Muu Dogg Studio 2022/11/17 16:52

【無料公開】11月17日のコラム:発売記念「Case-0の楽曲解説」

どうもMuu Doggです。

今日はついにニンテンドースイッチソフト「白昼夢の青写真」の発売日です。
https://t.co/n4xfKGoqOF

深夜まで飲んで、まだ秋葉原だったころの事務所で始発を待つ間に緒乃から「次、こんなのやってみたいんだよね」と言われたのが大体丸4年前。
その後の最初の企画会議から換算して制作期間3年8ヶ月。

まさかこんなに長く同じゲームを作り続けることになるとは思わなかったし、なによりひとつのゲームをここまで多くの人に愛してもらえるとは思ってもみませんでした。
ひとえにこの作品をこんなにも長く愛し続けてくれるユーザーのみなさんのおかげでございます。
この場を借りて御礼申し上げます。

発売日ということで、何か解説してコラムの一部を無料公開にしようかと考えてみましたが、コンプリートサウンドコレクションで全曲解説をし、スイッチのコレクターズボックスでも総括を書き、8月のトークショーでも言いたいことを言い、もはや語り尽くしています。

すでに読んでいる方にとってはくどいかもしれませんが、以前公開したCase-0の楽曲解説を再編集してご覧いただこうと思います。

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Case-0は最も制作に時間をかけたCaseで、シナリオ構想は2019年の頭から、キャラクターデザインやイラストは2019年4月頃から上がっており、楽曲群は2019年の夏頃からスタートし、2020年の9月頭まで作っておりました。
2度延期したとはいえ、1年半に渡って作り続ける超持久走のプロジェクトになるとは当初誰も予想していなかったと思います。

さて、一番最初に同時に作りはじめた楽曲は8曲あります。

・まず一曲目は当初Case-0のOPとして想定していたXelferyくんの曲。
これは体験版のエンディングという形でのみ「To Be Continued.」というタイトルで聴くことができます。
参考曲はこれ。
https://youtu.be/ZcC3vVh3cOE


・二曲目は
いつかの白昼夢(0:00:00)
https://youtu.be/nBxSYC9DN04

こちらもXelferyくん。
「キミトユメミシ」「風の唄」「Wish You were There」の三曲と、
OP想定だった「To Be Continued.」のリフ、計4曲のメドレーとなります。

とにかく斬新で衝撃的なものを作りたかったので、サウンドも可能な限り洋楽のEDMサウンドに近づけてもらいました。

・3曲目が西村さんによる
Coversion One(2:22:27)
https://youtu.be/nBxSYC9DN04

(説明がごちゃごちゃしそうなのでここからURLの動画の並び順で楽曲を紹介していきます)

未来ラジオのときの起動曲に近い、しっとりして洗練された楽曲です。

・4曲目がmomoちゃんの日常曲
Narrative Town (2:24:32)
今聴くとInto Grayと同じモチーフですね。

・5曲目がXelferyくんの出雲のテーマ。
何度でもこの応酬を (2:26:59)
出雲の無機質さを忠実に音にしてもらったような曲。

・6曲目がmomoちゃんのコメディ曲。
ニッコリ・トルティーヤ (2:28:56)

・7曲目がかしこくんの幼年期のテーマ。
私の思い出(2:31:18)

・そして8曲目がMuu Doggによる世凪を救うテーマ。
WORLD AROUND (2:33:41)
元々は日常曲のつもりでしたが、美しさを求めて作り込んだ結果、なかなかの重要曲になりました。

ここまでの8曲が、今作のメインで活躍した作曲家5人の手によってCase-0のシナリオすらまだ完成していなかったプロットのみの状態から固めたサウンドイメージです。

この8曲があったおかげで、その後のBGM制作はほとんど迷わなかったといえます。

いずれもCase-1,2,3の夢の間に差し込まれる幕間シーンで体験版のときから使用されており、Case-0の全貌が明らかになる前から少しずつ世凪・海斗・出雲の心象風景が漏れて見えてくるサブリミナルな効果も狙っています。

さて、体験版が解禁されてCase-0の制作が本格的に始まってくるにつれて、緒乃や霜降ぺれっとの筆も乗ってきます。

当初予定していた規模感より遥かに壮大で綿密な世界観が構築されるにつれ、追いつくためには倍の量のBGMを作る必要があることに気づきます。

そこで大活躍してくれたのが、かしこくん、Xelferyくん、西村さん。

まずはかしこくんの三曲
「雨の降らない街 」(2:35:52)
「Imitation Night 」(2:38:08)
「静かな夜に 」(2:41:18)

それまでジャズピアノの演奏が超絶上手い男という印象だった彼が、作曲家としてアレンジスキルの成長を大いに感じさせてくれた3曲。
静かな日常曲、静かな夜の楽曲、そして夜の延長、情事のシーンで使用されるしっとりとした美しい楽曲。
どれも世凪と海斗の静かな日常のなかの微妙な起伏であり、予算に余裕がなかったら1曲で済まされてしまいそうなところもしっかりと濃淡をつけ、見事に表現してくれています。

次にXelferyくんの3曲。
「Technical Argument」(2:43:40)
「Quicksilver 」(2:45:14)
「REMINISCENCE」(2:47:02)

