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夢見月すぐる 2022年07月17日 05:31

【8/31日まで64ページ公開】ブリキ先生はゼンマイで動く サマーセールです 分割1/2

https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ395723.html
8/31まで、64ページ公開します。(全212ページ)よろしくお願いします。


登場人物

 天塚 海魚(あまつかみお)
   主人公
 
 日野 桜花(ひのおうか)
   ブリキ先生。ゼンマイで動く。
 委員長
   海魚のことを気にかけている。
 
 銀木真夜(しろきまや)
   クラスメイト。
 保健室の先生

  おおきなうさぎ。

ブリキ先生はゼンマイで動く

     序章 日野 桜花
  
 
  あなたは今日から生き物係です。
  生き物係室にお越しください。
  ブリキ先生が待っています。
  ブリキ先生はゼンマイで動きます。
  先生のうなじを見てください。

 早朝。日直の当番で来てみると、机にこのような
用紙が置かれていて、ゼンマイの鍵がくっついていた。どうするか悩んだけれど
見に行くだけでも、と行ってみることにした。
この教室から出て一番突き当り?あそこは
たしか空き室で物置になっていたと思うけれど。

つきあたりの教室に行くと、たしかに「生き物係」
という表札が上に付いていた。でも、このような表札が出ていたことに今まで気づかなかった。
「失礼しまーす」
こんこんとノックをして引き戸を開けてみると、中は物置となっていて、真ん中にブリキ先生、と書かれたシートで覆われた何かがある。僕はそれがブリキ先生なのだと思い、シートをよける。すると、
等身大のマネキン人形?の女の子が目を閉じ、
眠ったように椅子に座っている。いや、座らされている、
といったほうがいいのだろうか。
僕はあの連絡用紙にくっついたゼンマイの鍵のことを思い出し、そのマネキン人形のうなじを見ることにした。
「ちょっとみせてね」
人形といえども、女の子の姿をしているので勝手に
後ろ髪を触りうなじをみることに抵抗を感じた。
すると、うなじにはゼンマイを巻くためだとする
差し込み口があった。カリカリと僕はゼンマイを
そっと回す。10回ほど回すと、ぴくりとマネキン
人形が動いたような気がして、正面に回って様子を
見てみる。
「え?う、うごくぞ!」
マネキン人形がゆっくりと立ち上がり、目が少し開いて、僕の方を見つめている。
「君がブリキ先生?」
僕は近づき語りかけると、バランスを崩したのかよろめく。
「あ、あぶない!えっ!お、おもいっ!」
僕はそばに寄って支えようとすると見かけに反して重く、そのまま倒れてしまった。とっさに目をつぶり、鼻先に何かが当たる。目を開くと、そのマネキン人形は僕に
覆いかぶさる姿勢となり、顔をじっと見つめていた。
どうやら僕は、倒れたときに鼻から
血が出ていたようだ。
「あなたがあたらしい係員ね。私は生き物係の主任をしているわ。よろしくね」
ピンクのハンカチを僕の鼻に当てて、ブリキ先生は
そう答える。
「天塚海魚(あまつかみお)です。
よろしくおねがいします。」
「うん、海魚くん、いっしょにがんばろうね」
ブリキ先生の腕をよく見てみると、関節の部分が
球体になっていた。商店街などで見かける
マネキン人形とは全然違うようだ。ロボット?
なのかもしれない。
「ああ、散らかっていてまるで物置のようね。片づけるからまた後でね。これから授業があるんでしょう?」
状況が呑み込めないまま、ぼくは生き物係になっていて、そのまま生き物係室を後にした。
「あ、新しいハンカチ、買ってこないと。おこづかいたりるかな?」
ピンクのハンカチを鼻に当てながら、洗面所の鏡に
映った自分を見ると、ハンカチの縁に名前が書いてあることに気付く。

 日野桜花(ひのおうか)

ブリキ先生の名前、かわいい。

 チャイムが聞こえて、それからはいつもと同じように、授業が始まる。僕は夢を見ていたのかもしれない。

午後。体育の授業だ。
グラウンドで体育座りをしていると、ふと生き物係室のほうの窓を見る。ブリキ先生が何かを抱えて運んでいる。
「ブリキ先生、僕も手伝うよ。」
エプロンとバンダナをした恰好の先生。
「ありがとう、助かるわ。」
不用品を校庭の焼却炉の方に持って行っているらしい。
いつのかわからないテスト用紙とか、連絡用紙など。
紙でもこのくらいの量になるとけっこう重い。
「ふう、だいぶ片付いたね。・・・ブリキ先生?」
ブリキ先生が廊下で座り込んでいる。
「どうしたの?具合が悪いの?保健室にいく?」
返事がない。突然眠り込んでいるようだ。
「もしかして・・・」
僕は先生のうなじを見えるようにして、ゼンマイを
巻いた。
「ん・・・・」
やっぱり。ゼンマイがきれたようだ。
「あら海魚くん、おはよう」
ときおり、ブリキ先生の様子を見に来ようと思った。
廊下で寝てしまったら大変だ。
僕は先生の手を握って立つのを手伝うと、生き物係室に入る


「うん、片付いてきたね。あと寝室も」
ブリキ先生は壁の用具入れを開ける
「寝室って、ここそうじ用具いれるところだよ?」
たしかに用具入れは教室に置いてあるものより広く、
ブリキ先生がちょうど体育座りをして入れる
スペースがある。
「でも、ここに座って扉を閉じるとね、なんだか
落ち着くの。」
と、用具入れに入って見せる。やっぱり、ロボットなのだろうか。
「じゃあ、何か下に敷いたほうがいいですね。」
そうして僕は、ブリキ先生の寝室をつくるのを手伝うのだった。


 放課後。生き物係室に行ってまた片づけるのを
手伝う。
「だめ。暗くなっちゃうから、あとは先生が
するから早く返るのよ。」
ばいばいと手を振る。こういう所はちゃんと先生。

 商店街。ブリキ先生に渡すハンカチを選ぶ。
やっぱり桜色のがいいよね。
財布をみると100円玉が5枚。なんとか
買えそう。飲み物がしばらく買えなくなるけど。
「あ、天塚くんだ」
そうしているとクラスの委員長と会った。
「ハンカチ?だれかにあげるの?」
ちょっと苦手。
「う、うん、ちょっとね」
「ねぇねぇ、文化祭の時に実行委員になってくれるよね?」
「え、うん、いいよ」
「もう、だれもやりたがらないんだから。それと」
「なに?」
「体育の授業の時、勝手にどこかいっちゃだめよ。
私ずっとみてたんだから。」
「ええと、係員の仕事手伝ってたんだよ」
「係員?天塚くんなにかやってたっけ?」
「うん、生き物係」
「生き物係?飼育係じゃなくて?そんな係ないわよ?」
「でも、生き物係になったんだって」
僕はブリキ先生のことは黙っておこうとした。
きっとびっくりするにちがいないし、なんだかいけないことをしているように感じていたから。
「ほかにだれがいるの?」
「今のところ僕ひとり」
「はあ・・・それぜったいだまされてるって。
ただの雑用なんじゃないの?」
そうかもしれない。
「ぼ、ぼくはやく家に帰らないと心配されるから!」
ぼくは一方的に押し切ってその場を離れた。
「でも、学校でなにか動物飼っていたかな?
絶対なにか隠してる」
かくしごとをしているとあやしむ
委員長の視線を受けながら帰宅した。 

