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2022年 07月の記事 (6)

夢見月すぐる 2022/07/17 22:51

【IF】ブリキ先生はゼンマイで動く 雪の女王編の体験版登録しました。

https://www.dlsite.com/home/announce/=/product_id/RJ398521.html
31ページまでよめます。こちら↓完成までお待ち下さい。
本編とはつながりのないIFシナリオです。

登場人物紹介

猫山 蓮 (ねこやまれん)
 主人公。クラスの委員長。アーケード街の会長の娘
天塚 海魚(あまつかみお)
 クラスメイト。マジ天使。
ヨシコ
 喫茶店の店員。フリルのドレスを着ている。
おもちゃ屋さん
 最近ドローンを買った。
カルメ焼きやのおばさん
 やさしい
車椅子の女性
 学校の道徳の授業の先生
保健室の先生
 長身で白衣姿の男性
フードをかぶった人
 謎の人物



【IF】ブリキ先生はゼンマイで動く
               ~雪の女王編~



    7月の吹雪

 いつもの変わり映えしないアーケード街。娯楽と言えば銭湯と卓球くらい。私のクラスには天使くんと呼ばれている男の子がいる。名字が天塚で、天使くんだ。地味子だった時の私が変わるきっかけを作った男の子だ。地味で成績が良いという理由で、クラスの委員長という名の雑用係をやらされて、たくさんの書類を手に持って歩き、廊下で転んで散らばってしまったのだ。
「大丈夫?落としたよ」
その時拾ってくれたのが天塚くんだった。心配そうに私の顔を覗き込む。マジ天使。助かる。丁寧に全部拾ってくれて、
書類を一緒に運ぶ時間が永遠に続いて欲しい。運び終えると、じゃねと満面の笑みを私にしてくれて、去って行った。
私、変わらないと。まず眼鏡をやめてコンタクトに。三つ編みもやめよう。

 「その青いハンカチは?」
「れ、蓮ちゃん」
だめよ。そんないいかたしちゃ。天使くん困ってるじゃないの。
「ちょっと鼻血でちゃって。その時日野先生にハンカチ貰ったんだけど、やっぱり悪いから新しいの買いに来たんだ」
日野先生。新任の先生だ、車椅子に乗っている。たしか、
道徳の授業を受け持つ、って言っていたわね。
「幸せを運んできそうなハンカチね。いいと思うわ」
我ながら、変なことを言っているな。
「よ、よかった。僕、女の人に何かをあげる事なくって、そう言ってもらえると、自信が湧いてきたよ」
私たちは雑貨屋を出ると、広場の噴水の前にあるベンチに座った。会話の内容は全然頭に入らない。うれしすぎて。
彼、天塚海魚くんは、変わった名前をしていて、海魚と書いて、みお、と読むのだ。私の事を蓮ちゃんと呼んでくれるのもポイント高い。


 吹き抜ける風の強い音が聞こえる。なにか様子が変だ。
広場の天井になにか白いものがどんどん張り付いていく。
「雪?」
天井を観察すると、それが雪だということが分かった。
「雪が降ってる?でも今は7月だよ?」
私たちは、アーケード街の北口へと見に行った。やはり雪が降っている。それもただの雪では無く、吹雪だ。呆然と見ているウチに、どんどん強くなっていく。
「さ、寒い」
「そうだ、ねぇこっちに来て」
私は、海魚くんの手を引っ張った。
「銭湯?」
「そう、銭湯は温泉が湧いていて温かいから」
温泉は足元にも流れている。足湯用の湯だ。いったい何が起こっているのだろう。私たちが足湯に浸かっていると、ラジオでニュースが流れる。
「ニュース速報。突然の吹雪に原因を調査中。付近の皆さんは、家で待機していて下さい。また、避難が必要な方は、アーケード街へとお越し下さい」
「なんだか大変な事になっているわね。どうしたのかしら」
「雪男がかき氷を食べるために雪を降らしているのかも」
「今時雪男は流行らないわ。きっと雪の女王が我が儘しているのだわ。雪の彫刻が見たいとか言って」
足湯に浸かりながらそんな話をしてすごしていると、またラジオでニュース速報が流れて来た。吹雪が止まず、避難が始まっているらしい。
「あれ、パパどうしたの?」
「おお、蓮か。地下の避難所を開けようと思ってな」
パパはアーケード街の会長だ。銭湯には地下への入り口がある。温泉のパイプラインを管理する地下道なのだけれど、
そのほかに避難所や、災害時の備蓄も保管されている。
「そんなに大事になっているの?」
「そうだ、これ以上悪くならないといいんだが」
避難してきた人たちが、とりあえず足湯で温まると、
地下道へと移動していった。地下は温泉が流れているので温かいのだ。
「そうだ、海魚くん家に電話しないと。
すっかり忘れていたわ」
天使くんは動揺していて、気付かなかったようだ。これは事件ね。指をくわえて待ってないで、私たちで行動して解決しないと。こんな突然吹雪になるなんて、
絶対おかしいわ。
私、心当たりがあるのよね。

調査開始

  「電話、どうだった?」
銭湯の受付には公衆電話がある。天使くんは家に電話するのだった。TVゲームならば、セーブポイントね。
「うん、近所の人と一緒にこっちの方へ避難するって」
「よし、まずは防寒着ね。私の家に来なさい」
「えっ、じっとしてるんじゃないの?」
私は、天使くんの手を引っ張って家へと向かった。
「じっとしてたって、なにも始まらないわ。行動しないと」
「でも、こういうのって、動くとだいたいひどい目に遭うでしょ。外国の映画でみたもん」
「あれは映画よ。これは現実なの。どのみち何か起こるわ」私の家は商店街の北門の入り口側にある。
「蓮ちゃんのお家喫茶店なんだね」
「さっ、入って」
「いらっしゃいませー。あら、蓮ちゃんおかえりなさい」
ウェイトレスをしているヨシコさんだ。
「ただいま、ヨシコさん。いま大変なことになってて、喫茶店どころじゃないわよ」
「店長にもそう言われたんだけど、家に帰っても一人だし。お店にいることにしたのよ」
店長とは、パパのことだ。
「じゃあ、お仕事はいいからゆっくりしていてね」
「はいはーい」
私達に手をふると、ヨシコさんはテレビをつけて、
みはじめた。私たちは自室に向かう。
「さっきの人、アニメに出てくるみたいな衣装を着て
いたね」
「フリルのついた制服とエプロンね。すきな制服来ていいと
パパがいったら、ああなっちゃったのよ」
天使くんは、そうだこの黄色いコートがいいわね。
「これ、着て。あったかいわよ」
私も防寒具を着る。
「え、喫茶店で過ごすんじゃないの?」
「調査しないと。早く外へ」
私たちは外へ出た。吹雪はさらに強くなっていた。冷たい風が顔に刺さるように当たる。北門から様子を見ると、
雪が早いペースで積もっている。5センチから10センチほどだろうか。周囲から避難してきた人たちが、続々と北門から入ってくるのも見える。
「この調子だと、ウチも避難所になりそうね」
地下の避難施設は広いが、限度がある。全員収容しようとしたら、パイプラインの道で雑魚寝することになるので、各施設も使っていかないと。
「あ、おもちゃ屋さん。どうしたんですか?」
「やあ、蓮ちゃんか。周囲の様子を見ようと、ドローンを飛ばして見ようとしているんだ。」
液晶タブレットと、大型のドローンを飛ばそうとしているようだ。
「こんな吹雪に飛ばして大丈夫なんですか?」
「ドローンは災害時にも使われてるいるんだよ。多分大丈夫」
どうやら飛ばしてみたいようだ。大体学校の学習机に乗るくらいの大きさをしている。ドローンのプロペラが回り、
宙へ浮かぶ。ヘリコプターのようだ。液晶タブレットに映像が映し出される。ゆっくりと上昇していく。
商店街の真上に上る。激しい吹雪でよく見えない。
「暗視カメラに切り替えてよう」
すると、鮮明に映像が映し出された。
上空からでも、避難している人達が歩いているのが見える。
「これは相当積もるね。いったいどうしたんだろう。」
空の様子は、厚い雲で覆われていて、当分晴れそうもない。
「ねぇ、これ。見て」
学校の裏山から、焼却炉の煙突から出てくる煙のように、もくもくと白いもやがかかっている。そこから雪の積もりに差があり、吹雪が広がっているように見える。
「裏山になにかありますね」
「さあ、僕らは一般人。自衛隊の人がなんとかしてくれるよ。それより、ここで持ちこたえる方法を探さないとね。」
どうやら、裏山になにかあるようね。
「ありがとう、おもちゃ屋さん。ヨシコさん、いまサテン
(喫茶店)にいますからいってみるといいですよ。」
おもちゃ屋さんはリモコンをズルっと落として、危うく
ドローンが墜落しそうになった。
 北門から離れると、広場の方へ向かう。北門から広場までは700メートル離れていて、そこから南門まで700メートル。西門と東門へは各300メートルだ。広場は大通りの交差点くらいの広さがあり、真ん中に噴水。女神像が水瓶を持って水をかけているポーズを取っている。
先ほど天使くんと話していた時から、長い時間が経ったように感じる。
「みて、雪で天井のガラス窓が見えなくなっているわ」
「本当だ。こんなに短時間に雪が降っているの初めて見た」
「蓮ちゃん、こっちにおいで」
カルメ焼き屋のおばあちゃんだ。北口側の西門の方への角にお店があって、手招きしている。
「おばあちゃん、今大変な事になってるわ」
「そうそう慌てずに。これをお飲み」
カルメ焼き屋のおばあちゃんが甘酒を作ってくれていた。
「ありがとうございます」
甘酒を飲むと身体が温まってくる。
「冷やし甘酒をはじめようと思ってね。いつもの温かい甘酒になっちゃったね。蓮ちゃん、慌てずに行動しなさいな。せっかちはいけないよ」
「わかったわ、おばあちゃん。落ち着いてゆっくり早く行動するわ。海魚くん、南門も見に行こ」
私は海魚くんの手を握ると、南門へと向かった。
 何か、大きな緑のシートを門の前で吊している。パパもいる。
「パパ、何してるの?」
「お、蓮か。見ての通り、風よけにシートを吊そうとおもってな。七夕を吊すための設備がとんだことになったよ」
見ると、消防団員の人が作業をして、緑のシートを設置していた。
「他の入り口もするの?」
「そうだよ。すぐにおさまるといいんだけどね」
私は緑のシートが上昇していくのを眺めた。トラックの荷台にかかっているシートと同じ物らしく、何枚もつなぎ合わせて即席で作られたもののようだ。
「会長、役所の方に問い合わせた所、自衛隊を派遣するかどうかで揉めていまして、水や食料の支援の手配も遅れているようです」
商店街の役員の人だ。
「まあ、いつものことだ。代案で、商店街のお店の商品を食料に使えるように、後から経費で落とせるようにする話はどうだった?」
「はあ、その話もまだまとまってないそうです」
「ううむ。予想通りとはいえ、困ったなぁ。まず腹ごしらえをしないと、まとまるものもまとまらないぞ」
腹は減っては戦は出来ぬ、って話ね。
「会長、南門側のスーパーの店長さんからお話が」
「うん」
「本部に問い合わせた所、お店の商品を使って炊き出しをしていいそうです。使った分を帳簿に付けてくれれば、
と。」
「おお、助かった。では早速炊き出しの準備に取りかかろう」
炊き出しをするみたい。メニューは何かな?
「ねえ、海魚くん。他のところも見に行ってみようよ」
「うん、いいよ」
私たちは、中央の広場へと一端戻った。戻る途中に、
色々な人に話しかけられた。
「慌てて出てきて、カップラーメンを食べそびれた」
「避難所、シーちゃん(柴犬)も入れるかな」
「わたしのみけちゃんも(三毛猫)」
「テントと寝袋を持ってきたんだ。今日は中央の広場で寝るよ」
「みんな、不安なんだね」
天使くんが好きだからかな、とも思う。
東門の方に行ってみる。東門側は、スポーツジムやゴルフ場、ボウリングなどのスポーツ関連の施設が多くある。
スポーツジムあたりにある街頭モニターでテレビが見れるのが特徴だ。野球場にあるような巨大なモニターだ。
テレビを見ようと、大勢の人が集まっていた。30人くらい。
「えー、謎の異常気象を確かめるために、わたくし、アーケード街に行ってみたいと思います。皆さんに現状をお伝えしたいと思います。えー、吹雪がひどくて前が見えません。本当に行けるのでしょうか。それでは出発します」
黄色いヘルメットをかぶったリポーターが強風にあおられながら、取材用のワゴン車に乗り込んで出発する様子を映したのち、スタジオに切り替わり、私たちが住む街がどんなところなのかの特集がはじまった。
「来て、どうするんだろうね」
「さあ」
集まった人々は口々に反応をする。
私たちの街は、巨大な商店街があることで有名だ。
そして、私たちの学校は、街の権力者が関わっているらしい。それもただの権力者では無く、国に影響を与えるほどだ。それなら、早く助けてくれればいいのに。具体的にどう影響が強いのかはお茶を濁されて、また商店街の話になった。南門側の話だ。機転が早いスーパーマーケットのことに触れると思ったのだけれど、スルーだった。教会と神社が向かい合わせにあること。神社にはご当地キャラ、
コンちゃんの話をしている。コンちゃんは狐を模した
女子高生で、好きな食べ物は油揚げ。普段着は巫女の服を着ている。神社の前にはスタンドが立てられており、
各種グッズも販売している紹介をしている。まあ、
ありがちだ。
その後、教会の話がはじまる。変わった宗教で、中に入ると、休憩する人がたくさんいる話。休憩所なのでは、と
誤解される話。信者になるには、自分が大切だと思う物を首飾りにしてかけて毎日すごすことだと言う。
特に思い浮かばなかった人は、なぜかゼンマイの鍵を首飾りにしてかけているから、ゼンマイ教と地元の人は読んでいる話を紹介された。私もなんとなく聞いたことがある。
言われてみれば、ゼンマイの鍵を首飾りにしている人が学校でもたくさんいる。活動は、毎朝お祈りをして朝食をみんなで取り、夜もお祈りをして少し雑談をして帰ったり、一緒に夕食をとることもあるという。テレビでよく見る物騒な宗教とは全く違っていて、目的もよく分からない。色々と理由をつけて規則正しい生活を繰り返すことが目的にも見える。私は、天使くんの胸元を見た。
ゼンマイの鍵の首飾りは付けていない。今度、ペアルックしたいな。思わずにやりとしてしまう。
「蓮ちゃん?どうしたの」
「ううん、何でもないわ。せっかくだから、西門側も見に行きましょ」
「うん、いいよ」
西門側は、居酒屋や屋台、バー、スナックなどが多い。飲食店もある。屋台のホルモン焼き屋が人気だ。こんな状況なのに、今日も人が集まっている。
「よぉ、大将。一杯どうだい?」
パパがホルモン焼き屋のお客さんに話しかけられてる。
「今は仕事中だ。よく酒なんかのんでられるな」
さっきの続きで、入り口の前に緑のシートを吊して、風と雪が入ってこないように作業に立ち会っている。
「まあ、わしらは休憩中よ。いまがんばっとる人らが疲れて休んでいる間に交代で働くために英気を養っとるわけよ」
ガハハハ、と大きな笑い声があちこちで聞こえる。
「うーん、勝手にやっとくれ」
「大将、ヨシコさんによろしくいっといてな」
パパ、あまり相手にしていないみたい。けれど、非常時は
りらっくすしているおじさんたちが、さいごまで生き残るのよね。遠くから様子を見ていると、作業が終わったようだ。
「ねぇ、銭湯の地下の避難所にいってみようよ。海魚くんのおかあさんとおとうさん、来てるかも」
「うん、そうだね」
もう一度、銭湯に戻った。私は足湯に浸かっている。
鯉とかが泳いでいる池があったら、毎日通って餌をあげたいな。人面魚とかもいたら面白いかも。そんなことを考えていると、天使くんが戻ってきた。
「どうだった?」
「おかあさんはいたけど、おとうさんは仕事で、今日は
会社に泊まるって」
「そう、大変ね」
非常時でも仕事をしていなくちゃいけないのね。
「ねえ、うちに来ない?一緒にラジオ聞いたりテレビみたりしようよ」
「いいよ。おかあさん、炊き出しの手伝いをするって言ってたから」
やった。喜んではいけない状況なのだけれど。胸に秘めてるうちは、このくらいは許してくれるよね。私は天使君の手を引っ張って、ウチの喫茶店へと向かった。

