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藤島 港/猫と心中 2021/12/14 22:29

『紙一重の想い人』制作よもやま話

2021年11月14日に公開したフリーゲーム『紙一重の想い人』の制作を終えての振り返り記事です。
裏話と言うほどのことでもないですが、制作中のいろんな話をあれこれ書いています。
当然ですがネタバレが山盛りなので、プレイ後の閲覧をおすすめします。
(目次でいきなりネタバレしているよ!)

シナリオ関連の話

実は初期の構想では惺が主人公じゃなかった話

紙一重の制作に取りかかり始めたのはたしか今年の7月末頃か8月の頭くらいだったと思うのですが(うろ覚え)、実は構想自体は5年くらい前(もしかするともっと前)から頭の中の「いつか作るやつリスト」にずっとストックされていました。ようやく形にする番が回ってきたという感じです。
最初の段階では実は主人公は惺ではなく律花の方で、乙女ゲームっぽいものを考えていました。嵐も死んだ体を無理矢理生かしているのではなく、本物の嵐は完全に死んでいて、それに耐えられなかった律花が式神で嵐の記憶を引き継いだ「嵐もどき」を作ったはいいけれど……みたいな。惺は律花が禁忌に手を出したことを知っているけど誰にも言えずに黙っている弟、くらいの役回りでした。
でもそれだとなんかいまいちしっくり来なかったんですよね。何も起こらないというか……惺が律花のしたことに対して見て見ぬふりを決め込んでいたら、この話は何も動かないなと思ったんです。
それで、惺と嵐が何かしら近い関係にならないと惺が介入してくることはないなと考えていたら惺と嵐の話がメインに来て、それが思いのほかしっくり来て「これだ!」となりました。新しい話を作るときって毎回この「これだ!」って瞬間があります。ぼやーっとしたイメージから具体的な形にスパーン! と嵌る瞬間ですね。

嵐がどうやって「死んでるけど生きてる」のか現実的に考えた話

そんな経緯を経て、いざシナリオを書くぞ! という段に入ったのですが、改めて考えてみると、本物の嵐は完全に死んでいて式神が化けているのなら、本物の嵐の死体をどうしたのか? という問題にぶち当たりました。頭の中のイメージの段階では「何となくこんな感じ」で済ませているところを具体的に、現実的に落とし込まなきゃいけなくなるんですよね、実際にシナリオを書く段になると。
嵐の死を周囲に隠すためには遺体を埋めるなり焼くなりして処理しないといけないけど、律花は禁忌に手を出すほど嵐が死んだことに耐えられないのに、そんな大切な人の遺体を埋めるとか焼くとかそんな惨いことができるか? 気持ち的には何とかできたとしても、実際1人の人間を誰にも知られずに埋めたり焼いたりってことが普通の大学生にできるか? いや無理だ。じゃあ式神が化けるんじゃなくて……と考えてたどり着いたのが「死んだ体を式神によって疑似的に生かしている嵐」でした。式神が云々という時点でファンタジーなのですが、ファンタジーでも「現実的」に考えなければいけない部分ってあるんですよね。
シナリオの書き始めってそういう脳内のぼんやりしたイメージを現実にすり合わせる作業が入るのでちょっともだもだします。設定やプロットをきっちり用意する人はそこで先にしっかり練ってからシナリオを書き始めるのだと思いますが、自分は大体の設定だけ頭の中で考えてあとはシナリオを書きながら模索していくタイプです。登場人物たちと一緒に手探りで歩いているような、そんな感覚です。

設定的な部分を詰め終えたあとはびっくりするほどすらすら書けた話

惺と嵐を中心に据えて嵐がどういう状態なのかという設定的な部分が確定したあとは驚くほどすんなりシナリオが書けました。こんなに調子よく書けたのは久しぶりで正直ちょっと泣きそうだった。
2019年の10月に前作『人生ゲームと死体の彼女』を公開して以来何も作品として形にできていなかったので、「これでやっと完成させられるものが作れる……!」とほっとしました。しんどかった話をしても面白くないので端折りますが、ちょっといろいろあって「創作はやめたくないけどもう何も作れないかもしれない」という時期がしばらく続いていたので、本当に嬉しかったしほっとしました。
ゲーム内のあとがきに書いた通り、命や死とどう向き合うかとか、許されない過ちを犯したことへの報いは……とか、その辺はめちゃくちゃ悩みましたし迷いましたが、二進も三進も筆が進まない感じの迷走ではなかったので、いい意味でたくさん悩んだしいろんなことを考えたなと思っています。
そんな感じでシナリオは概ねスムーズに書けました。シナリオが完成した時点で、このあとは余程の事故がない限り大丈夫だ! と光が見えた感じでした。