 自宅の部屋。
今頃ブリキ先生も用具入れの中で眠っているの
だろうか。生き物係って何をするんだろう。
委員長、苦手だな。
色々考えているうちに眠くなってきて、
また明日。


 


「やあ、手術後の様子はどうかな」
ここはどこ?私はたしか教室を片づけていたはずだけど。
「これから簡単なテストをするよ」
目がぼやけてよく見えない。
「難しく考えなくていい。いまから見せる絵を見て
思ったことを話すんだ。」
見知らぬ人。見知らぬ部屋。ああそうか、これは夢だ。



「まず一枚目」

→花
大きなミミズ
触手

「2枚目」

顔
→アヒル
落ち葉

「3枚目」
  ムカデ
  縁台
  →タヌキ
「4枚目」
  異形の存在  
  →猫

花壇


「5枚目」

→ウサギ
ピースした手
大福

「続いて、次につぶやいていく言葉から連想される
ことを答えてみて」
これはなんのテストなのだろう?
「マネキン」
  ↓「友達」
「映写機」
  ↓「幸福を呼ぶもの」
「おりがみ」
  ↓「生命」
「車」
  ↓「更新」
「噴水」
  ↓「鳥」
「やけど」
  ↓「保健室」





「うん、特に後遺症はないみたいだね。手術は成功だ」
手術?私はけがをしたのだろうか?
「それと、この施設にいるうちはゼンマイだけで大丈夫だけど、どこかに出かけるときは・・・・そこに・・・・これを・・・」
だめ。聞き取れない。だけど私は彼が何を言おうとしているか知っている。
今、教室に誰かが入ってくる気配がした。









	一章 生き物係

 「学校にはたくさんの動物が隠れています。
それを見つけるのが生き物係です」
説明するためのボードを僕に見せる。
「これ、一晩で作ったんですか?」
「そうよ。だって他にやることがないんですもの」

早朝に生き物係室にいって用具入れを開けると
ブリキ先生が眠っていた。息はしていない。
僕は昨日と同じようにブリキ先生のうなじにある
ゼンマイを巻く。これが毎日続くのだろう。

黒板には白チョークで歓迎と書かれており、
おりがみで作った飾りのお花がつけられていた。

「動物が隠れているって、どういうこと?」
「正確には隠れているわけではありませんが、
見えるようになるっていったほうがいいかな」
「み、見えるようになる?」
また変なことを言っている。
「会いたい、すごく会いたいって願うの。
そうすれば友達になれるわ。」
「ほ、本当に?あっ、ちょっとトイレ」
ブリキ先生はきょとんとする。
トイレ。あ、日誌書かないと。
「ねえねえ、なにしてるのー?」
「えっ」
ブリキ先生がトイレまで入ってきてしまってる。
「なにこれじょうろ?」
「・・・・!!」
僕はブリキ先生をスルーしてそそくさと手洗い場に行った。


「ねぇねぇ、さっきのじょうろでお花にお水あげるの?」
「しっ、知りません!」
僕はブリキ先生の話を詳しく聞かずに廊下に出た。
「あっ」
そこには白いアヒルが一羽いて、
こちらを見つめている
「ほらね、いったでしょ。会いたいって願うとあえるようになるって」
白いアヒルはがぁがぁと鳴いて中庭の方へと向かう。
「付いてきて、って言ってるよ」
本当だろうか。
僕たちは中庭に行く。

あれ、ウチの中庭ってこんな感じだったろうか。
もっとシンプルで、ベンチがいくつかおいてあるだけだったような。目の前の光景を疑う。

とても巨大な木だ。何の木だろう?
わからないけれど、見ているだけで何故か元気に
なるような気がした。今まで見たことのない
景色だった。
「あっ、だいふく君が池で泳いでるよ」
アヒルはその巨大な木の下に広がる池で泳いでいた。
ブリキ先生は池の前でしゃがみ、アヒルを
眺めている。
「でも、僕はアヒルに会いたいと願っていませんでしたよ。ブリキ先生が願ったのですか?」
「いいえ。だいふく君はいつもこの学校にいたわ。
校内をいつも散歩してからここに帰ってくるのでしょう。うん、きっとそう」
ブリキ先生は自分に言い聞かせるように
うんうんとうなずく。
割といいかげんだ。
「あ、ブリキ先生、話があるんだけど」
「なにー?」
だいふく君もつられて僕を見つめている。
「これ、ハンカチ汚しちゃったでしょ。
新しいの買ってきたよ。」
昨日商店街で買ったピンクのハンカチを差し出す。
「えー、家庭科室でまた作るから別にいいのにー」
「いやそういうわけには・・・」
そう話していると、ぴよぴよと鳴き声が聞こえてくる。
文鳥のようだ。文鳥はブリキ先生の肩に止まる。
「なかよし、ですね」
「みんなともだちになりたいんだよー」
すると僕の肩にも文鳥が止まった。
学校で文鳥を放し飼いにしていたのだろうか。

「ちょっと2階に飲み物買ってきます。立ちっぱなしだと疲れるからベンチで休んでてね」
僕は2階のラウンジの自販機に行く。
ブリキ先生はどの飲み物がすきだろうか?
「何がいいと思う?」
僕は肩に乗ったままの文鳥に聞いてしまった。
ブリキ先生に影響されてる。
よし、オレンジジュースを2本買おう。

「ブリキ先生、飲み物かってきたよ。あっ」
ブリキ先生はまた眠ってしまっている。
僕はブリキ先生の隣に座る。ゼンマイが切れたのだろうか。ん、だんだん冷静になってきたけれど、
僕は何をしているんだ?生き物係ってなんだろう?
いや、そういうことじゃなくて、ブリキ先生って
ロボットなんだろうけど、とてもそうは思えない。
ずっと人間と話しているみたいだ。なぜ、学校に
動物が歩き回っているのだろう。なぜ、
僕はここまで違和感なく普通に聞き流していたんだろう。あ、これは性格だから疑問でもなんでもないか。
ぴよぴよと僕の肩とブリキ先生に乗っている文鳥が、
はやくブリキ先生のゼンマイを巻いてあげて、
といってみつめているようだ。
僕はまた朝と同じようにうなじからゼンマイを巻いた。


「おはよう、目が覚めたみたいだね。君が見たがっていたところに着いたよ」
わたしは車椅子に乗っている。目の前には大きな木がある。
「とても大きな木。なんの木かな」
「桜の木みたいだよ。君と同じ名前だね。でも、こんなに大きな桜の木は今まで見たことがないや」
私が何人手をつないで囲っても足りないくらいに幹が大きく、覆いかぶさるように大きい。
「この木をみているとね、なんだか元気がわいてくるみたいだ。まるで、みんなに命を分け与えてるかのよう」
私にはなしかけている人は、テスト?みたいなものをした人とは違う人みたい。だれだろう?
「アヒルくんだ」
私は木のすぐ下にある池を指差した
「白くてまるでだいふくみたいだね」