     吹雪の夜


 「う・・・?」
風の音で目が覚めた。
どうやら私は知らぬ間に眠って閉まったようだ。
「・・・・・っ!」
私は、天使君に寄りかかって眠っていたのだ。
まるで、電車で終電まで眠りこけた会社員のようだ。
「あ、起きた?色々な所歩いてきたから疲れちゃったんだね」
天使君が私に話しかける。
「ご、ごめんね、重かったでしょ?」
私は何やら取り乱していた。二人で毛布にくるまっていた。ここは私の家の喫茶店だ。テーブルの上には、芋煮が入ったお椀が二つ置いてあった。ラップがしてある。
「冷めちゃったから、電子レンジで温めるね。これ、炊き出しで貰ってきたんだよ」
私は記憶をたどる。あの後喫茶店で、そう、テレビをみていて、けん玉をしているところを見せて、ヨシコさんと三人でトランプなんかをして、いつの間にかねむってしまっていたのだ。うん、大丈夫。間違いは起こしていない。私は自分に言い聞かせて落ち着かせた。
「さあ、食べよう」
変わった食べ物だ。醤油味のお汁に、里芋が入っている。
とてもおいしい。
「芋煮会といって、他の街では定期でやる食べ物なんだって」
「他の地域の文化をどんどん取り入れていくのね」
だから、教会と神社が向かい合わせに建っていたりするのね。あつあつの芋煮を食べながら窓の外をみた。真っ暗で、
吹雪になっている。
「ねえ、大丈夫かなぁ。不安ね」
「外国の映画だと、ゾンビが商店街中にあふれかえって、バリゲードを作ったりしている展開になるけど、全然平和だね」
「そういう映画好きなんだ。私、あまり見たこと無いわ」
「学校の視聴覚室に、映画のフィルムがたくさん置いてあるでしょ。放課後よくみんなでみてるんだよ」
そんな集まりがあったんだ。知らなかった。私はというと、
そう、委員長の仕事でプリント整理とかしてるわね。
「ゾンビ、は出てきそうも無いけど、雪男は出てきそうね」
「ほんとに?僕も気になるから、ちょっと外の様子をみてみる?」
「大丈夫なの?映画だとその行動が命取りになるのよ?」
私でもそのくらいは知っているのだ。テレビでも映画は放送されている。
「うん、ちょっと怖いけど、見てみたいよね」
天使君、女の子みたいな顔をしていて、私の服を着ていても、男の子だとばれなさそうだけど、やっぱり男の子なのね。
「いいわ。見に行ってみましょう」
喫茶店のソファーにはヨシコさんが寝ている。すぐ手前のテーブルには、オモチャ屋さんが操縦していたドローンが置かれていた。起こさないように静かに外へ出よう。
 外へ出ると、消灯していて、常夜灯がほのかに明るく照らされていた。いつもと同じだ。まずは中央の方へ歩いてみよう。外は緑のシートを吊していたから風は入ってこなく、寒いけれどもまだ我慢できる程度だ。あたりには簡易テントが張られていて、中から明かりがあったりなかったりで、みんな眠るようだ。中央の広場に着くと、噴水は止まっている。その周囲には、まばらだけれどカップルや友人が集まって、今日の出来事を話し合っていた。
「僕たちは、きょうだいに見えるのかな」
そこは、恋人同士に見えるかな?って言って欲しかったけれど、どちらが兄姉で、どちらが弟妹なのか気になったけれど、そんなことは大きな問題ではないのでスルーした。
「ここはにぎやかね。そうだ、教会と神社も見に行ってみようよ」
教会を見てみると、中には避難してきた人たちが休んでいたので、神社の方へ行った。こちらには誰もいない。
「がらがらしてお参りしたいけれど、明日になりそうね」
夜分遅く失礼だろう。
「じゃあ、がらがらしたつもりで」
私たちは、目をつぶってお参りした。
「何をお願いしたの?」
珍しく、天使君から先に聞いてくる。
「そうね、銭湯のところに足湯じゃなくて、鯉が泳いでる池があったらよかったなぁ、って」
「今は足湯があって助かったけど、そうだね。そうしたらふたりで餌やりしようよ」
「うん、ありがとう。海魚くんはなんてお願いしたの?」
「え・・・うーんと、後で言うよ」
秘めておきたいお願いのようだ。こういうときは詮索しないほうがいいわね。
「あの・・・」
教会のほうから、誰かきたようだ。フードをかぶっていて、顔は見えない。
「これ、受け取って下さい」
どこかの鍵と手紙を渡された。
「これは?」
聞き返そうとすると、そこには誰もいなく、鍵と手紙だけが残されていた。
「い、いまの見た?海魚くん?」
「う、うん。ゆうれいさんだったのかも」
私は怖くなって、天使君の手を引っ張って、急いで喫茶店へと戻った。

 しばらく沈黙がつづく。テーブルの上には、受け取った手紙と鍵が置かれていた。
「どうしよう、これ。開けていいのかな」
「ぼくたちに宛てた手紙みたいだから、読んでもいいと
おもうけど、怖いよね」
「決めた。私、開けるわよ。いいわね」
天使君が頷くのを確認して、私は手紙を開けた。
「読むわよ。この手紙を読んでいる見知らぬ誰か。その時、おそらく大変な事が起こっているでしょう。この事態を引き起こしたのは他でもない私です。本来、私が責任をとらねばならない立場なのは充分招致しております。ですが、あの場所に戻ることを考えただけで、恐怖で足がすくんでしまい、何も出来ずにいます。ですから、私は誰かにこの
問題の解決を託すことにしました」
「うん、取り返しが付かないことに巻き込まれてることはわかったわ」
「つ、続けて」
天使君が、覚悟を決めたようにつぶやく
「このたびの騒動の発端は、学校の裏山の研究施設でした。わたしはそこの研究員です。そこではとある実験をしていたのです。それは、雪を人工的に降らす実験です。
何かのウィルスが漏れて、ゾンビがあふれかえってる訳ではなく、恐ろしい人体実験をする施設ではないので、その点はご安心下さい。この日は休日で私一人施設に取り残されていました。にも関わらずワンオペで実験をせざる得ない事情がございまして、疲労困憊の中実験していたところ、機械の、雪をつくる水を供給するバルブハンドルを閉め忘れてしまったのです。降雪機のおやすみタイマーをセットもせず、電源も入れっぱなしでした。私はあろうことか昼寝をしてしまい、気付いた頃には時すでに遅く、あたりは雪山に変わってしまいました。必死で止めようとしましたが、吹雪になっており、装置には近づけません。怖くなった私は頭が真っ白になり、秘密の地下道を通り、この商店街に逃げてきました。ですが、わたしはあの場所に戻る勇気もなく、上司に電話する度胸もありません。ですので私は、勇気ある物に託します。研究施設には、銭湯の下の地下道から行けます。一緒に渡した鍵が、扉を開ける鍵です。私のことをひどくお恨みでしょう。もちろん許されるとは思っておりません。どうか、私の事を探さないで下さい。見つけても声をかけたりもしないで下さい。さようなら」
「こ、これは蓮ちゃんのおとうさんに見せた方がいいんじゃない?」
「ううん、これは私たちで解決しましょう。見せてもいたずらだと思われるし、犯人捜しをして、この吹雪が止むことはないでしょ。今日は遅いから、早速明日から行動開始よ。海魚君、すぐ行動出来るように泊まっていってね」

      地下道への扉

 朝だ。あの後すぐに寝て、さっき飛び起きたところだ。
「蓮ちゃん、おはようございます」
「おはよう。ヨシコさん」
ヨシコさんは身支度を終えて、お店の開店準備を
していた。
「開店、するんですか?」
「ええ、こんな時こそ、喫茶店は必要でしょ。お金は取らなくていいからみんなにコーヒーお出しして、って店長がいってたわ」
「あまり無理しないでね」
何か行動していたほうが落ち着くのかもしれない。
「南門のスーパーの前で炊き出ししてるみたいよ。
いってみたら」
「うん、いってみる。ヨシコさんは?」
「わたしは後からいくわ。いってらっしゃい」
とりあえず朝食を食べよう。
「さあ、海魚くん、朝ごはん食べにいこうよ」
私は起きたばかりの天使くんのやわらかい色白の手を
握り、外へ出た。幸せ。真冬の寒さだというのに興奮して、
あまり寒さを感じないわね。アーケード街を歩くとあちこちにテントが張られていて、大型犬のセントバーナードと寄り添って、コーヒーと飲んでいる人もいた。ラジオで
朝のニュースを聞いているようだ。絵画になりそう。
南門の方へいくと、教会の人がパンとぶどうジュースを
配っていた。
「教会で焼いたんですか?このパン」
私ははしゃいだ様子で聞く。
「そうなんですよ。こんな大規模にパンを配るのは初めてで、普段はお祈りにきていただいた人で食べています」
「パンは神様の身体の一部、ぶどうジュースは神様の血液なんです。はい、どうぞ」
「ありがとう。神様が私たちを見守ってくれているみたいね」
あちらには芋煮カレーがある。
「昨日の残りで作ったんだよ。食べていって。」
「おいしい」
海魚君とふたりで並んで食べた。たくさんの人だかりで、
誰かけんかしてないかな?と心配していたけれど、焼きたてのパンはおいしいし、芋煮カレーも温かい。みんな、おもっていたより落ち着いていた。
「えー、我々は昨日の夜芋煮をいただき、今朝は焼きたてのパンとブドウジュース、芋煮カレーをいただいております。みなさん、落ち着いた様子でわたくし安心いたしました」
昨日のリポーターの人だ。黄色いヘルメットをかぶっていて、カメラに向かって食べ物を見せて、芋煮カレーをおいしそうに食べていた。目の下にはクマができていた。あの大きなマイクの付いたポールを持っている人も、疲労困憊の
表情だ。安否確認にきたのだと思うのだけれど、もう、ただの食レポになってるわね。大人の仕事って、大変だ。
「次は銭湯ね。歯磨きもしないと」
「うん、わかった」
私たちはリポーターの人たちを背に銭湯へと向かった。
「混んでるね」
「ええ。ここの足湯のところで待ち合わせしましょ。はい、
これ歯ブラシ」
わたしは海魚くんに、使い捨ての歯ブラシを渡した。
「ありがとう。じゃあ、後でね。」
脱衣所に入ると手早く服を脱いで、身体を洗い、湯船に浸かった。大勢いるので、あまり長居はできなさそうだ。
天使君、どうしてるかな。混浴の露天風呂で、一緒にお話しながら入りたいな。10分前後して、私はお風呂から上がって着替えた。そうだ、こういうとき、どちらが待っていた方がいいのかしら。すこし遅れて行ったほうがいいのかしら。髪を乾かしながら考える。短いのですぐ乾いた。
あ、そうだ、コンタクトレンズも交換しよう。
 足湯のところに行くと、天使君が先に待っていた。
「ごめん。待った?」
「ううん、今来たところ」
ありがちな会話。だけどうれしい。
「これから、どうする?」
海魚くんが聞く。表情的に、喫茶店でヨシコさんとトランプして遊んですごしたそうだ。
「まず、地下道を見てみましょう」
私たちは、銭湯にある地下への階段へ行ってみた。階段の右側は、スロープになっていて、キャスター付きのコンテナなども走らせられるようになっていた。
地下道へ降りると、真っ直ぐな大通りくらいの広さの、
通路にアパートやマンションのように部屋がたくさん並んでいた。手前の入り口側には、温泉が流れているパイプラインが何本も張り巡らされていて、熱気がこもり、温かい。各部屋には避難してきた人たちが休んでいるようだ。
「こっちのほうかな?」
私は天使君の手を握り、歩いて先の様子を見に行くことにした。
「ここ、はじめて来たよ」
天使君はあたりをキョロキョロする。
「一度、パパが備蓄品を運び入れるのを手伝った事があったけれど、この奥はどうなっているのかしら?」
奥の方へ行くと、鍵のかかった扉があった。
扉には、ウサギの刻印が入っている。
「これって」
私はポケットから鍵を取り出した。ウサギの刻印が入っている。
「ここの鍵?」
試しに鍵を入れてみると、やはり開いた。
「みたいね。とりあえず開いた扉は元に戻して、準備をして来ましょう。そうね、この鍵は大事な物だから、使い終わっても捨ててはダメよ。海魚くん、首に掛けてて」
「うん、いいけど、本当にこの先へいくの?不安だなぁ」
「危なかったら引き返すわよ。さ、喫茶店へ戻るわよ」
ちょっとした冒険みたい。楽しくなってきたわ。

