「夏至の妖精お茶会」~6月の短編ファンタジー
1
27歳になる同い年の従姉妹、花蓮のことが私は大嫌いだった。
花蓮は名前の通り美しく可憐で、勉強もできた。
これで性格が悪ければまだしも性格も良いときていたから、私の立つ瀬がなかった。運悪く同性で同い年だったから、親戚で集まると悪げなく比べられた。
小さなこどもの頃から、私はまるで花蓮の引き立て役だった。
「まあ、かわいいわねえ」
誰もが花蓮を手放しでほめた。
その後、花蓮の母親が社交辞令として、
「実奈(みな)ちゃんもかわいいわよ」
とつけたすのが常だった。
実奈という名前の通り、私はぱっとしない外見だった。色白じゃないし奥二重だったし鼻筋も通っていなかった。
それでも、目立って不細工なわけでもなかった。花蓮がいなければ、かわいい女の子として親戚にかわいがってもらえただろう。
成績だって、中の上くらいだった。良くはなかったけれど、悪くもなかった。
けれど成績優秀な花蓮がいたせいで、私はいつも「できない子」扱いされていた。
いつも花蓮が光の中にいた。
その明るすぎる光の隣で、私は影になっていった。
高校に入った頃、母がふともらしたのを聞いてしまった。
「うちも、花蓮ちゃんみたいな子だったら良かったのに」
私に直接言ったわけでもなく、私はいないと思って親戚の集まりの後にふと父にもらした言葉だった。
「そういうなよ」
父はそう言っていたけれど、親戚中で花蓮ちゃんがいい高校に入ったことをほめていたのだから、やはり思うところはあっただろう。
「みんな花蓮ちゃんばっかりほめて、悔しい」
私には3つ上の兄がいて、兄も私と似たようなものだったから、私たち兄妹だけだったら母も父もそういうものだと満足していただろう。
それが親戚として近くに私と同じ年の光輝く花蓮がいて、親戚みんなが花蓮をほめるのだ。どうしても自分の娘がつまらないものに見えてしまっただろう。
花蓮の母親は父の妹だったが、私の母のほうが綺麗だった。母と花蓮の母親と花蓮の3人が並べば、母が花蓮の母親だと思われただろう。そして、私のほうが花蓮の母親に似ていた。
自分より美しく優秀な娘を産んだ叔母は、花蓮のことが自慢でたまらないというのがだだ漏れていた。母に対して、マウントとも取れるような態度も取っていた。
だから、より母は悔しかったのだろう。
それはよくわかる。けれど母の失望は、私の自尊心をそぎ落としていった。
そしてそれに比例して、私は花蓮を嫌った。恨んだといってもいい。
「なぜあんたがいるの?」
「あんたさえいなければ」
そう思うようになっていった。
夏至の夜、花蓮は貸していた漫画をうちに返しにきた。
「すごく良かった! 実奈ちゃんのお勧めってハズレないよね」
私は花蓮を嫌っていたけれど、花蓮は子どもの頃から私になつこく接してきた。花蓮自身は性格も良くマウントも取ってこないので、内心嫌っていたけれどそれを態度で表すことはなかった。
「これ、お礼」
私の好きなケーキと小さな花束を買ってきてくれた。
「ありがとう」
「一緒にたべてく?」
「うん。ねえ、妖精お茶会しない?」
花蓮がいたずらっぽく言う。
「妖精お茶会?」
「夏至の日に妖精お茶会すると、妖精がやってくるのよ」
たまに、花蓮は不思議なことを言う。
「妖精が、願いを聞いてくれるかも」
よくわからなかったけれど、まあ遊びとしてはいいかもと軽い気持ちでオッケーした。
紅茶を3つ入れ、お皿を3枚持って二階に上がった。
自分たちの分と妖精の分のケーキを用意して、花を飾った。
「窓を開けて、石を鳴らすのよ」
そう言って花蓮は持ってきたラピスラズリと水晶を叩いてかちっと鳴らした。
「妖精さん、お茶会にお越しください」
すると、部屋の空気がすうっと変わったような気がした。
「紅茶とケーキをどうぞ、お召し上がりください」
花蓮はいかにも妖精たちがいるように振る舞った。
そして、しばらくして言ったのだ。
「妖精さん、実奈ちゃんと私を入れ替えて!」
「えっ?」
驚いていると、部屋がぱあっと光った。
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