「ブリキ先生?」
「ん」
「また眠っていたんだよ、気をつけてね。道路や交差点で寝たら大変だ。」
「さくらのき」
「えっ」
「この木は桜の木、だって。夢の中で聞いた」
またへんなことをいっている
「桜の木なんですか。じゃあ、もっと動物が集まったらここでお花見しましょう」
「うん、いいよー」
「これ、後で飲んでね」
僕はオレンジジュースを渡した。
ブリキ先生はきょとんとしてしばらく考えると
「うん、とりあえず持ってかえるね」
といった。

今日はもう夕方になったので帰った。
またあしたも同じようにゼンマイを巻きにこよう。

次の日
「いったー!!」
同じクラスの銀木真夜(しろきまや)さんだ。
100メートル走で転んでしまったようだ。
「大丈夫?銀木さん」
たまたま近くにいたので声をかけた。
「あっ、大丈夫です。いたた」
僕は肩を貸して水場に一緒にいった。
「けっこう傷が深いから保健室いこう」
「ごめんね海魚くん、迷惑かけちゃって」
僕らは保健室のほうにむかった。
「失礼します、先生?」
そこにはなにか大きなぬいぐるみのようなものがあった。
「えっ?」
銀木さんは狐につままれたような表情をする。
それはどうみても人と同じ大きさのうさぎだった。
机で新聞を読んでいる。
でも僕はそのおおきなうさぎを保健室の先生だと思うことに疑問に感じず、事情を話した。
「ちょっと銀木さんがケガしちゃって、手当ておねがいします」
おおきなうさぎこと保健室の先生はうなずくと、
銀木さんの手当を始めた。
やっぱり保健室の先生で間違いなかった。
「えっえっ?」
銀木さんは困惑している様子。
「ありがとうございました」
僕たちはお辞儀をすると保健室をあとにした。
「ねえ海魚くん」
「なに?」
「保健室の先生ってあんなかんじだったかな?」
「言われてみればよく見てなかったからわかんないや。たぶんそうだと思う。」
「うーん・・・」
銀木さんは首をかしげる。
「かわいいからいいかっ!」
手をぽんと叩いて納得する。
キズの痛みが和らいだようだ。
「あ、海魚くん」
ブリキ先生だ。あ、まずい。ブリキ先生がロボットだと気付いたら、銀木さんが驚いてしまうにちがいない。僕はブリキ先生の球体の関節やロボットの指を見回す
「え・・・あー・・・海魚くん?ちょっと
こっちへ」
やっぱりおどろいているようだ。
「海魚くん、新任の先生と仲良くなって楽しくなる
気持ちは分かるけど、
その、スタイルが良いのは分かるけどジロジロみるのは良くないと思うの。気をつけてね。
親しき仲にも礼儀あり、だよ。」
そ、そこなのか・・・
「海魚くんのお友達?」
ブリキ先生は野菜の入ったバケツを両手で持っている。
「はい、そうです。銀木真夜といいます。よろしくお願いします」
「ブリキ先生、その野菜はどうしたの?」
にんじんやじゃがいものようだ。
「きりんさんのごはん。家庭科室で食べやすい大きさにしようと思って」
「へぇ・・・今度はキリンがでてくるんですか・・・」
さほど驚かなくなっていた。

僕らはブリキ先生といっしょに家庭科室へと向かい、
手伝うことにした。また委員長に叱られるな。
「これ屋上の菜園からとってきた野菜ですか?」
「ええ、そうよ。」
ブリキ先生はにんじんの皮をピューラーでむく。
「そっかぁ。私、菜園部なんですが、たくさんの野菜がいつの間にかなくなっているので、どこに行くのか疑問だったんです。どうぶつ達のご飯になっていたんですね。って、あれ?」
銀木さんはじゃがいもの皮を包丁で丁寧にむきながら首をかしげる。
「学校で動物って飼っていましたっけ?」
と話していると家庭科室になにかおおきなうさぎの
ぬいぐるみがはいってきた。保健室の先生だ。
「あら、つまみぐいですか?」
ブリキ先生は保健室の先生に話しかけると、
保健室の先生は皮をむいた人参を一つ手にとって
食べる。
つまみぐいのようだ。
僕がまだ切り分けてない人参の大きさでも食べきれるみたい。
「さて、ふたりともありがとうね。早速きりんさんのところに行くわ。あなた達も来る?」
もちろんと、僕らはこたえた。保健室の先生は仕事があるからと、保健室にもどっていった。
ブリキ先生の後についていく。階段を登り、
二階のラウンジまで来た。中庭の方の窓を見ていると、
「こっち。こっち。ごはんもってきたよ」
ブリキ先生が中庭へ向かって手をふる。すると、何か
大きな顔と大きな首がこちらの方へ近づいてきた。
キリンだ。中庭にキリンがいるのだ。でも、昨日見たときはいなかったと思うけれど。
キリンはブリキ先生をみつめている。
ブリキ先生は用意していたバケツに手を入れて、
にんじんを向けると、キリンは食べだした。
それに釣られてか、奥の方からさらに2頭のキリンが姿を表し、どうようにこちらを見つめている。
「いま、あげるよ」

「あ、わたしも」
僕と銀木さんはブリキ先生のマネをして、
キリンに、にんじんやじゃがいもをあげた。
なんだか不思議な気分だ。僕らの学校の中庭は、
僕らが想像していたよりもずっと広いのだろう。
そうとしか考えられない。だから、
どうぶつたちが住んでいたことに気づかなかったのだろう。
「のっぽさんたち、みんなうれしそう」
ブリキ先生がキリンたちに顔をなめられていた。
「あっ、私達、体育の授業の途中だったんだ。海魚くん、そろそろ戻ろう」
銀木さんしっかりしてるなぁ。
「うん、じゃあ戻ろうか。ブリキ先生、放課後にまた」
ブリキ先生に手をふると、僕らはグラウンドに戻った。
「えっ」
戻る途中、銀木さんが足を止めて、何かを見ている。
「どうしたの?」
「今、そこの踊り場の影から、しろいうさぎが私のことを見ていたわ。」
「保険の先生じゃないの?」
「ううん、普通のちいさなうさぎだったわ。でも、
いないみたい」
「きっとともだちになりたいんだよ。またあえるよ。」
ブリキ先生と同じことを言ってる、と思った。
「海魚くん、なんだか楽しそう。
そうね。またあえるわね」
僕は気づかないうちに微笑んでいて、銀木さんも
笑顔だった。

 

