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2023年 12月の記事 (16)

シャルねる 2023/12/31 08:09

16話:また、木の上で

「セナ、ここから街の位置とか分からない? 人がいっぱいいる場所」
「分かりません。ごめんなさい、マスター」

 辺りが暗くなってきたころにそう聞くと、セナがしょんぼりした様子で、そう言ってきた。
 それを聞いた私は慌てて言った。

「謝らなくていいから! むしろこんなに長い時間運んでもらったことに私が謝りたいぐらいだから」
「と、とんでもないです! そ、それに……私の方こそお礼を言いたいと言いますか……」

 私がそう言うと、セナはそんな訳の分からないことを言った。
 ……私の役に立てたから嬉しいってこと? ……流石に自意識過剰かな。……いや、でもいつもセナは私の役に立ちたいって言ってるし。
 まぁ、セナは私のそばにいてくれるだけで支えになってるんだけどさ。

「よく分からないけど、近くに街はないみたいだから、この辺で野宿することになるね」

 まぁ、仮に近くに街があったとしても、門を開けてくれないだろうから、野宿することには変わりないんだけどさ。

「はい!」

 そして私の言葉を聞いたセナは妙に嬉しそうに返事をした。
 この前言ってたことが本当なんだとしたら、セナが嬉しそうな理由は何となく察することが出来る。
 そんなセナの言葉を覚えていたからこそ、テントとか、何も準備をせずに街を出たんだけど、食料くらいは持ってきたら良かったな。……普通に忘れてた。

「セナ、お腹すいてない?」

 一日くらい我慢できるか、と考えた私は、一応セナにそう聞いた。
 大丈夫とは言ってたけど、結構な距離を私を運んで歩いてもらったわけだし、お腹がすいてる可能性もあると思って。……後は単純に飲みたいのなら飲んでくれていいし。

「私は大丈夫です。私なんかより、マスターこそ大丈夫ですか? 食料、持ってきてませんよね」
「私も大丈夫だよ」

 お腹は空いてるけど、そんなことを正直に言ったら、セナが何かを狩ってくるとか言い出して、またセナに負担をかけちゃうかもしれないから、私はそう言った。
 実際一日くらい大丈夫だと思ってるし。

「ほんとですか?」
「うん」

 セナは私の言葉を信じてくれたのか、あの時みたいに、木の上に登った。……もちろん私をお姫様抱っこしたまま。

「セナ、ごめんだけど、私はもう寝るね」
「分かりました。ゆっくり休んでください」

 お腹がすいたのを少しでも我慢するために、私はもう寝ることにした。
 普通に疲れてるって理由もあるけど。

「……ほんとにセナは寝なくて大丈夫?」

 私はセナの腕の中で寝ようとしたけど、一旦やめて、そう聞いた。

「はい、大丈夫ですよ。それに、大丈夫じゃなかったとしても、私はマスターを感じてたいんです」

 そう言ってセナは私を落とさないように片手で、ぎゅっ、としてきた。
 
「無理はしないでね」
「分かりました」

 セナの返事を聞いた私は、セナの体温を感じながら、眠りについた。

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シャルねる 2023/12/30 08:06

15話:よく分からないけど、大丈夫そうならいいかな

「マスター、美味しかったですか?」
「……うん。美味しかったよ」

 料理は美味しかった。
 美味しくはあったんだけど、めちゃくちゃ見られた。まぁ、そりゃ見るよね。……美少女が私の食べてる姿を見て、にこにこしてるだけで、その美少女は何も食べない。
 ま、まぁ、もう食べ終わったし、この街を出るんだから、別に知らない人にどう思われようがどうでもいいし!

