春階一佐 2020/12/14 19:00

【さよならキャットボックス】久世灯子 プロフィールと解説


※この記事には「さよならキャットボックス」のネタバレ要素を含んでいます。
※この記事は2020年12月31日までの期間限定で全体公開されます。翌月になると支援者様限定公開に切り替わります。
※現在は支援者様限定公開に切り替わっています。
※現在作者療養中につき新規記事を停止しているため全体公開キャンペーンとなっております。




今回は「さよならキャットボックス」に登場する灯子についてのデータ公開&解説をしようと思います。

01【名前】
久世灯子(くぜとうこ)

02【年齢】
24歳(享年)

03【誕生日】
2月24日(誕生花:紫のクロッカス/花言葉:愛の後悔)

04【性別】
女性

05【身長】
152cm

06【体重】
41kg

07【血液型】
A型

08【職業】
小売業正社員(雑貨屋店員)

09【出身】
東京都大田区田園調布

10【現住所】
神奈川県横浜市青葉区美しが丘(環座)

11【好きな色】
エメラルドグリーン

12【好きな食べ物】
シナモン、ミント、ローズマリー、生姜、柚子胡椒、茗荷etc……などの香り系食材、苦めのカラメルなど

13【苦手な食べ物】
虫系などいわゆるゲテモノ類

14【その他好きなもの】
猫、フリル、リボン、LUSHの石鹸(※恵一はLUSHが苦手なので交際中は封印していた模様)、アンティーク、洋館、廃墟、墓場、ステンドグラス、教会音楽、レンブラント、ミケランジェロ、安心、堅実

15【その他苦手なもの】
家族、子供、生理諸症状、喧騒、暴力、短時間睡眠、不潔、煙草、排気ガス、過度な飲酒

16【友人にしたいタイプは?】
明るい人、能動的な人、一人でも喋り続けられるくらいおしゃべりな人

17【恋人にしたいタイプは?】
優しい人、穏やかな人、清潔感のある人、「楽しそうなリアクション」を期待しないでくれる人、子供を作らない人生を肯定してくれる人

18【許せないと思うことは?】
責任を取らないこと、道徳と法に反すること、女性は男性より劣った存在だと考える人



概要

久世灯子の人格形成に於いて家庭環境が与えた影響は計り知ることができません。近年では少なくなりつつある家長制の色濃く残る家庭で育てられました。久世家というのは女子は男子の半歩後ろをしずしずと歩け、夫を立てよ、という教育を当たり前のように施す家です。家系図を遡ると政界進出者や医者、芸能人の先祖なども見受けられます。灯子というのは祖父がつけた名前で、「女子には『〇子』という名付けをすべき」という考えによって決められたものです。
それでも灯子が「女は男より劣った存在なのだ」と洗脳されずに済んだのは、親の選んだ教育環境と言えど、通学によって他者との関わりを持てたからです。自分の人生に疑問を抱くことができたのは、灯子にとって人生最大の幸運であり不運でした。自覚しなければ言いなりの人生を受け入れていたかもしれません。

味覚と服と大人であること

特筆すべき点として、灯子は薬味やハーブ類など変わった香りの食べ物を好むということが挙げられます。灯子の精神年齢が幼いということは決してありません。その暗喩として、どちらかというと子供よりも大人が好む味付けを好んでいます。
また、灯子の私服はクラシカルロリータに片足を突っ込んだコーディネートです。二次元的表現のために鮮やかなエメラルドグリーンを用いていますが、形やレース遣いなどは大人しめな部類です。ロリータファッションというのは安価な服ではありません。芸能人が着るハイブランドほどではなくともある程度値が張ります。灯子がロリータファッションに身を包むことは、自立して金銭を稼ぐ手段を持っている大人の象徴です。彼女は大人になって一人暮らしをこなし、職に就き、ようやく自由な服を着ることができるようになったのです。

