雨音/AR 2023/03/18 01:49

エルマのメモ

「エルマ、あなたは神様から素晴らしいおくりものをいただいたの。神様に選ばれたのよ!ふふ、今日のおやつはエルマの大好きなチョコレートケーキ!ママ、あなたのママでほんとうによかった。ママのところに生まれてきてくれてありがとう、エルマ」

大好きなママが作ってくれた大好きなチョコレートケーキ。
あの時のあたしは嬉しくて楽しくておいしくて幸せだったのに、
今のあたしはこの世界の何よりも不味くて吐き気のするものにしか思えない。


あたしって結構、恵まれているのだ。
両親はあたしに甘々だったし、神様から贈られた特別な能力とか持ってるし、施設に来てからだっていじめられるようなこととかもなくて、大人たちからは可愛がられてる。
だからあたしみたいなのが苦しいだとか悲しいだとか死にたいだとか思うのって間違ってることなんだけど、
なんだかいつも漠然と苦しいし悲しいし死にたいから困ってしまう。
世の中のこういう、病んでる人ってもっと親から暴力を振るわれていたとか明らかな原因があるんじゃないかと思うんだけど、あたし、そういうのほんとにないんだよなあ。
強いて言えば、パパとママになぜか会えなくなっちゃったのはかわいそ要素だと思うけど。
でも本当に、お別れの直前まで、優しい人たちだったし。
ほんとにほんとに、なんであたし、今こんな感じになってるんだろ?

ぼたぼたと腕からこぼれ落ちる血を眺めながら、端末を立ち上げてレーニに死にたいってメッセージを送った。
こうするとすぐに駆けつけてくれるから、安心する。
あたしはあたしが死にたいとか思うのを間違いだと思うけど、レーニが駆けつけてくれるってことは、レーニにとっては間違ってないってことだから。
誰かがあたしの感情を正解って言ってくれないと、結構もう、どうしたらいいかわかんない。

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