 そう考えて、私はセナの手を握り、街の門に向かった。
 セナは私に手を握られた事で嬉しそうにしながら、着いてきてくれた。
 
 そして、私たちは街を出た。
 街を出たところで、セナが聞いてくる。
 
「マスター、どこに向かうんですか?」
「取り敢えず、最初にいた街の反対側に行きたいから、あっちかな」

 全然そんな気配はないんだけど、私って逃亡中の身だから。なるべくあの街から離れないと。
 
「セナ、行こっか」
「はい!」

 この街に来る時は、セナにお姫様抱っこされて来たから、こうやってセナと手を繋いで街の外を歩くのって新鮮でいいね。
 ……ゴブリン討伐の依頼を受けた時に、街の外を一緒に歩いたけど、あの時は手を繋いでなかったし。

「マスター、疲れたら言ってくださいね。また、私が抱えて行くので」
「大丈夫……って言いたいけど、その時はお願い」
「はい! 任せてください!」

 私の体力がないのは、そんな短時間じゃどうにもならないしね。
 いつかはセナに迷惑をかけずに、街から街に移動できるようになりたいな。……セナは優しいから何も言わないけど、あの日、セナが私をお姫様抱っこして、あの街まで行った時、絶対私の胸が邪魔だったもんね。……大きいわけじゃないけど、中くらいの大きさはあるから。
 だから、いつかは自分で街まで歩けるようになりたい。まぁ、まだまだ先のことになるだろうけど。

 そんなことを考えながら、セナと話をしたりして、歩くこと約一時間。
 もう限界。足が痛い。

「セナ、運んでもらっていい?」
「はい! もちろんです!」

 セナは私とは正反対の元気な様子で返事をすると、私をまたお姫様抱っこした。
 
「……セナ、邪魔だったら、おんぶでもいいよ」

 胸が邪魔だろうから、私はセナにそう提案した。

「私がお姫様抱っこがいいから、お姫様抱っこにしているんです。……マスターが嫌と言うなら、おんぶにしますよ」
「ううん。セナがこれでいいなら、いいよ」
「はい! ありがとうございます」

 セナに運んでもらってる分際で文句なんて言えるわけない。
 私だってお姫様抱っこは恥ずかしくはあるけど、嫌なわけじゃないから、セナがそっちの方がいいって言うなら、それでいい。

 そして、私はこの前セナに言われたことを思い出して、セナに強く抱きついた。
 落ちないようにするために。
 この前あの街にセナに運んでもらった時に言ってたもんね。落ちないように強く抱きついてって。

「ふへへ」
「セナ?」
「な、なんですかマスター」

 嬉しくて感情が盛れ出したような声がセナから聞こえた気がして、私はセナの名前を呼んだ。

「変な声、出さなかった?」
「き、気のせいだと思いますよ。ほ、ほら、マスター! あ、あっちにオークがいますよ」
「えっ」

 オークと言われて、びっくりした私は、セナに更に強く抱きついてしまった。
 するとむぎゅうっと私の胸がセナの体に押しつぶされる。

「あっ、んっ……」
「ご、ごめんセナ。痛くなかった?」

 セナが苦しそうな声を上げたのを聞いた私は、私が落ちない程度にすぐに力を抜いて、セナにそう聞いた。

「だ、大丈夫ですから! お、オークがいて危ないので、さっきみたいに強く抱きついてください!」
「え、で、でも、痛かったんじゃないの? 変な声を上げてたし……」
「あ、あれは痛かったから上げた声じゃないんです! だから、もっと強く抱きついてください。お、落としてしまったら、大変ですから!」

 そう言われた私は、冷静になって考えた。
 よく考えたら、セナが私程度の力で痛がるわけないか。
 そう考えたら、なんであんな声を上げたんだろう? と気になることはあるけど、私はセナの言う通りにした。落ちたくないし。

「んっ……んへへ」

 セナはまたそんな声を上げた。
 私はほんとに大丈夫かと思って、セナの顔を覗き込んだ。
 すると、いつも通りの可愛い顔があり、私が顔をのぞきこんできたのが不思議なのか、顔を赤らめながら首を傾げられた。