    神社
 


 今日は日曜日の早朝。晴天で、
たんぽぽの葉に朝露が付いている。なんだか学校のことが気になって、生き物係室へ行った。

いつもと同じように
掃除用具入れだった白い扉を開けると、ブリキ先生が眠っている。ブリキ先生のうなじにあるぜんまいを巻くと、
ブリキ先生が飛び起きて、どこかへいってしまった。
追いかけていくと、途中で見失って仕方がないので、
こうして校舎の入り口の前の階段で座っている。
「ブリキ先生、どこに行ったんだろう」
そうしていると、ぶるるると、車のエンジンの音がする。
白い、小さなトラックだ。ブリキ先生が運転していた。
「ブリキ先生、車の運転できたんですか?」
「免許くらいだれでも持ってるでしょ。それより」
助手席をみると、白い柴犬がシートベルトをして座っていた。
「昨日知り合ったの。裏の山の神社に行きたいって。
のっぽさんも行きたいっていっていたんだけどね、
大きすぎて乗れなかったの」
たしかにそれは無理がある。
僕は小さなトラックの助手席に、柴犬と一緒に乗ると、神社の方へと、ブリキ先生が車を走らせた。
「えっ、ブリキ先生動物の言葉分かるの?」
「そのくらいわかるでしょ。ほら、シロがよろしくねじょうろくんっていってるわ」
「じょうろくんって僕のこと?」
「そう、じょうろくん」
「そ、それはちょっと・・・・」
柴犬のシロがぼくの顔をなめてくる。
もうしわけなさそうになぐさめているように見えた。
「あれ?ブリキ先生、そっちは神社ではなく
商店街の方ですよ?」
「行く前にちょっとあぶらあげを」
「あ、あぶらあげ・・・?」
商店街の入口前に着いた。

「じゃあ僕が買って来ます。
車の中で待っていてください。」
腕や足の関節がそのまま見えてしまっているから、
何か工夫してからのほうがいいだろう。
するとブリキ先生が僕に一万円札を5枚差し出す。
「・・・どうしたんですか?」
「え、あぶらあげ5枚ほしいからその代金で」
「いえ、こまかいのもってないんですか?」
「これしかなかったわよ?」
見ると一万円札を30枚くらい手に持っていた。
「そ、それどこから・・・?」
「職員室にある私のロッカーから。足りなかった?」
「い、いえ、そういうことじゃないですね・・・僕のおこずかいで買ってくるので今回は大丈夫です」
「そう、ありがとう」
そういうと、札束をポケットに仕舞う。
僕は商店街の方へ向かうと、柴犬のシロが着いてきた。
「お豆腐やさんにいこうね」
とシロに話しかける。言葉はわからない。

「あー!海魚くんだ!」
委員長だ。ちょうどあぶらあげを買って出てきた
所で見つかってしまった。タイミングがわるい。
「う、うん。委員長も買い物?」
「そう。海魚くんは犬の散歩?でも首輪がついて
ないわね。」
「おとなしい子だから・・・・」
委員長、おしゃれをしてる。誰かとデートなんだろうか。
「あぶらあげ?あぶらあげだけ買って、神社へ
きつねに会いに行くの?」
たぶんそうだと思う。けど、話しても狐につままれた顔をされるだろうし、冗談で言っているのだろう。
「い、生き物係の活動でお味噌汁を。
学校に戻るとこだったんだ」

「味噌汁をつくるために、わざわざ学校に?なにそれ?」
「じゃ、じゃあ、早く戻らないとみんな待ってるから!」
みんなって誰のことだろうと、自問自答しながら無理やりその場を後にした。
「あれは、絶対何かを隠してるわね」
委員長がこちらの方をうかがっている。

「ブリキ先生、買ってきたよ。
って眠ってる・・?」
またゼンマイが切れたようだ。









 「ブリキ先生大丈夫?
運転中にゼンマイ切れたりしない?」
ブリキ先生が起きて、再び神社へと車を走らせた。
「運転してるときは、シガーソケットからお腹にケーブルをつなげておけば、プラセボ効果で切れないから大丈夫よ」
「そ、そうですか。それだと安心ですね」
今、聞いてはいけないことを聞いてしまった感じが
したから、忘れよう。何か話題を変えないと。
「あ、その缶バッチ手作りですか?
かわいいですね」
今日は日曜日。いつもは家でゴロゴロしているのに、
いろいろなことが起こって忙しく、
胸元の3つ横並びして付いている缶バッチに
気づかなかった。
かえるのイラストが描かれている。
「ぶじかえるのバッチよ。持ち主に危険が迫った時、
身代わりになってくれるの。神社に着いたら海魚くんにもひとつあげるね」
「ありがとうございます。
大事にします。」
これはうれしい。

ブリキ先生と話しているうちにもう神社についてしまった。
神社にはだれもいない。
ブリキ先生は神社のおそなえの台に
あぶらあげを並べ始める
「きつねさんとも、
ともだちになれるといいですね」
僕はむちゅうになっているブリキ先生に声をかける。
「がっこうにもあそびにきてほしいなー」

「シロ、どうしたの?」
ついてきて、といっているようだ。着いていくと神社の裏手には竹林が広がっていた。その手前でシロは穴を掘り始めた。
「なにか埋まっているの?」
僕は膝に両手を当てて様子を見ている。
何か、金属の箱が出てきた。
「なんだろうこれ・・・?」

その金属の箱を持って神社のお供え台のところに
もどると、ブリキ先生が縁台に座っていた。
どうやらきつねの神様が来るのを待っているようだ。
「ブリキ先生、これ、シロが地面から掘り出した
やつです。シロから事情をきいてもらえませんか?」
ブリキ先生がシロをみつめる。なにか会話をしてる。
・・・ようにみえる。
「私に返すって。ずっと前から預かっているもの
らしいわよ」
そういうので、箱を開けてみる。中は二重になっていて、
小型のアタッシュケースのようなものが出てきた。
「これ開けて大丈夫なんですか・・・?」
「玉手箱、ではないってシロが言ってるわ」
僕は恐る恐る開けると、頭につける猫の耳?のようなアクセサリが入っている。でも片方しかない。
もう片方はどこにいったのだろう。
そのとき、がさがさと神社の裏から誰かが来る
気配がした。振り向くとそこには、クマがいた。
「く、くまー!」
僕は思わず叫び、腰を抜かしてしまった
クマはこちらに近づいてくる。
ブリキ先生は平然としていて、クマから何かを渡され、その後何事もなくクマはさっていった。
それはもう片方の猫の耳のアクセサリだった。
「ずっと前に私は彼と出会って、
そのとき落としたアクセサリをずっと預かっていて、
返しにきてくれたんだって」
僕はなにがなんだかさっぱりだった。
「あ・・・・」
ブリキ先生が、今度は竹林に興味津々のようだ。
「これ、変わった木がいっぱい生えてる」
竹を触って様子を見てる。
「木じゃなくて、これ全部茎らしいですよ」
「へぇ・・・」