イラスト関連の話

塗り方と色の選び方を変えた話

紙一重より前の作品を知っている方はわかるかもしれませんが、塗り方と色使いが過去の作品と結構違っています。もともと描き方が安定していないので毎回違うと言えば違うのですが、今回は「こう塗りたい」「こういう色使いをしたい」とかなり意識して描きました。
前々から自分の絵が好きではなくて、それは下手だからだと思っていたのですが、わりと最近になって上手い下手の問題とは別に「自分が描きたいと思う描き方」になっていないことに気づいたんです。表現手法の問題ですね。
今まで好みの絵に出会ったときに「あーこの絵好きだなー自分もこんな絵描きたいなー」と漠然と思っていたのを、「こんな絵描きたい」の「こんな絵」とは具体的に何なのか? と分析(と言うと大げさな気がしますが)して、最近やっと自分が目指したい描き方がわかったんです。
「写実性よりデフォルメ強めで、塗りははっきりキッパリ、彩度が高い強い色で、画面がうるさい感じ」の絵を自分は描きたいんだ! と。
それを意識して描いたのがこのタイトル画面の絵です。

実際に意識して描いてみると描いたあとの満足度が今までと全然違いましたね……。もちろん下手は下手ですし目指したものが全部達成できたわけではないので100%納得の絵ではないのですが、「自分はこういう絵を描きたい」の「こういう」の部分を具体的に、明確にしておくのって大事なんだなと思いました。

キャラデザの話

シナリオを書き終えてからキャラデザと立ち絵の作業に入りました。

惺は特にデザイン上のテーマなどはなくて、強いて言うなら「どこにでもいそうな普通の高校生」がテーマでしたね。以前Twitterでちょっと呟いたのですが、久留家は過去作『ご近所喧嘩は猫も食わない』に登場する景守家の分家なので(作中には一切絡んでこない設定)、髪や目の色を荵と揃えています。絵の彩度にかなり差があるので惺の方がだいぶ紫がかって見えますが。律花も髪は染めてあの色です。地毛は惺と同じ色です。
惺も律花も黒目を少し小さめにして、若干目つきが悪いつもりで描いていました。おっとりした顔つきの嵐との対比を強くしたかったので。惺は笑うシーンもわりとあったのでそんなに人相が悪い感じはしなかったかもしれませんが、律花は結構キツい表情になった気がします。惺も律花も無表情で黙ってたらたぶんちょっと怖い。
そういえば惺は顔グラでは肩から上くらいしか映っていないのですが、立ち絵として全身描いていました。衣装差分もせっかく描いたのにほとんど映らずじまいになってしまったのでここに載せておきます。

私服がダサいのは描いた人のファッションセンスのなさによるものですが、逆に「お母さんが買ってきたやつ」感があっていい感じに「まだ自立しきれていない子供」に見えた気がしています。
部屋着のnekochanに特に意味はありません。猫さまは可愛い、ただそれだけです。部屋着はダサくてなんぼです。

嵐のデザインは彼岸花をモチーフにしています。と言っても髪型を彼岸花の花弁っぽく外ハネにしたのとテーマカラーが赤なだけという感じになってしまったので、もう少し上手く彼岸花要素をデザインに落とし込むことができたらよかったんだけど……と、自分の力不足を感じているところです。
モチーフが彼岸花なのはお察しの通り彼が既にこの世のものではない、彼岸の存在だからです。ただ彼岸花はそういう意味でよく使われるモチーフでもあるのでちょっと安直だったかなという気もしています。
ちなみに「百合永嵐」という名前も彼岸花モチーフです。彼岸花の異名の一つ、英語の「ハリケーンリリー(嵐の百合)」からつけました。

