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わたわた 2020/10/03 02:46

脚本『願いの果実』エピローグ

脚本『願いの果実』エピローグ

邦洋(くにひろ 20男)
良平(りょうへい 20男)
浩太(こうた 20男)
香南(かな 19女)

 明かりがつく。良平が酔いつぶれて、川辺でぐったりと座りこんでいる。そこに香南が水を持ってやってくる。

香南「あれ、一人にされてるじゃないですか。はい、水ですよ」

 良平、水を無造作に取り、飲む。

良平「モー飲めんわい」

香南「牛になってんじゃん。良平!文化祭はもう終わりましたけど!」

良平「終~わった?」

香南「そう。打ち上げも終わったし、終電もなくなったし、みんなタクシーで帰るみたいですよ。良平も、タクシー乗って帰りましょう」

良平「今夜は~月が~きれいでござる……そういうことならバンテリン!」

香南「だめだこりゃ、もはや何の役だか」

 浩太が現れる。

浩太「あ、カナ」

香南「もう浩太、良平を一人にしちゃだめじゃないですか。十歩進んだら川の中ですよ」

浩太「ごめん、トイレ行きたくなって、コンビニ探してたんだ。良平は、水飲んだ?」

香南「ちょっと飲んだだけ、モ~飲めないって」

浩太「最後にワインなんか飲むからこうなるんだよ」

香南「わたし、まだ19ですけど、こんなの見たら、20歳になってもお酒飲みたくないです」

浩太「カナが退部した晩に比べれば、マシだけどな。あのときは邦洋が号泣しててさ」

邦洋「おい、浩太。それは言わない約束だろ」

 邦洋が現れる。

浩太「あ~、酔った勢いで、つい」

邦洋「じゃあ、こっちも酔った勢いで殴っていいんだな」

 邦洋、浩太の胸倉をつかむ。

浩太「どうせなら、酔った勢いで告っちゃえよ」

邦洋「てめえ……」

香南「ちょっと、二人ともやめてよ。これだから酔っ払いはきらい!」

 邦洋、手を浩太から離す。

邦洋「よ、酔っぱらってなんかねえよ」

浩太「他のみんなは?」

邦洋「スタッフはみんな、タクシー乗り合わせて帰った。おれも帰りたかったけど、こいつの介抱が必要だからな」

浩太「とか言って。カナがいるからだろ」

邦洋「なるほどな、浩太。鼻の穴から手つっこんで奥歯ガタガタにされたいってか」

 邦洋が浩太につっかかろうとしたとたん、良平が口をおさえて去る。

良平(声)「ゲロゲロ~」

浩太「あいつの奥歯ガタガタにしてこいよ」

邦洋「やだよ、気持ち悪い。あいつは蛙か」

良平(声)「ゲロゲロ~」

香南「蛙というか、ウシガエルですよ」

浩太「いいね、カナ、乗ってんじゃん」

邦洋「ウシガエルは、まあ、放っておいてだ。カナは今後、どうするんだ?」

香南「私の今後?」

邦洋「ほら、おれたちのせいで、プロデューサーと、あんなことになったからさ」

香南「岩上のことですか?あいつとは絶交です。金輪際、会わないつもりですから」

浩太「会いたくても、今は会えないところにいるけどな」

香南「え。捕まったんですか、あいつ」

浩太「探偵部の情報筋では、一時的に拘留されてるみたいだ」

香南「あの一件でですか」

邦洋「いや、あいつ、実はDVで訴えられていたらしいんだ。しかし、確たる証拠が無くて、検挙できず。結局、奥さんは子どもを連れて離婚。ところが、岩上は親権を取り戻そうとしてきた」

香南「そんなところまで調査したんですか、探偵部は」

浩太「カナが探偵部に乗り込んでわめき散らしただろ。あれで探偵部のやつら、我が部の威信に関わるって本気になってさ、岩上亮の身元をしらみつぶしに調査したらしい。やつらの推理では、岩上は文化祭に来たアキラを誘拐し、自宅アパートに監禁するつもりだったのではないかということだ」

