法の箒は効力を失い地面へ向かって急降下!


このままでは地面に激突してしまう!恐怖で目を瞑ったその時――……、

『フェリスタ!』

次の瞬間、ぴたりと箒が止まった。どうやら誰かが制止の呪文を使ってリディを助けてくれたらしい。
……さて、リディを助けてくれたのは?


「リディの物語」3人の攻略対象



ターゲット選択

生涯一人の相手しか愛さないと言われるロマンチックのルクスリア・リディの
攻略相手のアンケートです。


ターゲットたちの正体

これはアンケート結果が出るまで伏せていた情報です。
アンケート時は「この中に一人だけルクスリアが紛れています」という出し方をしていましたが、今思えばこの情報も出した上でアンケートした方がよかったな……と思いつつ。




潔癖のキスマーク


(※)「淫獣Luxuria」はルクスリアごとに個別ストーリーを用意しているオムニバス形式のような作品なので、各CP(ルクスリア×ターゲットの人間)ごとに作品タイトルがついています。
リディの攻略対象B・ルナクレシス教授ルートのタイトルは「潔癖のキスマーク」でした。


「お怪我はありませんか、お嬢さん?」
リディを助けたのは美しい男だった。すらりと伸びた背に流れる純白の髪は艶やかな上質の絹糸のようで、透き通るようなパールブルーの瞳を細めて微笑んでいる。

獣のリディには人間の美醜はぴんとこないが、それでもほのかに、添えられた指先が熱をもった。
はっとして、リディは考えた。――こういうとき、なんていうんだっけ?


「あっ、ありがっと…」
たどたどしいリディの言葉に男は口角をあげた。
その微笑は完璧なまでに美しく、まるで作り物の仮面のようでもあった。

無事地面につくと、男は意味深な言葉を付け足した。
「ここは危険な場所ですよ、お嬢さん。早く去るのが賢明です」
男はリディの返事を待たずくるりとローブをひるがえし、忽然と消え去った。

男が消えたあとも、リディはしばらくその場に立ちすくんでいた。その膝は恐怖に怯える子供のように小さく震え、しかしその瞳は宝物を見つけた少女のように輝いていた。
リディは初めて見たのだ、あんなにも――……


リディは初めて見たのだ。あんなにも美しい生き物を。
きらきら光るリベラの実より、透きとおるクシュの湖より、ずっときれいな、なんのまじりけもない生き物を……。
――リディの小さな胸の中で、魔力を欲しがる真っ赤な心臓が激しく鼓動した。


黒い魔力を持つ女


まるで熱に浮かされているような、楽しい夢をみているような、なんとも言えない感覚に戸惑いながら、リディはしばらくその場に立ち尽くしていた。
……と、その時。

『そこのヤツ、頭よけろよ!!』

誰かの声とともに、バットとボールのえげつない打撃音がリディの耳をかすめた。


「怪我ないか!?」
声の主は赤毛の女だった。健康的に焼けた肌に猫のように大きな瞳がいたずらそうに光っている。
「ったく、こんなとこでぼけっとしてんなよな!ここはフライベース部の遊び場だぞ」
荒っぽい言葉使いだが、その明るい声音はどことなく優しげな響きを含んでいた。


リディはその女を見て先ほどの男とは真逆の印象を受けた。
男は恐ろしいほど潔白なオーラをまとっていたが、女のそれは潔白とは程遠い。まるでどす黒い暗闇が身体中にまとわりついているかのようだった。そして不思議なことに、その暗闇はなぜかリディには親しみやすく感じられた。


「ん? お前……」
女の方も何かを感じたらしく、その大きな瞳でしげしげとリディを観察し、ややあって大きなため息を吐いた。
「おいおい、またルクスリアが来たのかよー。この学園も終わりだな」
「りっ!?」
リディは驚いた!なんと突然自分の正体がバレてしまったのだ!


『人間に正体がバレたら魔法警察に殺されるよ……』

ノエルの恐ろしい忠告がこだまする――……リディは必死に首をふった。
「リディ、なんにも、しらないよッ!」
「大丈夫、大丈夫。とりあえずデコの模様隠せな?」
「ハ!?」
リディはまた驚いた!いつのまにか変身がとけていたのだ!


