「黒玉ブレスレット」~12月の短編ファンタジー

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 私の祖先は、平安京で力のある陰陽師だった。
 ところが派閥争いに負け、一族は命からがら都落ちした。
 北関東の山奥にのがれ、その血と術は脈々と引き継がれた。
 40歳になる女性である私も、いくつかの術を会得している。
 一族の末裔であれば誰もが会得できるものではなく、やはり資質というものがあった。
 祖父は資質のある人で、会社の経営にも密かに術を使っていた。
 父と兄はあまり資質がなく、私は祖父ほどではないにせよ資質があるほうだった。
 私が得意としている術は、悪人の魂を黒玉にしてしまう術だった。
 悪人の魂を、直径1センチほどの黒玉にしてしまうのだ。
 魂を黒玉にしてしまうからといって、その人物が死んでしまうわけではない。死んでしまうわけではないけれど、その人物は魂を抜かれた機械人形のようになってしまう。
 あなたのまわりに、我が強かったのに急に気の抜けたような感じになった人がいるとしたら、それは魂を抜かれたのだ。 
 この術を使うにはかなり力を使うからあまり使いたくはなかったけれど、世の中放っておけない悪い魂というものがあるものだ。
 私の一族は古来からこの術を使って、細々ではあるけれど世直しに役立ってきた。
 普通の人にももちろん悪人が悪人であることはわかるけれど、なかにはうまく善人ぶっている悪人もいるものだ。
 善人ぶりながら時には犯罪もおかし権力とお金を手に入れ、やりたい放題をする。
 権力とお金で政治力やマスコミを使って、悪事がばれないようにしている。
 祖父のように力の強い者は、あまりにもひどい権力者の魂を黒玉にしてきた。
 世界に巻き込まれて日本もひどい状態が続いていたけれど、それでもなんとか成り立ってきたのは祖父のような在野の力によるものが大きい。
 もちろん、悪人に力を貸す勢力もいる。見えないところで、術と術のバトルが行われているのだ。
 世の中は、あなたが思っているよりオカルトだといっていい。

 とはいえ、私などは祖父のような力はない。
 せいぜい、一般の中にいる見過ごせないレベルの悪人の魂を黒玉にするくらいだ。
 けれど、これはこれで世の中にかなり良い影響が出る。一人の悪人の悪影響は、皆が考えるよりひどいものだ。
 関わる者に、過度なストレスと害を与え続けるのだから。
 私も成人してから40歳になるまで、およそ1000人の魂を黒玉にしてきた。
 悪人というのは、生ゴミにたかる夏のコバエのように繁殖するものなのだ。
 黒玉を集めていたわけではないけれど、結果として1000個もたまってしまった。
 そこで、この黒玉を活用できないかと考えた。

 この悪玉は、外の邪気を吸い取る性質がある。吸い取って中に閉じ込めてくれる。
 ということは、身につければ自分の邪気や外の邪気を吸い取ってくれることになる。
「これは、ブレスレットにすればいいのでは」
 私は、黒玉を加工してブレスレットにすることにした。


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