身支度

「なにが必要かしらね」
私は自分の部屋に、役に立ちそうなものがないか探した。
「海魚くん、どう?なにか気になる物ある?」
「アニメの女の子のポスターがたくさん貼ってある・・・」
「いいでしょ。コンちゃんのフィギアもあるのよ」
「これはどう?」
「毛糸の玉?これをどうするの?」
「迷わないように糸を垂らしていこうかと思って」
「アリアドネの糸ね。持って行きましょう」
「他には、飲み物がたくさんあるね」
「コラボが多いから、集めるの苦労したのよ」
アニメのキャラが描いたスナック菓子、チョコレートなどだ。
「水分補給も大事」
「じゃあ、このへんのジュースと、お菓子も」
「おやつは300円まで?」
「持って行けるまで大丈夫よ。非常事態だから」
「他には、何があるかしら。懐中電灯と予備の電池と、後は、十徳ナイフ、何か役に立つかも持って行こう」
「バルブハンドルはある?」
「あ、あるわけないでしょ。急にどうしたの?」
「ゲームだと、ハンドルが無くなってて、色々なところをいったり来たりするからあると便利かと思って」
「ゲームじゃないんだから、そんなコントみたいなこと起こるわけじゃ無いでしょ。それに、ハンドルが無くなっていたら、モンキーレンチで回せばいいでしょ」
「そ、それもそうだね。あ、クランクハンドルとかはある?」
「クランクハンドル?」
「階段が出てくる仕掛けや、壁が動く仕掛けの鍵で、クランクを回してたから」
「あ、あのねー。それもゲームの中の話でしょ。私の部屋をセーフハウスのアイテムボックスか何かと勘違いしてるんじゃないの?仮にあったとして、持って行ってどうするの?セットするはめ込み口は大概四角みたいだけど、六角形だったら?都合良く旋盤が置いてあって、すぐ使える状態でボタンひとつで加工できる機器がおいてあるわけないでしょ。なにかあったら、何度も引き返すことになるだけよ。なんで一度に全て上手くいくと思うの?」
このけん玉もっていこーよ、とか言ってくれたらかわいかったのに。
「う、うん。僕もおかしいと思ってたよ。今の話は忘れて」
「お菓子も飲み物も持ったし、早速行ってみよう」
あと記念撮影用のカメラも持った。
リュックに詰めて背負った。銭湯の地下道へと行くと、
天使君が首飾りにしている、ウサギの鍵で、扉は開いた。
「そ、想像してたのと違うなぁ。照明は明るくて全然ジメジメしてないね」
「白いLED電灯で照らされているわね。松明とかだと雰囲気でたかしら」
パイプラインは明るく、おどろおろしい気配はない。
迷路のようになっているのではと心配したけれど、どこまでいっても一本道だ。
「どこに続いているんだろう。この道は」
「手紙に書いてあった、研究施設かしら」
「また扉だ」
扉には、カエルの刻印があって、鍵がかかっている。
「こっちみたいね」
左側に別の通路がある。
「ここは、学校の中庭?」
別の通路は中庭につながっていた。天井があるので、雪は積もっていない。中庭から校内へ入ると、人の気配がした。
「誰かいるのかい?」
「あ、日野先生、こんにちわ」
「こんにちわ海魚くん。遊びに来てくれたの?」
保健室の先生がいる。その後ろには、車椅子の女性、
日野先生だ。天使君は日野先生と仲が良いみたい。
年上の頼れるお姉さん、って感じだから納得ね。
天使君、かわいい顔して、そういうところはしっかり男の子なのね。
「避難しなかったんですか?」
「いざとなったら、地下道を通ればいいからね。それより、どうしてここへ?」
「話すとながくなるのですが・・・」
ドラマやアニメだと、省略される言い回しね。
「立ち話はなんだから、二階のラウンジで話そう」
これもよくある言い回しだ。
学校の二階のラウンジだ。ウチみたくカフェテラスのようになっていて、展望できる大きな窓からの景色は、吹雪で何も見えない。階段には、車椅子の人用のエスカレーターが付いているので、日野先生も安心ね。
「この手紙を、フードをかぶった知らない人から受け取って」
「知らない人とは、男性?女性?」
保健室の先生は怪訝な表情をする。それはそうだ。
「小柄だったので、女性?かもしれません」
「怪しい人と話してはいけないよ。その受け取った手紙、
読んでみるよ。」
保健室の先生は日野先生と二人で読み始めた。
二人は付き合っているのだろうか。
「うーん、不可解なことがたくさんあるね。長くなるから、とりあえず、何か食べよう。そこの自販機のものしかないけどね」
保健室の先生は、ラウンジの迎えの、売店の隣にあるいつもの自販機を指さす。
「大丈夫。おごるから。好きな物選んで」
これは長い一日になりそうね。私は直感でそう思った。


     手紙の矛盾

自販機は二つ置いてあって、右側はパンの販売機で、
左側はスナック菓子の販売機だ。私たちは、パンを3つ、
スナック菓子を一袋、板チョコレートを3つ、それからあめ玉を一袋買った。飲み物は、ウォーターサーバーがあるのでそこから貰った。
「日野先生、こんな時になんですが、これ、代わりのハンカチです。受け取って下さい」
「まあ、気を遣わせてしまってごめんなさい。ありがとう」
天使君、意外とマメだ。
「自販機で買った食べ物は経費で落ちるから。気にしないで。それで手紙のないようなんだけれど、まず研究施設というものは、聞いたことが無い」
保健室の先生が話す。
「やっぱり、ないんですか」
なんとなく予想していた。
「僕らは宿直で学校の留守番をしていたのだけれど、そのとき自治体の人が学校に訪れ、山で何かの実験をするといって、雪上車で何かを運んでいるのは見た。そのことかもしれない」
じゃあ、秘密の研究施設なのかも。
「そこは気にとめることではないのだけれど、海魚くんが今首に掛けている鍵。それが問題なんだ」
「どうしてですか?」
「その鍵は、おそらく合鍵だろうけれど、地下道の扉の鍵は、関係者しか持っていなくて、なぜその鍵をわたされたのか」
そう言うと、保健室の先生はポケットから鍵をとりだした。ウサギの飾りなどは付いていなく、ごく普通の鍵だ。
「何かあったときに、この鍵を使って地下道から脱出して下さい、と自治体の人に渡されたのだ」
「もしかして、自治体の人と言うのは嘘で・・・?」
「そうかもしれん。何か違和感があった。」
「地下道の、あの扉の向こうには何があるんですか?」
「あそこの向こうは、源泉の場所へ行けるだけだよ。今どうなっているんだろうか。」
「とりあえず、源泉へ行ってみません?なにか分かるかも」
「そうだな。行ってみるか」
「でも、鍵は?」
「ああ、それは大丈夫だ」
「わたくし、ここで待っていますわ。無事を祈ります」
「うん、いってくる」
やはり、恋人同士なのかな。二人は。
「このドアは飾りで、ここに、ほらこうすると開くんだよ」
地下道に戻り、カエルの刻印がある扉の前に来た。
「ここに、このクランクハンドルをセットして回すと、ほら、動いた」
「こんな仕掛けが・・・」
なんて面倒な仕掛けだ。忍者屋敷みたい。
「やっぱりクランクハンドルは必要だったんだ」
天使君は目を輝かせて言った。
「それでは、行ってみるとしよう」
「すごい吹雪なのに、源泉の周りは温かい」
「露天風呂、は楽しめそうにないな」
アメリカンジョークってやつだ。
すこしあたりを観察してみよう。あたりは吹雪で、何も見えない。源泉は、普段、私たち学校の生徒が神社の方へ
登って入りに行くのだ。源泉には屋根があり、自転車置き場にあるような波形の屋根が設置してある。すぐ側には脱衣所として物置を改造した小屋が設置してある。今はどこも雪で埋もれている。源泉の周りだけ雪が溶けて、湯気が出ていた。
「さ、寒いね」
天使君が寒さで震えている。おそらく私もだろう。
まるで、雪山の山頂にいるようだ。この寒さは異常だ。
何か用があったとしても、見通しの効かない吹雪の中を
進むのは危険ね。
「なにかがこちらに向かってくるよ」
雪上車がこちらへ向かってきた。
「はー。だめだこりゃ」
中から作業服を着たおじさんが出てきた。
「自治体の人だ。大丈夫ですか?」
保健室の先生の顔見知りらしい。
「おー、学校で留守番の人か。色々あって今引き返してきたところだよ」
「大変でしたね。この地下道は学校へと通じています。話も聞きたいので、学校へいきましょう」
何か、重要なことがきけそう。二階のラウンジに行くと、
日野先生が温かいココアを用意していてくれた。
「すまねぇ。こんな事態になったのはわしらのせいなのに」
「何があったんですか?」
「降雪機の実験をするといってな。山の山頂に登って実験をはじめたんよ。動力は地熱発電機で。スイッチを入れて、あろうことか、その動力を止めるためのバルブハンドルを忘れてきてしもうたんじゃ。そいで、設計ミスがあったらしく、緊急停止ボタンは作動せんかった。せやから急いで戻ってバルブハンドルを持って帰ってきたんじゃが、このありさまじゃ。昨日から何度も試しているんやけど、どうしても頂上へたどり着けない」
このことは、パパに相談するべきかしら。
「うーん、そのバルブハンドルは?」
「これじゃ」
車のハンドルを一回り小さくした大きなバルブハンドルだ。
「要するに、頂上へ行ければいいんですね。私にあてがあります。みなさん付いてきて下さい」
保健室の先生が自信ありげに答える。わ、なんだか嫌な予感がする。付いていくと、そこは体育館だった。
「本当は文化祭で披露する予定でしたが・・・」
そういえば、学校を帰るとき何か大きなコンテナを体育館に運び入れているところを見かけたのでなんだろうと、
気になっていたのだけれど、中身はなにかしら。
保健室の先生が小さなリモコンのスイッチを押すと、コンテナの扉が開いた。そこには、ウサギの着ぐるみが入っていた。
「これはラビットスーツと言って、うさぎさんになることができるスーツだ。自衛隊が山の探索をするために作ったのを、今回の文化祭で披露する予定だったんだ。これを使おう」
「大丈夫なんですか?たしか電池の問題で数十分しか動けないってききましたよ。こういったスーツは」
「電源ケーブルを付けるから大丈夫。これが命綱にもなっている。ケーブルは1000メートルあるから、さっきの雪上車にそこの発電機をつけて持って行けば、クレバスを避けて先行してすすめる。これを見てくれ」
クレバスとは、雪と雪の間に裂け目が出来ることで、その上に雪が積もって見えなくなり、自然の落とし穴になっているので、非常に危険なのだ。
メンテナンス用のノートPCのスイッチを入れる。
「おはようございます。マスター。今日はどちらにいかれますか?」
画面に、美少女の女の子が映った。軍服姿でインカムを付けている。
「人工知能、『アリアドネ』だ。ラビットスーツの中に搭載されている。ラビットスーツには、音波で地形をマッピングする機能と暗視機能もあるので吹雪の中もよく見える。だたし」
「何か?」
「サイズが小さいので小柄な人しか乗れない」
ほけんしつの先生は無理で、天使君か私のどちらかね。
「私が乗りたいけど、操作が難しそうですね」
「それは心配いらない。アリアドネが操作してくれる」
「おまかせください」
「ね、ねえ蓮ちゃん、こっちに来て」
天使くんだ。突然なんだろう。みんなとすこし離れて、話し始める。もしかして愛の告白?
ドキドキしてきた。
「危ないからやめよーよ。」
なんだ、そっちか。
「でも、あのうさぎのきぐるみ、着てみたいでしょ。アリアドネちゃんもかわいいし」
「う、うーん、僕らがやらなきゃいけないことなのかな?」
「今やらないと、雪がどんどん積もって、その降雪機?までたどり着けなくなるでしょ。やるならいまよ。七夕祭りもしなきゃいけないし」
「わ、わかった。そこまでいうなら。でも、怖くなったらすぐやめてね」
天使君、心配性ね。こんな体験めったに出来ることじゃないわ。わくわくしかしない。

 なんてご都合主義なのだろう。私が乗ることを想定されているよう。私たちは早速、電源ケーブルを巻いたドラム、発電機とラビットスーツを、
地下道を伝って運んだ。3つとも、一人で持ち運び出来るように設計されているらしく、携行性にすぐれていた。
雪上車に乗せる。電源ケーブルのドラムにはロープとカラビナが付いており、トラックの荷台などに固定出来るようになっている
「それじゃ、出発だ」
ラビットスーツを着た私が先導する。中に乗り、
VRゴーグルをかぶると、外の様子が全て見れる。
パソコンのゲームみたいだ。隣にアリアドネちゃんがいて、一緒に歩いているようにデザインされている。
「アリアドネちゃん、このボタンは何?」
VRゴーグルのなかに出現するタッチパネルのことだ。
自然と話しかけるように隣を向き、話しかけてみる。
「着せ替えボタンでございます」
おしてみると、お姫様の格好になった。
「こっちのほうがいいわね」
「私の普段着です。こちらのほうが落ち着きますね」
「ほかにはどんな機能が」
「質問していただけれると、可能な範囲でお答えできます」
「じゃあ、アリアドネちゃん、芋煮カレーって知ってる?」
「大変おいしい食べ物でございます。芋煮カレーうどんもございますよ」
なんというハイテクだ。まるで人間としゃべっているようだ。
こんな高度な技術、現代にあったのかしら。中に人が入っていると言われても、やっぱりかという感想しか出ない。

夢見月すぐる 2022/07/17 06:36

【64ページ公開】ブリキ先生はゼンマイで動く 分割2/2

入りきらなかったので分けます
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8/31まで、64ページ公開します。(全212ページ)よろしくお願いします。