香南「でも、アキラくんが文化祭に来るって、どうやって分かったんでしょうね」

浩太「何でも、岩上は盗聴器をつけて家の中の会話を聞いてたらしいぜ。その電波をジャックしたのが、無線同好会のやつらだ。探偵部の配下には無数の同好会がいるからな」

邦洋「おい、浩太。その辺にしとけ」

香南「今、思ったんですけど。その情報、文化祭前に仕入れてますよね」

浩太「え」

良平(声)「ゲロゲロ~」

邦洋「さ、蛙も鳴いたことだし、そろそろ帰るとするか」

香南「おかしいと思ったんですよ。どうして、アキラくんが迷子になって、どうしてあいつがアキラくんに会いに来て、どうして演劇部の舞台にいたわたしと会話できたのか」

浩太「やば、リーチ」

香南「もしかして、全部、仕組んでたんですか。あいつとわたしを別れさせるために、何から何まで、あなたたちの脚本だったんじゃないですか」

浩太「ビ、ビンゴォオオオオオオ!」

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わたわた 2020/10/01 18:00

脚本『願いの果実』第3章「アドリブ オン パレード」その4

脚本『願いの果実』第3章「アドリプ オン パレード」その4

邦洋(くにひろ 20男):【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):【配役】願いの木・老いた牛
浩太(こうた 20男):【配役】従者
香南(かな 19女):客として観ている。
斎藤(さいとうまじめ 20男):声のみ。アナウンス部員。
迷子(えぐちあきら 5男):声のみ。文化祭の途中、迷子になった。
岩上(いわがみりょう 42男):声のみ。迷子の父親。