 よく分からないけど、大丈夫そうならいいかな。

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シャルねる 2023/12/29 09:02

14話:悲しい顔をして欲しくない

「ま、マスター、お、おはようございます……」

 私が目を覚ますと、私の腕の中でセナが顔を赤らめながらそう言ってきた。

「うん。おはよう」

 まぁ、何となく理由は分かるし、私は触れないでおこう。
 触れられたくないかもだし。

 そう思った私は、セナに挨拶を返してから、ベッドから降りる為に抱きしめてるセナから離れた。

「あっ……」

 すると、セナは悲しそうな声を上げた。

「どうしたの?」
「な、なんでもないです」

 セナの言葉を聞いた私は、セナの顔を覗き込んだ。
 
「なんでもないなら、そんな悲しそうな顔しないでしょ」
「ほ、ほんとになんでもないんです」
「正直に言わないと、怒るからね?」

 セナに悲しい顔をしてほしくない私は、話してくれるようにそう言った。

「う……ま、マスターにもう少しだけ抱きしめてて欲しかったんです。……ごめんなさい」

 セナは更に顔を赤くしながら、申し訳なさそうにそう言った。

「なんで謝るの?」
「……だ、だって、そんな事で、マスターを心配させてしまったので」

 私は意味のわからないことを言うセナを抱きしめた。

「ま、マスター!?」
「これでいい?」
「は、はい」

 セナも私の腰に手を回して、抱きついてきた。
 私はそんなセナが可愛くて、思わず頭を撫でた。

「ま、マスター……」

 すると、セナはそう呟きながら、私を抱きしめる力を少しだけ強くした。
 もちろん私が痛くない程度に。
 痛くはないんだけど、その影響で私の胸が更にセナの体に押しつぶされる。
 セナは嫌じゃないかと思って、私はセナの顔を見たけど、幸せそうな顔をしていた。
 その顔を見たら、無意識のうちに私もセナを抱きしめる力を強くしていた。





 そうしている内に、しばらく時間が経った。
 そろそろお腹も空いてきたし、私はセナの頭を撫でるのをやめて、抱きしめるのもやめた。
 今度はセナも満足したのか、悲しそうな声を上げることも、悲しそうな顔をすることもなかった。

「お腹空いてきたから、どこかに朝食を食べに行こう。……朝食を食べたら、この街を出よっか」
「はい!」

 セナが嬉しそうな顔で返事をするのを見た私は、部屋を出ようとしたところで、セナはお腹すいてないのかが気になって、聞いた。

「はい! 私は一度血を飲めば5日は大丈夫ですよ!」
「……そうなんだ。……じゃあ、なんで昨日は私の血を飲んだの?」
「あ、そ、それは……」
「あ、別に嫌なわけじゃないから、セナが飲みたい時に飲んでくれたらいいよ!」

 セナの様子を見て、私は慌ててそう言った。
 ほんとに嫌なわけじゃないしね。……ただ、血を飲む度に昨日みたいになるんだとしたら、なるべく夜に飲んで欲しい気持ちはある。

「は、はい! だ、だったら、今日の夜も飲んでいいですか?」
「うん。もちろんいいよ」

 私がそう言うと、セナは嬉しそうに微笑んだ。
 それを見た私は、セナを連れて部屋を出た。

「昨日のお店でいいよね」
「はい! 私はどこでも大丈夫です!」

 まぁ、そうだよね。セナは食べないわけだし。
 ……また怪訝そうな目で見られるんだろうなぁ。……まぁ、仕方ないか。それを嫌がってセナと別れて食べるなんてありえないし。

 朝だし、あんまり人がいないといいなぁ……
 そう思いながら、セナと一緒に昨日のお店に向かった。

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シャルねる 2023/12/28 08:09

13話:吸血鬼の文化?