   送りの言葉
「うーん・・・・」
「どう?ゴールできる?」
休み時間。委員長が作った迷路で遊んでいる。
正直、先日迷路で大変な思いをしたので
あまりやりたくなかった。
「やった。できた!」
ゴールできた。ところどころに動物の絵が描かれている。ブリキ先生より上手い。
「でしょ。これ文化祭のときどうかな?」
いつも機嫌が悪いけれど、今日は良いようだ。
「いいとおもうよ」
「よぉし。もっと色々考えてかないと。天塚くん、
ほかに何かない?」
「うーん、太鼓叩いたり、みんなでお面をかぶって
踊って、竹馬であそんで、たけのこの味噌汁食べたりするといいんじゃないかな」
「え、えっ。けっこう渋いわね」 
ぴんぽんぱーん・・・・
「えー、生き物係、A-1のあまつか、みおくん。
おねがいがあります。至急、3階の放送室までお越しください。」
「・・・・生き物係って何・・・?」
「てんしくんのこと呼んでるよ・・・?」
「・・・・この声・・・だれ先生だろう・・・?」
ひそひそと話声が聞こえ、みんな僕のほうをチラ見
する。すごくはずかしい。
「い、いいんちょう、ちょっと行ってくるね。
文化祭、きっと楽しくなるよ、またね」
委員長が不満そうな顔をよそにぼくは3階に
向かった。
3階は東階段から右手へ一番奥が応接・自習室で、
放送室はその隣だ。
一般教室の中庭を挟んだ向かえに視聴覚室、パソコン室、音楽室があり、放送室は音楽室のとなりの防音室(個別演奏室)と応接・自習室の間にある。
途中の2階で中庭のほうの窓から、のっぽさんの
姿が見えた。
「しつれいしまーす」
放送室のドアをノックして開けると、ブリキ先生が放送用のヘッドホンをして、マイクに向かって
座っていた。きっと放送してみたかったのだろう。
「あ、海魚くん。放送どうだった?上手く言えてた?」
「お願いってなんですか?」
「大事なお話があるの。ここは放送するための部屋だから、隣の応接室に行こう。」
ブリキ先生も文化祭で何やるかで相談があるのだろうか。
応接室に入った。応接室は自習室にもなっていて、
長テーブルと椅子が沢山並んでいるだけで、ほかにはなにも置かれていない。必要な参考書は、持参するか2階の図書室から借りてこないと行けない。
壁にはスマホで遊ぶの禁止!
と書かれた張り紙が貼ってある。
「大事なお話って?」
「これから学校が休日で一週間お休みになるでしょ。校長先生のお話があるでしょ」
「うん」
「校長先生の代わりに私がお話することになったの。何を話せばいいかな。」
「えっ」
僕らは聞く立場だから、そんなこと聞かれても・・
「そんなこと聞かれても、って思うかもしれないけど、困ってるの」
いま、心の中を覗かれたようなきがしたが、
自分の反応で伝わったのだろう。
「まずは図書室で調べましょう。ここは自習室なので、なにもはじまらないです」
二階の図書室。
「どこを見ればいいの?」
「3分間スピーチとか、作文のかきかた、とかですね」
「ここかな」
小論文、とかかれた本棚のコーナーにきた。
「ここみたいですね。じゃあぼく授業があるので、
放課後にまた来ます」
「わかった。がんばってね」
今日も長い一日になりそうだ。
教室に戻ると、委員長が不機嫌な表情で僕を
向かえてくれた。先は長い。

「日野P、お昼の放送はじまるよー」
どうやら眠ってしまっていたようだ。
最近不思議な夢をよく見る。
あの、男の子。誰だろう?いつも私に声をかけてくる子。あと保健室の先生がうさぎになっていた。
私のことをなんとか先生と呼んでいた。
「はーい、それではお昼の放送を始めまーす」
気を取り直して、見慣れたヘッドホンをして、
何度も語りかけた校内放送のマイクではじめる。
「まずは皆さんからのお便りを三通呼んでみたいと思います。一通目。いちごだいすきさんから。」
「昨日の放課後、一階でお花を摘みに行ったとき、
廊下をあるものが歩いていました。日野ちゃんはなんだか分かりますか?」    
「なんでしょう?」
「なんと、アヒルが歩いてました!お餅に足が生えたようでした!二度見しましたがあれは間違いなくアヒルです!後をつけてみると中庭へ入っていきました!急いで中庭を見てみると、アヒルはいませんでした。日野ちゃんはどう思いますか?」
「うーん、誰かのペットが逃げ出した、とかかな?今頃飼い主さんのところに帰ったのでしょう」
「続いて、あぶらあげこんこんさんから」
「日野ちゃんこんにちわ。購買部で買った焼きそばパンを食べようと中庭側の窓際に寄りかかったら、焼きそばパンが手からなくなっていました。上を見上げると、信じられないかもしれませんが、キリンが
焼きそばパンをむしゃむしゃ食べていたのです。驚いて友達の方にいったら、何度話しても信じてもらえず、その場に戻るとキリンと焼きそばパンが煙のように消えて、何事もなかったかのようになりました。幽霊の中にはキリンも含まれるのでしょうか」
「えっ、なやむところそこ?そうねぇ、幽霊は人間だとこわいけど、動物だとかわいい!っておもっちゃって、怖くなくなるからあまり出てこないとおもうんだけどね、動物の幽霊も怖がらせるためにいるんじゃないからね、キリンの幽霊でもちゃんとおどろかせられると思うから、でてほしいな!って思うかしら。」
「本日最後のお便りとなりました。ケロケロお姉さんからです。」
「桜花ちゃん、いつも面白い放送ありがとう!
やったー褒められた!ここだけの話ですが、
学校の裏山の竹林にパンダが住んでいたら良いな、思い、パンダの着ぐるみを着ていってみたのですが、パンダは見つかりませんでした。残念。」
「もし本当にいたら、友達だと思って出てきてくれるかもしれないね!たまたま、洗濯物を取るの忘れて一度家に帰ったからパンダさんと会えなかったのかも。会いに行こうって、あそこには神社があるから、
そうおもって参拝にいくと、いつもよりワクワクが大きくなって、楽しくなりますね!次はきっと
パンダさんに会えますよ!」

「続いて、文化祭のコーナーです。年に一度の文化祭が近づいております。みなさん、準備ははかどっていますか?なんでも、今度の連休を全て活用して
制作するグループもあるとのことです。待ち遠しいですね。お化け屋敷、焼きそばの露天、映画の上映会などを予定しているそうですよ。わたくし放送部。
部長日野桜花、文化祭での特番校内放送を予定しております。楽しみにしていてくださいね。」

「最後に放送部のつぶやきをひとつ。道端に咲いている小さなピンクの花が咲いていますよね。
あの草花はヒメオドリコソウといいます。
かわいい名前です。ぜひ、下校のとき探してみて下さい。それでは、ひのおうかの、お昼の校内放送でした。」
ピンポンパンポーン
流行りの音楽が校内に流れる。
「さて、飲み物会にいきますか」
「日野P、今日の放送もたのしかったよ!」
「ありがとう!」
仲良し三人組がてをふってくれてる。
「飲み物何にしようかな。あっ」
しまった。一万円札しか入ってない。
がこーん!と隣の人が飲み物を買っている。
美味しそうだ。
「あの、飲みますか?」
私のほうにオレンジジュースを差し出す。
「な、ナンパ?」
「いや、さっきからじっとこちらのほうを見つめてくるんで。」
身体の大きなガタイの良い男子だ。左腕に緑色の
腕章を着けている。二人でラウンジのベンチに座る。
「ありがとうー!明日返すね!君クラスどこー?」
「C-3です。あ、君もしかして校内放送の?」
「そうだよ。よろしくね」
「保健係の活動の合間によく聞いてるよ。今の時間
けがする人が多いからね。」
「あれ?」
どうしてだろう。初めて会った人なのに、今まで何度も会っている気がする。
「なにか?」
「あの、前にどこかであったことありません?」

「まあ、保健係で何度も怪我した人をおんぶして運んだりしてるからね。何度かすれ違ったのでは?」
「たぶん、それね」
どうにも腑に落ちないけれど、きっとそうなのだろう。それにしても、背が高く、身体の大きい人だ。
「将来はお医者さんになりたくて、毎日が忙しいよ。それじゃまた。放送楽しみにしているよ。」
そういうと、保健係の男の子は去っていった。
しまった。名前を聞いていなかった。
「ねえ、あなたの名前は?」
急いで追いかけて聞く。僕の名前は、と続く。



「ブリキ先生、起きて下さい。」
「んん、海魚くんおはよう。忘れ物?」
「なにいってるんですか。もう放課後ですよ」
ちょくちょく様子を見に来るべきだった。
あのあとすぐにゼンマイが切れたようで、ずっと
眠っていたようだ。
「あー、もしかしてこれから?」
「うん」
小論文の本はたくさんあって、どこから手をつけたらいいのか分からない。
「困ったね。そうだ」
図書室の受付のカウンターにあるのーとパソコンへと向かう。
「ネットで動画サイトのスピーチを参考にしましょう。この人とかは閲覧数が多いみたいです。」
さっそく検索して、候補を見る。
「最初に挨拶をして、自己紹介をするといいみたいですね。そのあとに話したいことを一言で表して、思うところを言う?」
「思うところ?」
きょとんとして僕の方を見る。
「今回だと、連休についてどう思うかと、それを踏まえてどう過ごしてほしいか、ですね」
「うん」
「そのあと、何か1つ、例えば商店街で催し物があることなどを話して、話の広がりを演出して、何か
1つ豆知識を一言添えるといいみたいです?」
「まめちしき?」
「会話の糸口になります。思い返したとき、あえて一言にまとめたことを話しのおわりに言うと、それが思い出すきっかけ、記憶に残りやすくなります。
って動画で言ってます」
本当だろうか。僕もわかんないや。それっぽくなればいいか。
「じゃあさっそく原稿用紙に書いていきましょう。
僕は小論文の書き方の本を調べてきますね」
何で僕が校長先生の話を考えなければ行けないのだろう。こんなの読んだってわかるわけないじゃないか。少し不満を感じながらも、橋から本をとって読んでみる。難しい内容で、ぜんぜん頭に入らない。
頭が痛くなってきた。

難しく考えないほうがいいかも。
こう、単純に、連休でどこでかけるのー?とか。
商店街のお祭りでいっしょに遊びたいとか。
保健室の先生がいるからといって、学校のグラウンドで遊ぶの無茶しないでね、とか。
それとも、和歌や俳句を読んだほうがいいのだろうか。
これ、いいかも。
   『絵本で分かる作文のかきかた』
これにしよう。
「ブリキ先生、見つけてきましたよ、えっ。それは?」
「のっぽさんとだいふくくん」
大事な原稿用紙にクレヨンでお絵描きしていた。
「こっちがぴよぴよちゃんとじょうろくん」
得意げに言う。
僕は持ってきた参考書を棚に戻してきた。

色々と話し合った結果、なんとか完成してブリキ
先生が生き物係室に戻るのを見送り、昇降口の前に
出ると、あたりはすっかり暗くなっている。
保健室の先生がまた、白い小さなトラックを
用意して待っていてくれた。家まで送ってくれる
らしい。


「・・・ねえ、あの校長先生の話のところ・・・」
「うん、代理、日野先生の話ってなってる・・誰?」
体育館。連休前の終業式。がやがやとざわつく。
進行を書いた張り紙に不可解な点があるようだ。
「あ、出てきた。・・・」
「・・てんしくんと・・・一緒にいた先生?・・」
ブリキ先生、大丈夫かな。今日はそばにいずに、
みんなと同じようにパイプ椅子に座り、
壇上に上がるところを見守る。僕の方を
キョロキョロ、色んな人から見られてるのが
なんとなく分かる。
「はーい、みなさんこんにちわー」
右手を振ってみんなにあいさつ。
「明日から連休ですね。連休中にやってみたいこと、
やることをいくつかインタビューしてきました!」
がやがやと、型破りな進行にみんな戸惑う。
「まずは、菜園部の子。連休中も、ちょっと学校に様子見にくるって。保健室の先生が見てくれてるってことなんだけど、やっぱりきになるんですって。もしかしたら保健室の先生に会いたいのかもしれないわ」
くすくすと、何人か微笑む人がいた。
「つづいて、いつも学校のグラウンドで、
サッカーで遊んでる男の子たち。商店街での
イベントで、ビンゴ大会とラジコン大会があるそう。他にも連休中のイベントがたくさんあるから、みんな見に行ってね。」
「もうひとつ。これはここだけの話で聞いたんだけどね、裏山の神社にはきつねのかみさまが
住んでいます。あぶらあげをもっていくと喜んでくれるので、みんなも行ってみよう!」
「楽しいこと、いっぱい探してね。先生は連休中、
学校に隠れてる動物を探してみたいとおもいます」
なぜかツボにはまった人がたくさんいるみたいで、
笑いをこらえてる。
「こんな感じで、学校には動物たちが隠れています。みんなも探してみてね」
スケッチブックにキリンが描かれた絵と、
アヒルが描かれた絵、竹林の中にパンダが描かれた絵をみせる。面白い人だとみんなはおもうだろうけれど、全てあったことをそのまま言っているだけだと受け取るのは、たぶん僕だけだろう。
場が和み、無事終業式は成功した。

これでよかったのだろうか。ブリキ先生に、
あまり深く考えずに、直接インタビューして聞いたことをそのままいいましょう、と僕が進言したのだ。みんな快く答えてくれた。

みんなブリキ先生に注目している。
喜んでいいことだけれど、
自分の先生だったのがみんなの先生になったことで、
僕はこころなしか寂しい気持ちになったけれど、
悟られないように、ブリキ先生に声をかけにいった。


	文化祭に向けて

「ということで、おねがい海魚くん」
「さ、さすがにそれは両親が許さないと思いますよ・・・?」
連休初日。僕はしばらくブリキ先生と会えないと思い、生き物係室に、ゼンマイを巻いて挨拶に向かっていた。
「わかった。ご両親にお願いするわ。車の準備するから昇降口前でまっていてね」
どうしてそうなるんだろう。昇降口で待っていると、
ブリキ先生がカエルの車に乗ってやってきて、
僕の自宅に向かった。家庭訪問になっている。
ブリキ先生、よそ行きに着替えるって言ってたけど、
黒いロングソックス?と、黒いカーディガンっていうなにか?まるで、
ジャイアントパンダの印象を与える服装をしている。
「どうぞ、上がってください」
ブリキ先生を茶の間に連れて行く。
「かあさん、変わった先生だけれど、
おどろかないでね」
なにをいってるのだ?とくびをかしげて、
母はブリキ先生のところに向かう。
「あらあら、休日も仕事なんて、おつかれさまです」
ははがおじぎをする。
「こんにちは、海魚くんのお母様。今日はお願いしたいことがあってお邪魔しました」
「あら、なにかしら」
「生き物係の活動と、文化祭の催し物でなにやるかの大事なお話があるので、どうか連休中、学校で
合宿させてもらえないでしょうか」
いくらなんでも無茶だ。だめに決まってる。
「そんな、だいじょうぶですか?むりなさらずに」
「まず、早朝はお花にみずやりをして、歯磨き、
朝食、宿題をしてから、活動をして、夜はお風呂に入ります。お金は全て部費で賄うので大丈夫です」
商店街にあるお風呂屋さんのチケットを取り出して見せる。
「早寝早起き朝ごはんを基本に色々やって
いきます」
「まあ・・・」
おこっちゃっただろうか。
「きっと楽しい連休になるわね!どうか頑張ってください!」
母は満面の笑みを浮かべて、着替えなどを用意したかばんを僕に渡して、車に乗り込んだ僕らを見送りする。
「お母様、素敵なかたね」
大人の考えていることはよくわからない。