 暗転中、ピンポンパンポーンと学内放送が鳴る。

斎藤(声)「迷子のお知らせです。5歳の、エグチアキラくんという男の子をお預かりしています。保護者の方は、A棟2階アナウンス部室までお越しください」

 照明がつく。
 木は無い。浩太(従者)が倒れている。
 浩太が起き上がると、手に、桃をにぎりしめている。

浩太(従者)「あれ、この桃は・・・長者様、長者様!」

良平(牛)「ンモ~」

 良平が現れる。

斎藤(ナレ)「牛は、長者の車をひいてきた牛でした。車は雷が落ちて真っ黒に焼け焦げています」

浩太(従者)「なんてことだ、長者様の車がこんなことに。しかし、牛が無事とは、何たる奇跡!どこにも、傷を負っていないようだが」

良平(牛)「ンモ~、こそばゆい」

浩太(従者)「え」

良平(牛)「あんまり体を撫でまわさんでくれんか。こそばゆくなるからモ~」

浩太(従者)「牛が話した?まさか、さっきの雷で」

良平(牛)「あ~のどがかわいた。水を飲みたい。これ、あんた。水くれんかモ~」

浩太(従者)「信じられないが、本当らしい。待て、今、川に連れていってやろう」

 浩太(従者)、良平(牛)を連れて歩く。

斎藤(ナレ)「従者は、牛を近くの川に連れていき、水を飲ませようとかがみました」

迷子(声)「ね~。ママ、まだ来ないよ。もう一回、放送してよ」

良平(牛)「虫がうるさいモ~」

邦洋(長者)「や~ボク、拙者と遊ぶでありんすよ」

 邦洋の声が響き渡る。

迷子(声)「わーい、おもしろいお兄ちゃんだ。ピエロみたーい」

邦洋(長者)「ほうれ、ほれほれ」

浩太(従者)「長者様の声。もしや近くに」

邦洋(長者)「ママが来るまで、近くで遊ぶでありんす。来たら連絡を」

迷子(声)「ね~もう一回、やって~」

邦洋(長者)「ほうれ、ほれほれ」

 迷子の笑い声が遠ざかる。

浩太(従者)「長者様!長者様~!」

良平(牛)「あ~、川の水はうまいモ~」

浩太(従者)「やはり長者様だ。飲み終えたら長者様を探しに行きましょう」

斎藤(ナレ)「そのとき、従者の手から、桃が落ちてしまいました」

浩太(従者)「あ、しまった。おいしそうな桃だったのに」

良平(牛)「モ~ったいない、どんぶらこと流れていったモ~」

浩太(従者)「この川を下ると、わたしの故郷があるんです」

良平(牛)「故郷?あんたはよそで育ったのかい」

浩太(従者)「はい。わたしはみなしごでしてね。おばあさんに拾われたんです」

良平(牛)「ほお。ええ話の予感がするの」

浩太(従者)「おばあさんは悪い人ではありませんでしたが、料理の腕がひどくて。きび団子なんて、食えたもんじゃありませんでした」

良平(牛)「きび団子とな」

浩太(従者)「ああ、あのきび団子。においはいいが、食べたら最後、三日三晩苦しむことになるんです。犬と猿ときじに食わせたことがありましたが、もう、のたうち回って、犬はそこらじゅうに噛みつくわ、猿は苦しみ悶えて引っかくわ、きじはつっぷして倒れる始末」

良平(牛)「おかしいモ~。黍で作った団子なのにモ~」

浩太(従者)「いや、おばあさん、何を思ってか、団子にシキミをすりつぶして入れていたらしいんです。シキミは猛毒。初めはシキミ団子と言っていましたが、みんな食べるのが厳しいんで、キビシイ団子、キビ団子になったんです」

良平(牛)「それでキビ団子とは。しかし、おばあさんは自分で食べて何とも無いのかモ~」

浩太(従者)「おばあさんは頑丈でしたから。村では、正体は鬼じゃないかと怖れられていたんですよ」

良平(牛)「鬼とな」

浩太(従者)「ほがらかな笑顔で毒の団子を作るものですから、みんな参っていましたよ」

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わたわた 2020/09/30 18:00

脚本『願いの果実』第3章「アドリブ オン パレード」その3

脚本『願いの果実』第3章「アドリプ オン パレード」その3

邦洋(くにひろ 20男):【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):【配役】願いの木・老いた牛
浩太(こうた 20男):【配役】従者
香南(かな 19女):客として観ている。
斎藤(さいとうまじめ 20男):声のみ。アナウンス部員。
迷子(サトウアキラ 5男):声のみ。文化祭の途中、迷子になった。

 暗転中、ゆったりとした音楽が流れる。

 邦洋(若者)が現れる。

邦洋(若者)「物事には始まりがあります。功績をたたえられた科学者にも初心(うぶ)な幼少期があるように。救いようのない劣悪な犯罪者にも、笑顔を覚えた日があるように。これは始まりの物語。いったい何が始まるのか、しかと、その目で確かめてください」