「えっ、せ、セナ? な、なんで舐めたの?」
「ご、ごめんなさい……」
「あ、いや、別に大丈夫だけどね?」

 セナが謝ってくるから、私はそう言った。
 普通に噛んで血を吸われるだけだと思ってたから、びっくりしただけなんだから。

「吸血鬼の文化とか、私は知らないからさ。何かするなら、先に言っといてくれると、嬉しいかな」

 私は次から、予想と違うことが起こってびっくりしないように、事前に教えてくれるように頼んだ。

「ぶ、文化、ですか?」
「え……うん。何か、吸血鬼的に、舐めなきゃいけない何かがあったんじゃないの?」

 思わずといった感じで、そう聞いた。
 だって、そうじゃないんだとしたら、舐められた意味が分からないから。

「あ、はい! 文化です! 吸血鬼の文化です!」
「うん。そうだよね」

 まぁ、分かりきってた答えだけど、聞けてよかったよ。
 
「それで、もう血を飲むの?」

 飲まれるのなら、心の準備をしておかないと。痛そうだし。
 牢屋では指だったし、状況が状況だったから、痛みなんて考えてる暇がなかったけど、今は結構落ち着いてるし、普通に首元は痛そうだしね。
 まぁ、多少痛いくらい、セナの為と思えば全然大丈夫だけど。

「も、もうちょっとだけ、舐めていいですか?」
 
 セナは顔を赤らめながら、遠慮がちにそう言ってきた。
 いくら文化で仕方ないとはいえ、舐めていいのかを聞くなんて、恥ずかしいよね。
 ……だから、最初舐められた時は聞かれなかったのかな?

「うん。もちろんいいよ」

 私の返事を聞いたセナは、すぐに私の首元を舐めようとしてきた。……それを私は避けた。

「や、やっぱり待って」

 だって、大事な事を思い出したから。

「せ、セナ……わ、私臭くない?」
 
 そう、昨日は水浴びすらできてなかったし、今日もまだ、体を拭いてない。……絶対に臭い! 今の私を舐められるのなんて、流石に恥ずかしすぎる。
 ……いや、セナに拭く前に血を飲みたいってお願いされたから、拭いてないんだけどさ。……舐めるなんて聞いてなかったから……

「私はマスターの匂いだったら、どんな匂いだって好きです!」

 セナはそう言いながら、私の首元を有無を言わさずに舐めてきた。

「あっ、ちょ……」

 う、嬉しいけどさ! 答えになってないし。
 それに、そういうことをする時は、事前に言ってって言ったばかりなのに、何も言わずに舐めてきたし。

「ますたぁ……」

 セナは私のことを呼びながら、体をくっつけてきて、私が逃げられないようにしながら、痛くない程度にギュッとしてくる。
 
「せ、セナっ……」

 私は首元を舐められ続けて、力が抜けてきたから、体をセナに預けた。

「ますたぁ……美味しいです。好きです……大好きです……」
「まっ、だ、飲まないのっ?」

 声が少し高くなってしまいながら、聞いた。
 すると、セナが私の首元を噛んだ。……それを理解した瞬間、私は思わずセナの背中に腕を回して、抱きついた。
 ただ、首を噛まれたはずなのに、全然痛くなかった。

 セナはチュウチュウと音を立てて、私の血を吸っている。
 指の時はこんな音立ててなかったから、わざとなのかもしれない。
 
 そして、セナはしばらく私の血を飲むと、私の首元から口を離した。
 飲み終わったはずなのに、セナは私に抱きついたまま離れない。……それどころか、息も荒い気がする。
 そういえば、牢屋の時も、息が荒かったような……

「セナ、大丈夫?」
「は、い……だい、じょうぶです」

 全然大丈夫じゃなさそうな声で、セナはそう言った。

「ほ、ほんとに大丈夫なの?」
「は、い……このまま、ますたぁに、くっついてれば、大丈夫です」

 …暖かいし、セナがくっついてる分には全然いいんだけど……体を拭きたいから、少しでいいから離れてくれないかな?