夢見月すぐる 2022/07/17 05:31

【64ページ公開】ブリキ先生はゼンマイで動く  分割1/2

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8/31まで、64ページ公開します。(全212ページ)よろしくお願いします。


登場人物

 天塚 海魚(あまつかみお)
   主人公
 
 日野 桜花(ひのおうか)
   ブリキ先生。ゼンマイで動く。
 委員長
   海魚のことを気にかけている。
 
 銀木真夜(しろきまや)
   クラスメイト。
 保健室の先生

  おおきなうさぎ。

ブリキ先生はゼンマイで動く

     序章 日野 桜花
  
 
  あなたは今日から生き物係です。
  生き物係室にお越しください。
  ブリキ先生が待っています。
  ブリキ先生はゼンマイで動きます。
  先生のうなじを見てください。

 早朝。日直の当番で来てみると、机にこのような
用紙が置かれていて、ゼンマイの鍵がくっついていた。どうするか悩んだけれど
見に行くだけでも、と行ってみることにした。
この教室から出て一番突き当り?あそこは
たしか空き室で物置になっていたと思うけれど。

つきあたりの教室に行くと、たしかに「生き物係」
という表札が上に付いていた。でも、このような表札が出ていたことに今まで気づかなかった。
「失礼しまーす」
こんこんとノックをして引き戸を開けてみると、中は物置となっていて、真ん中にブリキ先生、と書かれたシートで覆われた何かがある。僕はそれがブリキ先生なのだと思い、シートをよける。すると、
等身大のマネキン人形?の女の子が目を閉じ、
眠ったように椅子に座っている。いや、座らされている、
といったほうがいいのだろうか。
僕はあの連絡用紙にくっついたゼンマイの鍵のことを思い出し、そのマネキン人形のうなじを見ることにした。
「ちょっとみせてね」
人形といえども、女の子の姿をしているので勝手に
後ろ髪を触りうなじをみることに抵抗を感じた。
すると、うなじにはゼンマイを巻くためだとする
差し込み口があった。カリカリと僕はゼンマイを
そっと回す。10回ほど回すと、ぴくりとマネキン
人形が動いたような気がして、正面に回って様子を
見てみる。
「え?う、うごくぞ!」
マネキン人形がゆっくりと立ち上がり、目が少し開いて、僕の方を見つめている。
「君がブリキ先生?」
僕は近づき語りかけると、バランスを崩したのかよろめく。
「あ、あぶない!えっ!お、おもいっ!」
僕はそばに寄って支えようとすると見かけに反して重く、そのまま倒れてしまった。とっさに目をつぶり、鼻先に何かが当たる。目を開くと、そのマネキン人形は僕に
覆いかぶさる姿勢となり、顔をじっと見つめていた。
どうやら僕は、倒れたときに鼻から
血が出ていたようだ。
「あなたがあたらしい係員ね。私は生き物係の主任をしているわ。よろしくね」
ピンクのハンカチを僕の鼻に当てて、ブリキ先生は
そう答える。
「天塚海魚(あまつかみお)です。
よろしくおねがいします。」
「うん、海魚くん、いっしょにがんばろうね」
ブリキ先生の腕をよく見てみると、関節の部分が
球体になっていた。商店街などで見かける
マネキン人形とは全然違うようだ。ロボット?
なのかもしれない。
「ああ、散らかっていてまるで物置のようね。片づけるからまた後でね。これから授業があるんでしょう?」
状況が呑み込めないまま、ぼくは生き物係になっていて、そのまま生き物係室を後にした。
「あ、新しいハンカチ、買ってこないと。おこづかいたりるかな?」
ピンクのハンカチを鼻に当てながら、洗面所の鏡に
映った自分を見ると、ハンカチの縁に名前が書いてあることに気付く。

 日野桜花(ひのおうか)

ブリキ先生の名前、かわいい。

 チャイムが聞こえて、それからはいつもと同じように、授業が始まる。僕は夢を見ていたのかもしれない。

午後。体育の授業だ。
グラウンドで体育座りをしていると、ふと生き物係室のほうの窓を見る。ブリキ先生が何かを抱えて運んでいる。
「ブリキ先生、僕も手伝うよ。」
エプロンとバンダナをした恰好の先生。
「ありがとう、助かるわ。」
不用品を校庭の焼却炉の方に持って行っているらしい。
いつのかわからないテスト用紙とか、連絡用紙など。
紙でもこのくらいの量になるとけっこう重い。
「ふう、だいぶ片付いたね。・・・ブリキ先生?」
ブリキ先生が廊下で座り込んでいる。
「どうしたの?具合が悪いの?保健室にいく?」
返事がない。突然眠り込んでいるようだ。
「もしかして・・・」
僕は先生のうなじを見えるようにして、ゼンマイを
巻いた。
「ん・・・・」
やっぱり。ゼンマイがきれたようだ。
「あら海魚くん、おはよう」
ときおり、ブリキ先生の様子を見に来ようと思った。
廊下で寝てしまったら大変だ。
僕は先生の手を握って立つのを手伝うと、生き物係室に入る


「うん、片付いてきたね。あと寝室も」
ブリキ先生は壁の用具入れを開ける
「寝室って、ここそうじ用具いれるところだよ?」
たしかに用具入れは教室に置いてあるものより広く、
ブリキ先生がちょうど体育座りをして入れる
スペースがある。
「でも、ここに座って扉を閉じるとね、なんだか
落ち着くの。」
と、用具入れに入って見せる。やっぱり、ロボットなのだろうか。
「じゃあ、何か下に敷いたほうがいいですね。」
そうして僕は、ブリキ先生の寝室をつくるのを手伝うのだった。


 放課後。生き物係室に行ってまた片づけるのを
手伝う。
「だめ。暗くなっちゃうから、あとは先生が
するから早く返るのよ。」
ばいばいと手を振る。こういう所はちゃんと先生。

 商店街。ブリキ先生に渡すハンカチを選ぶ。
やっぱり桜色のがいいよね。
財布をみると100円玉が5枚。なんとか
買えそう。飲み物がしばらく買えなくなるけど。
「あ、天塚くんだ」
そうしているとクラスの委員長と会った。
「ハンカチ?だれかにあげるの?」
ちょっと苦手。
「う、うん、ちょっとね」
「ねぇねぇ、文化祭の時に実行委員になってくれるよね?」
「え、うん、いいよ」
「もう、だれもやりたがらないんだから。それと」
「なに?」
「体育の授業の時、勝手にどこかいっちゃだめよ。
私ずっとみてたんだから。」
「ええと、係員の仕事手伝ってたんだよ」
「係員?天塚くんなにかやってたっけ?」
「うん、生き物係」
「生き物係?飼育係じゃなくて?そんな係ないわよ?」
「でも、生き物係になったんだって」
僕はブリキ先生のことは黙っておこうとした。
きっとびっくりするにちがいないし、なんだかいけないことをしているように感じていたから。
「ほかにだれがいるの?」
「今のところ僕ひとり」
「はあ・・・それぜったいだまされてるって。
ただの雑用なんじゃないの?」
そうかもしれない。
「ぼ、ぼくはやく家に帰らないと心配されるから!」
ぼくは一方的に押し切ってその場を離れた。
「でも、学校でなにか動物飼っていたかな?
絶対なにか隠してる」
かくしごとをしているとあやしむ
委員長の視線を受けながら帰宅した。 

 自宅の部屋。
今頃ブリキ先生も用具入れの中で眠っているの
だろうか。生き物係って何をするんだろう。
委員長、苦手だな。
色々考えているうちに眠くなってきて、
また明日。


 


「やあ、手術後の様子はどうかな」
ここはどこ?私はたしか教室を片づけていたはずだけど。
「これから簡単なテストをするよ」
目がぼやけてよく見えない。
「難しく考えなくていい。いまから見せる絵を見て
思ったことを話すんだ。」
見知らぬ人。見知らぬ部屋。ああそうか、これは夢だ。



「まず一枚目」

→花
大きなミミズ
触手

「2枚目」

顔
→アヒル
落ち葉

「3枚目」
  ムカデ
  縁台
  →タヌキ
「4枚目」
  異形の存在  
  →猫

花壇


「5枚目」

→ウサギ
ピースした手
大福

「続いて、次につぶやいていく言葉から連想される
ことを答えてみて」
これはなんのテストなのだろう?
「マネキン」
  ↓「友達」
「映写機」
  ↓「幸福を呼ぶもの」
「おりがみ」
  ↓「生命」
「車」
  ↓「更新」
「噴水」
  ↓「鳥」
「やけど」
  ↓「保健室」





「うん、特に後遺症はないみたいだね。手術は成功だ」
手術?私はけがをしたのだろうか?
「それと、この施設にいるうちはゼンマイだけで大丈夫だけど、どこかに出かけるときは・・・・そこに・・・・これを・・・」
だめ。聞き取れない。だけど私は彼が何を言おうとしているか知っている。
今、教室に誰かが入ってくる気配がした。









	一章 生き物係

 「学校にはたくさんの動物が隠れています。
それを見つけるのが生き物係です」
説明するためのボードを僕に見せる。
「これ、一晩で作ったんですか?」
「そうよ。だって他にやることがないんですもの」

早朝に生き物係室にいって用具入れを開けると
ブリキ先生が眠っていた。息はしていない。
僕は昨日と同じようにブリキ先生のうなじにある
ゼンマイを巻く。これが毎日続くのだろう。

黒板には白チョークで歓迎と書かれており、
おりがみで作った飾りのお花がつけられていた。

「動物が隠れているって、どういうこと?」
「正確には隠れているわけではありませんが、
見えるようになるっていったほうがいいかな」
「み、見えるようになる?」
また変なことを言っている。
「会いたい、すごく会いたいって願うの。
そうすれば友達になれるわ。」
「ほ、本当に?あっ、ちょっとトイレ」
ブリキ先生はきょとんとする。
トイレ。あ、日誌書かないと。
「ねえねえ、なにしてるのー?」
「えっ」
ブリキ先生がトイレまで入ってきてしまってる。
「なにこれじょうろ?」
「・・・・!!」
僕はブリキ先生をスルーしてそそくさと手洗い場に行った。


「ねぇねぇ、さっきのじょうろでお花にお水あげるの?」
「しっ、知りません!」
僕はブリキ先生の話を詳しく聞かずに廊下に出た。
「あっ」
そこには白いアヒルが一羽いて、
こちらを見つめている
「ほらね、いったでしょ。会いたいって願うとあえるようになるって」
白いアヒルはがぁがぁと鳴いて中庭の方へと向かう。
「付いてきて、って言ってるよ」
本当だろうか。
僕たちは中庭に行く。

あれ、ウチの中庭ってこんな感じだったろうか。
もっとシンプルで、ベンチがいくつかおいてあるだけだったような。目の前の光景を疑う。

とても巨大な木だ。何の木だろう?
わからないけれど、見ているだけで何故か元気に
なるような気がした。今まで見たことのない
景色だった。
「あっ、だいふく君が池で泳いでるよ」
アヒルはその巨大な木の下に広がる池で泳いでいた。
ブリキ先生は池の前でしゃがみ、アヒルを
眺めている。
「でも、僕はアヒルに会いたいと願っていませんでしたよ。ブリキ先生が願ったのですか?」
「いいえ。だいふく君はいつもこの学校にいたわ。
校内をいつも散歩してからここに帰ってくるのでしょう。うん、きっとそう」
ブリキ先生は自分に言い聞かせるように
うんうんとうなずく。
割といいかげんだ。
「あ、ブリキ先生、話があるんだけど」
「なにー?」
だいふく君もつられて僕を見つめている。
「これ、ハンカチ汚しちゃったでしょ。
新しいの買ってきたよ。」
昨日商店街で買ったピンクのハンカチを差し出す。
「えー、家庭科室でまた作るから別にいいのにー」
「いやそういうわけには・・・」
そう話していると、ぴよぴよと鳴き声が聞こえてくる。
文鳥のようだ。文鳥はブリキ先生の肩に止まる。
「なかよし、ですね」
「みんなともだちになりたいんだよー」
すると僕の肩にも文鳥が止まった。
学校で文鳥を放し飼いにしていたのだろうか。

「ちょっと2階に飲み物買ってきます。立ちっぱなしだと疲れるからベンチで休んでてね」
僕は2階のラウンジの自販機に行く。
ブリキ先生はどの飲み物がすきだろうか?
「何がいいと思う?」
僕は肩に乗ったままの文鳥に聞いてしまった。
ブリキ先生に影響されてる。
よし、オレンジジュースを2本買おう。

「ブリキ先生、飲み物かってきたよ。あっ」
ブリキ先生はまた眠ってしまっている。
僕はブリキ先生の隣に座る。ゼンマイが切れたのだろうか。ん、だんだん冷静になってきたけれど、
僕は何をしているんだ?生き物係ってなんだろう?
いや、そういうことじゃなくて、ブリキ先生って
ロボットなんだろうけど、とてもそうは思えない。
ずっと人間と話しているみたいだ。なぜ、学校に
動物が歩き回っているのだろう。なぜ、
僕はここまで違和感なく普通に聞き流していたんだろう。あ、これは性格だから疑問でもなんでもないか。
ぴよぴよと僕の肩とブリキ先生に乗っている文鳥が、
はやくブリキ先生のゼンマイを巻いてあげて、
といってみつめているようだ。
僕はまた朝と同じようにうなじからゼンマイを巻いた。