 良平の顔照明がつく。

斎藤(ナレ)「むかしむかし、ある山の頂に果実を実らせる木がありました。その木は、願いの木とよばれ、その木の前で願い事をすると、必ず願いが叶うことで有名でした」

良平(木)「いやいや、何言うてまんの。冗談きついで。そういうのは、人間が作ったでまかせ。わしは、木。ただの木や」

斎藤(ナレ)「そう、木には何の力もありません」

良平(木)「ほれ、見い」

斎藤(ナレ)「しかし、なぜか、木の前で願いをすると、不思議と願い事が叶うのでした」

良平(木)「偶然、偶然やがな」

斎藤(ナレ)「はじめはそんな風に言っていた木も、だんだん調子に乗ってきました」

良平(木)「願いは1日1個までにしといてや。ま、願いがかなわんかったら、面倒くさいだけやけど。守らんかったら、災いがおこるで~」

斎藤(ナレ)「またまた。どんな災いが起こるんですか」

良平(木)「聞いて驚くな、1日に2個以上の願いを叶えようとしたら、わしは枯れてしまうんや。そういうことやし、よろしく」

斎藤(ナレ)「要するに、容量オーバーということですね」

良平(木)「いやいや、パソコンかいな」

斎藤(ナレ)「え。パソコン、知ってるんですか」

良平(木)「そら、知ってるがな。パソコンは有名やで」

斎藤(ナレ)「でも、この時代は、電気とか発明されてないですよね」

良平(木)「何、デンキって。その木、何の木、デンキってか」

斎藤(ナレ)「電気知らないのに、パソコン?」

良平(木)「ああ、パソコンって、略称やねん。パッと見、ソコソコ、ン~なやつ」

斎藤(ナレ)「それでパソコン?」

良平(木)「せやで。パッと見、ソコソコ、ン~なやつや」

斎藤(ナレ)「この時代では、略称にするほど、流行ってたんですね」

良平(木)「まあ、わしが、よう言われるだけやけど。それよか、今日もぎょうさん人が集まってんな」

斎藤(ナレ)「1日たった1つの願いをかなえるには、木に選ばれないといけないのです」

良平(木)「ま~わしが話したい人間を選んでるだけやけどな。せや。そこの、客席のあんた。そう、端っこの、あんたやあんた。ちょっとこっち来てや」

斎藤(ナレ)「選ばれしお客様、どうぞ舞台にお上がりください」

 香南が舞台に上がる。

良平(木)「よう見たら、えらいべっぴんさんやがな。お名前を教えてんか」

香南「はい、わたしは・・・」

迷子(声)「うわあああああああああああん」

 舞台に響く音声。香南、周りを見る。

斎藤(ナレ)「ちょっと迷子が」

迷子(声)「うわあああああ、うわあああああん」

香南「もしかして、アナウンス部のブースに迷子が入ってきたんじゃ」

良平(木)「どこかで虫が鳴いてるみたいやな」

香南「いや、迷子ですって、絶対」

良平(木)「今日は虫が、やかましいな!秋やからかなあ。で、お客さん、お名前は」

香南「あ、はい。わたし・・・」

迷子(声)「名前はアキラ!エグチアキラ、5才です!お母さ~~~~~~ん!」

斎藤(声)「泣かないで。お母さんは今、呼ぶから、ちょっと待ってね」

香南「あの、わたし、スイッチ切ってきましょうか」

良平(木)「あかんて!」

香南「でも、スイッチさえ切ったら」

良平(木)「スイッ・・・チョンは松虫や。待つ、無視やで」

香南「スイッチョンはウマオイですよ。これじゃ劇が成り立たないし、わたしが・・・」

良平(木)「あかん!ここは、むかしむかしや。いらん声が聞こえても、全部、虫・・・無視すんのや。ええか、願いを言え!」

香南「でも・・・あ、邦洋がケータイ持って出ていきました」

良平(木)「そっちはええから、願いを言うんや!」

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わたわた 2020/09/29 18:00

脚本『願いの果実』第3章「アドリブ オン パレード」その2

脚本『願いの果実』第3章「アドリプ オン パレード」その2

邦洋(くにひろ 20男):演出・衣装   【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):大小道具・舞台監督【配役】願いの木・老いた牛
浩太(こうた 20男):脚本・演出助手・情報宣伝【配役】従者
香南(かな 19女):演劇部を退部したが・・・。

香南の小学生時代の学芸会。
クラゲに扮した香南が現れて踊る。
後ろで舞台が組まれていく。

香南「ぷるん、ぷるん、ぷるぷるん。ぷりん、ぷりん、ぷりぷりん。わたしはクラゲ、にじいろの、ゼリーのようなクラゲちゃん。あなたのハートにズッキュンぷるん。南国パイナツぷるぷるん。ミスコンじゃグランぷりぷりん。ぷりぷりプリティ、ポリポリポリズン、しりびれまでもしびれちゃえ!く~らくらくら、クラゲちゃん。ら~くらくらく道楽娘、あなたの頭はク~ラクラ、クラッシュ!」

