異世界のヘリオン製作記② 声優さんレコーディング編

異世界のヘリオン記事の続き……その前にLocatone creator contest 2022のグランプリ&特別賞の3組をソニーミュージックさんがインタビュー記事を出してくれました。

前編 https://cocotame.jp/series/036739/
後編 https://cocotame.jp/series/036779/

異世界のヘリオンに関してとLocatoneの試みに関して話させていただきました。
舞台めぐりの話も懐かしいです。

グランプリ寺田さん、特別賞(アイディア賞)TAKAHASHI×2さんの2組のお話もかなり刺激的でした。ゲーム畑じゃないだけに同じツールを使ってもアプローチもアイディアも全く違っていてまた何かでお会いできたらと願っています。

写真はさすがソニーミュージック。
なんかアーティストっぽい感じで恥ずかしさがありました笑
よかったら読んでみてください。


異世界のヘリオン予告編

話は戻って前回の続き。声優さんのキャスティングを固めていざ収録開始です。

↓前回記事
異世界のヘリオン製作記① 企画と声優キャスティング編
https://ci-en.net/creator/11851/article/765836


声優経験ゼロの岸みゆさんと、声優経験ゼロの方を収録する経験ゼロの自分と、音響チームでのスタジオ入り。これは緊張感あります笑



収録の流れ、マイクの使い方、声優的な発声技術などは未経験なのでディレクションありきでしたが、岸みゆさんはかなり台本を読み込んで家で練習してきてくれたのがわかるお芝居。

台本を読み込んできているかどうかは録れば結構わかります。

キャラを把握している。
感情のラインが間違っていない。
漢字の読み、イントネーションを全て調べてある。
固有名詞なやセリフの意図で不明点があれば質問を先にしてくれる。

などなど。
声優さんが台本にめちゃくちゃメモしているのを見ると向き合ってくれていると嬉しくなります。


ゲームはキャラごとの抜き録り(ひとりずつブースに入り自分のセリフだけ収録)なので、前後の他のキャラのセリフの感情も想像した上でお芝居を考えなければいけません。

シャドーボクシングじゃないですが相手の動きも自分で作る必要があります。
そのため下読みは超大事です。


完全に余談ですが、『聖なるかな』などでも収録時に「この役はどなたが演じられますか?」と声優さんに聞かれたりもしました。

誰か分かると「その人だったらこういう芝居をする」と想像しお芝居を調整したり、セリフの間合いを変化させていました。

ここがグチャグチャになると会話のテンションがよくわからなくなったりします。

次に収録する声優さんが「○○さんが先に録ったこのセリフを聴いてもいいですか?」とセリフを聞いた後に「なるほど〜こうきたか〜」と言ってからお芝居したりするのはエキサイティングだなって感じました。

ライター側や音響ディレクターが違っていたら調整します。
それでも最初から台本を読み込んできてくれる方はしっかりシナリオに沿った演技プランを持ってきてくれます。

収録前に「このセリフを言う時の感情がちょっとわからないのですが」と質問してくださったりもして非常に助かります。

多忙な方は台本を読み込む時間がなかなかない現実もあるのですが、やっぱりシナリオライター的には嬉しいですね。


話を戻します。

声優経験ゼロの場合は、無口系や感情があまりない系のキャラだと形になりやすい(形というかそれっぽくなる)とヨスガはお芝居難易度を下げたキャラにしようと考えていました。

ですがプロット作っているうちに、さらにシナリオを書いているうちに、元気で喜怒哀楽がはっきりした芝居が必要なヨスガになってしまいました。

感情表現が豊かなキャラクターは声だけで表情付けがかなり必要で、声優初挑戦の方にはハードルが高いです。
なぜなら台本を「読む」ことに集中して「キャラクターが話している」空気にならず、棒読みっぽくなりがちです。

そこの部分は正直かなり心配していたのですが、むしろナチュラルに感情が弾むようなお芝居が上手くハマり、声も高音ハスキーでノイズのないクリアボイスと特徴的で、録れたものは想像を超えるものでした。