「おはよう、目が覚めたみたいだね。君が見たがっていたところに着いたよ」
わたしは車椅子に乗っている。目の前には大きな木がある。
「とても大きな木。なんの木かな」
「桜の木みたいだよ。君と同じ名前だね。でも、こんなに大きな桜の木は今まで見たことがないや」
私が何人手をつないで囲っても足りないくらいに幹が大きく、覆いかぶさるように大きい。
「この木をみているとね、なんだか元気がわいてくるみたいだ。まるで、みんなに命を分け与えてるかのよう」
私にはなしかけている人は、テスト?みたいなものをした人とは違う人みたい。だれだろう?
「アヒルくんだ」
私は木のすぐ下にある池を指差した
「白くてまるでだいふくみたいだね」


「ブリキ先生?」
「ん」
「また眠っていたんだよ、気をつけてね。道路や交差点で寝たら大変だ。」
「さくらのき」
「えっ」
「この木は桜の木、だって。夢の中で聞いた」
またへんなことをいっている
「桜の木なんですか。じゃあ、もっと動物が集まったらここでお花見しましょう」
「うん、いいよー」
「これ、後で飲んでね」
僕はオレンジジュースを渡した。
ブリキ先生はきょとんとしてしばらく考えると
「うん、とりあえず持ってかえるね」
といった。

今日はもう夕方になったので帰った。
またあしたも同じようにゼンマイを巻きにこよう。

次の日
「いったー!!」
同じクラスの銀木真夜(しろきまや)さんだ。
100メートル走で転んでしまったようだ。
「大丈夫?銀木さん」
たまたま近くにいたので声をかけた。
「あっ、大丈夫です。いたた」
僕は肩を貸して水場に一緒にいった。
「けっこう傷が深いから保健室いこう」
「ごめんね海魚くん、迷惑かけちゃって」
僕らは保健室のほうにむかった。
「失礼します、先生?」
そこにはなにか大きなぬいぐるみのようなものがあった。
「えっ?」
銀木さんは狐につままれたような表情をする。
それはどうみても人と同じ大きさのうさぎだった。
机で新聞を読んでいる。
でも僕はそのおおきなうさぎを保健室の先生だと思うことに疑問に感じず、事情を話した。
「ちょっと銀木さんがケガしちゃって、手当ておねがいします」
おおきなうさぎこと保健室の先生はうなずくと、
銀木さんの手当を始めた。
やっぱり保健室の先生で間違いなかった。
「えっえっ?」
銀木さんは困惑している様子。
「ありがとうございました」
僕たちはお辞儀をすると保健室をあとにした。
「ねえ海魚くん」
「なに?」
「保健室の先生ってあんなかんじだったかな?」
「言われてみればよく見てなかったからわかんないや。たぶんそうだと思う。」
「うーん・・・」
銀木さんは首をかしげる。
「かわいいからいいかっ!」
手をぽんと叩いて納得する。
キズの痛みが和らいだようだ。
「あ、海魚くん」
ブリキ先生だ。あ、まずい。ブリキ先生がロボットだと気付いたら、銀木さんが驚いてしまうにちがいない。僕はブリキ先生の球体の関節やロボットの指を見回す
「え・・・あー・・・海魚くん?ちょっと
こっちへ」
やっぱりおどろいているようだ。
「海魚くん、新任の先生と仲良くなって楽しくなる
気持ちは分かるけど、
その、スタイルが良いのは分かるけどジロジロみるのは良くないと思うの。気をつけてね。
親しき仲にも礼儀あり、だよ。」
そ、そこなのか・・・
「海魚くんのお友達?」
ブリキ先生は野菜の入ったバケツを両手で持っている。
「はい、そうです。銀木真夜といいます。よろしくお願いします」
「ブリキ先生、その野菜はどうしたの?」
にんじんやじゃがいものようだ。
「きりんさんのごはん。家庭科室で食べやすい大きさにしようと思って」
「へぇ・・・今度はキリンがでてくるんですか・・・」
さほど驚かなくなっていた。

僕らはブリキ先生といっしょに家庭科室へと向かい、
手伝うことにした。また委員長に叱られるな。
「これ屋上の菜園からとってきた野菜ですか?」
「ええ、そうよ。」
ブリキ先生はにんじんの皮をピューラーでむく。
「そっかぁ。私、菜園部なんですが、たくさんの野菜がいつの間にかなくなっているので、どこに行くのか疑問だったんです。どうぶつ達のご飯になっていたんですね。って、あれ?」
銀木さんはじゃがいもの皮を包丁で丁寧にむきながら首をかしげる。
「学校で動物って飼っていましたっけ?」
と話していると家庭科室になにかおおきなうさぎの
ぬいぐるみがはいってきた。保健室の先生だ。
「あら、つまみぐいですか?」
ブリキ先生は保健室の先生に話しかけると、
保健室の先生は皮をむいた人参を一つ手にとって
食べる。
つまみぐいのようだ。
僕がまだ切り分けてない人参の大きさでも食べきれるみたい。
「さて、ふたりともありがとうね。早速きりんさんのところに行くわ。あなた達も来る?」
もちろんと、僕らはこたえた。保健室の先生は仕事があるからと、保健室にもどっていった。
ブリキ先生の後についていく。階段を登り、
二階のラウンジまで来た。中庭の方の窓を見ていると、
「こっち。こっち。ごはんもってきたよ」
ブリキ先生が中庭へ向かって手をふる。すると、何か
大きな顔と大きな首がこちらの方へ近づいてきた。
キリンだ。中庭にキリンがいるのだ。でも、昨日見たときはいなかったと思うけれど。
キリンはブリキ先生をみつめている。
ブリキ先生は用意していたバケツに手を入れて、
にんじんを向けると、キリンは食べだした。
それに釣られてか、奥の方からさらに2頭のキリンが姿を表し、どうようにこちらを見つめている。
「いま、あげるよ」

「あ、わたしも」
僕と銀木さんはブリキ先生のマネをして、
キリンに、にんじんやじゃがいもをあげた。
なんだか不思議な気分だ。僕らの学校の中庭は、
僕らが想像していたよりもずっと広いのだろう。
そうとしか考えられない。だから、
どうぶつたちが住んでいたことに気づかなかったのだろう。
「のっぽさんたち、みんなうれしそう」
ブリキ先生がキリンたちに顔をなめられていた。
「あっ、私達、体育の授業の途中だったんだ。海魚くん、そろそろ戻ろう」
銀木さんしっかりしてるなぁ。
「うん、じゃあ戻ろうか。ブリキ先生、放課後にまた」
ブリキ先生に手をふると、僕らはグラウンドに戻った。
「えっ」
戻る途中、銀木さんが足を止めて、何かを見ている。
「どうしたの?」
「今、そこの踊り場の影から、しろいうさぎが私のことを見ていたわ。」
「保険の先生じゃないの?」
「ううん、普通のちいさなうさぎだったわ。でも、
いないみたい」
「きっとともだちになりたいんだよ。またあえるよ。」
ブリキ先生と同じことを言ってる、と思った。
「海魚くん、なんだか楽しそう。
そうね。またあえるわね」
僕は気づかないうちに微笑んでいて、銀木さんも
笑顔だった。

 

    神社
 


 今日は日曜日の早朝。晴天で、
たんぽぽの葉に朝露が付いている。なんだか学校のことが気になって、生き物係室へ行った。

いつもと同じように
掃除用具入れだった白い扉を開けると、ブリキ先生が眠っている。ブリキ先生のうなじにあるぜんまいを巻くと、
ブリキ先生が飛び起きて、どこかへいってしまった。
追いかけていくと、途中で見失って仕方がないので、
こうして校舎の入り口の前の階段で座っている。
「ブリキ先生、どこに行ったんだろう」
そうしていると、ぶるるると、車のエンジンの音がする。
白い、小さなトラックだ。ブリキ先生が運転していた。
「ブリキ先生、車の運転できたんですか?」
「免許くらいだれでも持ってるでしょ。それより」
助手席をみると、白い柴犬がシートベルトをして座っていた。
「昨日知り合ったの。裏の山の神社に行きたいって。
のっぽさんも行きたいっていっていたんだけどね、
大きすぎて乗れなかったの」
たしかにそれは無理がある。
僕は小さなトラックの助手席に、柴犬と一緒に乗ると、神社の方へと、ブリキ先生が車を走らせた。
「えっ、ブリキ先生動物の言葉分かるの?」
「そのくらいわかるでしょ。ほら、シロがよろしくねじょうろくんっていってるわ」
「じょうろくんって僕のこと?」
「そう、じょうろくん」
「そ、それはちょっと・・・・」
柴犬のシロがぼくの顔をなめてくる。
もうしわけなさそうになぐさめているように見えた。
「あれ?ブリキ先生、そっちは神社ではなく
商店街の方ですよ?」
「行く前にちょっとあぶらあげを」
「あ、あぶらあげ・・・?」
商店街の入口前に着いた。

「じゃあ僕が買って来ます。
車の中で待っていてください。」
腕や足の関節がそのまま見えてしまっているから、
何か工夫してからのほうがいいだろう。
するとブリキ先生が僕に一万円札を5枚差し出す。
「・・・どうしたんですか?」
「え、あぶらあげ5枚ほしいからその代金で」
「いえ、こまかいのもってないんですか?」
「これしかなかったわよ?」
見ると一万円札を30枚くらい手に持っていた。
「そ、それどこから・・・?」
「職員室にある私のロッカーから。足りなかった?」
「い、いえ、そういうことじゃないですね・・・僕のおこずかいで買ってくるので今回は大丈夫です」
「そう、ありがとう」
そういうと、札束をポケットに仕舞う。
僕は商店街の方へ向かうと、柴犬のシロが着いてきた。
「お豆腐やさんにいこうね」
とシロに話しかける。言葉はわからない。

「あー!海魚くんだ!」
委員長だ。ちょうどあぶらあげを買って出てきた
所で見つかってしまった。タイミングがわるい。
「う、うん。委員長も買い物?」
「そう。海魚くんは犬の散歩?でも首輪がついて
ないわね。」
「おとなしい子だから・・・・」
委員長、おしゃれをしてる。誰かとデートなんだろうか。
「あぶらあげ?あぶらあげだけ買って、神社へ
きつねに会いに行くの?」
たぶんそうだと思う。けど、話しても狐につままれた顔をされるだろうし、冗談で言っているのだろう。
「い、生き物係の活動でお味噌汁を。
学校に戻るとこだったんだ」

「味噌汁をつくるために、わざわざ学校に?なにそれ?」
「じゃ、じゃあ、早く戻らないとみんな待ってるから!」
みんなって誰のことだろうと、自問自答しながら無理やりその場を後にした。
「あれは、絶対何かを隠してるわね」
委員長がこちらの方をうかがっている。

「ブリキ先生、買ってきたよ。
って眠ってる・・?」
またゼンマイが切れたようだ。









 「ブリキ先生大丈夫?
運転中にゼンマイ切れたりしない?」
ブリキ先生が起きて、再び神社へと車を走らせた。
「運転してるときは、シガーソケットからお腹にケーブルをつなげておけば、プラセボ効果で切れないから大丈夫よ」
「そ、そうですか。それだと安心ですね」
今、聞いてはいけないことを聞いてしまった感じが
したから、忘れよう。何か話題を変えないと。
「あ、その缶バッチ手作りですか?
かわいいですね」
今日は日曜日。いつもは家でゴロゴロしているのに、
いろいろなことが起こって忙しく、
胸元の3つ横並びして付いている缶バッチに
気づかなかった。
かえるのイラストが描かれている。
「ぶじかえるのバッチよ。持ち主に危険が迫った時、
身代わりになってくれるの。神社に着いたら海魚くんにもひとつあげるね」
「ありがとうございます。
大事にします。」
これはうれしい。

ブリキ先生と話しているうちにもう神社についてしまった。
神社にはだれもいない。
ブリキ先生は神社のおそなえの台に
あぶらあげを並べ始める
「きつねさんとも、
ともだちになれるといいですね」
僕はむちゅうになっているブリキ先生に声をかける。
「がっこうにもあそびにきてほしいなー」

「シロ、どうしたの?」
ついてきて、といっているようだ。着いていくと神社の裏手には竹林が広がっていた。その手前でシロは穴を掘り始めた。
「なにか埋まっているの?」
僕は膝に両手を当てて様子を見ている。
何か、金属の箱が出てきた。
「なんだろうこれ・・・?」

その金属の箱を持って神社のお供え台のところに
もどると、ブリキ先生が縁台に座っていた。
どうやらきつねの神様が来るのを待っているようだ。
「ブリキ先生、これ、シロが地面から掘り出した
やつです。シロから事情をきいてもらえませんか?」
ブリキ先生がシロをみつめる。なにか会話をしてる。
・・・ようにみえる。
「私に返すって。ずっと前から預かっているもの
らしいわよ」
そういうので、箱を開けてみる。中は二重になっていて、
小型のアタッシュケースのようなものが出てきた。
「これ開けて大丈夫なんですか・・・?」
「玉手箱、ではないってシロが言ってるわ」
僕は恐る恐る開けると、頭につける猫の耳?のようなアクセサリが入っている。でも片方しかない。
もう片方はどこにいったのだろう。
そのとき、がさがさと神社の裏から誰かが来る
気配がした。振り向くとそこには、クマがいた。
「く、くまー!」
僕は思わず叫び、腰を抜かしてしまった
クマはこちらに近づいてくる。
ブリキ先生は平然としていて、クマから何かを渡され、その後何事もなくクマはさっていった。
それはもう片方の猫の耳のアクセサリだった。
「ずっと前に私は彼と出会って、
そのとき落としたアクセサリをずっと預かっていて、
返しにきてくれたんだって」
僕はなにがなんだかさっぱりだった。
「あ・・・・」
ブリキ先生が、今度は竹林に興味津々のようだ。
「これ、変わった木がいっぱい生えてる」
竹を触って様子を見てる。
「木じゃなくて、これ全部茎らしいですよ」
「へぇ・・・」