 香南、去る。
 文化祭当日。
 木に扮した良平が舞台に立っている。長者姿の邦洋がケータイで電話しながら現れる。

邦洋「クラッシュかぁ。壊れたものは仕方がない、密坂のパソコンを使わしてくれ。ああ、助かる」

良平「音響パソコン、やっぱりダメか」

邦洋「(良平にうなずきながら)BGMと効果音は音源のCDがあるから、ソフトだけインストールしてほしい。1回目の公演まであと20分だが間に合いそうか」

 従者姿の浩太が大道具を運んでくる。

邦洋「いい、とにかく音響ブースは接続したらすぐに使えるようにしておく。そっちは、パソコンだけ頼む!」

 通話を終える。

浩太「どうなった?」

邦洋「電脳研究部に音響パソコンを見てもらったが、完全に基盤がやられてるらしい」

良平「公演前に壊れるとか、運が悪いわ、パナマ運河」

浩太「冗談言ってる場合じゃない。公演中じゃなくてよかった」

良平「音響はどうやって流すんだ?」

邦洋「密坂が自分のノーパを持ってくるって、今、自宅に向かってる」

浩太「間に合いそうか」

邦洋「往復10分。ただ、ソフトのインストールに時間がかかると見て…あっ!」

浩太「どうした」

邦洋「アナウンス部の音声だけやばい」

浩太「ボイスレコーダーに残してないのか」

邦洋「そのボイスレコーダーが、知り合いからの借り物だ」

浩太「まさか返却したとか?」

邦洋「したとかだ。データが消されてないか確認する」

邦洋、ケータイでダイヤルしながら去る。

浩太「おれは音響席を整理して、受付に伝達に行く」

良平「悪いな。おれが動けなくて」

浩太「その格好だからな、あ、ちょうどいい。照明の仲安が来た。仲安、良平と照明のチェック頼む」

良平「おい仲安!フランクフルト食ってきただろ!分かるよ、口の周りにケチャップがついてるぜ!外で洗ってこい」

浩太「いや、待て。出るな、仲安。そろそろ客が来るころだ。血のりと間違われたら、誤解を生むから」

良平「たしかに、ゾンビが出てきたと思われかねん」

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わたわた 2020/09/28 18:00

脚本『願いの果実』第3章「アドリブ オン パレード」その1

脚本『願いの果実』第3章「アドリプ オン パレード」その1

邦洋(くにひろ 20男):演出・衣装   【配役】長者・若者
良平(りょうへい 20男):大小道具・舞台監督【配役】願いの木・老いた牛
浩太(こうた 20男):脚本・演出助手・情報宣伝【配役】従者


 邦洋と浩太が部室で製作活動を行っている。そこへ浩太が入ってくる。

邦洋「脚本は?」

浩太「何とか、書けた!」

邦洋「さすが浩太!お疲れさん」

良平「お疲れ!早く脚本が見たくてうずうずしてたぜ。夫婦のシーンをカットしたんだって?」

浩太「ああ。邦洋の女装を見たい客なんかいないからな」

邦洋「都合のいいこと言うな。カナが降りたから必要なくなっただけだろ」

浩太「そうとも言う」

良平「あと、邦洋が女装という醜態を曝さずに済んだとも言う」

邦洋「うるさい。で、この客ってのは何だ」

浩太「それがさ、まぁ書き上げてから何だが、カナのアイデアを取り入れてみたんだ」

邦洋「それって、カナの書いた脚本?」

浩太「ああ。あの桃太郎外伝だ」

良平「おいおい、あれは無茶苦茶な脚本だったぜ。カナは主役の桃太郎、3人の客をステージに上げ、犬・猿・雉の代わりに好きな動物になってもらう」

邦洋「動物はライオンやドラゴン、何でもオッケーって、桃太郎はもはや猛獣使いだ」

良平「で、戦闘力を上げに上げといて、おれたち鬼と1人ずつ対戦していくという、まさに先達の悲劇『歴史バトラー』を彷彿とさせる芝居だ」

邦洋「芝居というより参加型のアトラクション企画だったな」

良太「おれたち鬼が負けた後、鬼は元の姿にもどるという設定も、カオス。赤鬼は町人、青鬼は従者、黄鬼は牛だぜ」

邦洋「なぜ鬼になってしまったのかも謎、ラストのラストで実は桃太郎が女だったというオチも謎。破綻してたよ、あの脚本は」

浩太「2人とも、ちゃんと読んでるじゃないか」

邦洋「まあ、参考までに」

良平「カナがアイドルになったとき、処女作として世に出せるかもしれんからな」

邦洋「逆に世に出さない方が賢明だと思う」

良平「で、浩太。あのカオスな脚本から、何のアイデアを取り入れたんだ」

浩太「客を1人、ステージに上げて、願いの木の前で、願いを言ってもらう」

邦洋「客参加型ってことか」

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