キャラデザに一番苦労したのは律花でしたね……もともと女の子を描くのが苦手なのもありますが。最初は退魔師ということでザ・巫女みたいな姿を考えたのですが、そうするといわゆる「おしとやかな大和撫子」的な印象になってしまって、律花のちょっと押しが強いキャラクター性と合わなかったんですよね。見た目と中身にギャップがあるキャラクターという形もありますが、相当上手くやらないと違和感だけになって破綻してしまうので自分にはできませんでした。
それでどうにか巫女っぽさを残しつつ律花のキャラクター性を邪魔しないデザイン……と考えてああなったのですが、正直巫女感は大して残らなかった気がします。もう少し和っぽさを……! と思ったのですが、現代日本が舞台なのであまり和装感を出しすぎると浮いてしまうんですよね。和装の現代アレンジみたいなものも考えましたが、そうすると「和風ファンタジー」という丸っきり別の世界観のものになってしまってこの作品の世界観の中ではやっぱり浮いてしまいました。それで結局なんか普通な感じに……。
惺や嵐と違って衣装差分がないので一番楽に済むと思った律花に一番手こずりました。

スチルが相変わらずラスボスだった話

シナリオ→キャラデザと立ち絵→UIを片づけたあとにスチルを描き始めたのですが、なんかもう本当に……毎度のことではありますがここが一番きつかったです。スチルを終わらせてからスクリプトをやっているので順番的にはスクリプトがラスボスですが手強さ的にはスチルがラスボスです。一番時間を費やしたのがたぶんここで、ここで足踏みした分があとの工程を全部後ろ倒しにして完成がギリギリになってしまったという感じですね……。
ゲーム制作の工程の中で自分が一番苦手なのは絵なのですが、同じ絵でも立ち絵とスチルって全然違うんですよね。構図とか……動きのある表現とか……複数人の絡みとか……立ち絵と違って「空間」が発生するので、その辺の認知能力が低い自分は奥行や空間を平面に落とし込むことができなくて苦しみます……。教本やイラストレーターさんたちの講座動画などで勉強して、色の使い方や人体のバランスなどは前よりマシになったと思いますが、やっぱり空間が把握できないと駄目ですね。
自分の力量とキャパシティ的な意味でスチルの枚数が少なくなってしまうのですが、そうするとやはり重要なシーンに数少ないスチル枠を振り分けるので、スチルがもれなくネタバレシーンになってしまう=サイトに載せるスクショや動画にスチルを使えない=深刻な素材不足!! に毎回悩まされます。
今回は5枚が限界だなと最初に決めていたので、サイトに載せられるものがなくならないよう絶対に1枚はネタバレにならないシーンに振ろうと決めてどこにスチルを持ってくるかを決めました。
スチルがたくさんあるリッチな仕様は永遠の憧れです。

UI関連の話

気を抜くとホラーゲーム的画面になりそうだった話

今作は赤と黒が作品全体のメインカラーだったのですが、この2色って何も考えずに使うとすぐホラー画面になるな……ということにUIを作り始めてから気づきました。除霊がどうとか悪霊が云々という話ではありますがホラーゲームではないので、いかにおどろおどろしい雰囲気にならないようにするかが一番の課題でしたね。
意識した部分としては、彩度が高めの赤を使うことです。暗めでくすんだ赤は血に見えてしまうので。あとはぼかす部分に赤を使わないことですかね……ぼかすと滲んだ液体感が出てやっぱり血になってしまうので、ぼかした色を置く場合はサブカラーとして登場人物のイメージカラー(惺=紫、律花=黄色、嵐は赤で重複するので除外)と、彼岸花から緑をとって使いました。サブに3色も使ったのでちょっとまとまりがなくなってしまった感はあります。
メイン2色にサブ1色くらいですっきりデザインできるようになりたいですね。