「たけのこはわかりますが、竹筒を集めて、
なにか作るんですか?」
小さいトラックの荷台にクワやスコップ、ナタなどが
置いてあって、たけのこほりをすることにした。

僕はスコップでたけのこをほって集めてる。
平然を装ってはいるが、さっきの熊がまた戻ってくるのではと、内心気が気でなかった。
そんな心配を余所に、ブリキ先生は不器用にナタを
何度もふって、竹を切り倒そうとしている。
ナタを持っている姿が割と怖かった。
「ブリキ先生、たぶんこれノコギリで切ったほうがいいですよ」
僕はブリキ先生に、ノコギリで生えている竹を
切っているところを見せる。
「へえ、海魚くん。くわしいわね」
感心して、見よう見まねでのこぎりを使いだす。
でも、ぐにゃぐにゃ曲がり何度も引っ掛かって止まってしまう。
「のこぎりは薄い鉄板でしなるので水平にゆっくり引くといいですよ」
さっきとは違ってしならないようにゆっくりひいて切りはじめる。うまくいきそうだ。
「じゃあさきにタケノコをトラックに積んできますね」
ブリキ先生は無言でうなずいた。集中している。
僕は休日に何をやっているのだろうか。
なんとなくブリキ先生のうなじのゼンマイを巻いて
話をしてすぐ帰ろうとしていたのだけれど、それが
ドライブになって、神社にお供えして、
ここほれワンワンを見守って熊がおとしものを届けに来てくれて、今、タケノコ掘りをしている。
まるで脈絡がない。
「シロ、今日はいそがしいね」

タケノコをトラックの荷台に積みながら話しかけると、
柴犬のシロはキョトンとした表情で僕を見つめている。
「シロ、のどかわいたでしょ。水飲んで」
かんたんに竹を割って作った皿に神社の水飲み場から汲んで来た水を差し出す。そういえば、ブリキ先生は
何も口にしないのだけれど、やはりロボットだからだろうか。この前ジュースを渡したときも飲まなかったし、
生き物係室の棚に飾ってあった。
もしかしたら、なにか食べるところが珍しいのかもしれない。
シロが水を飲むのをみながら、僕も竹で作った水筒の
水を飲み終えると、ブリキ先生のところへ戻った。
そうだ、この水筒をブリキ先生にも見せよう。
「ブリキ先生?えっ」
白と目元に黒いアイシャドウのような模様。
パンダだ。あの動物園にいるパンダ。
ブリキ先生がまた眠っていて、パンダが背中で
ブリキ先生を支えている。
パンダがこちらを向いて、やっときてくれたか、
といっているように見える。
先程の熊は腰が抜けるほど怖かったのに、不思議と
怖くなかった。パンダも熊猫と言って、
熊みたいなものなのに。
「あの、ブリキ先生のゼンマイを巻かせて下さい」
首飾りのようにかけていたゼンマイを見せて、
ブリキ先生のうなじにゼンマイを挿した。
その時、手がパンダの背中に当たり、心地よかった。
「ん、」
ブリキ先生が目を覚まして、こちらをみる。
パンダも同じように見ている。
「あらおはよう海魚くん。こちらのかたは竹林に
住んでいるジャイアントパンダのたけださん」
白い毛並みに、目元に黒い斑模様が特徴的な顔で、
ぱっちりと開いた目でどうも、と言っているように
みえる。パンダのたけださんが事情を話してそれを
ブリキ先生から聞いたところ、
竹を切っているときに眠くなって倒れかかっていたのを見かけて、背中で支えてもらったそうだ。
そのまま世間話をしてるうちに完全に眠ってしまい、どうしようと困っていたらしい。
「そうだったんですか。親切にありがとうございます」
「手に持っているのなぁに?」
ブリキ先生が指をさす。
「よくできているでしょ。竹筒でつくった水筒だよ」
「へぇ」
興味を持ったみたいでよくみている。
「え?ほんとう?ねぇ、タケダさんが竹を運ぶのを
手伝ってくれるって。」
これは恥ずかしい。遊園地で遊んでいるみたいだ。
タケダさんの背中に竹を束ねて、僕がその上にのって押さえる。それでもタケダさんはものともせずに歩く。
ブリキ先生が隣で支える。
それを繰り返すうちにトラックの荷台がいっぱいに
なった。
「タケダさんありがとう。キツネさんと会えなかったのは残念だってけど。またね」
ブリキ先生がタケダさんの頭を撫でる。
僕はタケダさんに大きいタケノコをあげて車に乗った。
「ばいばい。あ、」
僕はタケダさんに手を振って、ふと神社の屋根を
見上げると、あぶらあげをくわえた、
先程のクマがいる。(・(ェ)・)
白い煙があがり、その中から、頭にはっぱをのせた
狐が現れた。
「そういうことだったんだ」
もう会っていたんだね。
「なに?」
「ないしょ」
僕はひとこと、ブリキ先生に伝えて
膝の上のシロを抱きしめた。

 学校に帰ってくると、保健室の先生が
校舎の入り口の前で、鍋にお湯を沸かして待っていた。
「あら用意がいいわね」
ブリキ先生が車から降りて、タケノコを保健室の
先生に渡す。
「銀木さんも来ていたの?」
「うん、菜園部で屋上の様子見に来たら、大きなウサギさんがお鍋を準備しててなんだろな、ってみてたの」
僕が通っている学校は、屋上に菜園がある。たしか、
中庭に光が入るように真ん中が丈夫な金網が丸型に、
はずれない排水溝のフタのような状態になっていて、
まわりにプランターが並べてある。僕がそだててる
アサガオもそこにある。
クラスメイトの銀木さんは菜園部で、野菜の手入れに
よく来るそうだ。
「タケノコ?そう、タケノコ採りにいってたんだ、
神社の裏に竹林があるからね」
銀木さんは乗ってきた白いトラックを見る。
話しているうちに、保健室の先生がタケノコの
かわむきがおわり、茹でていた。
その様子をブリキ先生が見つめている。
「ねえ海魚くん、どんな料理がいいかな」
「味噌汁を作るみたいですよ」
僕は答える。簡易テーブルの上に大量のあぶらあげとにんじんがおいてあったのだ。
出しはかつおぶしのようだ。味噌汁に、にんじんはあうのだろうか。
「あー!ほんとに味噌汁つくってる!」
委員長だ。委員長が僕を指差している。
「委員長、きちゃったの?」
「どうしたのこれ?」
委員長が問いただすように聞く。
「うん、あのあと神社にいってブリキ先生と二人で
タケノコ掘りをしていたんだ」
そうだ、委員長に聞いてみよう。

「ねえ委員長」
「何よ」
何故か不機嫌そうだ。
「なにかこう、見てて気になることない?」
「何が?」
やっぱり不機嫌のようだ。
「あの、こう、保健室の先生って身体が大きくて、
耳が長くて、鼻をピクピクさせてて、色々と
毛深いでしょ?女の子的にどうなのかなぁって」
「はあ?なにいいたいのかわからないわ。それより」
やはり違和感を感じている僕が変なのだろうか
「あの女、なに?」
僕は誰のことだろうと、あたりを見回した。
「あのこんこん女のことよ!」
委員長がブリキ先生の方向を指差す。
ブリキ先生はどちらかというと、この場合たけのこ
大好きけろけろお姉さんだろう。
「え、生き物係の先生だけど」
「何も知らされてないわよ。なんなの?」
本当に不機嫌のようだ。助け舟がほしいのに、
ブリキ先生はたけのこに夢中でかわむきをしていて、
保健室の先生は料理をしていて、銀木さんは
その様子を興味深くみている。
「なんで休みに学校こさせられて、あぶらあげをかわせられたの?嫌なことは嫌っていわなきゃだめでしょ?」
どこからどういえばいいのだろう。
「生徒にあぶらあげかいにいかせるとか何様なの?
きつねなの?」
買ってる途中でゼンマイがなくなってねむっちゃったら大騒ぎになるし。
「うーん」
困ってしまった。その時誰かの視線を感じてそちらを向いてみると、サッカーボールをもった子らが僕らのほうを見上げている。学校のグラウンドで遊んでいたのだろう。
「おにぃちゃんたちも味噌汁食べに来たの?
保険のせんせいと」
「おまたせ!」
ブリキ先生がお盆にたけのこの味噌汁を持ってくる。
遊んでた子らは、大はしゃぎだ。
なんとかお茶を濁せそう。助かった。
「委員長、いっしょにタケノコの味噌汁を食べよう」
いいんちょうにお椀を差し出す。
委員長は無言で受け取り、味噌汁を食べ始めた。
保健室の先生は周り囲まれて、
遊んでた子らに抱きつかれていた。

ゲームセンターのある商店街へ

 そうか、先日僕は授業の準備の手伝いを
していたのか。工作室に積まれた竹材。
図工の授業で竹細工の製作をしている。
僕は竹箒を作っている。
委員長はまだ機嫌が悪く、
僕の方をたまにキョロキョロ見ている。
「天塚、ちょっといいか?」
担任の先生だ。なんだろう。
ブリキ先生がいるところにつれられた。
嫌な予感がする。
「なあ、あれ、どう思う?一時間ずっとやってるんだ」
二階のラウンジで、ブリキ先生がジュースの自販機に
一万円札を入れようとしている。もちろん入らなくて、
何度も試してしわしわになっていた。
うーんとうなって自販機を背にその場でしゃがみ込み
天井を見上げて考え事をしている。
これは関わりたくない。
三角定規を取り出して、お札の長さを測り始めた。
「困ってますね」
「みてのとおりだ。あとよろしく」
「えっ」
一言残して、担任の先生が去ってしまった。
まずい。あと15分で授業がおわり、みんなが
ラウンジにあつまってくる。しゃがんだことで、
ロボットの足の関節が見えてしまっている。
ブリキ先生がロボットだとバレてしまう。

僕は意を決して話しかけた。
「ブリキ先生、どうしたんですか?」
「あ、海魚くん、いいところにきたわね」
僕にとっては全然いいところではないけれど
「これ、入らないの」
しわしわになった一万円札を見せる。
「大福くん(アヒル)に聞いたら分からないって。
ぴよぴよちゃん(文鳥)に聞いても分からないって。」
そりゃわからないだろう。
「のっぽさん(キリン)はなんて答えんたんですか?」
「のっぽさんは顔をなめるだけで、
お話聞いてもらえなかったわ」
のっぽさんはなついているのか。
「あの、一万円札は自販機で使うことは
出来ないんです」
「どこだと使えるの?」
「うーん」
購買部だと、釣り銭に困るだろうからなぁ
「放課後、商店街のゲームセンターに行きましょう」
「そこだとつかえるの?これ、海魚くんにあげる」
半ば強引に一万円札を渡す。
「じゃあ、放課後に昇降口でまってるから」
ブリキ先生は満足して立ち上がる。
「手に持ってるの、なぁに?」
うっかりたけぼうきをそのまま持ってきてしまっていた。
「ほしいときあげる」
「ほんとに?ありがとう」
そのまま行ってしまって、しわしわになったお札を
持った僕だけが残った。
これは面倒なことになった。







