2億の家 2024/02/17 01:36

「2億の家」 〜女〜

〜女〜


 最初にパートナーの不倫に気付いたのは、2019年秋の終わりのことだった。


 信じたくもない現実。信じられない現実。不倫を知った瞬間から、佳子の鼓動はおかしいくらい速くなった。

 手が震えた。

 目を開けていられなかった。息をしているのかしていないのか、そんなことも分からないくらい息苦しさが襲ってきた。

「うそでしょ…」

「いやだ…」

「やめてよ、本当なの?」

「いやだ。やだ、やだ…」


 頭に竜巻のようによく分からない言葉たちが回転した。頭も心もパニックになった。

  自分の知らないところで、自分の横で悪びれる様子もなく笑っていたパートナーは、他の女性と恋していたのか?

いつから? これは彼の裏の顔?裏… 裏じゃなくて、これがパートナーの表の顔?



一気に佳子の中でバラバラと全てのものが崩れ落ちた。


どうしよう・・・と震えながら、どうしたらいいかなんて分からない。

ショックすぎて、自分の人生でこんなことが起こるなんて、想像していなかった。いゃ、なんで想像しなかったのか。
それは、佳子がパートナーを信じすぎていたからだ。

彼ほど好きな人はこれまでも今までもいない、彼は自分の人生で初めて会う最高のパートナーで、一生一緒にいたい、彼についていきたい、世界の基準が彼だった、毎日好きすぎてたまらなかった。彼も同じ気持ちだと、信じて疑わなかった。





 パートナーと不倫女は、どんどんと不倫に落ちていった。


 佳子は苦痛の毎日を過ごした。

 毎日胸が締め付けられ、寝ても覚めても胸が痛んだ。胸が痛んで眠れなかった。

 料理をしていても、一歩外に出て、玄関からエレベーターホールまでの短い距離も、エレベーターが来るまでのわずかな時間も、立っているだけでも、座っているだけでも何をしていても、胸が痛くて重くて、歩くごとに涙が落ちそうだった。


 それまでの幸せだと思っていた日々から、一気にどん底に突き落とされた。


 誰だ、この真純って女は。。。


 

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