「たけのこはわかりますが、竹筒を集めて、
なにか作るんですか?」
小さいトラックの荷台にクワやスコップ、ナタなどが
置いてあって、たけのこほりをすることにした。

僕はスコップでたけのこをほって集めてる。
平然を装ってはいるが、さっきの熊がまた戻ってくるのではと、内心気が気でなかった。
そんな心配を余所に、ブリキ先生は不器用にナタを
何度もふって、竹を切り倒そうとしている。
ナタを持っている姿が割と怖かった。
「ブリキ先生、たぶんこれノコギリで切ったほうがいいですよ」
僕はブリキ先生に、ノコギリで生えている竹を
切っているところを見せる。
「へえ、海魚くん。くわしいわね」
感心して、見よう見まねでのこぎりを使いだす。
でも、ぐにゃぐにゃ曲がり何度も引っ掛かって止まってしまう。
「のこぎりは薄い鉄板でしなるので水平にゆっくり引くといいですよ」
さっきとは違ってしならないようにゆっくりひいて切りはじめる。うまくいきそうだ。
「じゃあさきにタケノコをトラックに積んできますね」
ブリキ先生は無言でうなずいた。集中している。
僕は休日に何をやっているのだろうか。
なんとなくブリキ先生のうなじのゼンマイを巻いて
話をしてすぐ帰ろうとしていたのだけれど、それが
ドライブになって、神社にお供えして、
ここほれワンワンを見守って熊がおとしものを届けに来てくれて、今、タケノコ掘りをしている。
まるで脈絡がない。
「シロ、今日はいそがしいね」

タケノコをトラックの荷台に積みながら話しかけると、
柴犬のシロはキョトンとした表情で僕を見つめている。
「シロ、のどかわいたでしょ。水飲んで」
かんたんに竹を割って作った皿に神社の水飲み場から汲んで来た水を差し出す。そういえば、ブリキ先生は
何も口にしないのだけれど、やはりロボットだからだろうか。この前ジュースを渡したときも飲まなかったし、
生き物係室の棚に飾ってあった。
もしかしたら、なにか食べるところが珍しいのかもしれない。
シロが水を飲むのをみながら、僕も竹で作った水筒の
水を飲み終えると、ブリキ先生のところへ戻った。
そうだ、この水筒をブリキ先生にも見せよう。
「ブリキ先生?えっ」
白と目元に黒いアイシャドウのような模様。
パンダだ。あの動物園にいるパンダ。
ブリキ先生がまた眠っていて、パンダが背中で
ブリキ先生を支えている。
パンダがこちらを向いて、やっときてくれたか、
といっているように見える。
先程の熊は腰が抜けるほど怖かったのに、不思議と
怖くなかった。パンダも熊猫と言って、
熊みたいなものなのに。
「あの、ブリキ先生のゼンマイを巻かせて下さい」
首飾りのようにかけていたゼンマイを見せて、
ブリキ先生のうなじにゼンマイを挿した。
その時、手がパンダの背中に当たり、心地よかった。
「ん、」
ブリキ先生が目を覚まして、こちらをみる。
パンダも同じように見ている。
「あらおはよう海魚くん。こちらのかたは竹林に
住んでいるジャイアントパンダのたけださん」
白い毛並みに、目元に黒い斑模様が特徴的な顔で、
ぱっちりと開いた目でどうも、と言っているように
みえる。パンダのたけださんが事情を話してそれを
ブリキ先生から聞いたところ、
竹を切っているときに眠くなって倒れかかっていたのを見かけて、背中で支えてもらったそうだ。
そのまま世間話をしてるうちに完全に眠ってしまい、どうしようと困っていたらしい。
「そうだったんですか。親切にありがとうございます」
「手に持っているのなぁに?」
ブリキ先生が指をさす。
「よくできているでしょ。竹筒でつくった水筒だよ」
「へぇ」
興味を持ったみたいでよくみている。
「え?ほんとう?ねぇ、タケダさんが竹を運ぶのを
手伝ってくれるって。」
これは恥ずかしい。遊園地で遊んでいるみたいだ。
タケダさんの背中に竹を束ねて、僕がその上にのって押さえる。それでもタケダさんはものともせずに歩く。
ブリキ先生が隣で支える。
それを繰り返すうちにトラックの荷台がいっぱいに
なった。
「タケダさんありがとう。キツネさんと会えなかったのは残念だってけど。またね」
ブリキ先生がタケダさんの頭を撫でる。
僕はタケダさんに大きいタケノコをあげて車に乗った。
「ばいばい。あ、」
僕はタケダさんに手を振って、ふと神社の屋根を
見上げると、あぶらあげをくわえた、
先程のクマがいる。(・(ェ)・)
白い煙があがり、その中から、頭にはっぱをのせた
狐が現れた。
「そういうことだったんだ」
もう会っていたんだね。
「なに?」
「ないしょ」
僕はひとこと、ブリキ先生に伝えて
膝の上のシロを抱きしめた。

 学校に帰ってくると、保健室の先生が
校舎の入り口の前で、鍋にお湯を沸かして待っていた。
「あら用意がいいわね」
ブリキ先生が車から降りて、タケノコを保健室の
先生に渡す。
「銀木さんも来ていたの?」
「うん、菜園部で屋上の様子見に来たら、大きなウサギさんがお鍋を準備しててなんだろな、ってみてたの」
僕が通っている学校は、屋上に菜園がある。たしか、
中庭に光が入るように真ん中が丈夫な金網が丸型に、
はずれない排水溝のフタのような状態になっていて、
まわりにプランターが並べてある。僕がそだててる
アサガオもそこにある。
クラスメイトの銀木さんは菜園部で、野菜の手入れに
よく来るそうだ。
「タケノコ?そう、タケノコ採りにいってたんだ、
神社の裏に竹林があるからね」
銀木さんは乗ってきた白いトラックを見る。
話しているうちに、保健室の先生がタケノコの
かわむきがおわり、茹でていた。
その様子をブリキ先生が見つめている。
「ねえ海魚くん、どんな料理がいいかな」
「味噌汁を作るみたいですよ」
僕は答える。簡易テーブルの上に大量のあぶらあげとにんじんがおいてあったのだ。
出しはかつおぶしのようだ。味噌汁に、にんじんはあうのだろうか。
「あー!ほんとに味噌汁つくってる!」
委員長だ。委員長が僕を指差している。
「委員長、きちゃったの?」
「どうしたのこれ?」
委員長が問いただすように聞く。
「うん、あのあと神社にいってブリキ先生と二人で
タケノコ掘りをしていたんだ」
そうだ、委員長に聞いてみよう。

「ねえ委員長」
「何よ」
何故か不機嫌そうだ。
「なにかこう、見てて気になることない?」
「何が?」
やっぱり不機嫌のようだ。
「あの、こう、保健室の先生って身体が大きくて、
耳が長くて、鼻をピクピクさせてて、色々と
毛深いでしょ?女の子的にどうなのかなぁって」
「はあ?なにいいたいのかわからないわ。それより」
やはり違和感を感じている僕が変なのだろうか
「あの女、なに?」
僕は誰のことだろうと、あたりを見回した。
「あのこんこん女のことよ!」
委員長がブリキ先生の方向を指差す。
ブリキ先生はどちらかというと、この場合たけのこ
大好きけろけろお姉さんだろう。
「え、生き物係の先生だけど」
「何も知らされてないわよ。なんなの?」
本当に不機嫌のようだ。助け舟がほしいのに、
ブリキ先生はたけのこに夢中でかわむきをしていて、
保健室の先生は料理をしていて、銀木さんは
その様子を興味深くみている。
「なんで休みに学校こさせられて、あぶらあげをかわせられたの?嫌なことは嫌っていわなきゃだめでしょ?」
どこからどういえばいいのだろう。
「生徒にあぶらあげかいにいかせるとか何様なの?
きつねなの?」
買ってる途中でゼンマイがなくなってねむっちゃったら大騒ぎになるし。
「うーん」
困ってしまった。その時誰かの視線を感じてそちらを向いてみると、サッカーボールをもった子らが僕らのほうを見上げている。学校のグラウンドで遊んでいたのだろう。
「おにぃちゃんたちも味噌汁食べに来たの?
保険のせんせいと」
「おまたせ!」
ブリキ先生がお盆にたけのこの味噌汁を持ってくる。
遊んでた子らは、大はしゃぎだ。
なんとかお茶を濁せそう。助かった。
「委員長、いっしょにタケノコの味噌汁を食べよう」
いいんちょうにお椀を差し出す。
委員長は無言で受け取り、味噌汁を食べ始めた。
保健室の先生は周り囲まれて、
遊んでた子らに抱きつかれていた。