和要素と現代的な要素のバランスが難しかった話

UIだけでなくこの作品全体に言えることなのですが、和っぽいテーマでありつつ現代という舞台の中で浮かないようにするのに苦心しました。律花のキャラデザの話もそうですね。
ストーリー中にキーとなるアイテムが特になかったのも、モチーフとしてビジュアル面に持って来られるものがなくて結構悩みました。例えば2019年公開の『猫になれたなら』はズバリ猫さまをビジュアル的なモチーフとして使えたので、猫さまのシルエットや肉球、猫さまの好きなお魚など、いろいろと持って来られたのですが……今作は強いて言うなら彼岸花と鈴ですが、なんかどっちもUI向きではなかったですね。彼岸花は見た目がゴージャスで主張が強いですし、鈴は逆に質素で埋もれてしまいました。
ストーリー上の一番のキーアイテムは式神なので、当初はタイトルロゴに式神の形代のシルエットを入れたりクリック待ちグリフなどに使おうかと思ったのですが、そこまで出してしまうと勘のいい人はシナリオを読み進める前にタイトルと併せていろいろとわかってしまうだろうなと思ってやめました。いやもうわかる人はタイトルの時点で何かしら勘づいていると思いますが。
自分は「これ何かの伏線なんだろうな」とわかるものより伏線だけど伏線とわからないように置かれているタイプの方が好きなので、自分のゲームでもそうしがちです。

スクリプト関連の話

2年のブランクの間にゲームエンジンがだいぶ変わっていた話

今作も今まで同様Light.vnで制作しましたが、スクリプトに触れるのが約2年ぶりだったので、この2年の間のアップデートで新しい機能が追加されたり仕様が変わっていたりでちょいちょい戸惑いました。前作からコピペで持ってきた記述が想定通りに機能しないとか、特にシステム系の画面で初めて見るコマンドに遭遇してこの記述が一体何をしているのかわからないとか……。自分がやりたい表現を作り込む前にまず「仕様を把握する」という作業が一段階入ってきた感じでした。
2年制作から遠ざかっていた間もアップデート情報などは一応チェックしてはいたのですが、「こういうことができるようになった」というのは知っていても、じゃあ具体的にどういう記述をする必要があるのかというのは実際にスクリプトを開いてみないとわからないですね。新機能の情報は目立つのでまだ自然と目に入るのですが、以前からある機能の仕様変更はアプデ内容を細かくチェックしていないと見逃しがちなので、以前と同じようにやっているのに上手くいかなくて焦ったこともいくつかあり……エンジンの変化についていけるように情報収集をしておくのも大事ですね……。
Light.vnのスクリプト自体は以前と変わらず易しいですし、理解すれば何ということはないのですが、以前はサンプルとエディター内のコマンド説明を見れば大体わかる感じだったのが、今回はWikiを読んでやっとわかったということがいくつかあって、ひと手間増えたなというのが正直な印象です(Wiki制作者さんに圧倒的感謝!)。
ほかのエンジンのことを考えたらリファレンスを見るのは当たり前のことなので、サンプルとエディター内の説明だけでほとんど解説要らずだった今までがすごすぎたと思います。

他人が書いたスクリプトをカスタマイズして利用しようとすると「分析して理解する」工程が必要なので結局自分で書いた方が早い話

以前はなかったスチル鑑賞・サウンド鑑賞のサンプルが実装されていたので、今まで自力でスクリプトを書いて実装していたそれらを楽に作れるようになるかと思いきや、そうでもありませんでした。というのも、他人が書いたスクリプトって、どの記述が何を意図して書かれているのか、解説がないと完成形を見ただけではすぐには理解しきれないんですよね。
演出などビジュアル的な面は解説なしでも大体わかりますが、システム面になるとこれが結構わからないところもあるのです。この変数は一体何なんだろうとか……。いやもちろん自分の理解力の問題もありますが。
ちゃんと理解しきれていないとカスタマイズが上手くいかないので、自分の思い描いた通りにしたいなら結局一から自分で考えて書いた方が早いなと思って、今まで同様スチルとサウンド鑑賞は自家製で実装しました。たぶん見る人が見たらなんて面倒くさい記述をしてるんだと思われる書き方をしていると思いますが、自分で書く場合自分がちゃんと理解できている技しか使わない(使えない)ので、思い通りに動作しなくて「何でこうなっちゃうの~!?(頭抱え)」的なストレスはかなり減ります。効率の悪い作業をすることのストレスと、上手くいかない原因がすぐわからないことのストレス、どちらをとるかという感じですね。どっちがマシかは人によると思います。
時間をかけてしっかり読み解けば他人が書いたスクリプトでも使いこなせるようになると思いますし、自分では思いつかなかったやり方を知れたりと学べることは多いと思いますが、如何せんスケジュールが切羽詰まっていると「そんな悠長なことしてらんねえ!」ってなってしまいますね。そういう「研究」みたいなことはプロジェクトとは別にやらないといけないなあと思いました。

