21話:近くにいたい
少し歩くと、すぐに料理が出てくる宿屋が見つかった。
すぐに見つからなかったら、その辺の人に聞かなくちゃだめだから、すぐに見つかって運が良かったなと思いながら、セナと一緒に宿屋に入った。
そして、一人部屋を借りてから朝食を頼むと、すぐに借りた部屋に持ってきてくれた。……私たちが一人部屋を借りたからか、セナの方を見て不思議そうにしていたけど、何も言わずに戻って行った。
「マスター、美味しいですか?」
「うん。美味しいよ。……ただ、もう手持ちのお金が銅貨八枚しかないよ」
だから、強○的に一人部屋を借りるしか無かったんだよね。……まぁ、お金があったとしても、この前みたいにセナが節約のためにって言って、一人部屋を借りたかもしれないけど。
「だったら、私がお金を稼いできますよ。マスターはここでゆっくりしててください!」
セナはそう言って、部屋から出ていこうとする。
私はそんなセナを咄嗟に抱きしめて、止めた。
「ど、どうかしましたか? マスター」
……抱きついてから思ったけど、普通に手を取るだけでもセナは止まってくれた気がするけど……ま、まぁいいや。
「わ、私も行くから、待ってて」
「マスターがいてくれるのは嬉しいですけど、私は一人でも大丈夫ですよ。マスターは休んでてください」
セナがそう言うのを聞いて、私は思わず、セナを抱き止めてる腕に力が入ってしまった。
「ま、マスター?!」
「わ、私が、セナの近くに、居たいの……邪魔、だろうけど、セナから離れたくないの……」
私は少しづつ恥ずかしくなってきて、目から涙がこぼれ落ちそうになるのを必死に我慢しながら言った。
セナに早く何かを言って欲しい。……私はこの沈黙の時間が無限に続くような錯覚に陥りながら、セナの言葉を待った。
セナに拒絶されたくないという思いから、更にセナを抱きしめる腕に力が入ってしまっているけど、セナからしたら私の力なんてたかが知れてるから、大丈夫。
「マスターが邪魔なわけありません! わ、私も、マスターと離れたくない、ですから。……だ、だから、マスターにそう言って貰えて、う、嬉しいです!」
そう言って、セナからも抱きしめてくれた。
そんなセナの顔を見ると、顔を赤らめながら、嬉しそうにはにかんでいた。