ゲームセンターのある商店街へ

 そうか、先日僕は授業の準備の手伝いを
していたのか。工作室に積まれた竹材。
図工の授業で竹細工の製作をしている。
僕は竹箒を作っている。
委員長はまだ機嫌が悪く、
僕の方をたまにキョロキョロ見ている。
「天塚、ちょっといいか?」
担任の先生だ。なんだろう。
ブリキ先生がいるところにつれられた。
嫌な予感がする。
「なあ、あれ、どう思う?一時間ずっとやってるんだ」
二階のラウンジで、ブリキ先生がジュースの自販機に
一万円札を入れようとしている。もちろん入らなくて、
何度も試してしわしわになっていた。
うーんとうなって自販機を背にその場でしゃがみ込み
天井を見上げて考え事をしている。
これは関わりたくない。
三角定規を取り出して、お札の長さを測り始めた。
「困ってますね」
「みてのとおりだ。あとよろしく」
「えっ」
一言残して、担任の先生が去ってしまった。
まずい。あと15分で授業がおわり、みんなが
ラウンジにあつまってくる。しゃがんだことで、
ロボットの足の関節が見えてしまっている。
ブリキ先生がロボットだとバレてしまう。

僕は意を決して話しかけた。
「ブリキ先生、どうしたんですか?」
「あ、海魚くん、いいところにきたわね」
僕にとっては全然いいところではないけれど
「これ、入らないの」
しわしわになった一万円札を見せる。
「大福くん(アヒル)に聞いたら分からないって。
ぴよぴよちゃん(文鳥)に聞いても分からないって。」
そりゃわからないだろう。
「のっぽさん(キリン)はなんて答えんたんですか?」
「のっぽさんは顔をなめるだけで、
お話聞いてもらえなかったわ」
のっぽさんはなついているのか。
「あの、一万円札は自販機で使うことは
出来ないんです」
「どこだと使えるの?」
「うーん」
購買部だと、釣り銭に困るだろうからなぁ
「放課後、商店街のゲームセンターに行きましょう」
「そこだとつかえるの?これ、海魚くんにあげる」
半ば強引に一万円札を渡す。
「じゃあ、放課後に昇降口でまってるから」
ブリキ先生は満足して立ち上がる。
「手に持ってるの、なぁに?」
うっかりたけぼうきをそのまま持ってきてしまっていた。
「ほしいときあげる」
「ほんとに?ありがとう」
そのまま行ってしまって、しわしわになったお札を
持った僕だけが残った。
これは面倒なことになった。