素材集め関連の話

現代室内の背景素材探しに難義した話

これも毎度のことなのですが、現代系の室内の背景用素材ってほかのジャンルと比べると圧倒的に数が少なくて、シナリオや設定とマッチしたものを探し出すのは困難を極めますね……現代室内でも学校系はわりとたくさんあるのですが、一般住宅などは本当に少ないです。
有名どころのフリー素材はやはりほかの作品とかぶってしまいますし、フリゲあるあるだと思いますがプレイ中に「あ、これあのサイトさんの素材だ」と思った瞬間に没入感が一旦途切れてしまうことになるので、できるなら背景も自前でオリジナルのものを用意するのが理想だな~と毎回思っています。背景の描き方ももそもそ勉強してはいるのですが、使い物になるレベルのものが描けるようになるにはまだまだ時間がかかりそうです。

消去法で音楽のジャンルをしぼっていった話

今回はBGM素材探しも結構時間がかかりました。と言うのも、キャラデザやUIの話でも言及しましたが、この作品の世界観が「和でありつつ時代ものでも和風ファンタジーでもない」という、がっちりジャンルに嵌るものではなかったからです。
和っぽさを求めて和楽器系の音を鳴らすとやっぱり浮くんですよね。かと言って現代感を意識しすぎて電子楽器がギュンギュンピコピコ鳴るのも違いますし、シンフォニック系はファンタジー感が強いし世界観が壮大になってしまうし……と「これは合わない」という要素を排除していった結果、アコースティック系のアンサンブルがベースの曲が多くなりました。
エレピがメインの曲をいくつか使っているのですが、それは意識的にエレピの曲を探して使っています。自分の個人的なイメージですが、エレピの音ってすごく夕焼けや黄昏を連想するんですよね。この作品は夕方のシーンが多いのと、日が沈む=命が没する、というイメージをエレピに託しました。
あとは何と言ってもピアノですね。ピアノは激しさから静けさ、派手さから寂しさ、楽しさから悲しさ、全部ありです。なので曲探しに困ると安直にピアノソロに頼ってしまいます。ピアノ曲は素材の数も豊富ですし、音色自体に固定されたイメージがあまりなくフラットなので本当に万能だなあと……さすが「楽器の王様」の呼び名は伊達じゃねえぜ……。

「音楽を流さなければならない」という先入観を捨てた話

BGM探しが一番難航したのはタイトル画面です。先述の通り全体を通して音楽のジャンル的な意味で結構悩みましたが、シナリオ中のBGMはまだよかったんです。「穏やか」とか「悲しい」とか「怪しい」とか、そのシーンの雰囲気というものがあるので、それに合った曲を探すということができたので。タイトル画面はそれがないので、曲探しのための材料が何もないような感覚でした。
タイトル画面で流れる曲は作品の顔になる曲なので、通常は作品全体の雰囲気を表す曲を持ってくるところですが、例によって世界観がこれという特定のジャンルに嵌らないし、シナリオ全体の雰囲気としては切なさややる瀬なさが中心に来るものではありますが、「切ない話です」と前面に打ち出していきたいわけではなかったので、そういった印象を与える曲も「作品の顔」ではないんだよなあ、とかなり悩みました。タイトル画面のBGM探しだけで丸1日経っていた日もありました……。
そんな感じであれも違うこれも違うと悩み続けているうちに、ふと思ったのです。「当てはまるものがない」がこの画面における正解なのでは? と。いつから絶対に音楽を流さなければならないと錯覚していた……?
それでいっそのこと無音にしようかと思ったのですが、タイトル画面が無音なのはゲームとしてはちょっとよろしくない面もあるなと思いました。本来タイトル画面はゲームを起動して最初に音が鳴る画面のはずなので、そこで何も鳴らないとプレイヤーは「あれ?」ってなるよなと。スピーカーの電源入ってないかなとか、ヘッドフォン挿し忘れたかなとか、オーディオの出力設定がおかしいのかなとか、「何も音がしないのは正常なのか?」というのがプレイヤー側はわからないので、まったくの無音はプレイヤーには少し不親切だ→じゃあSEを乗せよう、という結論に至りました。タイトル画面で流れているのは風鈴の音です。
タイトル画面で流す音だけでなんかすごいもだもだ悩みましたが、「タイトル画面では音楽が流れているもの」という無意識の先入観に気づけたのは大きい気がします。

