アールグレイ 2021/08/18 19:44

「サキュバス三姉妹 次女.夜見撫子(よるみなでしこ)の場合」前日譚&差分イラスト②を大公開!!


アールグレイ公式の支援サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
音声作品の脚本を担当している湊川紗耶(みなとがわさや)です!
『超純情! サキュバス三姉妹!!』次女の夜見撫子(よるみなでしこ)のお話と収録風景をお伝えさせていただいた第3回に続き、今回は本編の前日譚のお話をご紹介したいと思います。

夜見撫子は次女で、等身大の女の子。
まずは彼女が人間の時、どのように過ごしていたのかをご覧ください!

【夜見撫子(よるみなでしこ)の前日譚】


放課後、校舎裏に必死な声が響き渡った。


「ごめんなさい! 私、付き合えませんっ」


夜見撫子は、思いきり勢いをつけて頭を下げる。
そこにいるのは、男女が1組。夕暮れに包まれるゴミ捨て場。教室で出たゴミを捨てるために、校内から出てきたその2人を除いて、他には誰もいなかった。

撫子の声を皮切りにして、訪れる静寂。遠くから、部活動の喧噪がうっすらと聞こえてくる。

そんな中、いつまで待っても、彼女の必死な声に応えるものはなかった。
なんせ、直角で、キレイに下げられた頭を見て、男子生徒は逃げるように去ってしまったのだから。


「はぁぁ……またやっちゃった」


男性の背中を目で追いかけながら、どうしようかと思考を巡らせる。
彼とはこれから1週間、撫子と掃除当番をすることが決まっていた。しかし、これでは到底、一緒にはいられないだろう。


「これから毎日顔を合わせないといけないのに、告白されるなんて……」


一緒に頑張ろうね、なんて話をしながら、2人でゴミを捨てに行っていた。
時は、5分ほど前にさかのぼる。

偶然、同行する男子のボタンがほつれているのを見かけた撫子は、ソーイングセットを取り出す。彼女の常識として、困っている人は助けたくなってしまうわけで。


『ほら、上着脱いで。大丈夫だよ、ちょっとだけ繕うだけだから』


少し強引ながらも、彼の手を止めて制服を脱ぐよう要求した。
はにかんだ男子に、優しく笑いかけながらボタンを縫い直す。鮮やかな手際によって、縫い付け自体は数分とかからず終わっていた。


『んっ。またほつれたら縫ってあげるし、いつでも言ってね?』


彼女の爽やかな笑顔を前に、彼もまた魅了されてしまったのか。
両者ともに予定外の告白が行われてしまい、現在に至る。


「今月で何度目だったかな、告白されるの」


そんな言葉がつい口をついてしまうことすら、撫子にとってはありえないことだった。 最低だ。自分都合で相手を振ってしまうなんて。そんな風に思い詰めてしまう気持ちを、首を振って消し飛ばす。


「私、ただの地味な女の子のはずなのに……」


学食で相席した時、国語でノートを貸してあげた時、帰り道で一緒になった時。
そして、ゴミ捨ての時。今月だけで、すでに4度目だった。
撫子には理解できないタイミングで、彼女は様々な男子から告白されている。


「なんで私なんだろう……」


特に好意を伝えてもいないのに、他人から好きと言い寄られる日々。
納得も理解も出来ないままで、撫子はちょっぴり困っていた。

男子たちの中では、夜見撫子の本命になるのは誰かという勝負が行われているのだが、そのことをもちろん、本人は知らない。
何より、男子と2人きりということが、想像も出来ないまま生きてきたのだった。


「誰かと付き合うとか、そんなの考えられない」


異性と付き合うなんて絵空事のように考えていた。
撫子にとって、異性の代表は自分の父親だったし、恋愛なんて漫画やドラマのワンシーンくらいの感覚だった。

しかし、ここ数日の告白の中で、徐々に恋愛という土俵に立たされそうな空気を察している。


「男の人って、何考えてるのかよくわからないし。家族とは違うし……」


クラスのゴミ袋を2つ分(逃げていった彼の分も含め)処分すると、撫子は近くにあったベンチに腰かけた。


「でも、あの人だったら……」


ふと、男子と聞いて、ある顔が思い浮かんだ。幼なじみで、遊びも登校も一緒のあの人。
彼は撫子にとって、男性というよりも家族寄りの立場であった。

例えば、と。思考を巡らせてみる。
いつもの彼が、自分にゴミ捨て場で告白してくるとしたら。


「……………………あー」


声が漏れる。顔が徐々に熱くなってきたのか、パタパタと服を扇ぐ撫子。
姉の影響で読み始めた少女漫画を思い出し、自分を重ねてしまったようだった。


「き、キスは、早すぎだよね……?」
「って、違う違う! キスとかは違うからぁ!」


両手でぷにっと顔を挟み、目を覚まそうと頑張る撫子。
しかし、彼のカッコいい顔を思い浮かべるたびに、体中が燃え上がるように熱くなった。
恋を知らない彼女にとって、彼はまだ、憧れに留まっていた。


「でも……男の子の手とか、どう違うんだろう。触ってみたい、かも」


触らせて、なんて言えない。どうにか理由をつけて、触ってみたいかも。
そんな風に考えているだけでも、手を握るようにワシワシと動かしてしまう。


「……わー! すっごくヘンタイさんっぽいよ私っ」


彼はいつも私と一緒にいてくれて、遊んでくれて、そういうのが心地よくて。
そんな言い訳をたくさん思い浮かべながら、彼女は急いで教室へと戻っていく。
撫子が彼に恋していることに気付くのは、夜見家の宿命を背負ってからだった。


如何でしたでしょうか?
こちらをお読みいただいて本編を聞いてもらえれば、更に楽しんでもらえるかと思います。

今後もアールグレイは、東方projectをはじめ、オリジナルの音声作品を展開していく予定です。そのためにも、皆さんの拡散力をお借り出来ればと思います。
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超純情! サキュバス三姉妹!! 次女.夜見撫子(よるみなでしこ)の場合【CV.中原麻衣】

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