放課後。昇降口の前の階段でブリキ先生が来るのを待っている。
「こんなところで座って、何してるの?」
委員長だ。
「生き物係の活動で商店街に行くんだって。」
だんだん嘘をつくのが上手くなってきた。
「何かお買い物するの?」
「そこまでは聞いてないなぁ・・・」
次はなんて答えよう。
「そっか。じゃあね」
素っ気ない反応で、委員長は帰っていった。
その後どう言うか考えてなかったから助かった。
委員長が帰って、10分くらいしたら、ぶるるる、
と車のエンジンの音が聞こえてくる。
ブリキ先生だ。この前と違う車に乗ってきている。
なんだろう、不思議な形をした車だ。緑色で、
正面からみるとカエルのような顔をしている。
横から見るとかなり小さく、
この間の白いトラックよりも小さい。
付近で見かけたことのない、珍しい車だ。
ブリキ先生がカエルの車から降りてくる。
「おまたせ。さあのって」
「これ、二人乗れるんですか・・?」
助手席側のドアを開けると、たしかに座席があるが、
小さい。二人で入るとブリキ先生と密着する形に
なった。
「しゅっぱつ」
車を走らせる。
「このまえの車はどうしたんですか?」
「あれは、誰かが使っててなかった。保健室の先生に
話しかけたら、この車のキーをかしてもらえた。」
「えっ、保健室の先生ってしゃべるんですか?」
「何言ってるの。うさぎがしゃべるわけないでしょ。」
そういえばそうか。少し疲れてるみたい。
首飾りのようにかけているゼンマイを見る。
そうだ。毎朝ブリキ先生を起こしに行っているから、
いつもよりも考えることが多くなって疲れるのか。
窓の外を見る。みんな下校で帰るところだ。
よく、僕らの方を二度見する人がいた。時折指を指して
この車の方を見るように促す子もいる。
カエルみたいに見えるからだろう。
「みんな僕らを見てますよ」
「海魚くんのことが好きなんでしょ」
冗談?いや多分本当にそう思って話しているのだろう。
なんだろう。この車で移動するのを、
これから何度も繰り返されるような気がする。
「ついたよー」
商店街の駐車場に止める。
この前休み時間に知ったけれど、
このようにお店が並んでいて、屋根がついている
場所のことを、アーケード街というらしい。
「ブリキ先生、これつけて」
白い手袋を差し出す。
「どうして?」
「滑り止め」
キョトンとして聞き返すも、白い手袋をする。
気に入ったようで、手を開いてみつめている。
とりあえずはこれで誤魔化せそう。
「色々なお店があるわねー」
僕がハンカチを買った雑貨屋。ペットの餌を
売っているところ。パン屋。コーヒーショップなども。
ブリキ先生は目を輝かせてキョロキョロ見ている。
ゲームセンターはアーケード街の真ん中あたりにある。
入り口の自動ドアが開くと、中から騒がしい音が
聞こえてくる。おこづかいがすぐになくなるから、
僕はそれぞれが何の音なのかはわからない。
「ブリキ先生、これだよ」
両替機の前に来ると、ブリキ先生が観察する。
「これ、一万円入るの?」
「入るよ」
ブリキ先生に渡されたしわしわの一万円札を入れる。
すると、千円札が9枚、100円玉が5枚、
500円玉が1枚出てきた。
「はい、これ」
「わあ、増えた」
一万円札が別の紙幣と硬貨に変わって、喜んでいる。
「この機械を使うと、お店で遊んでいかないと
いけないんです。それがマナーです。」
「そうなの?」
へんなきまりごとだ、と思ってそうだ。
「これ、なに?」
ピンボール機の前に来た。
「ここに100円玉を入れると、ボールが出てきて、
筐体の横についてるボタンをタイミングよく押して
下のバーでボールを弾くゲームです」
やって見せてる。
「おはじきみたいね」
ボールが色々なところに飛んでいき、効果音が鳴る。
「ボールを弾けずに下に3回落ちると終了です」
「すごい!面白そう!」
ブリキ先生はガチャガチャとボタンを押してボールを弾くが、タイミングが合わずすぐに下に落ちてしまう。
3回目。
「このボタンはなぁに?」
「あ、それは」
何度もおして筐体の中が揺れる。
「ボタン押しても動かなくなったよ?」
そのままボールが下に落ちてゲーム終了になった。
「ボールが引っ掛かったときに揺らすボタンです。何度も押すとペナルティでミス扱いになるんです」
「難しいね。もっと簡単なのないの?」
「こっちはどうですか?」
エアホッケーをしよう。
「台から空気が出てくるー」
白手袋をはめた手で空気が出るのを確かめてる。
「この丸いのをコレで弾いて、相手のゴールにシュートするゲームです。やってみましょう」
プラスチックで出来た丸いの。パックを
スマッシャー?と呼ばれるラケットのようなもので
弾く。ブリキ先生は見様見真似で同じようにゆっくり弾いて、パックを返す。
「これもおはじきみたいね」
夢中でゲームを続けて、僕がなんとか勝てた。
「あ、これ知ってる。体育館にあるやつだ」
バスケットゴールにボールを入れるゲームだ。
コレは苦手でやったことがない。
「やってみたい」
硬貨をいれると、ブリキ先生の手元に
ボールが手元にきてゲームが始まる。
「ほいっ」
ボールがバスケットゴールにちょうど入る。
「ほっ」
また入る。
「はいっ」
また入る。偶然じゃないようだ。
繰り返しているうちに、ブリキ先生が投げたボール
が全て入った。
ハイスコア達成したことが掲示板に
表示される。そうか、ブリキ先生がロボットだということを忘れていた。さっきのエアホッケーはスマホのゲームと同じで手加減していたのか。
「すごいですね、景品がでてきましたよ」
カプセルが出てくる。開けてみると、
「カエルの形をした、お財布のようですね」
がま口の財布だ。ブリキ先生はカエルに縁がある。
「これ、何に使うの?」
「ここを開けて、お金を入れるんです」
「へえ、お腹の中に入れてるみたいね。
全部はいっちゃった。」
先程両替したお金が全部入ったようだ。
「これはなんのゲーム?」
「これはクレーンを動かしてぬいぐるみを掴んで動かすゲームです。この場所に落とすと、ぬいぐるみがもらえるんです。500円玉を入れると1回多くできますよ」
おおきなうさぎのぬいぐるみだ。
保健室の先生に似てる。
「やってみたい」
おおきなクレーンが動いて、ぬいぐるみを6回掴むが、
落としてしまって、ぬいぐるみを取ることは
できなかった。
「なかなか出てこないんだよね。すぐおわっちゃうし、
僕らはあまり遊ばないんだ、これ」
「うーん」
思うようにいかなくて、ブリキ先生が唸る。
そうしてると、なにか毛玉のようなものが僕の前を
横切った。それはブリキ先生の足元に行った。
「あ・・・」
ハムスター?いや、ハツカネズミだ。ブリキ先生が
すくい上げて、後ろに隠す。
「やあ海魚くん、このあたりでねずみを見かけなかったかい?」
ゲームセンターの店長だ。
「い、いえ、見てませんよ」
「そうか、まったくどこいったのかなぁ」
ねずみを追いかけていたようだ。
「ブリキ先生、その、学校に連れて帰るんですか?」
「うん」
聞かなくてもわかったのだけれど、
念の為聞いてみた。白い手袋していてよかった。
ゲームセンターの帰りに雑貨屋へ寄り、ポケットに入る位の小さい小箱を買って渡した。
「これに入れましょう」
チョーくんを小箱に入れて、ちょうどブリキ先生の
ポケットに収まった。チョーくんは顔をだしてあたりの様子を見ている。
「あれ、なぁに」
ブリキ先生が指差す方向を見ると、前まで貸店舗で
空いていたところにお店が開かれている。
「迷路、二人で千円。みたいです」
僕らの他に、関心を持っている人はいない。
「これ、入ってみたい」
ブリキ先生ががま口の財布から千円札を取り出した。
「えぇ・・・大丈夫ですか・・・?」
なんだか嫌な予感がする。僕らはこういうところは
想像するだけで、実際に入ることが出来ないのだ。
なかに入ってみる。店員さんはいなく、
ドアの入り口に千円札を入れるところだけある。
千円札を入れると、カチャリと鍵が空く音が聞こえた。
ドアノブのないドアがひとりでに開く。
「本当にはいるんですか?あっ」
ブリキ先生は興味津々で入っていってしまった。
僕も付いていくしかない。途中でゼンマイが
切れたら大変だ。
中は休み時間にノートに書いて遊んでいたように、
本当に迷路になっている。
「あ、またさっきと同じところに戻ってきちゃった。
ブリキ先生、もうあきらめませんか?」
どうしてだろう。何度も試しているのに同じ場所に
戻ってきてしまう。
「チョーくんが案内してくれるって」
「本当ですか?」
ブリキ先生のポケットから顔を出し、飛び出すと、
ついてきて、と言っているみたいだ。
後をついて行ってみると、先程気づかなかった
道が見つかり、ゴールの出口までついた。
「ありがとう、チョーくん」
ぼくはお礼をいった。出口から出てみると・・・
「あれ、ここは・・・?」
アーケード街だと思うけれど、なにか様子が違う。
屋根越しのそらが紅い。
夕方だから紅いのではなく、
元から紅かったように。
なにかを演奏しているようで、笛の演奏が聞こえる。
そちらの方を見てみると、
何かのお祭りのようだ。
みんな、お面をかぶっている。
「さっきと様子がちがいますね」
もしやと思い、駐車場に向かってみると、
僕らが乗ってきた車がない。
「別の街に来ちゃったみたいです」
ブリキ先生はきょとんとする。まるで鏡の世界に
きたようだ。
「毎日お祭りをしているのでしょうか」
ブリキ先生とベンチに座り、眺める。
お面をかぶった人たちが笛や、太鼓を叩く音に
合わせて踊っている。
「あ」
踊っている人の一人がお面を落としてしまった。
顔が見えた。狐だった。僕はみなかったことにした。
「そろそろ帰りましょうか・・・どうやって
帰るんでしょう?」
「さっきの迷路を通るといいって」
チョーくんが言っている、らしい。
迷路を通るとき、また千円札を入れないと開かない
ようだ。
「ただ歩いているだけなのに、お金がかかるんですね」
「もっといっぱい持ってくるとよかったわね」
僕にとって一万円は大金だ。ブリキ先生はそれを
たくさん持っている。あんなに必要ないと思ったの
だけれど、使うところがもっとたくさん
あるのだろうか。