その他の話

通りゃんせ信号機の話

冒頭で流れる歩行者用信号機の「通りゃんせ」の音なのですが、あの音源は自分でメロディーを打ち込んでソフトシンセで信号機の音を再現したものです。通りゃんせ信号機の素材はフリー素材であるにはあったのですが、赤信号に変わる直前の突然割り込んでくるファー↓シー↑ファー↓シー↑が入っているものがなかったので自分で作りました。

信号機の音色も結構それっぽくできて満足しているのですが、よく考えたら通りゃんせ信号機ってどんどん減っていて今の若い世代は知らないのかな……と思いました。今はカッコーとピヨピヨに統一されていっているみたいです。
自分は子供の頃からこの通りゃんせ信号機の音に、横断歩道の先に何かこの世のものではないものが立っていてこっちを見ているんじゃないかみたいなそこはかとない不気味さを感じていたので、そのイメージで冒頭に持ってきたのですが、今の若い人たちには通じないかもしれないですね。

次回作の話

次回作についてはまだ何も決めていませんが、「いつか作るやつリスト」は相変わらず長蛇の列ができているので「次は何を作ろうかな」ではなく「次はどれを作ろう」という感じです。作りたいものは無限に湧いてくるのに出力が全然間に合ってない。
ゲーム作品が続いているのでそろそろ小説も書きたいんですよね。本を作りたい。でもゲームで遊んでいると「あ、やっぱゲーム作りたい」ってなるし、ずっと温めている音声作品の案もあって、どれが先に出てくるかはわからないですね。
作品の規模にもよりますが1年に1作くらいは何かリリースしないと自分の気分が鬱々してくるので、2022年中に何か1つ形にできればいいなあと思っています。今考えているのはそれくらいです。


ということで、こんなに長い記事になってしまったことに驚いています。制作振り返り記事と言ってもそんなに書くことないよな~と思っていたのですがそんなことなかった。書くのにめちゃくちゃ時間かかった。そういえばあんなこともあった、こんなこともあった、と思い出していくうちに、制作中こんなにいろんなこと考えてたんだ自分、と思いました。作っている最中は目の前のことしか考えていないので、あとからこうして自分が考えていたことをまとめるのも大事かもしれないですね。
それではこの記事はここで失礼します。藤島でした!

藤島 港/猫と心中 2021/11/18 22:21

第1回crAsM.Mビジュアルノベルオンリーに参加しました!

初めてオンライン即売会に参加した話

先日pictSQUAREにて開催されましたオンライン即売会「第1回crAsM.Mビジュアルノベルオンリー」に参加しました!
当日当スペースに足をお運び下さった皆さま、その節はどうもありがとうございました。
イベントに参加するのは2018年秋のコミティア以来だったので、久しぶりにイベントの雰囲気を味わうことができて楽しかったです。
始まるまでは緊張でどきどきでしたが、リアルイベントと違って対面の会話が発生しないので、気負いせずにゆっくりお品書きを見て注文ができたり、じっくり考えて書き込みボードに応援のメッセージを残せたりと、人見知りコミュ障にとってはとてもありがたい仕様でした。
他人との会話が発生しただけでステータス異常:混乱になるコミュ障なので、好きなクリエイターさんのスペースに行ってもろくに応援の言葉を伝えられないまま買い物だけして去る……というのがリアルイベントでは常だったので。
来て下さった方も落ち着いてコメントができたからか、熱いご感想を下さった方がいらっしゃったのも嬉しかったですね。今まで直接ご感想をいただいた経験があまりなかったので……自分の作品が誰かに届いているということを強く実感できた出来事でした。
リアルイベントにはリアルイベントのよさがあると思いますが、自分はこっちの方が向いているなあと思いました。(それでも挙動不審さはにじみ出ていた気がしますが)
コロナ禍がきっかけで広まったオンラインイベントという形だと思いますが、今後も増えていったら嬉しいですね。

