黒田杏子句集「一木一草」を読む。
弟の壺にも月の芒かな 黒田杏子
黒田杏子氏の弟か壺の兄弟か?月明かりの芒は兄弟の鉢に仲良く並んでいる。弟という切り口は稀だし、芒を照らす月のしんみりした空気感が響いてくる。
水澄んで杖かろがろときたりけり 黒田杏子
心が澄んでいる。水を見る目が澄んでいる。それを、覗きに杖もかろがろと。作者の身体性からいえば澄んで軽い心持ち。そういう、身体性をさらりと表した。読者にとっても身が軽い気持ちを伝えてる。
鮎の子はガラスのごとし遡る 黒田杏子
子供の時は透明か内臓も透けるかもしれない。稚魚のガラス感は美しい。やんちゃに遡る感覚は読者を楽しませてくれる。ガラスのお手柄。あるいは、前世に迄遡るか興味がわく句。