車に乗り、学校に戻る。
「あれ、ブリキ先生、バッジどうしたんですか?」
胸に付いている2つ付けていた
カエルバッジが1つ減っている。
「あれ、僕が付けていたバッジもない」
もらったカエルバッジが胸からなくなっている。
「どこかに落としたんでしょうか」
「大丈夫。またつくるから。なくしたら
何度でもいってね。」
不思議なこともある。


あたりはすっかり暗くなっていた。
学校に着き、ブリキ先生がロッカーに入り体育座りするのを見て、
またね、とチョーくんと一緒に声をかけると、
そのまま眠ってしまった。
チョーくんと中庭で別れる。
昇降口を出ると、保健室の先生が白い小さい
トラックと待っていた。
家まで送ってくれるらしい。



   送りの言葉
「うーん・・・・」
「どう?ゴールできる?」
休み時間。委員長が作った迷路で遊んでいる。
正直、先日迷路で大変な思いをしたので
あまりやりたくなかった。
「やった。できた!」
ゴールできた。ところどころに動物の絵が描かれている。ブリキ先生より上手い。
「でしょ。これ文化祭のときどうかな?」
いつも機嫌が悪いけれど、今日は良いようだ。
「いいとおもうよ」
「よぉし。もっと色々考えてかないと。天塚くん、
ほかに何かない?」
「うーん、太鼓叩いたり、みんなでお面をかぶって
踊って、竹馬であそんで、たけのこの味噌汁食べたりするといいんじゃないかな」
「え、えっ。けっこう渋いわね」 
ぴんぽんぱーん・・・・
「えー、生き物係、A-1のあまつか、みおくん。
おねがいがあります。至急、3階の放送室までお越しください。」
「・・・・生き物係って何・・・?」
「てんしくんのこと呼んでるよ・・・?」
「・・・・この声・・・だれ先生だろう・・・?」
ひそひそと話声が聞こえ、みんな僕のほうをチラ見
する。すごくはずかしい。
「い、いいんちょう、ちょっと行ってくるね。
文化祭、きっと楽しくなるよ、またね」
委員長が不満そうな顔をよそにぼくは3階に
向かった。
3階は東階段から右手へ一番奥が応接・自習室で、
放送室はその隣だ。
一般教室の中庭を挟んだ向かえに視聴覚室、パソコン室、音楽室があり、放送室は音楽室のとなりの防音室(個別演奏室)と応接・自習室の間にある。
途中の2階で中庭のほうの窓から、のっぽさんの
姿が見えた。
「しつれいしまーす」
放送室のドアをノックして開けると、ブリキ先生が放送用のヘッドホンをして、マイクに向かって
座っていた。きっと放送してみたかったのだろう。
「あ、海魚くん。放送どうだった?上手く言えてた?」
「お願いってなんですか?」
「大事なお話があるの。ここは放送するための部屋だから、隣の応接室に行こう。」
ブリキ先生も文化祭で何やるかで相談があるのだろうか。
応接室に入った。応接室は自習室にもなっていて、
長テーブルと椅子が沢山並んでいるだけで、ほかにはなにも置かれていない。必要な参考書は、持参するか2階の図書室から借りてこないと行けない。
壁にはスマホで遊ぶの禁止!
と書かれた張り紙が貼ってある。
「大事なお話って?」
「これから学校が休日で一週間お休みになるでしょ。校長先生のお話があるでしょ」
「うん」
「校長先生の代わりに私がお話することになったの。何を話せばいいかな。」
「えっ」
僕らは聞く立場だから、そんなこと聞かれても・・
「そんなこと聞かれても、って思うかもしれないけど、困ってるの」
いま、心の中を覗かれたようなきがしたが、
自分の反応で伝わったのだろう。
「まずは図書室で調べましょう。ここは自習室なので、なにもはじまらないです」
二階の図書室。
「どこを見ればいいの?」
「3分間スピーチとか、作文のかきかた、とかですね」
「ここかな」
小論文、とかかれた本棚のコーナーにきた。
「ここみたいですね。じゃあぼく授業があるので、
放課後にまた来ます」
「わかった。がんばってね」
今日も長い一日になりそうだ。
教室に戻ると、委員長が不機嫌な表情で僕を
向かえてくれた。先は長い。

「日野P、お昼の放送はじまるよー」
どうやら眠ってしまっていたようだ。
最近不思議な夢をよく見る。
あの、男の子。誰だろう?いつも私に声をかけてくる子。あと保健室の先生がうさぎになっていた。
私のことをなんとか先生と呼んでいた。
「はーい、それではお昼の放送を始めまーす」
気を取り直して、見慣れたヘッドホンをして、
何度も語りかけた校内放送のマイクではじめる。
「まずは皆さんからのお便りを三通呼んでみたいと思います。一通目。いちごだいすきさんから。」
「昨日の放課後、一階でお花を摘みに行ったとき、
廊下をあるものが歩いていました。日野ちゃんはなんだか分かりますか?」    
「なんでしょう?」
「なんと、アヒルが歩いてました!お餅に足が生えたようでした!二度見しましたがあれは間違いなくアヒルです!後をつけてみると中庭へ入っていきました!急いで中庭を見てみると、アヒルはいませんでした。日野ちゃんはどう思いますか?」
「うーん、誰かのペットが逃げ出した、とかかな?今頃飼い主さんのところに帰ったのでしょう」
「続いて、あぶらあげこんこんさんから」
「日野ちゃんこんにちわ。購買部で買った焼きそばパンを食べようと中庭側の窓際に寄りかかったら、焼きそばパンが手からなくなっていました。上を見上げると、信じられないかもしれませんが、キリンが
焼きそばパンをむしゃむしゃ食べていたのです。驚いて友達の方にいったら、何度話しても信じてもらえず、その場に戻るとキリンと焼きそばパンが煙のように消えて、何事もなかったかのようになりました。幽霊の中にはキリンも含まれるのでしょうか」
「えっ、なやむところそこ?そうねぇ、幽霊は人間だとこわいけど、動物だとかわいい!っておもっちゃって、怖くなくなるからあまり出てこないとおもうんだけどね、動物の幽霊も怖がらせるためにいるんじゃないからね、キリンの幽霊でもちゃんとおどろかせられると思うから、でてほしいな!って思うかしら。」
「本日最後のお便りとなりました。ケロケロお姉さんからです。」
「桜花ちゃん、いつも面白い放送ありがとう!
やったー褒められた!ここだけの話ですが、
学校の裏山の竹林にパンダが住んでいたら良いな、思い、パンダの着ぐるみを着ていってみたのですが、パンダは見つかりませんでした。残念。」
「もし本当にいたら、友達だと思って出てきてくれるかもしれないね!たまたま、洗濯物を取るの忘れて一度家に帰ったからパンダさんと会えなかったのかも。会いに行こうって、あそこには神社があるから、
そうおもって参拝にいくと、いつもよりワクワクが大きくなって、楽しくなりますね!次はきっと
パンダさんに会えますよ!」

「続いて、文化祭のコーナーです。年に一度の文化祭が近づいております。みなさん、準備ははかどっていますか?なんでも、今度の連休を全て活用して

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