岸みゆさんヨスガを演じきってくださり大感謝です。

知り合いのクリエイターやディレクターにも「初声優でキメのシーンがしっかりキメてるのはすごいね」と高評価でした。

声優さんもアイドルさんも俳優さんも、少しベクトルは違えど表現者としてのスキルはとても高いと改めて感じました。


岸みゆさんの後に、主役である羽黒ヘリオンを前田佳織里さんの収録です。

収録前に前田さんのお芝居は色々と聞いていたので、かなり安心して収録に臨みました。

羽黒ヘリオンは剣聖ヘリオンとは別人であり同じ人なのですが、前田さんの声は元々のヘリオンの雰囲気に自分的イメージが近いです。

このヘリオンは「元々のオドオド弱気で自信がない妹キャラ」と真逆。
「生真面目で行動的で引っ張っていくキャラ」になっています。

当然声優さんも異なるので性格も声も違います。
それなのにしっかりヘリオンの印象が保たれているのがすごいです。

お芝居全編にわたってお芝居がとても細かいからだと感じました。

今回のシナリオは意図的に音声だけで状況を説明しないといけません。

「外で聞く」
「聞き直すことがまずない」
「移動先と状況の説明」
「物語」
「ゲーム的な指示」

これらの条件のセリフはほぼヘリオンに集約されています。

唐突にメタな「MAPを見て○○に移動してください」という音声も物語の中に入ってきます。
個人的にゲームはシステム的解説もキャラがやった方が好みだったりします。

永遠のアセリアではエスペリア、聖なるかなではレーメが担当していましたね。

前田さんのヘリオンはすべてのセリフが緻密な印象でした。

車で言えば「直線とカーブで印象的な走り方をする」というより「コースすべてで細かく精密なアクセルとブレーキをコントロールしている」的なお芝居でした。

例えがわかりにくいですが、全部がヘリオンだからキャラが立体的に解像している感じです。
喜怒哀楽の臨場感とも言いますか……。

まさにLocatone版コンセプトの「隣に自然にいる」感覚になり、ヘリオンがヘリオンらしくなったのだと思います。
すごく難しいことを実現していて前田さんにお願いしてよかった!と大感謝です。

異世界の少女であるヘリオンの緻密なお芝居と、現実のアイドルであるヨスガの少し浮世離れした雰囲気がマッチする不思議さ。

ゲーム作りの音声周りはまだまだ奥が深い、と我ながらとても勉強になりました。


今回のオペレーターの根津辰彦役の波多野翔さん。今作の唯一の男性声優さんです。

実はこの役は難しく、ほぼ司令室のような場所から遠隔でプレイヤーとヘリオンに指示をしています。

事件の現場にいるわけでもなく、無線で「今どうなってる!?」や難しい決断を迫られたりする役回りです。

「踊る大捜査線 The Move」での室井さんの役割ですね。刑事ドラマ好き的には必要なポジションです。
大体こういう役は、マイク前で眉間にシワを寄せて、状況がわからないけれど責任負わされる立場……つらいですね。

根津は物語でもそんな感じです。

キャラの掛け合いも遠距離ですし、状況は確実には掴みきれない、それでいてお芝居自体は聞いているプレイヤーに通信で話すもの。

しかもプレイヤーとヘリオンどちらに対しても兄のようなポジション。

それでいて警察として正義に対しての葛藤も持っている。

こちらの提供するキャラの背景などの情報が不足していて、感情の置き所がやたら難しいキャラを波多野さんが頑張って演じてくださいました。

「お芝居の迷いはシナリオ・キャラの迷い」と心に刻んでいるわけですが、自分のシナリオ・キャラの迷いで苦戦させてしまった部分もあり大変申し訳なく!

情報が足りない中で、収録中にキャラをまとめてくださって大感謝です。
次回はもっとキャラクターの解像感をあげておきます。


以上が今回のキャラクター収録編です。

声優さん以外にも、音響ディレクターさん、音響エンジニアさん、芝居指導の声優さん、各マネージャーさんのおかげで、新鮮で刺激的な作品が作れました。

自分の方がとても勉強になりました。

前田佳織里さん、岸みゆさん、波多野翔さん、関係者の皆様ありがとうございました!

異世界のヘリオンの物語はまだ始まったばかり。
ヘリオン、ヨスガ、根津は今後もストーリーに登場します。ご期待ください。

異世界のヘリオン遊んでくださった方ありがとうございました!

渋谷で遊ぶことが叶わない方向けに今後何らかの公開方法を考えていきます。

以上で異世界のヘリオン収録編②を終わります。

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