アールグレイ 2021/08/20 23:18

「サキュバス三姉妹 長女.夜見愛海(よるみまなみ)の場合」前日譚&差分イラスト②を大公開!!


アールグレイ公式の支援サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
音声作品の脚本を担当している湊川紗耶(みなとがわさや)です!
『超純情! サキュバス三姉妹!!』長女の夜見愛海(よるみまなみ)のお話と収録風景をお伝えさせていただいた第5回に続き、今回は本編の前日譚のお話をご紹介したいと思います。

夜見愛海は長女のしっかり者。
まずは彼女が人間の時、どのように過ごしていたのかをご覧ください!

【夜見愛海(よるみまなみ)の前日譚】


「みんなお疲れさま。それじゃあ、またね」


大学の研究室で、夜見愛海は他の研究生たちを見送った。
若い男女が、それぞれ懇親会も兼ねて飲み会に行くと聞いてしまっては、生真面目な彼女が参加することはない。

何度も誘われ、惜しまれる声をなんとか振り切るように、笑顔で謝りながら。
仲間たちの姿が見えなくなると、小さなノートパソコンを取り出した。


「来週の研究発表のために、レポートをまとめておかないとよね」


口に出して、確認するのがクセになっていた。両親が出張で出ているため、妹2人の親代わりは愛海のようなもの。
この後の買い物や家事は次女の撫子に任せているものの、忘れ物がないように、すべきことを口にしている。


「たしか、資料はまとめておいてあったような……パソコンだったかしら」


覚えたてのたどたどしい手つきで、キーボードを打ち込んでいく。
大学に入って買うことになった、ノートパソコン。

今までスマホくらいあれば十分だと思っていた彼女にとって、タイピングは未だに慣れない。
背筋はまっすぐ伸びているのに、その手つきはあまりにもおぼつかないものだった。


「ええっと、資料資料、っと……あっ」


何度目かのマウススクロールで、電子書籍のアプリが目に入った。
愛海はすっかり忘れていたが、今日は彼女のいつも読んでいるレディースコミックの発売日。

それも半年ぶりの新刊だった。
資料を探す手は止まり、すっかり電子書籍のアイコンに目がいってしまう。


「い、いけないわ。事前発表だってあるのだから……」


しかし、彼女は半年前の衝撃を覚えていた。
読んでいた漫画の中では、ヒロインとイケメンが裸になっていたことを。

そして、キスをしながらベッドに倒れこみ、そこで終わっていたということを。
彼女はその衝撃的な引っ張り方に、半年間も悶々としてしまっていたのだった。


「大人の恋って、なんであんなに魅力的なのかしら……」


こくっ、と。透き通るような白い喉を鳴らす。
研究室には、愛海1人。
教授も早引きし、来客の予定もなし。
静寂だけが彼女を包み込んでいる。

この場所には、彼女1人しかいなかった。
意を決し、愛海は席を立ち上がる。そして、ゆっくりと研究室にカギをかけた。


「……これはあくまで息抜きですから?」


カチカチッ……カチカチッ……。
誰に対する言い訳なのか、顔はすましながらも、アプリアイコンを何度もクリックする。


「気になってしまったら、確かめる必要があるわけですから。ええ、必要ですとも」


カチカチッ……カチカチッ……。
本を読んでいる少年のアイコンが、読み込みで真っ白になっても、言い訳をしながらクリックを続けてしまう。
そして、しばらくクリックし続けていると。


「わっ」


画面いっぱいに、男女の愛しあう姿が表示される。
電子書籍のビュアーが開き、漫画の続きが大きく表示された。半年ぶりに待った、彼女の見たい景色がそこにある。
愛海はついつい、口元を手で覆い隠しながら画面を覗き込んだ。


「だ、男性の体って、こんなに筋肉ムキムキなのね……」


愛海はパソコン知識と同様に、男性経験が皆無だった。
姉妹で唯一女子校で育ち、男性とのお付き合いなんてもちろんない。

その結果、必要な知識をほとんど勉強や娯楽のものから仕入れているせいで、長女ながらダントツの頭でっかちになってしまった。
しかし、本人はそれにまったく気付いていない。


「は、はわー……こんなことになるなんて……」


結局、レポートなどひとつも進めずに、食い入るように漫画を読み進める。
さっきまでまっすぐだった背筋が、右に左に曲がり出す。
無意識に悶絶し、体をひねるように動かしていた愛海は、そこでようやく我に返った。


「だ、誰にも見られてないわよね?」
 

男性経験がないことを悟られることは、愛海にとって何より恥ずかしいことだった。
姉妹には、姉としてお手本とならなければならない。

その重圧と恥ずかしさで、隠しておきたい事実だ。
カギを開け、周りを確認してからホッと胸をなで下ろす。


「よかったぁ……見られたら、どうしようかと思ったわ」


いつか、作品の中に出てくるような恋をしてみたい。
そう思いながらも、やがておとずれる夜見家の宿命のことを考え、息をつく。
彼女はまだ、愛する2人の妹に、何も説明出来ないままでいた。


「男の子、か……」


夜見家の宿命を受け入れ、そばにいてくれる男の子。
そんな都合のいい相手こそまさに、物語の中にしかいないだろう。

そう考えながらも、愛海は考えずにいられなかった。
誰にも言えないこの悩みを打ち明けるに足る人物が、もし世の中にいるのなら。


「初めて、誰かのことを好きになっちゃうかも……」


口にして、その事実に気付いた瞬間に彼女は照れるように笑みをこぼした。
愛海がその男の子に恋する決定的な瞬間は、宿命を背負ってからおとずれることとなる。


如何でしたでしょうか?
こちらをお読みいただいて本編を聞いてもらえれば、更に楽しんでもらえるかと思います。

今後もアールグレイは、東方projectをはじめ、オリジナルの音声作品を展開していく予定です。そのためにも、皆さんの拡散力をお借り出来ればと思います。
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引き続き、アールグレイの作品をよろしくお願いいたします!!

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超純情! サキュバス三姉妹!! 長女.夜見愛海(よるみまなみ)の場合【CV.冬馬由美】

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