広川なつき 2023/07/24 01:36

自作フリーウェアゲーム『Dust of days』あとがき

今年公開した自作ゲーム『Dust of days』のあとがきです。
下記のサイトから遊べるので見てみて~

ゲームの公式サイト
http://whiteophidion.sakuraweb.com/software/dust/

itch.ioならブラウザで遊べます!
https://reindeerabbit.itch.io/dustofdays


物語の舞台

今までに作ってきた「The Big City」というシリーズの作品のひとつとして作りはじめたこのゲーム。物語の舞台も今までと同じ巨大な「街」にするということと、毎回お決まりの要素として地下鉄の駅が登場するということが最初に決まっていたこと。
今までに作ってきた街のイメージを踏襲しつつも、工業を担う区画としての特徴をイメージに加えてまた違う雰囲気にしていった感じ。
まずは風景を思い浮かべること、が制作のいちばん最初のほうにしたことだったかも。

影響を受けた作品、ノラさん作のゲーム『散歩』について

以前からこのゲーム『Dust of days』はノラさんの『散歩』をオマージュした作品だという話は何度も書いていたんだけど。
そもそも内容が、というよりもノラさんが言っていた「小さなパッケージとしてのフリーゲーム」という概念が大好きで、『散歩』というゲームは小さな画面の中に無駄の無い物語が収められたような雰囲気がとても心に残っていて……こういう良さを忘れずに作っていきたい、、、とすごく思ってタイトルを挙げさせてもらってた。
そして実際作っているうちに、そういう形式の部分だけじゃなく物語のテーマ的にも似たような作品なのかも……って後から気づきはじめた。『散歩』の中の「どこかへ行かなければ」という言葉と、『Dust of days』の中の「どこへも行けない」というテーマは同じことなんだろうなって思って。
いっそ完全にそのまんまオマージュみたいなシーンも作ったのだけど、それもテーマが同じだからこそ作ることができたシーンだと思う。

シナリオ制作

今まで、自分のゲームはコンパクトに物語を伝える手段を考えた結果ノベルのような形に落ち着くことが多かった。それに対して、今回は最初からノベルゲームという形を目指してシナリオも書いていってて。自分の中での意識の持ち方としてはけっこう違いがあったような気がする。
まずとにかく、文字数は多くなってもいいから最初から最後まで読める形でシナリオを書き上げなくては、という気持ちで作った。ただ最初は世界設定だけが決まっているだけで、あとはキャラクターのイメージがなんとなく浮かんでいる程度。そこからいきなり完成版のシナリオを書き上げられるんだろうか、と考えた。

そこで思い出したのが三宅隆太さんの著書『スクリプトドクターの脚本教室』の初級篇、中級篇。
もともと自分が三宅さんのファンだからということでなんとなく持っていた本だったのだけど、これを改めて全部読み直した上で、さらにこの本の通りにプロットを作ろうということに。今まではこういう本を読んだとしても、完全にその通りに作る、ということはしたことがなくて。結局最終的な作り方は自己流がいちばんうまくいくんじゃないか、という気持ちが今まではあったけど、今回はいきなり組み立てる自信も無かったし本を鵜呑みにする気持ちでやってみようということで、、、
この本は映画の話だから「映画の脚本はこうするべき」という内容が書かれてる部分もあるけど、物語の構造とかの部分は全部参考になった。
特に『スクリプトドクターの脚本教室・中級篇』の「第2章 迷走しないメインプロットをつくる・前篇」「第3章 迷走しないメインプロットをつくる・後篇」に書いてあることを完全にそのままやってみる形でプロットを作ることに。まずこの章に書いてある「お話づくり書き込みシート」をちゃんと書き込むことからはじめたし、まさに教科書通りみたいな……それがうまくはまってくれたのかなと思う。

実際にシナリオを書くのはほとんど紙の上でやってて、それを後からRPGツクールに打ち込んだので大変だった。その作業で時間がかかってしまった。

キャラクター

登場人物たちのネーミングについて。『ティファニーで朝食を』に登場する「ユニオシ」というキャラクターみたいに、響きだけ日本人っぽいけど変な名前、にしようと思った。実際にシナリオを書く前からなんとなく、この物語はいつもより日本的な要素がある内容になりそうだな、、、という気がしてたからちょうどいいかなと思って。

キャラクターのプロフィールについて。細かい部分は「お話づくり書き込みシート」に完全に沿って決めた。キャラクターの年齢を決める項目もあって、それは今回はあまり必要ないのでは……と思いつつもしっかり決めた。ほんの少しだけイメージが具体的になる効果はあったような?

カエカ

主人公。ただ直感でこういう主人公にしたい、と決めて考えた。

ミラ

最初に具体的な造形ができたキャラクター。今まで作ってきた「The Big City」シリーズの中には地下鉄は登場するけど、コンピューターやネットワークみたいなものは全く登場してなくて。でもそういう要素が出てきてもいいんじゃないかな~と考えて思いついた人物。
「お話づくり書き込みシート」の中では、(一見「主人公の協力者」のように見えるけど)「敵対者」として設定した。主人公カエカの目的を「自分の現実と向き合うこと」だとして、それに反発するキャラクターだと思ったから。こういう風にとりあえずのキャラクターの立ち位置を最初に決めてからシナリオを書いた。結果的にどうお話が着地するかは、その時点ではあまり気にせず。

マヤノ先輩

ミラとは逆に「協力者」として設定したキャラクター。
シリーズを通して見た時に特殊な立ち位置にいるのはむしろ先輩のほうかも。先輩の台詞を書いてるうちに、「街」に住む人の感覚ってこういう感じなんだ、って納得していく感じが良かった。
ゲームのウェブサイトにも書いた通り「街」の描写はグレッグ・ベアの小説『スリープサイド・ストーリー』をそのままなぞってて、完全に二次創作のような感じなんだけど、原作に書いてある以上のことを先輩が言ってくれた感じがして良かった。

音楽

BGMはゲームそのものを企画する前から作ってあった。というのも、元から「The Big City」シリーズの新作を作りたくて「街」をイメージした音楽を作ってあったから。
音楽が街の空気感をより明確にしてくれて、その雰囲気に合わせて描写していくような感じだった。音楽が最初から用意してあると感情的な部分の道標にもなるような気がして良い。逆に言えば、たぶんこういう感情のストーリーになるだろうな……と予想して音楽を作ってあったということ。
駅のシーンも絶対あると思ったから駅の曲も作っておいた!

エンディングの歌も『Dust of days』というお話ができる前に作ったものだった。具体的なひとつのストーリーをイメージしたわけではなくて「The Big City」というシリーズそのもののテーマ曲みたいなつもりで作った曲。今回のエンディングで流す予定もなかったのだけど、すごく合う気がしたから使った。

終盤の「歩く」シーンの音楽だけはシナリオを書きながら作った。ノラさんの『散歩』をイメージしたシーンに合う曲が欲しくて。

そして作ったけど今回使わなかった音楽もある、、、
つまりそれは、さらにもうひとつ続編を想定して作ったBGMだったりするわけで、今のところ予定は無いけどなるべく早めにもうひとつ作りたいです。


という感じで!ではではよろしくお願いします。

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索