箱の中の希望と絶望

灯子は恵一がとても子供が好きで、欲しがっているという事実を受けて自殺を選んでしまいました。
価値観の不一致は誰の人生にも起こりうる出来事です。そして、だからといって死ぬしかないなんてことはありません。
それは灯子と恵一についても同じことが言えます。
価値観がどうしても曲げられない二人が一緒に生きることは出来ないと分かった時、どんな対処法があるでしょうか。
無難なところで言うと別れる、といった選択がありそうです。ただ、灯子は潔癖な傾向があるので、できるなら生涯に付き合う人はただ一人で、=人生を添い遂げる人だと良いと思っていたようです。別れたら恥になる、自分の見る目がなかったことになる、という発想は彼女の潔癖さ、ある種の世間知らずさ、完璧主義な性質、他人の目からどのような人間として見られているか想像し、恐れる心の動きから来るもののようです。
そして灯子の例では月経前症候群というどうしようもない精神状態であったタイミングの悪さも自殺の原因の一つと考えられるでしょう。
二人のデートが灯子の月経前症候群の最中でなければ? 恵一が反論の隙もないほどに夢いっぱいの将来を矢継ぎ早に語らなければ? 灯子の従姉妹が出産したばかりでなければ? それらの条件が違えばまだ灯子も思いつめて自殺を選ぶことはなかったかもしれません。
灯子はそもそもの性分として、箱の中に「希望」と「絶望」のどちらかが入っていると知っていた場合、箱を開けずに「希望が入っていたかもしれない可能性を殺さない」という選択をする人です。石橋を叩いて壊す、と言えば分かりやすいでしょうか。

何を言って、何を言わなかったか

灯子は口を閉ざしたまま死んでしまいました。彼女は争いごとを好まない性格だったこと、相手に嫌われたくないという恐怖、なにか反抗すれば封じられるだけだという諦め……そういった要因があったため、自分の意見を主張しなくなっていったのだと思われます。
親子連れに道を聞かれて丁寧に対応した、というエピソードからも分かる通り、灯子は日常生活に於いて子供につらく当たるようなことはしません。それは嫌いだからといってつらく当たっていいわけがない、という灯子の常識がそうさせたのでしょう。自分の曲げられない部分は心の中でひっそりと大切にし、極力社会に適応しようと努めていました。
それでも地球は回っているし、心の中で嫌いな人を殺しても罪にはなりません。大事なのは、何を表現し、何を表現せず心の中に留めたか、という判断です。勿論、灯子の子供嫌いは生理的なものなので、殺したいと思っていた訳ではありませんが。

どちらも間違っていないなら別れも必要

灯子は恵一の「子供が好きで、欲しいと思っている」価値観を否定しないために口を閉ざしました。彼女なりの良識と優しさですが、それでは話し合いの機会は得られません。
では、灯子にはなにがしてあげられたのでしょうか?
恐らくですが恵一との別れは遅かれ早かれ避けられませんので、別れることへの後押しと、アフターフォローが最善策だと思われます。
一度付き合った人と別れることは恥じゃないし、見る目がなかった、人生に失敗したなんてことはない。人生には別れも付き物で、別れるという判断がその後の幸せな人生のきっかけになることもある、と説いてあげられたらよかったのでしょう。完璧主義者の灯子の心を動かすのはかなり根気が要りそうですが。
ただ、灯子が安心して心中を打ち明けられる人となるとかなり限られてくるので、店長か初瀬の実質二択だと思います。そのフォローができる立場の人物というのは。
妻子持ちの店長はどちらかというと多数者寄りの意見の持ち主(といってもかなり色々な価値観に理解は示してくれますが)なので、初瀬なら灯子の傷心の心中に踏み込んでいけたのではないかと思われます。そのタイミングは永遠に失われてしまいましたが……。
そしてまた、初瀬にも灯子に対して大胆に別れろと強く言えない事情があったのですが、またそれは別のゲームの本編にて書けたらと思っていますので、ここでは割愛させていただきます。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございます。色々なご意見があるかと思われますが、「自分はそう思わないけどそういう人も居るんだね」くらいの感覚でなんとなく共存していける世の中になるといいなと思っています。
世間というのは刻一刻と状況が変わっていて、まだ改善の余地がある部分と、数年前に比べるとずっと優しい世界になった、と思える部分があると感じています。
近い将来、「さよならキャットボックス」が時代遅れの作品になった、と言えるような世の中になると嬉しいですね。

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