そしてビジュアルノベルというジャンルに特化したイベントだったこともあってか、やはりほかのイベントよりも作品に興味を持っていただける率が高かった気がします。
今まで参加してきたのがコミティアやコミケというオールジャンルなドデカイベントばかりだったので、分母が小さくなった分、目に留めてもらいやすかったのかな、と。
やはり大きいイベントは大きいサークルさん向けな気がしますね。なのでこのような小規模なイベントを開催していただけるのは本当にありがたいです。
イベント前に主催さんがすべての参加サークルさんをTwitterで紹介して下さったのも小規模イベントならではだと思いますし、そういった主催さんの丁寧さ、細やかさも、気持ちよく参加できた理由の一つだと思っています。
こう言うと上から品評しているようで申し訳ないのですが、自分としては非常に満足度が高いイベントでした。
いろいろ言いましたが、一言で言うと、とっても楽しかったです!

余裕をもって当日を迎えたかった話

さて、そんなイベントに自分は新作を合わせていったわけですが、当初「オンラインイベントかつDL配布だから入稿や搬入のことは考えなくていいし、最悪開場時刻までにDLできる状態にさえできるなら当日まで作業できる! 余裕じゃん」などと甘いことを考えていたことを恥じています。余裕なんてなかった。
細かい話は紙一重の制作振り返り記事を別に書こうと思うのでそちらでお話ししようと思いますが、思った以上に完成がギリギリになってしまいました。
ラスト2週間くらいは結構修羅場っていたのですが、切羽詰まりつつも「あ~イベントってこうだよな~」と、イベントの醍醐味を久々に噛みしめてちょっと楽しかった気もします。いや、余裕をもって当日を迎えたいですけれども。
次こそは計画的に作業したいです。(フラグ)


ということで、改めまして、当日当スペースへお越し下さった皆さま、ありがとうございました。
そして今回、このような素敵なイベントを企画して下さった主催の倉下さんとM.Mさんに、この場を借りて心からの感謝を申し上げます。
第2回目があれば是非また参加したいと思う素敵なイベントでした。本当にありがとうございました!

それではこの記事はここで失礼いたします。藤島でした!

藤島 港/猫と心中 2021/11/17 21:07

ご挨拶

はじめましての方もそうでない方もこんにちは、藤島 港です。
今まで情報発信はほとんどTwitterと個人サイトだけで行ってきたのですが、作品が完成したあとの振り返り記事など、ちょっとまとまった文章を置ける場所がほしかったのでこの場を作りました。
要はブログで事足りるのですが、投稿の頻度が低いであろうことを考えるとレンタルブログは広告の出現が気になるので……。
活動の密度に波があるので定期的に提供できるコンテンツも用意できないと思い、有料プランは設けていません。たぶんこの先もないです。
無料プラン(フォロー)にも限定コンテンツを置くことはおそらくないと思うので、フォローしていただいても何のうま味もないのですが、当方の作品や活動にご興味がございましたらご覧下さいませ。

最初の記事でご挨拶だけというのも味気ないので、現時点での最新作をゲームと小説それぞれさらっと紹介したいと思います。


ゲーム

紙一重の想い人

2021年11月14日にリリースしたできたてほやほやの新作です。
退魔師の端くれの高校生・惺(さとる)が、バイト先で悪いものに憑かれやすい大学生・嵐に出会い、嵐のためにあれこれしようとする話です。
プレイ時間は約1時間、一本道のノベルゲームです。
BOOTHふりーむ!で無料でダウンロードできます。

小説

大正化け猫妖譚

2017年11月23日に頒布を始めた小説本です。
舞台は大正十二年の東京。急速に近代化が進み、人間たちが次第に妖怪という存在を忘れつつある時代。
化け猫のみけが、自分のことをだんだん忘れていく元座敷童の大学生・櫂との別れが近づいてくるのを感じながら、残された時間を共に過ごそうとする話です。
文庫サイズで全130ページ、こちらで冒頭部分の試し読みができます。
BOOTHにて販売中です。
※旧名義「縣 りく」で出した作品です。


以上、2作品の紹介でした。
小説を最後に出したのが2017年という事実に震えます。
このところはゲーム作品が続いていますが、小説ももっと書きたいですね。

それではこの記事はここで失礼いたします。藤島でした!

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