忘れてしまいそうではあるが、Case-0の舞台は2200年くらいの近未来。

餅は餅屋、Xelferyくんはシンセのサウンドイメージ能力に誰よりも特化しており、そこにディレクションでローファイなアナログサウンドを混ぜてもらうことで、
ディストピアなハイファイさ、資源の枯渇したローファイさの両立に成功してくれています。
とりわけ秀逸なのは世凪の思考空間にダイブする時のテーマ「Technical Argument」

初稿で上げてくれたデモをタイムストレッチであえて音質劣化させて混ぜることで、ローファイ感を出している。

そして西村さんの2曲。
ニセリープくんのテーマ「天敵のいない生命体」 (2:48:46)
と、2曲飛ばして
今作唯一のオーケストラ楽曲「涯際」 (2:57:50)

いまだから言えるけど「涯際」は、クリストファーノーラン監督作品「インターステラー」のハンスジマー楽曲をがっつり意識しています。

幼年期、青年期、壮年期、最終章、各タームのラストに流れるテーマみたいなのが世界観の格式を高めるためにどうしても欲しくて、かなりぎりぎりでお願いした楽曲。
本家のハンスジマーは「インターステラー」を完成させるために教会を何ヶ月も貸し切って、パイプオルガンの音色でこの世ならざる音を表現していて、さすがにそこまでは出来ないけど西村さんならそのサウンドに肉薄できるのでは……と思いお願いしたもの。
ラストで遊馬と海斗が会話する時にこの曲が流れるシーンは本当に神がかっているし、何度見ても鳥肌が立ちます。

からの、またかしこ無双シリーズ。
momoちゃん作曲「Into Gray」のピアノバージョン
「遠い日に想いを馳せて」(2:59:47)

キースジャレットが弾いているのかと思うほどの豊かな表現力。

そしてこれまたmomoちゃん作曲「凪いだ海のように」のピアノバージョン
「海が凪ぐまでは」(3:02:04)

これは発売前コラムでも書きましたが、マスターアップの3日前、深夜3時にさめもと・緒乃・上都と連日泊まり込みで仕上げている際に、世凪が世界そのものになることを海斗が受け入れるシーンに絶対にもう1曲必要だよね。という話になり、すぐさま電話して仕上げてもらったもの。
信じられないことに深夜4時半にはもう完成して納品していました。
かしこくん、とんでもないスキルだ。

これはあとで聞いた話ですが、マスター1ヶ月前「凪いだ海のように」をなんとか納品し終えたmomoちゃんが、マスターアップ後にゲームをやっていたら自分の曲がピアノバージョンになって収録されていて「誰がいつ書いたの!!??」と仰天したらしいです。

続いて先でも触れたmomoちゃんによるオープニング楽曲
「Into Gray」
https://youtu.be/fov1aJ3lc3E

はい神曲。

実はCase-0のオープニングは「恋するキリギリス」「冷たい壁のむこうに」と同じタイミングで書いてくれていて、それもかなりのクオリティまできていたのですが、体験版をプレイしたmomoちゃんが「こ、こんな、すごいもの見せられて……このままじゃ……だめだ……!!」と、全てまっさらにして一から作り直して誕生しました。

ドラムとストリングスの質感はとにかく迫力を出してもらうために納期のギリギリまでかなり調整してもらった記憶があります。

一同業者の率直な感想として、ここまでプレイヤー冥利に尽きる楽曲は無いと言えます。
オンコードやアドナインス、サスフォーのコードの差し込み方はアンニュイで耳心地がいいし、彼のトレードマークであるハーフディミニッシュ盛り沢山のコードプログレッションも完璧。

ベースはこれでもかというほど暴れ回るし、今回初登場のギタリスト東山瞭太さんのプレイはザクザクと心をえぐるし(演奏が上手すぎて危うく弟子入りを志願するところだった)
yukiさんの張り裂けそうなボーカルは涙を誘うし、これを名曲と言わずしてなんというか……これが僕の第一印象です。

続いてエンディングにいきましょう。
「凪いだ海のように」(31:07)
momoちゃん作編曲。

「Into Gray」をここまで語っておいてなんですが、今作で僕が最も愛しているのはこの1曲。
どんなに評価してもしたりない。

抑圧の効いたシンセとエフェクト、消え入る一歩手前の神々しさすら感じるyukiさんの歌声、無駄な音が一音足りともないのです。

AメロとBメロの間奏はポップスの定石ではあまりやらないのですが、フィルターのかかりかたや音のダイナミクスが美しく、これが楽曲の完成度を決定づけたポイントだと思っています。

実はフル尺制作のとき、緒乃とmomoちゃんの喧々囂々な議論が最も白熱したのがこの曲。
作編曲家としては、音を減らしていくというのは編曲の粗が見えやすくなることを意味しているため、かなり慎重になる怖い試みではあるのですが、緒乃の大胆なディレクションに僕は息を呑んで完成を見守っていました。

超余談ですが、一番と二番の間に静かに入ってくる波の音は僕が選定したもの。
名曲の誕生に関われて幸せですありがとうございます。


さてさて、こうして文章にしてみると忘れていた当時の記憶や感情がまるで世凪にとっての各Caseのように鮮やかに思い出されますね。

こうして思い返すと次回作への糧になる経験ばかり。

企画会議もますます活発になり、やりたいものもどんどん増えてきているので、今後のラプラシアン作品も楽しみにお待ちください。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

月並みではございますが、ニンテンドースイッチソフト「白昼夢の青写真」を購入いただいたみなさん。
本当にありがとうございます。
2回目以降の方も、初体験の方も、作品を楽しんでいただけると嬉しいです。

有料版にちょっとだけ続きます。

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