「レベッカー!早く戻ってこいよ!」
その時、遠くの空から人間の集団が声をあげた。どうやらこの女を呼んでいるようだ。
「オレ用事思い出したから今日はこれで抜けるー!ごめんなー!」
女はあっさり人間たちの誘いを断ると、ブーイングの嵐を無視して再びリディに振り返った。


「オレはレベッカ。お前の名前は?」
「り、り……!」
額を隠し震えるリディを見て、レベッカは白い歯を見せて明るく笑った。
「安心しろよ。お前の正体をばらしやしないって」
そう言いながらパチンと指をならすと、次の瞬間、リディの額から模様が消えた。


「な?」
レベッカの屈託ない笑顔はリディの疑心と不安をほぐしてくれた。
この女が何者かは分からないが、リディはこの人間を信用することにした。
「リディは、リディ……」
「リディはこの学園に一人で来たのか?」
「リディ、ノエルにつれてきてもらった!」
「ノエル……?」


ノエルの名を伝えた瞬間、レベッカの笑顔が曇った。
「……なるほどな。あいつの知り合いか」
「れべっか、ノエル、しってる!?」
「この学園でオレの知らないやつはいねぇよ」
目を輝かせるリディにレベッカはやや自嘲気味に答えた。
「! それなら――……」

リディは思った。レベッカなら、あの人間のことを知っているかもしれないと。
「れべっか!リディ、さがしてる人間いる!」
「探してる人間?どんなヤツだ?」
――リディは困ってしまった。あの人間の特徴を伝えたいが、なんて伝えたらいいのだろう?



……そうだ。あの人間は一点の穢れもない純白のオーラに包まれていた。
「しろいの!!」
リディは元気よく答えたが、レベッカは困ったように顔をしかめた。
「白いのって…適当すぎだろ。もっと他にないのか?例えば性別とか」
「せいべつ?」
「男か女か。どっちだった?」

「おっ、」――”男”と言いかけて、リディは考えた。
あの人間は本当に男だったろうか?……正直女のようにも見えた。
ノエルは胸がある方が女だと言っていたが、昔ヴェガから聞いた話では胸のない女も多いという。
――さて、あの人間はどっちだろう?



「たぶん、男!」
「たぶんってなんだよ!?」
「しろいの、たてがみ長い!女みたいだけど、たぶん、男!」
「……! オイ待てよ、長髪で女みたいだけど男で白いのってまさか……! い、いや、そんなまさかな……」
「リディ、またしろいのに会いたい!れべっか、たすけて!」


「助けてっつったって……!」
(あーもー!コイツは本当に成獣なのか!?あまりにも頼りねーっつーか、危なっかしいっつーか、こんなんじゃ人間を誘惑するどころか正体見破られて殺されるのがオチだぞ!こんなのを一人で学園によこしやがって、ノエルの野郎……っ!)


「でもここがルクスリアだらけになったのはオレの責任だし……死なれても後味悪いし……はぁ、しょーがねぇ。面倒みてやるよ」
「れべっか、しろいの探してくれる!?」
「でもお前の雑な情報じゃらちがあかねぇからなー。スペルヴィアのとこ行って記憶花でも貰いに行くか」


スペルヴィアとは、たしかノエルのターゲットの名だ。植物学者の彼はこの学園で魔法植物学の教師をしていると聞いた。レベッカは本当に学園のことをなんでも知っているらしい!
レベッカが何者かも知らず、リディはすっかりレベッカに信頼を寄せていた。


「リディ、れべっか、すきー!」
「単純なヤツだなぁ……」
リディはレベッカの手をつなぎ、ともにレヴィモワール学園の中へと入って行った。


学園の中へ

「記憶花ってのは頭ん中の記憶を具現化させる花なんだ。幻覚系の植物だから人間には使っちゃダメなんだけど、お前は人間じゃないしイケるだろ」
レベッカの説明は右耳から左耳。リディは初めて見る魔法学園の景色にすっかり魅せられていた。

「スペルヴィアの教室は地下階の奥にあるんだ」
そう言って階下へ案内しようとするレベッカだが、リディはきらきらと輝く階上のステンドグラスに気を取られていた。


リディの物語はここまでです。
ここから、
・階上へ行く(レオン&ミシェル)
・階下へ行く(ノエル&スペルヴィア)
でアンケートをとりストーリー分岐する予定でした。

ツイッターで更新していた「リディの物語」ですが、ツイッターは1ツイート140字という文字数制限があったため、お話が進み内容が複雑化するにつれてたった140字分のストーリーに必ず一枚絵を描かなければならないスタイルが厳しくなっていき、もういっそノベルゲームにしちゃおう!と思い、ツイッターでの更新は途中で終了となりました。

そのゲーム化計画も色々あってお蔵入りになってしまったのですが、今またゆっくりと制作再開しているところなので、いつかこの物語をゲームの形で完結させたいなと思っています。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

記事のタグから探す

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索