 私は体を拭く時だけ、セナに離れてもらおうとしたところで、やめた。

「ますたぁ、ますたぁ、ますたぁ……」

 セナが体を私に押し当てるようにし、とろけるような声で 私のことを呼び続け始めたから。

「せ、セナ? 今日は、もう寝よっか」

 何となくだけど、今のセナに肌を見せるのはマズいと思った私は、セナとベッドに移動して、布団に一緒に入った。
 息が荒く、何かを我慢しているような様子のセナを布団の中で抱きしめながら、私は目を閉じた。

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シャルねる 2023/12/27 08:08

12話:夕食

 宿も取れたということで、私たちは夕食を食べに、お店に来ていた。

「セナは何を食べる?」
「私は大丈夫なので、マスターが食べてください」

 ……いやいやいや、いくら私でも、それは無理だよ。
 だって、私何もしてないんだよ? セナが働いて稼いでくれたお金で、私だけ夕食を食べて、セナが食べないなんてありえないでしょ。

「大丈夫ってことないでしょ。食べないと」
「マスター……その、私の種族を思い出してください」

 セナは小声で、他の人に聞こえないように、耳元でそう言ってきた。
 耳元で話されて、変な感じになっちゃったけど、それを無視して、私はセナの種族を思い出す。
 そっか、吸血鬼だもんね。……食べられないのか。

「そういうこと」
「はい。そうです。……それで、なんですけど……もし、マスターがよろしければ、後でマスターの血を飲ませてくれませんか? ……あっ、だ、だめなら大丈夫ですから!」

 セナは遠慮がちに、また耳元でお願いしてきた。
 
「もちろんだめなんかじゃないよ。部屋に行ったら、飲んでいいからね」
「は、はい!」

 だめなんて言うわけが無い。
 セナのおかげで私は今、夕食を食べられるんだから。

「じゃあ、私だけ頼むね」

 そうセナに言ってから、私は適当な料理を頼んだ。
 その際、私の分だけを頼むのを、怪訝そうな目で見られてしまった。
 あの人の目で気がついたけど、事情を知らない人から見たら今の私ってかなり性格が悪いよね。セナの前で私だけが夕食を食べるんだから。
 い、いや、他人の目なんて気にせずに、食べよう。

 そう思った私は、怪訝な目で見られながら、夕食を食べ終えた。
 そして、その間セナは、私の食べている所を幸せそうに見ていた。
 ……正直それが一番恥ずかしかったかもしれない。





「美味しかった」

 私はそう言いながら、宿の借りた部屋に入った。
 そして、部屋に入った私は、宿屋の人に貰ったお湯が入った入れ物にタオルを入れ、タオルをよく絞ってから取り出す。

「セナ、私が体を拭いたら血を吸っていいからね」
「あっ、ま、待ってください!」

 服と下着を脱いでから、そう言って私が体を拭こうとしたところで、セナが妙に顔を赤らめながらそう言った。
 
「どうしたの?」

 私は手を止めて、そう聞いた。

「あ、えっと……拭く前に、飲みたい、です」

 セナは耳の先まで真っ赤にしながらそう言った。
 いや、まぁ私としてはいいけど、そこまで恥ずかしがることかな? ……吸血鬼的には恥ずかしいのかな。

「いいよ」

 能天気にそう考えた私は、指をセナに向けながら、そう言った。
 あの牢屋で飲まれた時と同じ感じだよね。
 あの時はまさかセナが吸血鬼なんて思わなかったなぁ……そもそも、セナがこんなに強いことすら知らなかったし。

「あ、あの、マスター……」
「ん? 飲まないの?」
「あ、あの時は緊急だと思ったので、指から飲みましたけど、ほ、ほんとは……く、首元から飲みたいです……」

 セナは更に顔を真っ赤にさせながら、言いにくそうにそう言ってきた。
 まぁ、私的には、そうなんだって思うだけだ。

「うん。いいよ」

 私は、首元の髪を退けながら、そう言った。

「あ、後ろ向いてた方がいい?」
「い、いえ、そのままで大丈夫です」

 セナはそう言いながら、私に近づいてくる。
 私は少し痛いのを覚悟して、目を閉じた。

「ひゃっ」

 すると、首元をセナに舐められた。
 噛まれて痛いのを覚悟していた私は、びっくりしてそんな声が漏れてしまった。

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