放課後。昇降口の前の階段でブリキ先生が来るのを待っている。
「こんなところで座って、何してるの?」
委員長だ。
「生き物係の活動で商店街に行くんだって。」
だんだん嘘をつくのが上手くなってきた。
「何かお買い物するの?」
「そこまでは聞いてないなぁ・・・」
次はなんて答えよう。
「そっか。じゃあね」
素っ気ない反応で、委員長は帰っていった。
その後どう言うか考えてなかったから助かった。
委員長が帰って、10分くらいしたら、ぶるるる、
と車のエンジンの音が聞こえてくる。
ブリキ先生だ。この前と違う車に乗ってきている。
なんだろう、不思議な形をした車だ。緑色で、
正面からみるとカエルのような顔をしている。
横から見るとかなり小さく、
この間の白いトラックよりも小さい。
付近で見かけたことのない、珍しい車だ。
ブリキ先生がカエルの車から降りてくる。
「おまたせ。さあのって」
「これ、二人乗れるんですか・・?」
助手席側のドアを開けると、たしかに座席があるが、
小さい。二人で入るとブリキ先生と密着する形に
なった。
「しゅっぱつ」
車を走らせる。
「このまえの車はどうしたんですか?」
「あれは、誰かが使っててなかった。保健室の先生に
話しかけたら、この車のキーをかしてもらえた。」
「えっ、保健室の先生ってしゃべるんですか?」
「何言ってるの。うさぎがしゃべるわけないでしょ。」
そういえばそうか。少し疲れてるみたい。
首飾りのようにかけているゼンマイを見る。
そうだ。毎朝ブリキ先生を起こしに行っているから、
いつもよりも考えることが多くなって疲れるのか。
窓の外を見る。みんな下校で帰るところだ。
よく、僕らの方を二度見する人がいた。時折指を指して
この車の方を見るように促す子もいる。
カエルみたいに見えるからだろう。
「みんな僕らを見てますよ」
「海魚くんのことが好きなんでしょ」
冗談?いや多分本当にそう思って話しているのだろう。
なんだろう。この車で移動するのを、
これから何度も繰り返されるような気がする。
「ついたよー」
商店街の駐車場に止める。
この前休み時間に知ったけれど、
このようにお店が並んでいて、屋根がついている
場所のことを、アーケード街というらしい。
「ブリキ先生、これつけて」
白い手袋を差し出す。
「どうして?」
「滑り止め」
キョトンとして聞き返すも、白い手袋をする。
気に入ったようで、手を開いてみつめている。
とりあえずはこれで誤魔化せそう。
「色々なお店があるわねー」
僕がハンカチを買った雑貨屋。ペットの餌を
売っているところ。パン屋。コーヒーショップなども。
ブリキ先生は目を輝かせてキョロキョロ見ている。
ゲームセンターはアーケード街の真ん中あたりにある。
入り口の自動ドアが開くと、中から騒がしい音が
聞こえてくる。おこづかいがすぐになくなるから、
僕はそれぞれが何の音なのかはわからない。
「ブリキ先生、これだよ」
両替機の前に来ると、ブリキ先生が観察する。
「これ、一万円入るの?」
「入るよ」
ブリキ先生に渡されたしわしわの一万円札を入れる。
すると、千円札が9枚、100円玉が5枚、
500円玉が1枚出てきた。
「はい、これ」
「わあ、増えた」
一万円札が別の紙幣と硬貨に変わって、喜んでいる。
「この機械を使うと、お店で遊んでいかないと
いけないんです。それがマナーです。」
「そうなの?」
へんなきまりごとだ、と思ってそうだ。
「これ、なに?」
ピンボール機の前に来た。
「ここに100円玉を入れると、ボールが出てきて、
筐体の横についてるボタンをタイミングよく押して
下のバーでボールを弾くゲームです」
やって見せてる。
「おはじきみたいね」
ボールが色々なところに飛んでいき、効果音が鳴る。
「ボールを弾けずに下に3回落ちると終了です」
「すごい!面白そう!」
ブリキ先生はガチャガチャとボタンを押してボールを弾くが、タイミングが合わずすぐに下に落ちてしまう。
3回目。
「このボタンはなぁに?」
「あ、それは」
何度もおして筐体の中が揺れる。
「ボタン押しても動かなくなったよ?」
そのままボールが下に落ちてゲーム終了になった。
「ボールが引っ掛かったときに揺らすボタンです。何度も押すとペナルティでミス扱いになるんです」
「難しいね。もっと簡単なのないの?」
「こっちはどうですか?」
エアホッケーをしよう。
「台から空気が出てくるー」
白手袋をはめた手で空気が出るのを確かめてる。
「この丸いのをコレで弾いて、相手のゴールにシュートするゲームです。やってみましょう」
プラスチックで出来た丸いの。パックを
スマッシャー?と呼ばれるラケットのようなもので
弾く。ブリキ先生は見様見真似で同じようにゆっくり弾いて、パックを返す。
「これもおはじきみたいね」
夢中でゲームを続けて、僕がなんとか勝てた。
「あ、これ知ってる。体育館にあるやつだ」
バスケットゴールにボールを入れるゲームだ。
コレは苦手でやったことがない。
「やってみたい」
硬貨をいれると、ブリキ先生の手元に
ボールが手元にきてゲームが始まる。
「ほいっ」
ボールがバスケットゴールにちょうど入る。
「ほっ」
また入る。
「はいっ」
また入る。偶然じゃないようだ。
繰り返しているうちに、ブリキ先生が投げたボール
が全て入った。
ハイスコア達成したことが掲示板に
表示される。そうか、ブリキ先生がロボットだということを忘れていた。さっきのエアホッケーはスマホのゲームと同じで手加減していたのか。
「すごいですね、景品がでてきましたよ」
カプセルが出てくる。開けてみると、
「カエルの形をした、お財布のようですね」
がま口の財布だ。ブリキ先生はカエルに縁がある。
「これ、何に使うの?」
「ここを開けて、お金を入れるんです」
「へえ、お腹の中に入れてるみたいね。
全部はいっちゃった。」
先程両替したお金が全部入ったようだ。
「これはなんのゲーム?」
「これはクレーンを動かしてぬいぐるみを掴んで動かすゲームです。この場所に落とすと、ぬいぐるみがもらえるんです。500円玉を入れると1回多くできますよ」
おおきなうさぎのぬいぐるみだ。
保健室の先生に似てる。
「やってみたい」
おおきなクレーンが動いて、ぬいぐるみを6回掴むが、
落としてしまって、ぬいぐるみを取ることは
できなかった。
「なかなか出てこないんだよね。すぐおわっちゃうし、
僕らはあまり遊ばないんだ、これ」
「うーん」
思うようにいかなくて、ブリキ先生が唸る。
そうしてると、なにか毛玉のようなものが僕の前を
横切った。それはブリキ先生の足元に行った。
「あ・・・」
ハムスター?いや、ハツカネズミだ。ブリキ先生が
すくい上げて、後ろに隠す。
「やあ海魚くん、このあたりでねずみを見かけなかったかい?」
ゲームセンターの店長だ。
「い、いえ、見てませんよ」
「そうか、まったくどこいったのかなぁ」
ねずみを追いかけていたようだ。
「ブリキ先生、その、学校に連れて帰るんですか?」
「うん」
聞かなくてもわかったのだけれど、
念の為聞いてみた。白い手袋していてよかった。
ゲームセンターの帰りに雑貨屋へ寄り、ポケットに入る位の小さい小箱を買って渡した。
「これに入れましょう」
チョーくんを小箱に入れて、ちょうどブリキ先生の
ポケットに収まった。チョーくんは顔をだしてあたりの様子を見ている。
「あれ、なぁに」
ブリキ先生が指差す方向を見ると、前まで貸店舗で
空いていたところにお店が開かれている。
「迷路、二人で千円。みたいです」
僕らの他に、関心を持っている人はいない。
「これ、入ってみたい」
ブリキ先生ががま口の財布から千円札を取り出した。
「えぇ・・・大丈夫ですか・・・?」
なんだか嫌な予感がする。僕らはこういうところは
想像するだけで、実際に入ることが出来ないのだ。
なかに入ってみる。店員さんはいなく、
ドアの入り口に千円札を入れるところだけある。
千円札を入れると、カチャリと鍵が空く音が聞こえた。
ドアノブのないドアがひとりでに開く。
「本当にはいるんですか?あっ」
ブリキ先生は興味津々で入っていってしまった。
僕も付いていくしかない。途中でゼンマイが
切れたら大変だ。
中は休み時間にノートに書いて遊んでいたように、
本当に迷路になっている。
「あ、またさっきと同じところに戻ってきちゃった。
ブリキ先生、もうあきらめませんか?」
どうしてだろう。何度も試しているのに同じ場所に
戻ってきてしまう。
「チョーくんが案内してくれるって」
「本当ですか?」
ブリキ先生のポケットから顔を出し、飛び出すと、
ついてきて、と言っているみたいだ。
後をついて行ってみると、先程気づかなかった
道が見つかり、ゴールの出口までついた。
「ありがとう、チョーくん」
ぼくはお礼をいった。出口から出てみると・・・
「あれ、ここは・・・?」
アーケード街だと思うけれど、なにか様子が違う。
屋根越しのそらが紅い。
夕方だから紅いのではなく、
元から紅かったように。
なにかを演奏しているようで、笛の演奏が聞こえる。
そちらの方を見てみると、
何かのお祭りのようだ。
みんな、お面をかぶっている。
「さっきと様子がちがいますね」
もしやと思い、駐車場に向かってみると、
僕らが乗ってきた車がない。
「別の街に来ちゃったみたいです」
ブリキ先生はきょとんとする。まるで鏡の世界に
きたようだ。
「毎日お祭りをしているのでしょうか」
ブリキ先生とベンチに座り、眺める。
お面をかぶった人たちが笛や、太鼓を叩く音に
合わせて踊っている。
「あ」
踊っている人の一人がお面を落としてしまった。
顔が見えた。狐だった。僕はみなかったことにした。
「そろそろ帰りましょうか・・・どうやって
帰るんでしょう?」
「さっきの迷路を通るといいって」
チョーくんが言っている、らしい。
迷路を通るとき、また千円札を入れないと開かない
ようだ。
「ただ歩いているだけなのに、お金がかかるんですね」
「もっといっぱい持ってくるとよかったわね」
僕にとって一万円は大金だ。ブリキ先生はそれを
たくさん持っている。あんなに必要ないと思ったの
だけれど、使うところがもっとたくさん
あるのだろうか。

車に乗り、学校に戻る。
「あれ、ブリキ先生、バッジどうしたんですか?」
胸に付いている2つ付けていた
カエルバッジが1つ減っている。
「あれ、僕が付けていたバッジもない」
もらったカエルバッジが胸からなくなっている。
「どこかに落としたんでしょうか」
「大丈夫。またつくるから。なくしたら
何度でもいってね。」
不思議なこともある。


あたりはすっかり暗くなっていた。
学校に着き、ブリキ先生がロッカーに入り体育座りするのを見て、
またね、とチョーくんと一緒に声をかけると、
そのまま眠ってしまった。
チョーくんと中庭で別れる。
昇降口を出ると、保健室の先生が白い小さい
トラックと待っていた。
家まで送ってくれるらしい。



   送りの言葉
「うーん・・・・」
「どう?ゴールできる?」
休み時間。委員長が作った迷路で遊んでいる。
正直、先日迷路で大変な思いをしたので
あまりやりたくなかった。
「やった。できた!」
ゴールできた。ところどころに動物の絵が描かれている。ブリキ先生より上手い。
「でしょ。これ文化祭のときどうかな?」
いつも機嫌が悪いけれど、今日は良いようだ。
「いいとおもうよ」
「よぉし。もっと色々考えてかないと。天塚くん、
ほかに何かない?」
「うーん、太鼓叩いたり、みんなでお面をかぶって
踊って、竹馬であそんで、たけのこの味噌汁食べたりするといいんじゃないかな」
「え、えっ。けっこう渋いわね」 
ぴんぽんぱーん・・・・
「えー、生き物係、A-1のあまつか、みおくん。
おねがいがあります。至急、3階の放送室までお越しください。」
「・・・・生き物係って何・・・?」
「てんしくんのこと呼んでるよ・・・?」
「・・・・この声・・・だれ先生だろう・・・?」
ひそひそと話声が聞こえ、みんな僕のほうをチラ見
する。すごくはずかしい。
「い、いいんちょう、ちょっと行ってくるね。
文化祭、きっと楽しくなるよ、またね」
委員長が不満そうな顔をよそにぼくは3階に
向かった。
3階は東階段から右手へ一番奥が応接・自習室で、
放送室はその隣だ。
一般教室の中庭を挟んだ向かえに視聴覚室、パソコン室、音楽室があり、放送室は音楽室のとなりの防音室(個別演奏室)と応接・自習室の間にある。
途中の2階で中庭のほうの窓から、のっぽさんの
姿が見えた。
「しつれいしまーす」
放送室のドアをノックして開けると、ブリキ先生が放送用のヘッドホンをして、マイクに向かって
座っていた。きっと放送してみたかったのだろう。
「あ、海魚くん。放送どうだった?上手く言えてた?」
「お願いってなんですか?」
「大事なお話があるの。ここは放送するための部屋だから、隣の応接室に行こう。」
ブリキ先生も文化祭で何やるかで相談があるのだろうか。
応接室に入った。応接室は自習室にもなっていて、
長テーブルと椅子が沢山並んでいるだけで、ほかにはなにも置かれていない。必要な参考書は、持参するか2階の図書室から借りてこないと行けない。
壁にはスマホで遊ぶの禁止!
と書かれた張り紙が貼ってある。
「大事なお話って?」
「これから学校が休日で一週間お休みになるでしょ。校長先生のお話があるでしょ」
「うん」
「校長先生の代わりに私がお話することになったの。何を話せばいいかな。」
「えっ」
僕らは聞く立場だから、そんなこと聞かれても・・
「そんなこと聞かれても、って思うかもしれないけど、困ってるの」
いま、心の中を覗かれたようなきがしたが、
自分の反応で伝わったのだろう。
「まずは図書室で調べましょう。ここは自習室なので、なにもはじまらないです」
二階の図書室。
「どこを見ればいいの?」
「3分間スピーチとか、作文のかきかた、とかですね」
「ここかな」
小論文、とかかれた本棚のコーナーにきた。
「ここみたいですね。じゃあぼく授業があるので、
放課後にまた来ます」
「わかった。がんばってね」
今日も長い一日になりそうだ。
教室に戻ると、委員長が不機嫌な表情で僕を
向かえてくれた。先は長い。

「日野P、お昼の放送はじまるよー」
どうやら眠ってしまっていたようだ。
最近不思議な夢をよく見る。
あの、男の子。誰だろう?いつも私に声をかけてくる子。あと保健室の先生がうさぎになっていた。
私のことをなんとか先生と呼んでいた。
「はーい、それではお昼の放送を始めまーす」
気を取り直して、見慣れたヘッドホンをして、
何度も語りかけた校内放送のマイクではじめる。
「まずは皆さんからのお便りを三通呼んでみたいと思います。一通目。いちごだいすきさんから。」
「昨日の放課後、一階でお花を摘みに行ったとき、
廊下をあるものが歩いていました。日野ちゃんはなんだか分かりますか?」    
「なんでしょう?」
「なんと、アヒルが歩いてました!お餅に足が生えたようでした!二度見しましたがあれは間違いなくアヒルです!後をつけてみると中庭へ入っていきました!急いで中庭を見てみると、アヒルはいませんでした。日野ちゃんはどう思いますか?」
「うーん、誰かのペットが逃げ出した、とかかな?今頃飼い主さんのところに帰ったのでしょう」
「続いて、あぶらあげこんこんさんから」
「日野ちゃんこんにちわ。購買部で買った焼きそばパンを食べようと中庭側の窓際に寄りかかったら、焼きそばパンが手からなくなっていました。上を見上げると、信じられないかもしれませんが、キリンが
焼きそばパンをむしゃむしゃ食べていたのです。驚いて友達の方にいったら、何度話しても信じてもらえず、その場に戻るとキリンと焼きそばパンが煙のように消えて、何事もなかったかのようになりました。幽霊の中にはキリンも含まれるのでしょうか」
「えっ、なやむところそこ?そうねぇ、幽霊は人間だとこわいけど、動物だとかわいい!っておもっちゃって、怖くなくなるからあまり出てこないとおもうんだけどね、動物の幽霊も怖がらせるためにいるんじゃないからね、キリンの幽霊でもちゃんとおどろかせられると思うから、でてほしいな!って思うかしら。」
「本日最後のお便りとなりました。ケロケロお姉さんからです。」
「桜花ちゃん、いつも面白い放送ありがとう!
やったー褒められた!ここだけの話ですが、
学校の裏山の竹林にパンダが住んでいたら良いな、思い、パンダの着ぐるみを着ていってみたのですが、パンダは見つかりませんでした。残念。」
「もし本当にいたら、友達だと思って出てきてくれるかもしれないね!たまたま、洗濯物を取るの忘れて一度家に帰ったからパンダさんと会えなかったのかも。会いに行こうって、あそこには神社があるから、
そうおもって参拝にいくと、いつもよりワクワクが大きくなって、楽しくなりますね!次はきっと
パンダさんに会えますよ!」

「続いて、文化祭のコーナーです。年に一度の文化祭が近づいております。みなさん、準備ははかどっていますか?なんでも、今度の連休を全て活用して

夢見月すぐる 2022/07/14 02:03

絵を描く時は私情を入れちゃだめだって話

小説メインで作品を販売していく予定です。
作品ページのイラストの修正案を考えて来たので報告。
何で形が崩れているのか、答えが出るまで触れないようにしていました。


こんな感じで、いきなり描こうとせずに、光の方向性を追って描く技法を使って
描いた方がいいですね。ここから線画を作ります。

こんな感じ。毎日根気よく続けるしかないですね。線がガチャガチャなのは、
まだ液タブで絵を描くのに慣れてないためで、経過を見ます。
もし改善されなかった場合は、手描きの線画を取り込む方式になりますね。
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